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第3話: 生徒会風紀委員長の秘密

第3話: 生徒会風紀委員長の秘密


???「ちょっとそこの子! スカートが短いわよ!」

「え? いや、そうなことないと思うのだけど……」

???「いえ、1cmほど短いですよ! ちゃんとシワを伸ばしなさい!」

「えぇ……そんな無茶ぶり困るよ……」

???「あっ、そこの男子2人組! 第2ボタンはあけないの!」

「へーへー、朝っぱらからうるせぇな……ってお前は!」

「げ、真冬じゃねぇか! 逃げるぞお前ら!」

???「あっ! ちょっとそこの男子! はぁ……全くこれだから男子は」

優雅「……」

第45期生徒会執行部第5のメンバー新陽真冬(しらかげまふゆ)

誰よりも責任感が強く規則や規律を重んじる彼女は生徒会執行部の風紀委員長として日々活動している。その性格ゆえ厳し過ぎて多数の生徒からは目の敵にされているが人一倍正義感が強い為様々な人を助け、感謝されている心優しき人物である。

そして……

「おい見ろよ、真冬さんだぜ!」

「はーっ、 今日もお美しい……」

「おい、あんまりジロジロ見るなって……気づかれたら何を言われるか」

真冬「ちょっとそこの男子3人! 何をジロジロ見ているの! 服装点検します!」

「ほら言わんこっちゃない……」

真冬「君はネクタイをしっかりつけなさい! 君はブレザーをちゃんと着なさい! 早くしないと減点するわよ!」

「わ、分かったって! 今ネクタイつけるから」

「ブレザー着ます! 怒っている姿もお美しい…」

「ま、待て! 俺は何も着崩してないぞ!」

真冬「何を変なこと言ってるのよ。 ほら! 君は! ……うん、君は大丈夫ね。 良い子だわ、そのまましっかりと励みなさい」

「あ、ありがとうございます……」

「それじゃあ私はこれで。 いい? くれぐれも風紀を乱さないようにね」

「は、はい! ……行っちゃったな」

「おいお前! 真冬さんに褒められるとかずるいぞ!」

「そうだそうだ! 注意されて罵られるのも良いけど褒められても見たい!」

「お前達ふたりと一緒にするな……でも、確かに綺麗な人だったな」

「当たり前だろ? この学校には真冬さんを信仰する秘密クラブなるものもあるらしいからな。 なんだったらわざわざ注意されて罵られる為に制服を着崩す奴もいるみたいだ」

「えぇ……」

この通り、風紀委員長新陽真冬は沢村葵にも負けない程の美貌を持ち合わせており、会話をする機会を増やす為わざわざ制服を着崩す者が現れる程天翔学園高校の人気少女なのである!

気が強く、規則規律を重んじる新陽真冬。 そんな彼女が最も危険視している人物こそが……

真冬「ちょっと優雅! 何平然と生徒会室にゲームを持ち込んでやっているの! 」

優雅「まぁ良いだろ? こんなデカいテレビもあるんだし放課後だし暇なんだし」

真冬「ペラペラと口だけは回るのね。 学校には不要な物は持ち込んじゃダメって言ってるでしょ! はい、おしまい」

すると真冬はコンセントに手をかけ勢いよく引き抜く。

優雅「うぁぁぁぁぁあッッッ!!!!! お、おおお、おまっ! せっかく今いい所だったのに! コンセントごと抜くのは無いだろうが!」

真冬「ふん、ルールを守らないあんたが悪いのよ。 これに懲りたらもう持ってこないって事ね」

優雅「はぁ…いい所だったのに……まぁ今時のゲームはオートセーブがあるからな。 痛くも痒くもないか。 もしオートセーブがなかったらお前を俺は末代まで許してなかったな」

真冬「なんであんたなんかに恨まれなきゃいけないのよ。 はぁ……全くあんたの相手は疲れるからしたくないってのに……会長はいつになったら来るのかしら……」

そう! 不真面目で怠惰を尽くす正に真冬の天敵とも言える副会長光月優雅である!


