第5話: 沢村葵は生徒会メンバーをもっと知りたい
第5話: 沢村葵は生徒会メンバーをもっと知りたい
「沢村先輩! ずっと前から好きでした! お、俺と.......付き合って下さい!」
葵「.......ごめんなさい。 私、他に好きな人がいるから.......」
「そ、そんな.......い、一体誰を.......?」
葵「それは秘密よ」
「うっ! 振られても沢村先輩は美しい……!」
第45期生徒会執行部第1のメンバー、副会長にして前任会長である沢村葵!
容姿端麗・成績優秀・品行方正な完璧少女と謳われる沢村葵。
高1の時は生徒会長を務め、現在高2では現会長智幸に頼まれ副会長を務めている。そして葵は高1の時に荒れていた智幸の世話係を任され当時苦しんでいた智幸を救った言わば遊木智幸の救世主である。
そんな何でも出来てしまい色々な人からしたわれる完璧な彼女にも今、悩みが.......!
葵「また優雅君と真冬さんの喧嘩.......それに今日は3人から告白……それにラブレターが4通…返事を書かなきゃ…うぅ……頭が……」
そう! 人間関係である!
葵「……なのでごめんなさい、っと。 ふぅ…疲れましたね」
千夏「お疲れ様です葵ちゃん! 仕事時間は終わってるのに何をしてたんですか?」
葵「あぁ、コレはラブレターの返事を書いていまして……」
千夏「ラブレター!?」
ソファから顔を覗かせているこの子は生徒会のムードメーカーの藤井千夏。
一応中学校から一緒にいるのでメンバーの中では1番長い付き合いになる。
智幸「そ、そうか……ふふ、沢村はモテモテだな。 ふ、ふふふ……」
会長がそんなことを言いながら震えた手で紅茶の入ったティーカップを持ち、膝へ紅茶をこぼす。
今膝にこぼれた紅茶を拭いているのが現会長の遊木智幸。 私が去年お世話をしていた男の子。
去年迄はヤンキーみたいに荒れてて誰にも手をつけられないような人だったのに今ではその面影すらない。
正直私の中で1番変わったのは遊木君だと思っている。
千夏「すごい量……これ全部断っちゃうんですか?」
葵「えぇ。 私今は恋愛に興味が無いので」
智幸「きょ、興味が、無い……ふ、ふふふ……」
千夏「そういえば校内でも有名なイケメンの修也先輩からの告白も断ったて聞きましたけど本当ですか?」
手を組みながら小刻みに震え何かブツブツ言っている会長を他所に千夏さんがそんなことを…
葵「そういえばそんな人にも告白されましたね……最近は色々な人からされているので正直覚えられないと言いますか……」
優雅「ふっ…男なんてどいつでも選び放題っていうモテない俺へのアピールッスか……」
葵「何か言いましたか? 優雅君?」
優雅「いえ、何でもないです。 今晩は何食べようかなって考えてただけです。 はい。」
千夏「葵ちゃん……何か最近優雅君の扱いになれてきてないですか?」
葵「そうですか? 優雅君とは前から仲良しですよ。 ね?」
優雅「お、おぉぅ……」
私がニッコリと笑いながら問いかけると、優雅君はゲーム画面に目を逸らしか細い声で返事する。
なんの躊躇いもなく会長席に座り、生徒会室にゲームを持ち込み遊んでいる彼は光月優雅。
優雅君は入学して早々に会長にコンピュータ系の実力を見抜かれスカウトされて入部した為生徒会メンバーの中では3番目に長い付き合いになる。
……が、未だに何を考えてるのかも分からないし破天荒な性格でいつも何をやり出すのか一切読めない。
真冬「優雅、あんた私が口出ししないからって随分と態度がデカいんじゃない? 先輩に話しかけられてる時くらいゲームやめたらどうなの?」
優雅「おっ、そうだな」
真冬「ちょっと何よその返事。 あんた絶対聞いてないでしょ!」
優雅君にいつも怒っている彼女は新陽真冬。正義感が人一倍強く困っている人がいたら見逃せない優しい心の持ち主……のはずなのだけれど毎日毎日優雅君とは喧嘩をしている。
