表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

第2話: 副会長光月優雅は青春したい!

第2話: 副会長光月優雅は青春したい!


「ねぇねぇター君、見てこれ! 可愛い服でしょ〜」

「そうだな……って、なんだよその写真! まさか俺以外の男と遊びに出かけた服じゃないだろうな」

優雅「…………」

「そんなわけないでしょ! この服は……ター君とデートする為の服に決まってるじゃ〜ん!」

「だよな〜♡ 知ってたぜ!」

優雅「…………………クソがァ……」


第45期生徒会執行部、第4のメンバー副会長兼会計光月優雅(みつきゆうが)

コンピュータを扱う仕事は生徒会随一の技術力、発想豊かでクリエイティブな彼は生徒会内でもアイデアマンとして活躍する必要不可欠な存在である。

その圧倒的技術力から異例の副会長と会計の2つの役職を掛け持ちしている。 更に彼は入学して半年しか経っていないにも関わらずその才能を沢村葵に見抜かれ様々な仕事を片付けてきたまさにブラックホース。 そんな彼が今……!

優雅「会長……俺、学校をやめようと思います」

退学しようてしていた!

智幸「ふむ、退学か…退学……退学!?」

優雅「はい。 短い間でしたけどお世話になりました。 ありがとうございました」

優雅はそう言い残すと重い足取りで出口へと…

智幸「ちょぉぉっと待て優雅! お前がいなくなったらマジで生徒会終わるから! 何か理由があるなら話してくれ! な!? ほら、この通りだ!」

俺は誠心誠意気持ちを伝えるため土下座をする

優雅「ちょ、会長! 廊下で土下座とかやめてくださいよ! この絵面だと俺がいじめてるみたいになるじゃないですか! 早く顔上げてくださいよ! あぁもう……こんな所誰かに見られ…た……ら……」

優雅が急に静かになったので気になって顔を上げてみるとそこには……

千夏「あ、あわわわ……優雅君が会長を…いじめて……! つ、伝えなきゃ……広めなきゃ……」

優雅「ちょ、ちょっと待って下さい藤井先輩! これには理由が!」

優雅は走って逃げる藤井を捕まえると『とりあえず生徒会室まで行きましょう。 コレを大人数に見られたらマズイっすよ』といい俺と藤井を連れ生徒会室へと向かった。


智幸「で、何で学校をやめようと思ったんだ? ……もしかしていじめとかか? それなら俺達が全力で対応を……」

生徒会室に連れてこられた俺らは早速理由を優雅に聞くことにしていた。

優雅「いや、違うんです。 そんな大した理由じゃないんですよ。 ちょっと嫌になったというか……なんかちょっと萎えたと言うか……」

優雅はそういうと深刻な様子で顔を俯かせる。

……こんな顔の優雅を見るのは初めてだ。

もしかしたら事態は俺達が思っているよりも深刻なのかもしれない。

それに優雅がこんなになるまで気が付かなかった俺も俺だ。 大切なメンバーが苦しんでいるのに気が付けないとは俺も会長として実力が足りない。

智幸「なぁ優雅。 もし差し支えなければ話してくれないか? その方がお前も楽になると思うんだが」

千夏「そうですよ優雅君! 1人で悩んでいるよりもその悩みをぶちまけてしまった方が楽に決まってますよ!」

優雅「そう…かもしれませんね。じゃあ話します。 実はこう思っていたんですよ……」

そこまで言いかけると優雅は俺と藤井の顔を見て死んだ魚のような目でこう……

優雅「部活動って、クソだと思うんですよ」

千夏・智幸「「……はい?」」

優雅「だから部活動ってクソだと思うんですよ」

智幸「そ、そんな事は……」

優雅「いや、本気でやる分には良いんですよ? 何かに本気になれるって本当素晴らしい事だと思いますし、それは僕もいいと思います」

千夏「じゃあ一体何がクソなんですか?」

俺も言おうと思ったことを藤井は優雅に聞くと、優雅は更に険悪な顔をして、

優雅「言ってるじゃないですか。『本気』でやってる分にはいいって。 でも部活をやっている奴ら…それも体育会系の大半は『いや、俺達本気だぜ?』って顔してるだけのただの仲良しクラブじゃないッスか」

