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第7話: 天才と天災の約束

第7話: 天才と天災の約束




『明日私とデートにでも行きませんか?』


昨日そう朧に言われてから早1日。 今日は約束通り朧とのデートの日だ。

人生初デートが朧というのはちょっと躊躇いがあるが……まぁ経験は大事だし良しとしよう。

そして放課後になり早速俺は朧とデートに……

優雅「はい俺の勝ちー!ザッコ! お前雑魚やな!」

朧「うるさいですよ! ずっと空後振ってるなんてズルです! もう1回です!」

ではなく、生徒会室でスマブラをやっていた。

優雅「第一なんでお前ガノンしか使わねぇんだよ。 俺ジョーカー使ってんだからもっと機動力あるやつにしろよ」

朧「何を言ってるんですか? 格闘ゲームなんですからパワーこそ正義に決まってます。 圧倒的破壊力で相手をねじ伏せる時程気持ちのいい事はありません」

優雅「格闘ゲームは立ち回りや読み合いが面白いんだろ。 お前の力ゴリ押しじゃあ俺には勝てないぜ?」

朧「ふん、ジョーカーにクラウドとイケメンばっかり使って……本人の顔は良くないくせに。 まぁ良いでしょう。 ではどちらが強いか決着をつけるとしましょう!」

優雅「おい、今お前余計な事言ったな? クラウドでボッコボコにしてやるからな」

お互いのプライドをかけ、今頂上決戦が始ま…

真冬「全く…何をやってるのよ。 優雅ならまだしもしーちゃんまでゲームなんて……」

……る前に真冬が口を挟んできた。

優雅「別にいいだろ? 今日は生徒会休みなんだし」

真冬「まず学校にゲームを持ってくるなっていう話なんだけど……」

朧「大丈夫ですよ真冬。 ちゃんと校長先生から許可は貰っています」

こいつなんでも校長先生から許可もらってんな

朧「ほら優雅、早くキャラ選んでください。 私はカズヤで捻り潰してあげますから」

優雅「え? は? ちょっと待て、話が違うじゃないか。 さっきの話的にガノンを使う流れじゃないのか?」

朧「どっちも破壊力が高いのは変わりませんから。 さぁ殺りますよ」

優雅「なんか漢字違くない?」

真冬「私は全然スマブラ分からないからさっきから2人の言葉が呪文にしか聞こえないけど……しーちゃんさっきからムキムキなキャラしか使わないのね……他の可愛いキャラは使わないの?」

朧「……? 何を言ってるんですか真冬? カズヤはともかくガノンドロフは可愛いでしょうに」

真冬「ごめんしーちゃん。 それは流石に可愛くないと思うのだけれど」

キャラクターを選択してこれから始めようとしたところで真冬がそんな事を……

いや、というかずっと言いたかったが、

優雅「なぁ真冬。 なんでお前はずっと生徒会室にいるんだ?」

真冬「……えっ?」

俺が質問すると真冬は腑抜けた返事をする。

優雅「いや、今日生徒会休みだし普段から早く帰りたいとか俺と一緒の空間に居たくないとか言ってるのになんでわざわざ生徒会室に残ってるんだろうって思ってさ」

朧「確かにそうですね。 あ、戸締りとかはちゃんと私達がやっておくので大丈夫ですよ?」

俺達がそう言うと真冬は焦った様子で、

真冬「い、いや、ね? ちょっと勉強でもしようかな〜って思ったのだけど家だとどうしても集中出来なくてね!」

優雅「前俺がいるだけで勉強に支障が出るとか言ってなかっ……な、ナンデモナイデス……」

俺が口を挟むと真冬が冷めた目で睨め付けてきたので目を逸らす。

真冬「と、とにかく、私の事は気にしなくていいから。 本当に勉強してるだけだから」

朧「そうですか……? まぁそれなら何も言いませんが……って、もうこんな時間ですか。 そろそろ行きますか優雅」

優雅「んぁ? どこに?」

突如ゲームをやめて立ち上がった朧に問いかけると何を言っているんだと言わんばかりの目で見られ、

朧「どこも何もデートですよ。 昨日約束したじゃないですか」

真冬「!」

優雅「あっ、今のがデートじゃなかったの!?」

朧「当たり前でしょう。 何ですか生徒会室でゲームやるのがデートって。 普通に考えて有り得ないでしょうに」

そ、そうなのか……? デートをしたことがない俺からしてみれば充分デートみたいなもんだったんだが、

朧「ほら、行きますよ。 早く行かないといなくなっちゃいます」

優雅「あ、あぁわかった」

いなくなっちゃう……?