正直この2人の喧嘩を止めるのが1番疲れるので本当に仲良くして欲しい。
葵「さて、じゃあ私はそろそろ帰……」
朧「たのもーッ!!! 我が参りましたよ!」
私がそろそろ帰ろうと席を立とうとした瞬間、そんな声と共に扉が開けられ朧さんが生徒会室に入ってくる。
真冬「あら、しーちゃん遅かったわね。 なにか用事でもあったの?」
朧「えぇ、ちょっともう1つの部活の方に生徒会に入ったという連絡とその他諸々……まぁそんなことはどうでも良いのです。 ほら、真冬! 私のこの格好を見て何か言うことはないですか!?」
真冬「オカルト部に行ってたのね。 格好を見てと言われても……何そのコスプレ? 私知らないんだけど」
朧「えぇ!? 真冬知らないんですか!?」
いつもコスプレをしている言動のおかしい彼女は不知火朧。
生徒会に入って早3日だけど仕事はそつなくこなし、黙っていれば意外と礼儀の正しい子でもある。
……それに私よりも全国模試の順位が高い。
というか朧のあのコスプレって確か……幽遊白書? とかいう作品の……
優雅「それ幽遊白書の飛影のコスプレだろ?」
そう、それだ。
朧「おぉ! 優雅には分かりましたか! ふっ、前回の私のコスプレも当てましたし貴方は中々私と気が合うのかもしれませんね」
優雅「俺はただゲームとアニメが好きなだけだからお前と一緒にするな。 ……でも相変らず衣装の出来はすげぇよな。 飛影のコスプレだって身体の成長具合も相まってマジでそっくりだぜ」
真冬「そうね。 しーちゃんのコスプレ衣装の凄さには私も感心するわ。 今飛影ってのを調べてしーちゃんと見比べてみたけど……うん、体格も相まって本当にそっくりだわ」
朧「おい優雅、それ以上私の胸を見ながら私を愚弄するのであればその持ってるゲーム機のデータを全て消しますよ。 それに真冬、貴方もそれ以上私を愚弄するのであればその生意気にも育った乳をもぎますよ」
優雅「悪かったって、別に愚弄なんかしてないぞ? なぁ真冬」
真冬「えぇ、私はあくまで事実と率直な感想を伝えたまでで……痛ァッッッ!? ちょ、しーちゃん痛い! と、取れる! もげる!」
優雅「うぉっ!? ちょ、俺は別になんも失言してないだろ! と言うかマジでやるヤツがあるか! こ、こっち来んな!」
キレた朧は真冬さんの胸を全力で引きちぎろうと鷲掴みし引っ張り、真冬が痛みでダウンした後ゲーム機を庇うように逃げる優雅君を追いかける。
……朧さんが入部してからというもの優雅君と真冬さんだけじゃなく朧さんも喧嘩や問題事を巻き起こしている気がする。
優雅「はい、俺の勝ち〜! お前もまだまだ実力が足りないなぁ!」
朧「くっ! 私よりIQ低い癖に武力行使になると途端に強いのがムカつきます! それにか弱い女の子相手にカンフーなんて卑怯ですよ! 思いやりとかないんですか!」
優雅「お前こそ今日クラスで中二病の事バカにされたからって何の躊躇いもなく暴力振るうとか常識ないのか?」
朧「貴方という人は! はぁ……もういいです。 私は仕事をしなきゃいけないので離してください。 会長、今日のお仕事って……」
智幸「ん? あぁ、今日はもう仕事終わったぞ。 今日は金曜日だから実行委員が活動を開始する来週の月曜日からまた仕事だな」
朧「終わった!? ……なんの仕事もしないのに生徒会室来てよかったんでしょうか……」
優雅「今の所コスプレを見せつける為だけに生徒会室に来たみたいになってるな」
真冬「し、しーちゃん……ちょっと胸に手の跡ついてるんですけど.......」
優雅・朧「「お前は自業自得」」
真冬「うぇえ!? わ、私が悪いの!?」
そんな馬鹿げたやり取りを聞きながらそろそろ本当に帰らなきゃいけないので私は荷物をまとめ生徒会室からでる。
葵「それじゃあ私はこの辺で失礼します。 また明日」
智幸「おう、またな。 気をつけて帰れよ」
千夏「また明日です!」
