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魔道具に魔法

ここ数日、脳みそを使いすぎて頭が痛いです。明日は休養日にしようと思います。

ちなみに、パラセタモールは命綱です。

「魔法のことが知りたい?」

『うん』


 夕方、俺の部屋で――


 アリシア母さんが絵本を読んでくれていたとき、登場人物の一人が盗賊を追い払うために魔法を使っている絵が描かれているのを目にした。

 物語自体は、欲張りすぎて自滅してしまうことを戒める内容だ。

 その絵を見ていると、この世界では魔法が当たり前のように使われているけど、俺は魔法について何も知らないんだなあと思っている。

 アリシア母さんが本を読み終えた後、私は魔法について教えてほしいと頼んだ。


『魔法とは何か、どう使うのか知りたい』


 魔法がない地球出身の俺にとって、魔法の存在そのものが不思議なのだ。

 魔法はファンタジーの定義であり、この世界、アポリナリスはファンタジーの世界である。

 部屋を照らす照明の《魔道具》や、話をするときに使う通信の《魔道具》、キッチンで料理を作るための加熱の《魔道具》もある。いまだに領地があり、城に住んでいることから、この世界はまだ中世なのかと思いきや、《魔道具》のおかげで、日本の現代社会にも遜色ない暮らしができるのだ。

 この本も、もしかしたら印刷機の《魔道具》みたいな物によって印刷されているのかもしれない。


 でも、そういう質問をされると、アリシア母さんは首を傾げる。


「う~ん、どうなんだろう?魔法は魔法で、手足を動かすようなもので、自然に来るなんだけどね」


 と、結論の出ない答えが返ってきた。


 物足りない答えだが、仕方ないだろう。

 だって、魔法に囲まれて生きてきたアリシア母さんにとって、魔法を使うことは「魔法ってなんだろう」と思わないくらい自然なことに違いない。おそらく、手の使い方に似ているのだろう。意識して手を動かそうと思わなくても、ずっと動かしているから動くだけ。


 これ以上聞くのはやめようと思っていたところ、アリシア母さんが突然、まったくもって場違いなことを言い出した。


「強いて言えば、電気回路みたい、かな?」

『で、電気回路?』

「あっ!パパなら上手く答えられると思うよ!ママが連れてくるから待っててね」


 アリシア母さんに電気回路とはどういうことかと聞く前に、アリシア母さんは既に立ち上がり、部屋に俺一人を残して出て行ってしまった。

 通信の《魔道具》で呼び出そうにも、俺の部屋は防音のようになっている

 俺は、先ほどの話を思い返した。


 今、お母さんが『電気回路』という言葉を発したか?

 この世界には電気がなく、全て魔力で動いているんじゃなかったのか?だとしたら、どうしてお母さんは電気回路のことを知ってるんだ?

 彼女は地球の技術に関する知識を持っていないはずだ……もしアリシア母さんが電気に関する知識を持っているとしたら、それはつまり――。


 その発想は、あえて未完成のままにしておいた。仮に彼女が俺が思っているような人だったとしても、直接自分で聞いてみる以外に証明する方法はない。


 俺は緊張しながらも、部屋のドアが開いてアリシア母さんが入ってくるのを期待しつつ、数分が過ぎるのを待った。

 やっと開いたドアに心臓が飛び出しそうになったが、アリシア母さんの姿はなく、ガブリエル父さんの姿だった。残念なことに、アリシア母さんはついてきていない。


「魔法について知りたいんだって?」


 ガブリエル父さんが、なんだかちょっと嬉しそうに俺に聞いてきた。


 ガブリエル父さんはアリシア母さんのことを知っているのだろうか?

 結婚しているのだから聞いてみたい気もするが、そうすると俺が不審に思われ、ガブリエル父さんもアリシア母さんに不信感を抱くかもしれない。

 なるべく、二人の幸せな結婚生活に負担をかけたくない。


 と、俺は疑惑を隠すのに精一杯で、ガブリエル父さんに答えた。


『うん。ママはパパの方がうまく教えられるって言ってた』

「まあ、お母さんの言うとおりだけどね。お父さんは世界の誰よりも魔法に詳しい」


 堂々と宣言するガブリエル父さんに、俺は乾いた笑いを浮かべるだけだった。まあ、エンジェルなんだから、その言葉を疑うことはないだろう。


 胸を張った後、ガブリエル父さんは俺にこう尋ねた。


「で、魔法の何が知りたい?」

『えっと、そうね。最初に、魔法ってなんですか?』


 ステータスウィンドウが見えるので、魔法や魔力の存在は知っているが、それが具体的に何なのかはわからない。


「簡単に言うと、魔法とは神々が与えてくれた世界を形作る力のこと。危険に満ちたこの世界で自分の居場所を作るために、人族は魔法を与えられている。この世界にはオークや巨人、魔物といった非人間的なものがたくさんいて、それに対抗するために魔法がある」


 パパみたいなエンジェルも非人間的なものの一員ですか?

 その質問は自分の胸にしまっておいて、代わりに『そっか』と言うだけだったが。


「しかし、誰でも魔法が使えるわけではない。厳密に言えば、魔法が発動するためには、燃料である魔力、構造である魔法陣、そして魔法に対する素質の3つが必要なのだ」

『へぇ』


 ガブリエル父さんの説明を聞いた後、俺は自分のステータスを確認する。



【ステイタス】


 名前:リュウマ・ヘヴェンズゲート

 種族:竜の実・ヒューマン

 性別:男

 年齢:0歳

 HP:9/9

 MP:3/4(5x10^9)


 筋力1 体力3 技量1 速さ2 魔力1(5x10^6) 魔質10^Eカンスト



 魔力がMPだとすると、俺の魔力は1ポイントしかなく、合計で4MPに換算される?括弧の中にあるものは、女神様が封印した俺の実際の魔力を表しているのだろうか?

