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時計の針のその先で  作者: 原案・著:露 脚本:岩永明
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第1話

『■は何度でも■■■■。■■■を■■■■■為に』



 家族と折り合いが悪く13の頃に家出した。それからは窃盗を繰り返しながら生きてきた。ある時運良く軍の廃棄品の打刀と出会った。それからは窃盗に加え傷害も合わさった。我流の戦い方でそれなりに私は強くなった。

 だからだろうか。罰(ばち)があたったのか二年後の今日私は空腹で倒れていた。

「う……」

 お腹が空いてもう一歩も動けない……。ああ……私もこれで終わりか……つまらない人生だったな……。

 一人人生の終わりを噛み締めていると、足音が聞こえてきた。その足音は私に近付いて来る。

「ん……?って、人!?お、おい!お前大丈夫か!?」

 それが、私とレジスタンスとの出会いだった。


 がつがつがつ……!

 私は目の前の食糧を前に一心不乱に貪り食らっていた。

「おー、良い食べっぷり。遠慮せずに食えよー」

 私を担いでここまできた大柄な男は笑顔で言った。

 空腹が満たされた私は考える余裕が出てきた。

 おそらく廃墟であろう場所に家族でなさそうな年齢も性別も様々な人間が十数人……。それに様々な武器の数々。私は男に問うた。

「ここは……」

 私の問いに男はあたふたとした。

「あっ……!えっとな……!」

 私はため息を一つつくと己の予想を口にした。

「おおかた反政府組織のアジトの一つって所だろう」

「何でわかった!?」

「やっぱりか……」

「あっ!カマかけたな!」

 この国は軍が支配している。度重なる戦争で人口は激減。しかしそれでも軍は戦争を止めようとしない。そのため、軍に対するレジスタンスが結成されており各地でその猛威を奮っている。

「軍にチクるか……?」

 大柄な男はおずおずと私に聞いてきた。

「別に。私はそこまで立派な人間じゃない」

 そう言うと大柄な男は目をキラキラと輝かせて私の手を握った。

「ありがとう!恩に着る!」

 私はその目に居心地の悪さを感じて大柄な男から目を反らした。

「……バレるのが嫌なら最初から私なんか助けなきゃ良かっただろ……」

「それは出来ない」

 男は真剣な口調で言った。

「何で……」

「困ってる奴がいたら放っておけないだろ?」

 男があまりにも当たり前の様に言うので面食らった。

「……変な奴」

「よく言われる」

 男は満面の笑みで笑った。

「真央(まお)、その子誰?」

 男と話していると黒い癖毛をポニーテールにした女の子が近寄って来た。

「ああ、綾(あや)。腹空かして倒れてた所を連れて来たんだ」

「ふーん」

 綾と呼ばれた少女はまじまじと私の顔を見る。

「私、山嵐 綾(やまあらし あや)っていうの!こっちは藤堂 真央(とうどう まお)!よろしくね!」

 綾はにっこり笑って手を差し出してきた。私はその手を取る事はしなかった。

「仲良くする気は無い。だが恩は返す。……借りは作りたく無いからな」

「?」

 綾はどういう事だと首を傾(かし)げた。

「お前らの反政府活動を手伝ってやる。一定期間だけな」

「えっ!良いの!?危険だよ?」

 綾は目を丸くした。

「危険は承知の上」

「わー!女の子のお仲間だー!」

 綾はそう言うと私に抱きついてきた。

「なっ……!放せっ……!」

「これからよろしくねー!」

 綾は笑顔で私に頬を擦り寄せてくる。

「だから仲良くする気は無いってば……!」

「ねえねえ、君のお名前はー?」

「……佐々原 伊万里(ささはら いまり)」

「じゃあ伊万里ちゃんだねー!」

「もういいから放せ!」

「ははっ」

 真央はそんな私の光景を見て笑った。



「伊万里ちゃん!今日も敵をギタギタにしてやったねー!」

 綾は血みどろの顔で笑った。

「ああ、そうだな。だが必要以上に戦いたくはないな」

「ふふっ……」

「どうした?」

「伊万里ちゃん、ここに来た頃より笑う事が増えたね。私、嬉しいよ」

「私、笑ってたか……?」

 私は自分の自覚の無さから思わず顔に手をやった。

「うん、笑ってた」

 綾はにこにこと笑顔だ。

「真央にもその顔見せてやって~」

「……恥ずかしいから嫌だ」

「ふふふふふ~」


 アジトに戻って来た私達を真央が迎え入れてくれた。

「お帰り。大丈夫だったか?」

「うん!伊万里ちゃんがね~敵をギッタンバッタン倒してくれたよ~」

「綾だって手榴弾で敵を吹き飛ばしてただろ」

「ははっ、そうか。飯、出来てるから食えよ」

 そう言った真央の顔に綾は人差し指を突き付けた。

「先にお風呂!女の子は身だしなみが大切なのです!」

「へーへー、風呂も沸かしてますー」

「よろしい」

 綾はその言葉ににっこりと笑った。

 私は、そんなやり取りに思わず笑みが零れた。

 ずっとこんな日常が続くと思ってた。あの時までは。

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