真冬「智幸会長。 今日で身だしなみ点検週間は終わりました。 ここに書いてある者が違反者です」

真冬はそう言って襟を正し綺麗に揃えられた資料を会長席へと置く。

智幸「お疲れ様だ真冬。 ……ふむ、今月は違反者が以前と比べて多いな」

真冬「すみません私がいながら……来月こそは違反者を減らせるように精進致します!」

優雅「それ以上はやめとけって。 お前の身だしなみ点検は厳し過ぎてちゃんとしてる人でも引っかかるんだよ」

真冬「あんただけには言われたくないわよ優雅。 私のやり方に口出ししないでくれないかしら」

優雅「へーへー。 はぁ、全く堅苦しくて嫌になっちゃうね」

真冬「……なんですって? 私が堅苦しいって言ったの? 私はルールに従っているだけでそんな事は……」

優雅「それが堅苦しいって言ってるんだよ。 今日だって見てたらスカートが1cm短いだのネクタイが少し曲がってるだのブレザーのボタンを閉めてないだの……もう少し頭柔らかくしたらどうだ? 相手にも理由や感情があるんだからさ。 やり方が別に悪いとは言わないがそういうのが敵を作ってくんだぞって言ってるんだよ」

真冬「……どうやらあんたとはじっくり話し合わなきゃダメそうね。 ちょっと来なさい、その舐め腐った態度直してあげる」

優雅「やだね。 一人でやってな」

智幸「お、おいお前ら……」

真冬・優雅「「……」」

ちょっと最悪の空気感なんですけど!?

2人は睨み合い、今にも喧嘩が始まりそうな…

千夏「は〜い! 2人共そこまで! 全く2人はいっつも喧嘩ばっかり! もう少し仲良くしなさい!」

今にも喧嘩が始まりそうだった空気を藤井が割って入って落ち着かせる。

ナイスだ藤井。

藤井「真冬ちゃんが毎日風紀を正そうと頑張ってるのは知ってるよ。 でも取り締まるにしても厳し過ぎると皆疲れちゃうからもうちょっと優しく取り締まっていこうね」

真冬「藤井先輩が言うなら分かりました。 ありがとうございます!」

優雅「それを俺がさっき言ってたんだが……」

藤井のお陰もあって何とか一段落し、場が和んでいると生徒会室の扉が開き沢村が入ってくる。

葵「みんなこんにちは。 ……お取り込み中でしたか?」

優雅「大したことじゃないですよ。 それより会長。 今日全員集合にしたのは一体なんの用で?」

智幸「あぁ、沢村も来た事だし始めるとしよう。 みんな、席に着いてくれ」

俺はそうみんなに言って席に着くのを促し、皆が席に着いたのを確認してから話を始める。

智幸「今日集まって貰ったのは一ヶ月後に控えた天翔学園祭の計画を立てる為だ。 原案とガイドブックに関しては優雅が作って先生方へ配布してくれたので問題ない。 なので今日は役割を決めてしまいたいと思っている」

沢村「今年の役割はどのくらいあるのですか?」

智幸「今年は大きくわけて3つになるな。 特に大変なのが『後夜祭部門』だ。 何にせよ今年は毎年恒例のキャンプファイヤーだけでなく花火もやるらしくてな」

沢村・千夏・真冬「「「花火!?」」」

花火というワードが意外だったのか優雅を除く3人が驚きの声を上げる。

千夏「花火って……ほんとうなんですか!?」

真冬「花火なんて異例中の異例じゃないですか!? 本当にできるんですか!?」

智幸「あぁ、確かにそう書いてあったぞ。 間違ってないよな優雅?」

2人に質問攻めされ少し不安になってきた俺は資料を作った本人である優雅に話を振る。

優雅「えぇ、合ってますよ。 毎年天翔学園祭は終わった後にアンケートを取ってるんですがそこでの花火をやりたいとの声が多かったらしかったので実行に動いたとのことです」

