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時計の針のその先で  作者: 原案・著:露 脚本:岩永明
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第9話

「……ヨイ……ヤヨイ!聞いているのか!」

「へっ?」

「まったく、もう一度言うぞ。これから戦うのは反政府軍の本隊。危険な任務だから充分気を引き締めて行け」

「うん!わかった!」

「そこは『はい、承知いたしました』だ……」

 陸人はヤヨイのいつもの様子に辟易(へきえき)した。

「真賀浜隊長」

「何だ、利垣心」

「大事な、お話があります」


 心は今までのループの事を陸人に全て打ち明けた。ヤヨイが必ず死ぬ事、イマリに戻せばイマリは生きていられるかもしれない事。

「なるほど……な……。にわかには信じがたい話だが……」

「それは、私が保証します」

「僕もだよー」

 振り向くとそこには雪と悟がいた。

「まったく、僕の作った最高傑作がいつの間にか限界まで使われていたなんてね」

「申し訳ありません……」

 雪は悟に頭を下げた。

「いんや、道具は使ってこそだからね~。それにいろいろと考察の余地もある。雪君、君も手伝うんだぞ」

「……!はいっ!」

 そう言って雪達は陸人達の下から去って行った。

「なあ、利垣心」

「なんでしょう」

「お前の話を聞くと俺も必ず死んでいるんじゃないか?」

「それは……」

 心はヤヨイを生かすのに必死でそれ以外の事にまでは手を出せなかったのだ。

「良いさ。俺も軍人だ。死ぬのは覚悟している」

「隊長……」

「えー!真賀浜隊長が死ぬのは嫌だなー」

「ヤヨイ……!お前いつの間に……!」

「割りと最初っから。ねえねえ!隊長も一緒に生きよ!」

「それが出来たら苦労しないぞ……」

「私の運命が変わったらさ、真賀浜隊長の運命も変わったりしないかな?」

「うーん、それもあり得ない事ではないけれど……」

 心は悩んだ。

「ま、やってみなきゃわかんないよね!」

「もう時間は戻せないんだよ?」

「うーん……」

 今度はヤヨイが悩んだ。

「俺の事はいい。お前はお前の心配だけしてろ」

「むー」

 ヤヨイは不服そうだ。


 そうして白駒隊は東へ向かった。ヤヨイの事を知っていたあの二人に会う為だ。あの二人と話せばヤヨイの記憶も戻るかもしれない。白駒隊の皆にはその情報はふせている。ヤヨイ一人の為に皆を危険にさらしているだなんて言えなかった。

 そして……

「伊万里ちゃん!?伊万里ちゃんだよね!?」

「あ、えーっと……」

「伊万里!何で軍服着てっかわかんねーけど、こいつらぶっ殺して帰るからな!」

「あー!ダメダメ!みんなは殺しちゃダメー!みんなには戦う気は無いんだよ!話し合お!」

 ヤヨイは体の前で手をぶんぶんと振った。

「伊万里?何か変だな……」

「それは僕から話すよ」


「ふーん。で、そんな話を信じろと?」

「ループの事は信じなくて良い。ヤヨイをイマリに戻す可能性の事を信じて」

「伊万里ちゃん、何か思い出した?って、何か顔が青いよ!?」

「来たか……」

 陸人の言葉を皮切りにヤヨイの呼吸が荒くなり体が震えだした。

「わ、わ、私は……」

「伊万里ちゃん!」

「伊万里なんかじゃない!ヤヨイだー!」

「なっ……!」

 ヤヨイはそう言うと腰の刀を勢い良く抜いた。

「私はヤヨイ……。そうでしょ……?真賀浜隊長……」

「ヤヨ……」

 陸人はヤヨイ、と言いかけてそれを押し止めた。ヤヨイのままではヤヨイは死んでしまう……。

「お前は……イマリだ」

 陸人は悲しげな顔で言った。

「う、うう……うう……」

 ヤヨイは、苦しそうに頭を抱えた。

「伊万里ちゃん!」

「伊万里!」

 ヤヨイは、目の前の心を見た。

「私……は……?」

「君は、イマリだよ」

「そっか……」

 そう言うとヤヨイ、いや、伊万里は薄く笑ってその場に倒れた。

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