私はまだまだみんなの事を知らない。
もっとみんなを知りたい。
そんな事を思いながら2人の声を背に受け私は帰路へと着いた。
葵「ただいま〜」
???「お帰りなさいませ葵様。 夕飯の準備は出来ていますよ」
葵「もう、様つけはやめてって言ってるでしょ紅莉」
紅莉「はいはい、せっかくメイドになりきってたのいうのに……」
葵「メイドの契約は1年前に切ったでしょ。 今更よそよそしい態度はよしてください」
紅莉「わかりましたって葵。 もう夕飯もお風呂も沸いてるからお好きにどうぞ」
私の帰りをメイド服を着て出迎えてくれた彼女は姫乃紅莉
私が中学生の時からメイドとして働いている言わば家族みたいな人だ。
しかし去年から既にメイドとしての契約は切れている。 だが私の親と紅莉との話し合いの結果、紅莉は私の家の家事や私の世話等をする、その代わり私達は住む所を提供という言わばお互いWin・Winの関係だ。
あと自慢では無いが我が家は結構お金持ちなほうなので、高校に入学した際に通いやすいようにと実家とは別にこの家を親から貰って紅莉を世話係として付けてもらった。 そして今に至るという訳だ。
まぁ昔から家族の様に暮らしてきた紅莉が実家からこっちの家に来ただけなので特にこれといった変化は無い。
紅莉「葵〜洗濯物ってこの学校ジャージ以外にある〜?」
葵「ないよ。 もう洗濯機回しちゃって大丈夫よ」
私がそう合図すると紅莉は洗濯機を回し『上に行ってるから何かあれば呼んで〜』と言って軽やかな足取りで2階へと上がって行った。
……今日の紅莉はどうやら機嫌が良いみたい。
葵「今日はオムライスか……ん?」
出来たてで置いてあるオムライスにはもう既にケチャップがかけられていて、よく見ると文字になっていてそこにはこう書かれていた。
『私の萌えキュンオムライス! 愛情代と手間賃として葵が大事に取ってあるへそくりを私の懐に』
そこまで読んで私は全速力で2階へとかけあがり、
葵「紅莉ぃぃぃぃぃ!!!!!」
紅莉「どうしたのそんなに大声出して。 いつもの冷静沈着なお嬢様オーラはどこにやったの?」
葵「うるさいわね! もう何年も一緒に暮らしてるんだから今更私の性格くらい分かってるでしょ! ほら、私のへそくり返して!」
許可なく私の部屋の布団でゴロゴロ寝てる紅莉に私は怒りながら紅莉の脇腹をくすぐる。
紅莉「あははははは!!! ちょ! 葵やめてって! くすぐったい!」
葵「なら早く返して。 そのへそくりは明日使うお金なの」
紅莉「はぁ……はぁ……全くくすぐるのはやめてよね。 あれは冗談だって。 私が人のお金とるわけないじゃん」
私がくすぐるのをやめ紅莉に正座をさせると紅莉は平然とそんな事を言ってくる。
紅莉「でもへそくりをいつまでも取っておくとイタズラしたくなっちゃうじゃん。 ほら、いつまでも使わずにいたら『可愛い子には旅させろって言うのねん!』って言ってカードとか捨てられちゃうでしょ?」
葵「それは桃鉄のボンビーでしょ!」
私がツッコミを入れると紅莉は『からかっただけだって、本当にとってないよ』と言って正座をやめて布団にまた寝っ転がる。
葵「はぁ、あなたならやりかねないと思ったのだけど……まぁそうね。 それにしてもよくケチャップであんな綺麗に文字かけるね」
紅莉「ふふん! 私の器用さを侮らないで欲しいね! 私は折り紙でフェニックスも作れちゃう位に器用なんだよ? それにしても明日へそくり使うって……どこか行くの?」
葵「えぇ。 明日は生徒会2年生で装飾に使う材料を買いにでかけるの。 帰りにご飯でも食べて帰るって言ってたからそのお金はそれに使うの」
紅莉の言ってた折り紙のフェニックスが気になるが気にせず私がそう言うと紅莉は驚きの声を上げて、
紅莉「人との関わりは必要最低限な葵がお出かけなんて……珍しい事もあるもんだねぇ。 なぁに? 気になる子でも出来た?」