智幸「なるほど…だ、そうだ皆。 それで俺なりに役割を考えてみたんだが……まずメインである『天翔学園祭実行運営部門』は2人、そして今回仕事の多い『後夜祭部門』は3人…と言いたい所だが人数が足りないので2人、そして模擬店の管理やクラス発表の管理をする『実行委員部門』は1人だ。 何か異論や意見がある者はいるか?」

俺があらかた説明を終えみんなにそう問うが返事がないので先へと進む。

智幸「意見がないようなので進めるぞ。 この3つの部門でやりたいものがある人は挙手を頼む」

千夏「はいはい! 私最後の実行委員部門やりたいです!」

智幸「実行委員部門か。 他にやりたいものが居なければ良いが……いいか?」

優雅「いいっすよ。 俺は別になんでもいいですし」

真冬「私も異論ないわ。 藤井先輩なら何やっても大丈夫ですし」

沢村「同じくです」

智幸「じゃあ異論がないようなので藤井は実行委員部門を頼む。 して、あまりだが……」

千夏「会長と葵さんはリーダーですし実行運営部門でいいんじゃないですか?」

智幸「!?」

沢村「う〜ん……まぁそうですね。 私は去年の経験がありますしその方が良さそうですね」

智幸「!?!?!?」

そ、それはつまり沢村と2人きりでの共同作業って事か……!?

千夏「みんなも異論ないですよね?」

優雅「おう」

真冬「えぇ」

千夏「じゃあ決定ですね!」

ありがとう藤井! ナイスだ藤井! まさか藤井にこんな感謝する日が来るとは!

千夏「て事は最後の後夜祭部門は優雅君と真冬ちゃんの2人って事で大丈夫?」

優雅・真冬「「……あっ」」

2人は藤井の言葉にハッとした様子で、

優雅「ちょ、やっぱり待って下さい。 コイツと一緒に共同作業とか絶対捗らないですって」

真冬「こんな奴と一緒に共同作業なんて死んでもごめんだわ」

優雅「おい、死んでもごめんは言い過ぎだろ。 もう少し言葉選べよ」

真冬「何よ。 あんたこそ普段の口の悪さどうにかしたらどうなの?」

2人は再び言い争いを始め、また喧嘩を……

沢村「いい加減にしなさい2人共! 毎度会う度喧嘩ばっかりして、もう少し仲良くしたらどうなの?」

優雅・真冬「「だって……」」

沢村「だってじゃありません。 生徒会とし同じメンバーなんですから2人はもっと仲良くするべきです。 なので今回の後夜祭部門は2人やって下さい。 いいですか会長?」

智幸「え? あ、あぁ、異論ないぞ。 俺も沢村と同じ事を思ってたところだったしな」

優雅・真冬「「えぇ〜……」」

千夏「優雅君と真冬ちゃんの仲良し作戦ですね!」

流石は元会長の沢村だ。 沢村が言ってくれなかったらきっと今頃あの二人はまた取っ組み合いの喧嘩をしていただろう。

俺も沢村を見習わなければ……

智幸「さて、役割も決まったことだし早速仕事に移ろう。 俺と沢村は企画の内容を考え資料作成、藤井は実行委員を募集してくれ。 そして優雅と真冬は後夜祭で花火をあげる関係で近隣住民への告知、申請を頼む」