朧「では私たちは生徒会室にはしばらく戻ってこないので一応真冬に鍵を渡して……」

真冬「だ、大丈夫! 私も今ちょうど用事を思い出して帰るところだったの!」

朧が勉強している真冬に鍵を渡そうとすると真冬が勢いよく立ち上がり、荷物をまとめて帰り支度を始める。

真冬「じゃ、じゃあ私帰るからあとは頼むわよ!」

朧「え、えぇ。 任せといて下さい」

朧の返事を聞き届けると真冬はそそくさと走って帰ってしまった。

優雅「……なんだったんだアイツ?」

朧「さ、さぁ? 今日の真冬は少し変でしたね……まぁいいです。 ほら、優雅。 行きますよ」

優雅「あ、おう」

そうして先導して歩いていく朧に俺はついて行った。


あの後、朧が『少し待っててください!』と言ってトイレに入っていったので待っていたのだが、トイレから出てくると朧は……

優雅「……なぁ、その格好って……」

朧「おや、気が付きましたか? これは私の好きなDr.STONEって言う漫画の天才科学者石神千空というキャラクターで……」

優雅「いや、そういう事じゃない。 それは俺もDr.STONE読んでるから分かる。 お前はトイレに行ったのにわざわざそんな格好に着替えて出てくるんだって言うことを聞いてるんだよ」

朧「? 不思議なことを聞きますね。 これが私の正装じゃないですか」

優雅「いや、まぁ確かにそうだけど……」

俺が言いたいのはそういうコスプレをすると周りの視線が痛いからやめて欲しいって事なんだが……

朧「それにこの格好の方が合いますしね」

優雅「?」

意味のわからないことを呟く朧に疑問を抱きながらも俺は黙って朧の後について行く。

というか俺は一体どこに連れていかれてるんだ?