葵「はぁ…何を言ってるの……そんなわけないでしょ? 私恋愛とかよく分からないし」
すると紅莉はやれやれと言った様子でため息を吐き、
紅莉「はぁ……まぁ葵にもきっといつか分かる日が来るよ。 葵にもずっと傍にいたいと思える位好きな人と出会えるといいね」
紅莉がいい事を言った感じをかもし出しながら『それじゃあ寝るね』と言って私の部屋から出ていく。
葵「……いや、偉そうな事言ってるけど紅莉も彼氏いないでしょ」
紅莉「う、うるさいよ! 出会いがないから仕方ないでしょ!」
翌日、10分前に集合場所に着いた私だったが…
智幸「お、沢村じゃないか。 随分と早いな」
千夏「本当ですね! もう集まっちゃいましたよ」
既に会長と藤井さんがもう集まっていた。
うん、まぁそれはいいのだが気になるのは……
真冬「良かったんですか? 私達もついてきてしまって?」
朧「真冬、こういう時は大人しく先輩の言葉に甘えるべきですよ。 という事で帰りのご飯は寿司でお願いします」
葵「何でここに真冬さんと朧さんが?」
何故か1年生の真冬さんと朧さんがいた。
朧「実は1年生で買い物にでも行こうかという話になりましてその辺をぶらぶらと……」
朧がそこまで言うと藤井さんが『いいよ、あとは私が説明しておくから!』と言って私をニコニコしながら見つめ、
千夏「詳しい事は私が説明しますよ! 実はまだ時間があると思ってその辺をブラブラしてた時にたまたまこの2人と会いましてですね、これもまた運命ってことで一緒に来ますか? と誘ったら行きたいって言ってくれたので混ぜる事にしたんですよ!」
智幸「急にですまないな沢村。 問題なかったか?」
葵「え? あ、あぁそれは全然大丈夫ですよ。 それは大丈夫何ですが……」
私が気になっているのはそこでは無い。
気になってるのは……
葵「えと……優雅君は?」
真冬「誰? その人」
葵・智幸・千夏「「「……」」」
真冬の辛辣な言葉に対し朧がおずおずと、
朧「私は誘おうと思ったんですが……真冬がこの調子なもので声もかけられておらずですね……ねぇ真冬、そこまであの人を嫌わなくてもいいんじゃないですか?」
真冬「しーちゃんのお願いであってもそれは無理ね。アイツとはとことん気が合わないから何があっても嫌よ」
智幸「そこまで嫌ってやらなくてもいいと思うんだがな……あいつ根はいい奴だし」
真冬「アイツのどこがいいのよ。 いっつも違反ばっかりで毎度毎度アイツの代わりに後処理や謝罪をしてる私の気にもなって欲しいわ」
葵「はいはい、それ以上はやめましょう。 せっかくのお出かけなんですから気楽に行きましょう」
智幸「あぁ、沢村の言う通りだな。 それじゃあ行こうか」
会長はそう言うと先導して目的の店へと向かった。
……何だか可哀想だし優雅君にお土産でも買ってってあげようかな。
その後、私と藤井さんをナンパしてきたチャラ男3人グループに会長がブチ切れたのと、朧さんが買い物した時に貰ったくじ引き券でトイレットペーパーとたわしを3個ずつ貰って逆ギレしたのを止めた以外は何事もなく買い物が進み、晩御飯を食べに行こうという話になったのだが……
朧「やっぱり寿司ですよ。 これに関しては絶対引きません」
千夏「いいえ肉です! 私いいお店知ってるんですよ!」
智幸「おいおい、どっちでも良くないか? どっちだろうと美味けりゃ構わ……」
朧・千夏「「どっちでも良くない!」」
智幸「うぉっ! ちょ、悪かったって。 そんな怒んなよ」
寿司と肉どっちがいいかでもめていた。
真冬「葵さんすみません。 しーちゃんはこういう時意固地になって絶対引き下がらないんですよ」
葵「そうですよね……よし、私に任せて下さい」
真冬からのセリフを聞いた後私は二人の間に割って入り、
葵「はいはい、2人ともそこまで。 一々こんな事で喧嘩しないの」
朧「こんな事ではありま……」
私の言葉に異論を唱える朧さんの口元に指を添え静かにさせ、