俺は全員にそう指示すると全員がコクリと頷き各々が仕事を始めた。


優雅「はい、それでは御理解と御協力をよろしくお願い致します。 それでは失礼します」

真冬「よし…コレで20件目。 あと3件の家を回れば終了ね。 というかあんた、意外とやれば出来るのね。 てっきり敬語も使えないアホなのかと」

優雅「お前は俺の事を猛獣か何かだと思ってんのか? あんま舐めた口きいてるとそのポニーテールの根元からチョン切ってやるからな」

真冬「ふん、やれるのならやってみなさいよ。 暴行罪で訴えるけどね」

優雅「はいはい、お前ってホント冗談のわからんやつだな」

真冬「何よ、悪い? あんたのくだらない冗談なんかに付き合ってられな……って、ちょっと! 無視しないでよ!」

さっきからピーピーうるさい真冬を他所に俺は次の家へと向かう。

ちなみになんで俺だけ挨拶してるのかと言うと真冬に『副会長なんだから挨拶くらいあんたがやりないよ』と言われた為である。

ただ回った家にチェック付けてるだけなのにこんだけデカい態度をとって舐めた口を聞けるのはもはや才能だと思う。

真冬「……ねぇ、そういえば生徒会に入った時から気になってたんだけどあんたなんで副会長なんかやってるの? あんたの性格上副会長なんて向いてないというか……やりたがらなそうなのに」

優雅「あぁ、会長が役員を決める日に俺休んでてな。 次の日来たらなんかなってたわ。 嫌だとは言ったんだけどもう決定事項だったらしくてな。 それでなんか成り行きでなんちゃって副会長になったって訳」

真冬「なんちゃって副会長って…ぷっ、あはははは! あんたにピッタリなあだ名ね!」

俺がわざわざ質問に答えてやったってのにバカにして味笑うとかつくづくコイツとは気が合わない事を実感する。

優雅「良くもまぁお前みたいな奴を信仰するファンクラブなんてあるもんだな。 そのファンクラブの奴らにお前の本性を見せてやりたいよ」

真冬「ファンクラブ……? あんた何を言ってるの?」

真冬はそう言ってすっとぼけた様な顔で俺に…

すっとぼけた…様な……

優雅「……お前、もしかして本当に何も知らないのか?」

真冬「だから何を言ってるのって聞いてるじゃない。 何なのそのファンクラブ?と言うやつは」

マジか、コイツ本当に知らないのか。

しかしどうしたものか……素直に話したらこいつの事だから間違いなく『そんなみだらなクラブ…私が取り締まってきます!』とか言って間違いなくファンクラブを潰しに行く。 そうなったら真冬にチクッた張本人として俺は間違いなくファンクラブの奴らに吊るされるだろう。

でも誤魔化すにも誤魔化せないし……

真冬「なんで黙ってるのよ。 そんな言いずらい事なの?」

まぁ……言ってもいいか。 なんとかなるか

優雅「いや、お前は知らないのかもしれないが実はお前を信仰している『真冬ファンクラブ』なるものが存在してだな……そのファンクラブにお前見たいなやつを愛してやまない異常者達がいっぱい居るんだよ」

俺は知ってる事を正直にはなし、真冬の顔色を伺ってみると、

真冬「……そ、そう、なの。 ふ、ふぅん……」

……あれ?

何だこの予想外の反応は

てっきり『知ってるだけの情報を吐け、さもなくば……』みたいな脅しが来るかと思ったんだが

真冬「ち、ちなみに聞くけどそのクラブって男子が多いのよね?」

優雅「え? 俺も詳しく知ってる訳じゃないからなんとも言えないけど多分そうなんじゃねぇの?」

真冬「ふぅん……へぇ……」

真冬は頬を赤らめモジモジと……

え、何コイツ、キモ。

いつものあの厳しさはどこに行ったんだ、ファンクラブの話をしてモジモジとか気持ち悪すぎるんだが。

優雅「なぁお前気持ち悪いぞ。 なんか…なんて言うかこう……気持ち悪いんだよ!」

真冬「気持ち悪い気持ち悪いって女子にそんな事言って失礼だと思わないの? コレでも一応年相応の女の子なのよ? まぁ優雅の口が悪いのは知ってるし、別にいいけどね。 ほら、行きましょう」