朧「着きました。 ココですよ」

優雅「……?」

朧が着いたと言ったので周りを見渡してみるがそこには『科学室』と書かれた教室があるだけだ。

朧「じゃあ入りますよ」

そう言って朧が科学室の扉を開けるとそこには……

朧「たのもー! 我が来ましたよー!」

???「……おや、騒々しいのが来たと思いきや君か。 それに……えと、そちらの人は誰だい?」

そこには白衣を着て、肩まで伸びた綺麗な髪の女の人が1人佇んでいた。

朧「こちらの人は私の連れの光月優雅です。 お久しぶりですね水優さん」

水優「あぁ、久しぶり朧ちゃん。 それにしても急に来るなんてどうしたんだい? もしかして科学部に入部する気になったかい?」

朧「いえ、私は研究とかに興味は無いので大丈夫です」

朧が水優と呼んだこの女の人はどうやら科学部の人らしい。

水優「おっと、悪いね。 君をそっちのけで話してしまって。 初めまして。 私の名前は白雲水優(しらゆきみゆ)、 この科学部の部長だ」

優雅「あ、あぁ初めまして。 俺は1年生の光月優雅って言います。 一応生徒会副会長です」

水優「副会長! 1年生なのに凄いね」

優雅「いえ、そんな事は……副会長になったのだってただの成り行きですし」

水優「そう謙虚になることは無いよ。 成り行きだろうとなんだろうとそれは君の力が形となった運命なんだ。 もっと誇るといい」

優雅「は、はい。 ありがとう…ございます…」

そこまで言い終えると水優さんは途中だったらしい薬品の研究へと戻る。

なんだろう……? なんだかあの人と話しているとポカポカする感覚になる……

って俺は何を綾波レイみたいな事を言っているんだ。

朧「どうしたのです優雅? ボーッとして」

優雅「いや…なんだかあの人と話していると変な気分になるというか……あ、悪い意味じゃないよ? なんか高校生と話をしてるように思えない変な気分に……」

上手く言葉に出来ず俺が喋っていると朧が納得したのか頷きながら、

朧「言いたいことはわかります。 私も同じ感覚でしたからね。 水優さんは2年生ですが研究結果をレポートにまとめたり論文を書いてそれを企業や大学に提出している研究職者ですからね。 妙に大人びているのはそのせいです」

なるほど……通りで変な感覚な訳だ。

優雅「2年生でもう研究職として働いてるなんて凄くないか? よっぽど頭が良くないと出来ないぞ?」

水優「そんなに褒めないでくれよ優ちゃん。 照れるじゃないか」

ゆ、優ちゃん……初対面であだ名をつけられたのは初めてだから動揺するな。

水優「だが朧ちゃんの方が頭はいいからね。 是非とも科学部に招き入れ研究に協力して欲しいんだが……」

朧「絶対入りませんよ」

水優「ずっとこんな調子でね……だから1人寂しく研究してるって訳さ」

優雅「そうなんですか……他の部員はいないんですか?」

水優「科学部は私一人だけだよ。 勧誘はしてるんだが誰1人として入ってくれなくてね……」

水優先輩はそう言って肩を落とす。

朧「毎回言ってますけど誰も入ってくれないのは水優さんに原因があると思うんですがね」

優雅「そうなのか?」

朧「はい。 まぁ見てれば分かりますよ」

すると朧は水優先輩に近づき、

朧「水優さん。 聞きたいんですけどそれは何を作ってるんですか?」

水優「おや、気になるかい?」

朧が水優先輩がさっきから作ってるものについて聞くと水優先輩は嬉嬉として、

水優「コレは俗に言う『惚れ薬』ってやつさ。 飲んだらフェロモンを分泌し相手に恋心を芽生えさせる薬さ。 近づいてきた異性はみんなイチコロだよ!」

優雅「惚れ薬だって!? そんなものが本当に……!」

惚れ薬って漫画やゲームだけのフィクションじゃなかったのかよ!

朧「……それで、デメリットはなんですか?」

水優「デメリットは飲んだらとてつもない腹痛に見舞わられるのと、体臭がとてつもなく臭くなるから誰もよってこなくなるって所かな」

優雅「ゴミじゃねぇか」

朧「ね? 分かったでしょう? 水優さんは私の次に天才ですが研究してる物がクソくだらないので誰も入部しないんですよ」

優雅「なるほどめっちゃ納得した」

水優「ちょっと言い過ぎだとは思わないのかい君たち?」

すると水優先輩は一段落ついたのか1度手を止め椅子に腰かける。

水優「……で? わざわざ科学部になんて来て何の用だい? 何か用事があったから来たんだろう?」

水優先輩は俺達にそう問いかけてくる。

……あれ? そもそも俺デートって聞いてたんだけどなんでこんな所来させられてるんだ?

優雅「いや、俺は朧がデートしようって言うから後を着いてきただけで……」

朧「今日来たのは前の約束を果たす為ですよ」

水優「約束……あぁ! それは助かるよ」

俺が説明しようとすると朧が途中で俺の言葉を遮る。

てか約束って何だ……?