葵「私……いいお店知ってるんですよ」
葵「これ2つとあとは……この最上級コースでお願い致します」
「かしこまりました。 そちらのコースはお時間が少々かかりますが問題なかったですか?」
葵「えぇ大丈夫。 それで頼みます」
「承知致しました葵様」
私が注文を終えるとシェフは一礼をして調理場へと戻っていく。
朧「……えと、葵先輩。 その……」
先程からソワソワしている朧さんが何か言いたげな様子で私を見つめてくる。
葵「どうしました朧さん? 何かありましたか?」
私が朧さんにそう聞くと隣に座っていた藤井さんが慌てた様子で口を開き、
千夏「言いたいことだらけですよ! 何ですかこのレストラン!? 絶対私達みたいな素人が来ていいようなレストランではないですよね!?」
朧「同じくです! 間違いなくここってお金持ちや貴族とかが来るようなレストランですよね!?」
2人は慌てた様子で私にそんな事を……
真冬「ここはつい昨年オープンしたばかりの五つ星レストランね。 常に予約でうまっていて食べる為には何ヶ月も前から予約しないと来れないたところね」
朧・千夏「「えぇぇ!?」」
智幸「俺もココはテレビで見たことがあるな。 確か大手企業の『リバーヴィレッジグループ』の運営するホテルに入ってるレストランだよな?」
葵「えぇ、その通りです」
そう、ここは私の父が務めているリバーヴィレッジグループの運営するホテルのレストランだ。
1年前に営業開始したばかりだが世界から様々な凄腕の料理人を集め、その国特有の料理を提供する斬新なレストランだ。
その斬新さと料理の質を高く評価され今尚予約しなければ食べに来れない有名なレストランとなっている。
朧「えと……その私こんな所来ると思っていなくてあまり持ち金が……」
葵「それに関しては気にしなくていいわ。 会計は皆の分全て私が受け持ちますから」
千夏「いえ、流石にそれは悪いですよ。 私はお金もってますし……」
葵「大丈夫ですよ藤井さん。 それにここはこれだけの人数で普通に払うと数十万はかかりますし」
千夏「数十万!?!?!?」
智幸「本当に大丈夫なのか沢村? 俺達も多少なりとも払えるぞ?」
葵「大丈夫ですよ。 実は私ここのオーナーと仲が良くてですね。 普通だと予約が必要なのに急に押しかけても対応してくれたのはそのおかげなんです」
智幸「そうか……じゃあお言葉に甘えるとするかな」
真冬「でも流石に何もしないという訳にも…」
真冬さんがそう言って少し申し訳なさそうに…
葵「……わかりました。 ではこうしましょう。 私、皆さんの事をもっと知りたいと思っていたんです。 だから代わりと言ってはなんですが皆さんの色んなお話を聞かせて貰えませんか?」
私がそうお願いするとみんなは『その程度の事ならいくらでも!』と言ってくれた。
というかみんなもあまり皆でこう団欒する事は無いので結構乗り気のようだ。
葵「じゃあずっと気になっていたのですが……真冬さんはどうしてそんなに優雅君の事が嫌いなんですか?」
私は1番気になっていた大本命の質問を早速真冬さんにした。
真冬さんと優雅君は生徒会に入ってからずっと仲が悪い。 だけど私達はその理由を知らない。
朧「私も気になりますね。 教えてください真冬!」
真冬「そんなことでいいのなら全然教えてあげるわ。 優雅は入学した当初は全く違反をするような人じゃなかったのに何故か入学してから1ヶ月経った位からしょっちゅう校則や規則を破っていていっつも私に注意されていてね。 アイツが何かやらかす度に私は代わりに先生や生徒に頭を下げて謝罪をしに回って……なのに当の本人は申し訳なさそうな顔1つもなしに私に失礼な事ばっかり。 だから大っっっ嫌いなのよ」
意外な理由だった。 まさか優雅君がそんな性格だったとは……でもあの面倒臭がりな優雅君が本当に面倒事を増やすような真似をするのだろうか?