智幸「……別に仲がいいのはいい事じゃないか」

俺がそう言うと優雅は更に声を大にして、

優雅「重要なのはそこじゃありません! ムカつくのは本気でやってるアピールですよ。 うちの学校は体育会系の部活入ってるってだけでモテるからとりあえず入っとくみたいなゴミみたいな連中の集まりなんすよ」

そこまで言い切ると優雅は立ち上がり壁に頭を打ち付け、

優雅「はーーーっ、マジで、全員死なねぇかな…」

智幸「いや、しょーもねぇ悩みじゃねぇか!」

優雅「しょーもない……?」

すると先程まで真面目に聞いていた藤井も不満をあらわに立ち上がり、

千夏「会長の言う通りですよ! 私は優雅君の死にそうな顔を見ててっきりいじめにでもあってるのかと思ってたのに! 蓋を開けてみればただただモテてる人が羨ましくて妬んでる人じゃないですか!」

智幸「藤井書記の言う通りだ。 俺も何か言いづらい様な深刻な事情があるのかと思ってたのに、今のは優雅副会長の青春妬みタイムじゃねぇか! そんな理由で退学を考えるとかどんだけメンタル雑魚なんだよ!」

優雅「2人は分かってないんですよ! 俺の気持ちが……!」

そこまで言うと優雅は淡々と昔の事を語るように喋り始める。

優雅「これはつい昨日の出来事なんですが…」


優雅「……さて、さっさと帰るとするかな」

「ねぇカイリ君! 今日暇でしょ? 久しぶりに遊びに行こーよ!」

優雅『ちっ……またリア充が……』

「あ、悪ぃな。 今日バドの練習入っちゃってさ……」

「えー! 一昨日もそう言って遊べなかったじゃん! 私よりもそんなに部活が大事なの!?」

ふん、漫画やアニメ恒例の私と仕事どっちが大事なの!? 質問だな。 全くくだらない。 俺はさっさと帰ってゲームを……

「もちろんお前が大事だぜ。 だけどよ俺……今、バドミントンに命かけてっから……全国大会目指してんだ」

「カイリ君……! わかった! 私、試合応援しに行くね!」

「本当か? ありがとな! これで俺も更に頑張れるぜ」

優雅「…………」


優雅「くぅっ……ふぐぅっ……ッッッ!!!!!」

千夏・智幸「「いや、今泣く所あった!?」」

俺らがつっこむと優雅は涙を拭いながら、

優雅「ぐっ…恋人がいるのは良いです。 今更なんの感情も湧きません……」

そこまで言うと優雅は声を荒らげて大声で、

優雅「でも彼女いるならデート行けよ! 何バドミントンの試合選んでんだよ!!!」

優雅「大事な彼女がいてデートに誘われてるのにぃ!? 彼女よりバドミントン選ぶってなんだよォォォォッッッ!!!!! しかも2人共それで納得してるし!!!!!」

優雅「俺には何もないのに……」

千夏・智幸「「……」」

まさかここまで優雅の青春拗らせが悪化していたとは……何とかせねば。

智幸「ほ、ほら! お前パソコンとかゲーム得意じゃん!」

優雅「ゲーオタは皆それ言われてますよ」

智幸「そ、そうなのか……? 俺はそういうの得意じゃないからなんとも言えないが……」

千夏「だったら優雅君も何か他の部活に入ってみたらどうですか?」

優雅「生徒会と両立出来ますかね……」

千夏「大丈夫ですよ! 現に私と葵さんは出来てますし!」

優雅「葵先輩がやってるのは知ってましたけど藤井先輩もやってたんですか…ちなみに藤井先輩は何やってるんですか?」

優雅がそう聞くと藤井はそのセリフを待ってましたと言わんばかりの顔をし、

千夏「私はゲーム部のe-スポーツ科と研究科2つに所属してるんですよ! 優雅君もゲームが好きなら入ってみたらどうです?」

優雅「ゲーム部のe-スポーツ科…? ゲーム部には色々種類があるんですか?」

千夏「はい! ゲーム部にはゲームを研究し新しいゲームを作ったり開発を行うのが研究科、e-スポーツの大会を目指し日々鍛錬を積み続けるe-スポーツ科の二つがあるんですよ! 優雅君であればe-スポーツ科の方がいいんじゃないですか?」