水優「て事は優ちゃんが?」

優雅「え? な、なんすか?」

朧「はい、そうですね。 ではどうぞ」

すると朧は俺の背中を押して水優先輩の所へと……

優雅「おい待てって! なんなんだよ朧お前! 俺なんの話ししてんのか理解してないんだって! 説明しろよ!」

俺は朧に問い詰めるが俺から目を逸らし黙り込む。

水優「優ちゃんもしかして何にも聞いてないのかい?」

優雅「え? あ、はい。 何なんですか約束って?」

朧が黙り込んで何も話してくれないので水優先輩に聞いてみると、

水優「実は以前朧ちゃんのとあるお願いを叶えてあげた時に『お礼として部員になってくれそうな人を連れて来ます!』っていう約束をしてね。 だから優ちゃんがその部員になってくれる人だと思っていたのだけれど……」

朧「…………」

優雅「……おい。」

朧「違うんです」

優雅「ほう」

俺が朧を睨めつけ、おいと呼びかけると朧は焦った様子でまだ何も言っていないのに否定の言葉が放たれる。

優雅「お前男心を弄んだな? 何がデートだ朧テメェ」

朧「だから違うんです! これには深い訳が…」

優雅「まぁ聞こうじゃないか。 コレでろくでもない理由だったら流石にキレるからな?」

半ば脅しながら朧に圧をかけると縮こまりながらも理由を話始める。

朧「その……自分で連れて来るって言ったのは良かったんですが……ほら、私もあまり友達は多い方じゃないじゃないですか。 それで考えた結果生徒会以外に何も所属していない優雅なら行けるかな〜と……」

優雅「行けるかな〜、じゃねぇよ! わざわざ黙ってる必要なかっただろ! なんで初めから言わねぇんだよ!」

朧「だ、だって言ってたら面倒臭がって絶対断ってたじゃないですか! そ、それに引き受けてくれればちゃんとお礼としてデートしてあげるつもりでしたし……」

優雅「うるせぇよ何がお礼だ! 俺の事散々良い道具として利用してた奴とデートなんか行きたかねぇよ! どんだけ自分に自信あんだお前は! まだ真冬の方がい……いや、あいつも頭おかしいから無理だわ」