智幸「…………」
朧「なんだか意外ですね。 優雅ってそんな人だったんですか?」
真冬「そうよ! しかも私入学当初はイジメにあってたのにそんな面倒臭い時期にあいつは問題事ばっかり持ってきて……本当にろくでもない男よ」
朧「え? ちょっと待って下さい! 真冬イジメにあってたんですか!?」
真冬「えぇ……まぁ対した事は無いわ。 私が校則や規則に厳しいのが気に食わなかった人達がちょっと意地悪してきた程度よ。 ……でも不思議な事に面倒くさいグループだって聞いてたのにすぐにイジメはなくなったのよね……何でだったんだろう?」
イジメ……基本的に私は校内でイジメやネットトラブル等がないように先生と協力し大事になる前に処理している。
だけど真冬がイジメられていたという情報は初めて聞いた。
葵「……ごめんなさい。 そんな事知らなくて、嫌な事聞いてしまったわね」
真冬「あぁ大丈夫ですよ! そんな気にしてないから」
智幸「優雅…………」
会長が先程から俯きぶつぶつ言っているが、私はこの重い空気を変えるため話題を……
葵「そ、そうだ! じゃあ逆にどんな人が真冬さんは好きなんですか!」
真冬「ど、どんな人が…好き?」
明るい話題をと思って恋バナが思いついてしまったが……あまりにも露骨過ぎただろうか?
葵「ご、ごめんなさい! 嫌であれば全然言わなくても!」
真冬「まず口が悪くなくて私の内面を見てくれるような人で……あとは優しくて顔がいい人がいいわね」
朧「随分と絞りますね……そんな優良物件なんてそうそうありませんよ?」
千夏「まぁいいじゃないですか! 夢を抱くのは大事ですよ?」
真冬「夢は大きくって言うじゃない? それにほら、私ってまぁまぁ美人だし!」
千夏「それを言うなら私だって負けてませんよ!」
……どうやら意外と恋バナは良かったらしい。 会長を除く女子は全員ノリノリで話している。
真冬「でも私の内面を見てくれるって言うのは絶対条件ね。 他の条件も大事だけどね」
朧「他の条件と言っても真冬の条件のほとんどは優雅の性格の逆じゃないですか」
真冬「あ、気づいちゃった? まぁ私は優雅みたいなやつじゃなければ別にそこまでこだわりはないのだけどね」
千夏「私はやっぱり頼れる人がいいですね! 頼りない人じゃやっぱり不安になっちゃいますしね!」
朧「私は特に……まぁ強いて言えば私と趣味趣向が合う人がいいですね」
朧が話終えると何故か3人は私を見つめ……
葵「……な、なんですか?」
千夏「やっぱり聞いたからには葵ちゃんも教えてもらわないとさ! ほら、葵ちゃんはどんな人が好きなの?」
葵「えぇ!? い、いや私は特にないと言いますか……」
朧「往生際が悪いですよ葵先輩! さぁ白状するのです!」
千夏「朧ちゃんの言う通り! ほら、会長も気になりますよね?」
葵「いや、会長はそういうのに興味はないと……」
智幸「あぁ、かなり結構とても気になるな!」
葵「えぇ!?」
いつもはこういう事に興味がなさそうな会長なのに何故か今日は食い気味にそんな事を……
葵「わ、分かりました。 そう、ですね……」
そんな事考えた事もなかったな。 色んな人に告白はされるけどあまり恋愛に興味は無いからどんな人がいいとも考えたことがない。
せめて言うなら……
葵「やっぱり何事にも全力で取り組める人ですかね……?」
千夏「なんで疑問形なんですか。 もしかして本当にないんですか?」
葵「え、えぇ。 本当に考えた事すらなくて…」
朧「ほう、これがモテる女ですか。 私とは住む世界が違いますね」
真冬「そうね。 まぁでも焦る必要はないと思います。 きっといつか分かる日が来ると思います」
真冬さんは普段あまり見せないような柔らかな笑顔で私にそう言ってくれた。