真冬は優しく俺にそう言うと先導して先へと進んで行く。

優雅「いや本当に待て、どうしたんだよお前!さっきまでの厳しいというかいつもの堅苦しさはどこに行ったんだよ!」

真冬「なぁに? 私はいつも通りでしょ? ほら、あと3件さっさと回りましょう」

すると真冬は機嫌よく走っていき、さっきまではしていなかったのに家の人への説明を始めている。

優雅「……なんか裏がありそうだな」


その後、目的の家への挨拶を終えた俺と真冬は天翔学園へ戻り、既に仕事の終わっていた会長達に仕事内容を報告し終えたのだが……

真冬「それでは私は用事あるので失礼します!」

智幸「あぁ、お疲れ様。 ……なぁ優雅、真冬と何かあったのか? 随分とご機嫌な様子だったが」

優雅「何もしてないですよ。 俺がアイツにした事と言えば嫌味を言うくらいで……」

沢村「それにしては随分とご機嫌な様子でしたね」

千夏「そうですね〜。 私も真冬ちゃんのあんなルンルンな所初めて見ましたよ」

やはりみんなも違和感を感じているようだ。

それもそのはずだ。 アイツが生徒会室にいる時の態度と言えば規律違反は取り締まり、必要以上の馴れ合いは不要と考え近寄り難い存在だ。

なのに何故かさっきから穏やかな雰囲気で俺にすら優しいという気持ち悪さを見せた。

……うーん、気にならないと言えば嘘になるが、

優雅「まぁ俺には関係ないし、帰るかな」

千夏「何が関係ないんですか?」

優雅「うぉっ! ちょっと急に出てこないでくださいよ!」

ソファから立ち上がろうとした所急に耳元で話しかけられて驚き振り返ると、ソファから頭だけを覗かせた藤井先輩がいた。

優雅「いや、真冬がなんか機嫌いい理由がきになるなーって思ったんすけど……まぁ関係ないし帰ろうかなと」

千夏「やっぱり優雅君もそう思ってましたか!実は私も気になっていましてある1つの説が思い浮かびましてね……」

優雅「へぇ……で、その説と言うのは?」

千夏「よくぞ聞いてくれました! 普段仲の悪い2人での共同作業…なのに帰ってきたら上機嫌で普段は冷たいのに優しい……コレはズバリ!」

優雅「ずばり?」

千夏「恋ですよ恋!!!!!」

優雅「はい、解散。」

千夏「えぇ!? ちょ、優雅君! 帰んないで下さい! 私真面目に考えたのに!」

訳の分からないことを言い出す藤井先輩に呆れ、帰ろうと出口へ歩くが止められる。

優雅「なんですか。 俺藤井先輩と違って恋愛脳では無いので巻き込まないでもらっていいですか?」

千夏「恋愛脳は関係ないですよ! 私は真面目に言っているんです! だってあんな可愛い顔した真冬ちゃん初めて見たんですもん! あれは恋してる顔ですよ!」

優雅「知りませんよそんなの。 てゆうかそれがもし本当だとしても誰に恋してるってんですか」

すると藤井先輩は何を聞いているんだという顔で俺を見つめ、

千夏「そんなの優雅君に決まってるでしょ!」

優雅「会長、葵先輩。 俺仕事終わったので帰りますね。 あと藤井先輩のかまちょが酷いので相手してあげてください」

千夏「ちょ!」

智幸「あぁお疲れ様……え? 藤井がかまちょ?」

葵「藤井さん……暇なのは分かりますがあまり後輩を困らせてはいけませんよ?」

千夏「えぇ!? いや、違います! コレは優雅君が嘘を……ってあれ!? もういない!!!」

智幸「優雅なら今走って帰ったぞ」

千夏「あぁもう! 私怒りましたからね優雅君! 待てぇぇぇぇぇ!!!!」

藤井は大声でそう叫びながら生徒会室から走って出ていった。

智幸「……藤井と優雅ってあんな仲良かったのか?」

葵「会長……あれは多分仲良いとは言わないですよ」


藤井「こら! 暴れないで下さい!」

優雅「離せ! クソっ、こんなの卑怯だ! 先輩が後輩にやる事じゃねぇ!」

藤井「うるさいですよ! 優雅君が悪いんです!よくも先輩に恥かかせてくれましたね……」