朧「だ、だって……ほら! 私って意外と顔面偏差値高いじゃないですか! それにこんな可愛い子とデートできるなんて今を逃したら今後は絶対そんな機会な……」

優雅「あ、もう大丈夫。 ちょっと緊張してたけどお前とデートとか改めて考えたらなんかバカバカしくなってきたわ。 お前ガキだしな」

朧「な、何を言うか! それは思っても言ってはいけないことですよ! よくも言ってくれましたね……許しませんからね!」

優雅「なんでお前がキレてんだよ! 怒るのはこっちだアホ!」

水優「はいはい、君達そこまでにしたまえ。 ここには貴重な備品が沢山あるから暴れられて壊されたら困るんでね」

俺と朧が喧嘩を始めると水優先輩が喧嘩の仲裁に入ってくる。

優雅「あぁ、す、すみません水優先輩」

朧「そうですよ優雅。 こんな所で暴れるなんて非常識ですよ」

コイツ本当に1回痛い目にあった方がいいと思う。

水優「先に喧嘩をふっかけてたのは朧ちゃんだったけどね。 それに騙すのは良くないよ朧ちゃん。 ちゃんと優ちゃんに謝ろうね」

朧「えぇ!? そ、そんな……」

俺の言いたかった事全部言ってくれたな。

優雅「ほら、誠心誠意込めて俺に謝罪しろよ」

朧「う、うぅぅぅ……私は謝罪と敗北が嫌いなんですが……今回は私が悪いので謝りますよ。 すみませんでした」

優雅「ふむ、許してやろう。 俺の心が寛大で良かったな」

俺がそう煽り気味に朧に言い放つと朧は歯ぎしりしながら睨めつけてくる。

優雅「どうもすみませんね水優先輩。 うちの朧が迷惑かけて……」

水優「いいんだよ別に。 朧ちゃんはこういう所があるけど本当は素直で良い子だから面倒を頼むよ」

それは丁重にお断りしたいが先輩からの頼みなので渋々引き受ける。

朧「すみませんでしたね水優さん。 また改めて部員になってくれそうな人を探してきますから」

朧は水優先輩に謝罪した後、用事を終えたので俺と共に科学室から出ようと……

水優「いや、もう部員は探さくていいよ。 それにちょっと待ってくれるかい2人共」

科学室から出ようとした所で水優先輩に突如引き止められる。

朧「どうしました? まだ何かありましたか?」

水優「ちょっと優ちゃんに提案があってね……ちょっとこっちに来てくれるかい?」

優雅「お、俺?」

水優先輩にちょいちょいと手招きされたので俺は大人しく水優先輩の所へと行く。

すると水優先輩は小さい声で、

水優「優ちゃん。 私と取引しないかい?」

優雅「と、取引……?」

水優「そう、私の研究品には実は優ちゃんが好きそうな物もあるんだ。 取引内容は優ちゃんは私の助手として時々私のお手伝いをしてもらう。 代価としては私に作れる発明品や作った道具の提供……どうだい? 悪い話では無いと思うのだけれど」

優雅「いや、そんな事言われましても俺頭良くないんで研究とかよくわかんないですよ。 それに研究品って言われてもさっきの惚れ薬みたいなポンコツ品ばっかなんじゃないですか?」

俺がそう聞くと水優先輩は俺の耳元に口を近づけ小さな声で……

水優「実は私も校長先生から特別な権限を貰っていてね。 私に協力してくれるのであれば学校にゲームを持ってきていても堂々といじれるようにしてあげたり、こう見えて私はお金持ちだから君が誠意を見せてくれるって言うなら報酬として……」