優雅「僕は趣味でやってただけだから部活でやるってのはちょっとよく分かんないですけど…まぁせっかくですし今度体験に行ってみますよ」

千夏「言いましたね? 約束ですよ! 私待ってますから」

優雅「はいはい…そんな念押さなくても分かってますよ。 ……それで、会長。 今日俺を呼んだのは一体何の用事で?」

智幸「え? あ、あぁ!」

藤井と優雅2人で盛り上がって俺はそっちのけにされていたので資料整理をしているとそう優雅に聞かれ今日の目的を思い出す。

智幸「実は昨日資料整理をしていてお前にしか出来ない資料があってだな……コレだ。 『今年の部費予算案』なんだが…会計のお前の意見もなしに俺が勝手に決める訳にもいかなくてな」

事情を説明し優雅に予算案の紙を渡すと、優雅は紙に目を通し、

優雅「ふむ……そうですね。 サッカー部とかはもう少し部費を上げ……」

「失礼しま〜す! 部活動費用報告書を届けに来ました〜!」

「来ました〜!」

優雅が話を始めたと思った途端、突如扉が開かれ男女が生徒会室へと入ってくる。

智幸「部活動費用報告書か…何部かな?」

「サッカーで〜す」

「ねぇター君、渡したなら早く行こうよ! デート行くんでしょ〜?」

「おぉそうだったな。 じゃ失礼しました〜」

そう言いながらカップルらしき男女2人組は紙を俺に渡すと早々に生徒会室から出ていく。

千夏「……随分と人前でベタベタするバカップルでしたね」

智幸「そうだな……まぁいい。 すまんな優雅。 続きを頼む」

優雅「…………」

智幸「……? どうした優雅? 何かあったか?」

優雅「……いえ、なんでもありません」

扉の方を見続ける優雅に疑問を感じ質問するが、なんでもないとのことなので話を続ける。

優雅「話を戻しますがこの部費予算案、会計としてからの意見としては正直無駄が多いとしか言い様がありません。 まずはサッカー部の部費を大幅に削るべきだと思います」

智幸「ふむ……で、理由は?」

優雅「さっきのカップルがサッカー部だからですよ」

智幸・千夏「「そんな理由!?!?」」

優雅「あとカップルの多いバスケ部とバレー部も同様に削りましょう。 そうですね……大体10カップル位いるので10万削りましょうか」

優雅はそう言いながら部費予算案を書き換えて……

智幸「おい待て待て待て! 1回書くのをやめろ! 藤井! 優雅を止めろ! 捕らえろ!」

千夏「確保ーッッッ! ほら! 大人しくしなさい!」

優雅「ちょっと何をするんですか会長! 藤井先輩! 会計の意見を無視するって言うんですか!?」

智幸「会計としてじゃなくコレは完全にお前の私怨じゃねぇか!」

千夏「そうですよ! というかアレだけ文句言ってたバレー部は削らないのはなんなんですか!」

優雅「あんな良い男が居る部活から部費引ける訳ねぇだろうが! うぉらぁぁぁぁぁ! 離せぇぇぇぇ!」

この後、暴れる優雅を何とか押さえつけて落ち着かせるのに約10分程かかった……


智幸「はぁ……どうだ? 落ち着いたか?」

優雅「はい、おかげで。 すみません2人共、さっきのは発作みたいなものなので気にしないで下さい」

千夏「随分と面倒臭い発作ですね」

優雅にお茶を出してやるとそう言っていつもの落ち着き具合を取り戻す。

色々と疲れたが優雅には少し休みをやって部活動の体験をさせた方がいいのでは無いのかという疑問が俺の頭の脳裏をよぎる。

優雅「どうしたんですか会長? 何か随分と疲れてる様ですけど何かあったんですか?」

誰のせいだと思っているだと言いたい所だが、ここは会長として喉まで出かかったその言葉をグッと堪えて飲み込む。

智幸「いや…お前には少し休暇をやって部活動の見学にでも行かせてやろうかなと思ってだな」

俺がそう提案すると優雅は笑い飛ばすように

優雅「いいですよそんなの。 2人に愚痴ったおかげで結構楽になりましたしコレからも生徒会頑張っていくんで」

智幸「そうか……! それは助かるよ。 これからも頼むな」

千夏「ちょっと優雅君。 ゲーム部には体験に来てくださいよ」