『まぁ葵にもきっといつか分かる日が来るよ。 葵にもずっと傍にいたいと思える位好きな人と出会えるといいね』
昨日紅莉にもそう似たようなことを言われた。
葵「……わ、私は……」
「お待たせ致しました。 こちらが料理の方になります」
千夏「うわぁ! めっちゃ美味しそう! え、これは何!?」
「そちらは広東麺と棒棒鶏でございます」
千夏「かんとん…ばんばん? まぁ美味しそうだからなんでもいいか! 食べよ!」
朧「そうですね。 私もお腹ぺこぺこなのでいただきますね」
葵「……えぇ、皆さん冷めないうちに召し上がって下さい」
料理が届き、各々が料理を食べ始めたので私も考え事はやめ、届いた料理を食べる事にした。
智幸「……」
千夏「美味しかったー! 今まで食べてきた料理の中でいっちばん美味しかったよ!」
朧「そうですね。 また行きたいと言いたいところですが今予約しても半年後というのは恐ろしいですね……」
真冬「今日がおかしいだけよ。 本当にありがとうございます葵先輩!」
智幸「あぁ、ご馳走様だ沢村」
葵「えぇ、みんなに喜んでもらえてよかったわ」
料理をたらふく食べ終えた私達は日が沈みすっかり暗くなってしまったので早々に帰る事にした。
千夏「それにしても今日は楽しかったね! みんなの事もっとしれた気がするよ」
朧「そうですね。 私は中学の頃から真冬と一緒にいたので知ったつもりでいましたが……また更に真冬の事を知れた気がします」
千夏「そうですね。 真冬ちゃんが意外と恋愛に興味ある事が知れてよかったです! いっつも冷めた感じだからそういうの興味無いのかと思ってましたよ」
真冬「あら、そうだったの? 私こう見えて恋バナは好きよ。なんだったら好きな人もいるわよ」
千夏・朧「「えぇ!? そうなの!?」」
意外な真冬の言葉に朧と千夏は驚きの声をあげる。
千夏「誰なんですか!? 教えてくださいよ〜!」
私も真冬は色恋沙汰に興味が無いと思っていたので正直気になる。
真冬「まぁ好きな人って言っても誰なのかは分からないんだけどね……」
朧「誰なのか……分からない…? どういう事ですか?」
朧がそう質問すると真冬はスマホケースから小さいメモ用紙のような物を取り出し私達に見せつける。
そこにはこう書かれていた。
『悪い時が過ぎれば必ず良い時が来る。 いつも前向きな君は下じゃなく前を向くべきだ。 そうすれば明日はいい日になる』
千夏「なんですか……これ? メッセージカード?」
真冬「コレは私が入学当初、イジメをうけてた時に放課後私の机の上にこのネックレスと一緒に置いてあったんです」
すると真冬は首にかけ、胸元へ隠していたネックレスを取りみんなに見せる。
真冬「名前も書いていないので誰がくれたのかは分かりませんが……辛かった私に気が付き励ましてくれて、私の内面を見てくれて、さりげない気遣いのできるこの人が好きなんですよ」
智幸「……」
葵「なるほど……そのネックレスはその人からの贈り物ってことですね」
千夏「ロマンティックじゃないですか! えぇ〜誰なんでしょうか〜」
朧「何も情報がないんじゃ探しようもありませんしね……おっと、私はこっちなのでこれで失礼します」
千夏「え? あ、私もそっちだ! 朧ちゃん帰り道同じなんだね!」
真冬「私もしーちゃんと同じ方向なのでそっちね」
葵「じゃあここでお別れね。 じゃあまた学校で」
智幸「気をつけて帰れよ」
千夏「じゃ、また学校で!」
話しながら歩いていたらどうやら3人は同じ方向で帰るらしいので別れを告げて手を振る。
……どうしよう。 会長と二人きりになってしまった。
何か話題……会長ってどんなこと話すんだろうか……?