優雅「協力します。 いや、させて下さい水優先輩!」

水優「ふふっ、君面白いね。 じゃあ取引成立だ。 よろしく頼むよ優ちゃん」

優雅「よろしくお願いします水優先輩!」

水優「それと、先輩は付けなくていいよ。 私は敬語があまり好きじゃないからね。 仲も深まったんだし呼び捨てにしてくれて構わないよ」

優雅「了解ッス! 水優!」

俺は有意義な交渉を終えると入口で待っていた朧の元へと戻る。

朧「何を話していたのですか? 何やら随分と嬉しそうでしたけど」

優雅「水優と実に素晴らしい交渉をしてただけだよ。 それにしても水優って人今日初めて話したけどめっちゃ良い人だな!」

朧「!?!? ちょ、気持ち悪いですよ優雅! なんでそんなニッコニコ何ですか! それになんで急に呼び捨て!? ちょっと水優さん! 一体何を話してたんですか!」

優雅・水優「「別に何も?」」

朧「ちょっとハモらないで下さい! なんで初対面なのにそんなに仲良くなってるんですか!」

その後も騒ぎ続ける朧を連れて俺は科学室を後にした。

優雅「……なんで2人がここにいんの?」

朧「何やってるんですか? 藤井先輩と真冬」

科学室から出ると何故か藤井先輩に地面へ押さえつけられる真冬がいた。

真冬「優雅、お前を殺す」

優雅「いや、なんでだよ!?」


遡ること30分前……

真冬「絶対に裏を暴いてやるんだからね優雅!」

私はしーちゃんからデートに誘われていた優雅の裏の顔を暴く為、生徒会室から2人が出てくるのを隠れて待っている。

勘違いして欲しくないがこれはストーカーではない。 悪の化身である優雅をデートに誘うなんてしーちゃんになにか悩みや辛い事があるからだと思ったからだ。

もう一度言っておくがコレは決してストーカーでは無い。

あの汚れた魔物から何としてでもしーちゃんを救わなければ……

千夏「あれ? 真冬ちゃん! どうしたのそんな所で縮こまって? 何やってるの?」

真冬「ふ、藤井先輩!」

息を潜めていると藤井先輩に突如後ろから話しかけられる。

真冬「実は今……」

朧「ほら、優雅。 行きますよ」

優雅「あ、おう」

千夏「あ、朧ちゃんに優雅だむぐっ!? 」

名前を呼び2人に駆け寄ろうとした藤井先輩の口をおさえ、物陰に隠れる。

千夏「ぶはっ! ちょっと真冬ちゃん何するの!?」

真冬「いきなりすみません…でもコレには訳があってですね……」

千夏「訳? あの二人に何かあったの?」

何も事情を知らない藤井先輩に私は説明をしてあげる。

真冬「はい。 実はかくかくしかじかで……」

千夏「つまりそれってそういう事(恋愛)ですか!?」

真冬「はい、そういう事になりますね。 ただ私はこの件に関しては優雅が何か裏工作をしていると考えています。 なので監視して裏を暴いてやるんです」

千夏「別に自分の欲望のままに生きてる優雅君に裏なんて無さそうだけど……まぁ面白そうですしどうでもいいですね! さぁ2人を追いかけましょう!」

真冬「は、はい」

私よりも乗り気な藤井先輩に気圧されながらも私達は2人の後を追った。


真冬「……遅いわね」

千夏「遅いですね」

2人の後を追ってきたのは良かったが……

真冬「なんでしーちゃんはトイレに10分以上も籠っているのかしら……」

優雅がトイレの前に立たされしーちゃんがトイレに入ってから早10分程経過した。

千夏「お腹が痛くなっちゃったんじゃないのかな? それ以外に理由が思い当たらな……」

朧「お待たせしました」

藤井先輩が言い終える前に朧がトイレから出てくる。

出てきたのだが……

千夏「……何あの格好? なんであんなに髪が逆立ってるの? スーパーサイヤ人?」

真冬「あれはDr.STONE千空っていうキャラクターのコスプレです」

千夏「へ〜。 あ、本当だ! 調べてみたけど凄い似てるね。 本当に男の子みたい」

真冬「しーちゃん結構体格気にしてますから本人には言っちゃダメですよ……」

そんな話をしていると優雅としーちゃんがまたどこかへ向かって歩き始める。

そもそもあの2人はどこに向かっているんだろう?

デートするって言ってたのずっと校内をうろうろして何かあるのだろうか。

すると2人は教室の前で急に立ち止まる。

そこには……

真冬「科学室……? なんで科学室なんかに?」

私が色々と考えていると2人は科学室へと入って行ってしまう。

真冬「こんな隅っこにある科学室に来て何かあるのかな……」

すると藤井先輩が私の肩を掴み、

千夏「何言ってるの真冬ちゃん! 男女2人でこんな誰も来ないような教室に入ってやる事と言ったら1つしかないでしょ?」

真冬「男女2人でやる事……!? そ、そんな……それはえ、エッチ過ぎます!!! これ以上は私が見過ごしませんよ! 今すぐ取り締まって来ます!」

千夏「ちょっとストップストップ! 何を考えてるのかは知らないけどまだ変なことをしているって確証を得たわけじゃないでしょ?」

真冬「うっ……た、確かに…そうです。 ですが何かあってからでは遅いんです!」

千夏「まぁまぁ真冬ちゃん。 とりあえずちょっと聞き耳立ててみようよ! なにか聞こえるかもしれないし」

突撃しようとした所を藤井先輩に止められ、そう提案されたので私と藤井先輩は扉に耳を当て聞き耳をたててみる。

すると誰かの声が……

(……フェロモンを分泌し相手に恋心を芽生えさせる薬さ)

真冬「やっぱりハレンチじゃないですか! 今すぐ取り締まってきます!」

千夏「ちょ、待って真冬ちゃん! ここはその気持ちをグッと堪えてもう少し聞いてみようよ。 それになんだか聞いた事ない声な気がしたし別の人がいるのかも」

科学室に突撃しようとしたのを藤井先輩に止められ、1呼吸置いて落ち着きを取り戻した私は再び科学室の扉に耳を当てて会話を……

(……デートなんか行きたかねぇよ! どんだけ自分に自信あんだお前は! まだ真冬の方がい……いや、あいつも頭おかしいから無理だわ)