優雅「分かってますって……」

これにて優雅の悩みも晴れて一件落着って所か。

それにしても……

智幸「沢村は何の部活やってたっけな……」

生徒会以外にも部活をやっているのは知っているが何の部に入っているのかまでは俺は知らない。

すると俺の呟きを聞いていた優雅が知らないんですかと言いながら

優雅「葵先輩はイラスト部に所属してるんすよ。 会長知らなかったんですか?」

智幸「ん、あぁ。 部活に入っているのは知っていたんだがな……ん?」

何か視線を感じてふと生徒会室の入口へ視線をやると、そこには入るタイミングを伺っている沢村がいた。

それに藤井も気がついたのか藤井は沢村にちょいちょいと手招きをする。

優雅「てゆうか知ってますか会長? イラスト部の葵先輩の秘密」

千夏・智幸・葵「「「!?!?」」」

真後ろに本人がいる状況で秘密を話始めるってお前正気か……!?

……というかまさか、優雅は沢村の事に気づいてない!

優雅「実は葵先輩はイラスト部に2年も入っててますけどめちゃくちゃ絵下手くそなんですよ笑」

葵「……」

優雅ァァァァァァッッッ!!!!! お前ェェェェェェッッッ!!!!!

言ったな!? 真後ろに本人がいるにも関わらず言ってはいけないことを言ったな!? おい気づけって! アイコンタクトしてんだろ! 今ならまだ間に合うから!

千夏「……優雅君。 今ならまだ間に合いますよ」

智幸「! あ、あぁ。 藤井書記の言う通りだ」

そう言い俺と藤井は優雅に何とかアイコンタクトをする。

優雅「なんすか? ……あぁ、もっと面白いこと知りたいんすか? 実は前ライオン描いてたらしいんですけど見たら……ぷっ、シマウマにしか見えないんすよ! あははは!」

葵「………………」

智幸・千夏「「……」」

優雅「さっきからどうしたんすか2人共。 なんか顔色悪いですよ?」

智幸「……もう俺達は知らないからな」

優雅「え?」

葵「優雅君。」

優雅「ッッッ!?!?!?」

今までに聞いた事の無いくらい冷たい声で発せられたその言葉に驚いた優雅は慌てて後ろを振り返り青ざめる。

優雅「あ、葵先輩……さん? その、コレには訳が……」

葵「昨日資料整理をしていたら優雅君にやってほしい資料が沢山あったんですよ。 そこに積んであるのでやっておいてください」

沢村は優雅にそう言うと何事も無かったようにイスに座り仕事を始める。

優雅「……あの、葵先輩、怒ってますよね?」

葵「別に怒ってないですよ」

優雅「いや……でも怒って」

葵「怒ってないです」

優雅「いや、だからもうそれが怒って……ヒィッ!!!!!」

葵「怒 っ て な い で す」

優雅が反論しようとすると沢村はそう冷たく言い放ち、冷めた目で優雅を睨みつける。

……いや、怖いな。

俺、あんな目で睨まれたら泣いちゃう自信あるぞ。

優雅「か、会長……俺、死にたいので帰ります」

智幸「お、おぅ……でも死ぬなよ……」

優雅は俺にそう言い残すと『学校……やめたい……』と呟きながら生徒会室から出ていく。

千夏「……優雅君はもう少しTPOと運をどうにかした方が良いと思います」

智幸「だな。 ……というか俺らも仕事が残っている訳でもないし帰るとするか……沢村、俺らは帰るがまだ残るのか?」

葵「えぇ。 そんなにかからず終わるので先帰っててください。 戸締りは私がしておきます」

智幸「そうか。 じゃあ頼んだ」

千夏「また明日です葵さん!」

最後の戸締りを沢村に任せ、俺達は一足先に帰った。

葵「……私って絵下手なのかな……」

誰もいない生徒会室で葵は頬を赤らめながらふと独り言を呟いた。


今日の活動記録 担当:副会長 沢村葵

出席者 智幸、葵、優雅、千夏

・昨日の資料整理の続き

・優雅君のお悩み相談?

・絵の練習(重要)


明日の予定→第3話 生徒会風紀委員長の秘密

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