智幸「……なぁ沢村。 お前は今日楽しかったか?」
葵「えっ?」
私が悶々と話題を考えていると会長がふとそんな事を聞いてきた。
葵「何でそんな事を?」
智幸「いや、沢村は昔からあまり笑顔を見せてくれないからさ。 俺はまだ沢村の事を全然知れていないからよく分からなくてな。 だが今日は沢村が笑顔でいてくれたから……」
会長はそこまで言うと急に黙り込む。
なんだか今日の会長は少し変だった。 全然会話に参加してこないしずっと悩んだ様子でいたし……
葵「何か悩み事でもあるんですか? なんだか
らしくないですよ?」
智幸「はは…やっぱり沢村には分かるか。 まぁ少し考え事をな」
葵「当たり前ですよ。 1年の付き合いですから一応会長の事はまぁまぁ分かってるつもりですよ」
智幸「まぁまぁ…か。 ははっ、そうかもな。 それじゃあ俺も……」
すると会長は突如歩く足を止め、私を見つめると……
智幸「沢村。 お前も何か悩み事があるんだろ?」
葵「……えっ?」
智幸「レストランで話をしてた辺りから何か悩んでいただろ? 沢村とは1年の付き合いだ、気がつくさ」
葵「……私のセリフ取られちゃいましたね。 会長にはバレてましたか」
私の悩み事……今に始まった事じゃない。
葵「……私昔からの癖でどんな人とも深い友好関係を築いたことがなくて…今日だってみんなに楽しんでもらえたのか、私が何かみんなを不愉快にするようなことをしないようにするのに精一杯でした。 だから告白をされたり色々な人や友達と話をしたりしてても私はその人の本当の友達になれてないんじゃないかって不安になるんです」
私は家のルールが厳しく友達を家に招き入れて遊んだり遊びに出かけたりした経験が少ない。
だからこそみんなと一緒にいると私は普通でいられているのか、対等な関係を築けているのかが不安になる。
葵「でも……生徒会のみんなといる時間は心地良いんです。 大変な事もありますけどいつもとは違う自分になれるというか……」
私がそう語っていると会長は私の肩に手を置き、
智幸「そんなに悩む必要は無いと思うぞ。 みんなそんなに深く考えちゃいないんだよ。 皆で笑って皆で遊んで……それって立派な本当の友達なんじゃないか? それに友達なんて気がついたらいるもんだろ? 『友達になってください!』って言う方が変ってもんだ」
葵「会長……」
智幸「それにあれだけ荒れて先生や生徒誰も関わってくれなかったような俺を沢村が変えてくれた。 少なくとも俺はずっと味方……いや、友達でいるさ」
葵「…………」
智幸「……えと、なんか偉そうに語って悪かったな! その……大丈夫?」
葵「……はい。 色々とありがとうございました。 では私はもう家がそこなので失礼します」
智幸「え? あ、ちょ! き、気をつけてな!」
私は慌てた様子の会長の声を聞きながらも早足で家へと帰った。
葵「た、ただいま」
紅莉「おかりー。 ……ん? どしたの葵? 何か悩み事?」
私の顔をまじまじと見つめ紅莉がそう問いかけてくる。
葵「……私ってそんなに顔に出やすいかな?」
紅莉「え、今更気がついたの? 葵は昔から隠し事が苦手でしょ? 自覚なかったの?」
そうだったのか……
葵「……と、とにかく私お風呂入ってくるね! 荷物運んどいて!」
紅莉「うん、ごゆっくり〜。 ……あんな慌ててどうしたんだろ?」
紅莉に荷物を渡し、私は髪と身体を洗い終えると浴槽へと深く漬かり、
葵「……私ってそんなに顔に出やすいのかな」
『少なくとも俺はずっと味方……いや、友達でいるさ』
葵「……なんだろう? この気持ち……」
今日の活動記録 学校が休みの為無し
買い出し出席者 智幸、葵、千夏、真冬、朧
プルルルルッ
誰もいない部屋で電話の音だけが響く。
智幸「……もしもし、俺だ。 実はお前のあの件が今日話しに出てきてな。 ……なぁ、本当に真冬に本当の事を話さないのか?」
???『……本当の事は話さない。 知らない方が幸せな事だってあるんだ。 この秘密は死守で頼む』
智幸「そうか……まぁお前がそう言うならそうするが……良いのか? お前は今後もずっと真冬に避け続けられるんだぞ? 俺は本当の事を話した方がいいと思うんだが……はぁ、わかったわかった。 この件については黙秘するよ。 それじゃあ」
プツッ
智幸「本当に……それでいいのか……?」
明日の予定→第6話 藤井千夏は恋愛したい!