千夏「ちょ、待ってって! なんか色々と取り込み中らしいから今突撃するのはまずいって!」

真冬「もう許さいないわ……絶対に殺す! あいつは今ここでぶっ殺すしてやる!」

千夏「女の子が言うセリフじゃないって真冬ちゃん! ちょ、本当に落ち着いてって!」

今度こそ科学室の扉を蹴り飛ばして突撃しようとしたが再び藤井先輩に地面へ押さえつけられる。

真冬「どいて下さい藤井先輩! 私は今アイツを殺さなければ……!」

千夏「風紀委員長が殺す連呼するのはマズイよ真冬ちゃん! もう少し言葉遣いを……」

そんなやり取りをしていると突如科学室の扉が開けられ……

優雅「……なんで2人がここにいんの?」

朧「何やってるんですか? 藤井先輩と真冬」

そこには好き勝手言ってくれた憎き優雅が……

真冬「優雅、お前を殺す」

優雅「いや、なんでだよ!?」


優雅「……という訳で俺は今回に関しては悪くないんだって。 朧に騙されただけだから」

千夏「なんだそういうことだったのかぁ。 まぁそんな事だろうと思ってましたけどね」

朧「えぇ、今回に関しては私が悪いのでそんなに怒らないで下さい真冬」

何故か真冬に殺害予告をされた俺だったが朧の弁解もあり何とか誤解が解けた。

真冬「……しーちゃんがそこまで言うなら分かったわよ」

真冬はそう言いながらも俺をゴミを見るような目で睨めつけてくる。

……やっぱり誤解は解けてないのかもしれない。

優雅「とにかくもう用事は済んだので俺は帰りますね。 それじゃ」

千夏「私ももう何も用事ないですし帰りますね。 みんなまた明日!」

真冬「じゃあ私も帰るかしら」

そうして各々が帰路に着き、明日に向けて英気を養うのであっ……

朧「あの、優雅」

……どうやらまだ終わりではなかったらしい。

優雅「なんだよ朧、今完全に終わりの流れだっただろ。 この後To Be Continuedって出て次回へ続くって流れだったろ? それにお願いならもう聞かないぞ」

朧「終わりの流れ……? なんかラスボスが言ってそうなセリフでカッコイイですね」

俺のセリフを中二病のコイツに褒められても全然嬉しくないんだが、

優雅「で、何? 俺早く帰りたいから手短に頼むぞ」

早く帰りたいので朧を急かしながらちょっとずつ玄関の方に歩み寄っていくと朧が下を向いたまま、

朧「その……途中まで一緒に帰りませんか?」


優雅「言っとくが俺バスだから本当に途中までだからな?」

朧「えぇ、途中迄で大丈夫ですよ」

朧に一緒に帰ろうと言われ、俺と朧は一緒に帰っているわけなのだが……

優雅「一体どういう風の吹き回しだ? もう俺は騙されないぞ」

さっきデートと評していい道具のように扱われたので警戒をする。

朧「別に何もありませんよ。 ただ一緒に帰りたいだけです。 友達と一緒に帰るのはおかしい事なんですか?」

優雅「俺とお前って友達だったのか。 てっきり仕事仲間か知り合い程度かと」

朧「さ、最低ですよ! 一緒に仕事したりゲームしたりしてきたのに知り合い止まりだったんですか!?」

そもそも殆ど生徒会でしか会話しないのに友達とよんでいいのか怪しいところだが……

朧「……ほら、私って少し浮いてるじゃないですか。 だからクラスにもあまり馴染めず友達も多い方では無いので……だから分け隔てなく接してくれる優雅には感謝してるんですよ?」

別に分け隔てなく接してたつもりは一切ないのだが、感謝してくれてるそうなのでその気持ちをありがたく受け取る。

でもコレだけは修正させて欲しい。

お前は少しじゃなくてとても浮いていますよ。

優雅「まぁでも確かにお前がクラスで俺以外の奴と会話してる所見た事ないな。 そもそもクラスにいる時だとお前とも会話しないし」

朧「ふっ……まぁ我の溢れ出る覇気にみんな恐れをなして近寄って来れないのですよ。 私は覇王色を持ってますから一般人が易々と近寄ってきてしまうと謝って気絶させてしまいそうですしね」