生徒会室からダッシュで玄関まで逃げた俺だったがこの悪徳先輩が靴を隠したせいで外へ出られず捕まってしまった。

優雅「藤井先輩のくだらない話を聞いてるほど俺は暇じゃないんすよ!」

千夏「あぁ! くだらないって言った! 私の全力の推理をくだらないって言った!」

優雅「だってそうでしょうが! なーにが『恋ですよ恋!』だよ! 俺と一緒に仕事して帰ってきただけなのにそんな訳の分からん噂立てないで欲しいんですけ……」

千夏「ッッッ! 優雅君! 静かに!」

優雅「むぐっ!」

俺が喋っていると突如慌てた様子で藤井先輩が俺の口をおさえ、物陰に連れて行かれる。

千夏「静かに! ほら、アソコ見て」

優雅「?……!」

真冬「ありがとうございました。 参考になりました」

藤井先輩に言われた方向を見てみると教室から出てきた真冬の姿が……

真冬「私のファンクラブとやらはこの奥の教室に……」

千夏「ふっふっふ……優雅君聞きましたか? これは丁度いい機会ですよ! 今出てきた真冬ちゃんを尾行して一体何をするのか調べましょう!」

そんな藤井先輩のセリフに俺は口を覆ってる手を引き剥がし、

優雅「だからやるなら一人でやってくださいよ。 俺はそんなくだらないことに付き合ってる暇は……」

千夏「それ以上文句を言うなら今まで見て見ぬふりしてた優雅君の校則違反を全部真冬ちゃんに……」

優雅「藤井先輩の頼みを断るわけないじゃんないですか! さぁ行きましょう! 真冬の秘密を暴きに!」

千夏「う、うん……私が脅しといて何だけど優雅君の手の平返しの速さは正直どうかと思うよ……ってちょっと! 私を置いてかないで下さいよ!」

俺が協力してあげるというのに失礼なことを言う藤井先輩を他所に俺は真冬の後を追った。


真冬「ここの曲がり角を左……」

千夏「あっ、優雅君! 真冬ちゃん行っちゃいますよ!」

優雅「藤井先輩静かに。 良いですか? 尾行等をして調査をする場合1番大事なのは本人に気づかれない事と周りに溶け込むことです。 平然を装い周りにも疑われずに目標を追い続けるんですよ」

千夏「な、なるほど……失礼かもだけど優雅君ってストーカーとかじゃないですよね?」

優雅「それ以上あらぬ疑いをかけるんだったら協力しませんよ。 全く、みんなは俺の事をなんだと思ってるんだか……」

千夏「真冬ちゃんはこの前『あんなやつチビのくせに態度のデカい低脳猿』って言ってたよ」

よし、あいつは後で殺す。

千夏「あっ! 真冬ちゃんが教室に入ってった! 優雅君!」

優雅「えぇ、行きましょうか」

真冬が教室に入ったのを確認し俺達はゆっくりとその教室へと近づく。

千夏「というかこの教室ってなんなんだろう? 私初めて見ましたよ」

優雅「俺も知らないっすよ。 どれどれ……『教材室β』って書いてますね」

千夏「こんな何にもなさそうな所で真冬ちゃんのファンクラブが……そこに突撃する真冬ちゃん……コレは波乱の予感!」

優雅「ちょっと藤井先輩。 すぐ目の前まで来てるんすから静かにしてくださいよ」

千夏「あぁ、ごめんなさい! ちょっと楽しくなってきちゃって……」

人をストーキングして秘密を知ろうとする事に快感を覚えている変態先輩はさておき俺は真冬の入っていった教材室βをこっそりと覗き見てみると、

真冬「誰もいないわね……? コレは『真冬様研究ノート』……? どれどれ……」

すると意味不明なタイトルのノートを真冬はペラペラとめくり読み始める。

……もう嫌な予感しかしないので帰りたいのだが、

真冬「ふむふむ……『本日の真冬様は普段よりも凛々しくお美しい。 きっと何かいい事でもあったのでしょう。 そんな真冬様と間近で話しをしたいため今日も校則を破る。』……次は、『昨日真冬様に怒られてしまい反省文を書かされてしまいましたがそれでも諦めるなんてとんでもない。 今日も真冬様とお近ずきになる為校則を破りいつの日か真冬様の眷属へ……!』何よこれ……」