 そうだとしたら、魔質とは何なんだろ。

 俺の魔質はカンストしていると書いてあるが、それは俺の魔法に対する素質はこれ以上上がらないということ?


 俺がまだいろいろなことに戸惑っていると、ガブリエル父さんは俺の沈黙を合図に、説明を続ける。


「魔法の仕組みはというと、魔法陣が閉じていること、つまり最初から最後までループしていることを確認する必要があるんだ。魔法陣の回路が開いていると、開いている部分から魔力が漏れてしまい、魔法が発動しななくなる」


 俺がまだ戸惑っているのを見て、ガブリエル父さんは紙とペンを取り出して何かを描いた。

 描かれたのは円形で、内側にくねくねとした線がいくつかあり、外側には同じ方向を向いた線が2本ある。

 そして、外側の線の一本を左手の親指で押さえ、俺に語りかける。


「この紙を見てごらん。このシンプルな魔法陣に僕の魔力を送り込んでいく。魔力は左の線から入り、右の線から漏れているため、魔法陣が起動しなくなる」


 右手で線をなぞりながら、ガブリエル父さんは言った。思わず頷く俺。


「ところが、右の線を僕の魔力でつないでみると......」


 と言いながら、もう一方の外線を右手の親指で押さえ、そして――


 パぁー!


 突然、絵が光を放つ。


「こうして、魔法陣が起動する」

『おぉ!』


 なんともわかりやすい!さすがはエンジェルだ。

 魔法陣が閉回路でなければならないという意味がわかってきた。まるで……まるで電気回路に似ている……


 ……アリシア母さんの言うとおりだ。

 魔力が電気なら、魔方陣は電気回路。それは確かに魔法の仕組みを理解しやすい例えだが、現代人にしかその類似性を理解できないはずだ。

 ということは、アリシア母さんは本当に……俺と同じ地球人なのだろうか。


 そんな俺の混乱に気づかず、ガブリエル父さんは説明を続ける。


「詠唱による魔法もまた、同じように機能する。まずあるもの名前を唱え、その名前に定義を与え、最後にまたその名前を呼んで終える。簡単な例を挙げてみよう。『()よ、我が指先を照らしたまえ――()()()()()()()()』」


 ガブリエル父さんが言い終えると、指の先がぼんやりと光り、やがてその光は消えていく。主張するようにその指を立てる。


「魔法陣が大きくなったり、詠唱が長くなったりすると、魔法を完全に発動するためには、より多くの魔力が必要になる。魔力が足りなければ、生み出す魔法も弱くなり、長くは持たない。これで理解できたかな?」

『……はい」

「いい子だ。では、手始めに、魔力を声に込めて、今僕がやったのと同じ魔法を唱えてみてくれ」


 ガブリエル父さんがそう指示した。


 頭の中はアリシア母さんのことでいっぱいで、最後のほうは何を言っているのか、あんまり気にしていなかった。

 アリシア母さんが本当に地球人なら、どうして俺はそれに気づかなかったんだろう。というか、アリシア母さんには自分が地球人だと明かす義務はないのだろうし、俺と同じようにその事実を隠しているのだろうから、それは仕方がないことだろう。

 でも疑問に思うことがある。俺が予言の子として生まれたというのなら、アリシア母さんもこの世界では何か特別な存在でもあるということなんだろうか?アリシア母さんもまた、私と同じように女神様に出会ったのだろうか?だとしたら、アリシア母さんも私と同じく女神様に会ったのだろうか。


 頭の中に答えのない疑問がたくさんある。前の世界の人がこの世界にいると知って、仲間意識みたいなものがあって、ドキッとしてるのかもしれない。

 そんな疑問は頭の片隅に置いておくことにした。アリシア母さんにはいつでも聞けるし、アリシア母さんは俺にとって良い母親だ、疑心暗鬼になるのは間違っている。

 とりあえず、ガブリエル父さんの指示に従ったほうがいい。


 ガブリエル父さんに見守られながら、ベビーベッドで俺は手の高さを目線に上げ、声に魔力を込めた。


「『()……』」


 パ――ッ!


 その瞬間、開いた手のひらに光が現れた。

 そしてその時、まるで運命のいたずらのように、アリシア母さんは部屋に戻ってきたのだ。


「あら、貴男。リュウマちゃんに魔法教えてるの?」

「ああ。既に通信の《魔道具》の使い方が教われるから、魔法を教え込むのは簡単だけど」

「あれ?私、教えてないんだけど?」

「?どういう――」


 ……何か変だ。

 俺の魔力、暴走するように吸い込まれ続け、手のひらの光は抑えきれずにどんどん大きくなっていき、そして――――。


「アリシアーーーーっ!!」


 ゴオオオオオオォォォォッンッ!


 ガブリエル父さんの叫び声を掻き消し、巨大な爆発が起きる。




【ステイタス】


 名前:リュウマ・ヘヴェンズゲート

 種族:竜の実・ヒューマン

 性別:男

 年齢:0歳

 HP:0/5

 MP:‐57/4(5x10^9)


 筋力1 体力1 技量1 速さ2 魔力1(5x10^6) 魔質10^Eカンスト


この小説を書くことは自分に対する挑戦であり、成長の証でもあります。ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございます!


今後ともよろしくお願いいたします!

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