優雅「誰もよってこない原因はそういう所だぞ」

一切誰も寄ってこない原因を理解してない朧にツッコミを入れたが本人は分かってないようなのでもう放っておく。

と、そんな話をしているとバス停が目の前に…

優雅「じゃあ俺帰るわ。 じゃあな」

朧「あ、あの優雅!」

優雅「? どした?」

別れを告げて別れようと思ったところ再び朧から声をかけられる。

朧「今日のスマブラ楽しかったので……ま、またゲームやりませんか?」

朧は顔を赤くしながらそんな事を……

優雅「はぁ……全くお前は普段恥ずかしいこと連呼しまくってる癖になんでこんな事で恥ずかしがってんだよ」

朧「は、恥ずかしがってなど……」

戸惑う朧を他所に俺はバス停へと歩きながら、

優雅「じゃあ出来る時連絡くれよ。 『友達』ならこの位普通なんだろ?」

朧「……! は、はい! 今度こそは貴方をぶっ倒してやりますからね!」

そんな物騒なセリフを聞きながら俺は到着したバスへと乗り込んだ。




今日の活動記録 生徒会休みの為無し。




ピロンッ!

優雅「……? こんな時間になんだ?」

日付が変わって暫く経つ夜中、ゲームをしていると突然着信音が部屋に響く。

優雅「もう3時だぞ? こんな時間まで起きてるような不健康な奴俺以外にいたかな?」

疑問を抱きながらスマホを取り、誰からの通知なのかを確認したのだが……

優雅「……? 誰だコイツ? 俺の知らないやつがトーク欄にいるんだけど……『六華』? なんて読むんだこれ、むつか? りっか?」

何もいじっていないのに勝手に追加されていた六華という人物に疑問を覚えながら削除しようとすると、

優雅「え? な、何コレ? 何で画面が黒くなったの?」

突如スマホが暗転し操作不能になる。

もしかしてウイルスに感染したか……!? でもウイルスに感染する様な事は一切してないんだが……

優雅「とりあえず再起動してみるか」

『その必要は無いよ優ちゃん』

優雅「!?!?!?」

再起動しようと電源ボタンを長押ししようとした瞬間、突如スマホから声が聞こえ驚きのあまりスマホをぶん投げる。

『おっと、驚かせてしまったかな? すまないね。 男の子は突然女の子から電話がかかってくると嬉しいって教わったのだが……』

優雅「いや、普通だったらそうなんだろうけど今のシチュエーションだと完全にホラゲーだったぞ。 しかもこの後襲われて死ぬパターンの」

そんな声が地面に転がったスマホから聞こえてくる。

俺はスマホを拾い上げると俺はまだ何もいじってないのに何故かもう既に通話中になっていた。

というか……

優雅「この声は水優か? なんすかこんな時間に。 てかそもそもどうやってこんな事を?」

水優『ふふふ……私が天才だと言うことを忘れたのかい? 連絡先を聞いてなかったのを思い出してから君のスマホをハッキングして私の連絡先を追加してついでに通話を繋いだのさ』

誇らしげに語っている水優だが何俺のスマホを勝手にハッキングなんかしてくれてるんだと言いたい。

優雅「後日学校で聞けばよかったのに……てゆうかこれって法律的に大丈夫なんスか? 相手のスマホを勝手にハッキングとか……」

水優『実は優ちゃんに頼みがあってね……』

どうやら聞いてはいけないことを聞いてたらしい。

水優『来週の日曜日って暇かい? いや、暇だろう? だから今送ったリンクに書かれた場所に来て欲しいんだ』

優雅「え、いや。 俺一言も暇だとは……」

水優『では、よろしく頼むよ。 それじゃあ』

優雅「ちょ、おい!」

ツーツー

あの人言いたい事だけ言って切りやがったぞ。

不満を覚えながらも水優から送られてきたメールの内容を確認する。

優雅「……なんだココ? 家……? 一体ここに何があるって言うんだ?」

水優『私の家だよ』

優雅「いや、通話まだ繋がってんのかよ! ちょっと説明して下さ……」

ツーツー

……なんなんだこのこの人。


明日の予定→第8話 天翔学園祭実行委員に救済を!

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