校則を意図的に破って真冬に近づこうとするやからがいるのは知っていたが……まさかここまで狂信者みたいな変態だったとは。

千夏「優雅君今の聞いた!? 真冬ちゃんすっごいモテモテだね!」

優雅「藤井先輩……アレは正直喜んでいいようなタイプの輩では……」

真冬「……う」

と、俺がドン引きしながら藤井先輩に説明しようとしたところで何か真冬がポツリと呟く。

千夏「? なにか真冬ちゃんが喋ってるっぽいけど……聞こえます? 優雅君」

優雅「いえ……ちょっと聞き耳立てるので藤井先輩は後ろに……」

俺はそう言い教材室に耳を澄ませてみると……

真冬「……よう……どうしよう! わ、私恋愛なんて全然知らないのにまさかこんなにいい人達からモテモテだったなんて……! はぁ……告白……とかされちゃうのかな! 私未経験者なのに!」

優雅「…………」

俺はアイツの事を何も知らなかったらしい。

生真面目で…うるさくて…規則や規律に厳しくて…まともなやつだと、そんな奴だと思っていた。

だが違った。 アイツは色ボケた特殊性癖のツンデレ変態というこの世の意味不明な属性をモリモリにしたヤバいやつだ。

その異状性癖がましてや俺にバレたとでもなったら……殺されるだけでは済まないだろう。

……うん。 逃げよう。

優雅「藤井先輩…逃げましょう。 あいつはもう手遅れです」

千夏「え? て、手遅れ? 急にどうしたの優雅君?」

優雅「説明はあとです。 とにかく俺はここにはいなかったってことにしておいて下さい。 藤井先輩なら許してくれるとは思いますが俺だと間違いなく社会的に殺されます」

そう藤井先輩に言い残し、俺はクラウチングスタートの姿勢を……

千夏「ちょっと急に何ですか? クラウチングスタートのポーズなんかとって……ってえぇ!? ちょ、どこ行くの!?」

後ろから何か言っている声がするが俺は構わず全力ダッシュで玄関へと……!

真冬「藤井…先輩……!? い、いつからここに!?」

千夏「!? ま、真冬ちゃん!? い、いやさっき優…ひ、1人でちょっとここらに散歩に……」

真冬「え、えと……私はちょっとココに私のファンクラブなる物があると聞いて取り締まろうと……み、見てないですよね!?」

千夏「え!? み、見てないですよ! 今ちょうど来た所で……」

真冬「そ、そうですか! それなら良いんです。 さ、さぁ! 帰りましょうか藤井先輩!」

千夏「そ、そうですね! か、帰りましょう!」

そうして2人はドギマギしながらも帰路へと着くのであった……

千夏「優雅君……今度問いたださなきゃ」

真冬「? 何か言いましたか藤井先輩?」

千夏「いえ! 何も!」



優雅「早く帰ってゲームしよう…今日は何も見てない…何も知らない…落ち着け俺、あんな悪の化身である真冬にビビるな……!」

俺はと言うと無我夢中に走り、何も考えないよう家へと帰った。

???「おや……あの子って生徒会の……。 悪の化身……ですか! ふ、ふふ……そろそろ我の出番ということでしょうかね!」


今日の活動記録 担当:会長 遊木智幸

出席者 智幸、葵、優雅、千夏、真冬

・天翔学園祭について

・後夜祭、実行委員、企画の進行

・沢村との初共同作業! 優雅と真冬の仲良し作戦!

重要:生徒会では皆仲良く!


明日の予定→第4話 中二病でも生徒会がしたい!

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