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20代の赤ん坊に理不尽

「おぎゃぁ〜!おぎゃぁ~!」


 赤ん坊の泣き声。その赤ん坊は俺である。


「あらま、リュウマちゃん。お腹が空きましたねぇ。よしよし、ママだよ」


 そう言って、目の前の美人さんは俺を抱き上げて銃乳する。


 女神様のおかげで、前世と同じ名前でこの世界アポリナリスに無事転生しましたが――やはり、赤ん坊の身体は不調だらなんだ。

 思い通りに動けないし、いつも疲れ気味で腹も空いてばかり。

 さらに、体がかってにウンチやオシッコしてるし………(前世)20代の男性として、情けないと思っている。


 幸い、視力は完全に回復(発達?)したので、この数週間、ぼんやりとしたにじみしかなかった周囲の人々の顔が、今でははっきりと見えるようになった。

 最初に認知したのは、匂いで分かるこの二度目の人生の母さんの顔である。


 母さんは顔が整っている、綺麗な女性。目は大きく緑色で、ブロンドの髪は編んでも腰まで伸びている。

 薄い唇でいつも微笑んでいて、眉毛が強調されているので、意志の強い女性のように見えます。

 そして、とても若く見える。


 そういえば、女神様が与えてくれたステイタスウィンドーは他の人の年齢も表示するのだろうか。

 ずっと目が見えなかったから使ったことがなかったけど、はっきり見える今なら使えるはず。

 母さんを鑑定してみようかな。


 そう思って、母さんに抱かれて母乳を飲まされているとき、俺はさりげなく『鑑定』を試みた。


 すると――



【ステイタス】


 名前:アリシア・へヴェンズゲート

 種族:人の実・ヒューマン

 性別:女

 年齢:21歳


 HP:60/60

 MP:106/140


 筋力25 体力20 技量50 速さ30 魔力35 魔質75



「がぶっ!?」


 コホンっ! コホンっ!! 


 喉に入った母乳で咳払いをした。


 21歳だと!?にじゅういっさいっっ!!?

 確かに若いとは思っているけど、まさか俺のいっこ上だとは思わないわよ!

 カノジョいない歴史=年齢の俺が、たった1歳年上の女の子がすでに幸せな家庭を築いているだけでなく、子守りや授乳もしてくれるなんてオカシイだろ――!!

 どんな残酷な冗談なんですかこれ、女神様!?


「よーし、よーし………飲むの速すぎるかな、リュウマちゃん?あせなくても大丈夫だから」


 そんな俺を見ると、母アリシアは俺を肩に乗せ、痛みを和らげようと優しくポンポンと背中を叩いてくれた。

 いいお母さんだね、アリシア。

 赤んぼの中身が20代の男性(俺)でごめんね………。


 母が愛情を注いでくれる一方で、俺は自分が世界で一番汚い人間であるかのように思えてならない。


 それ以来、アリシア母さんの母乳を飲むのは気まずくなっていく。

 アリシア母さんが胸をさらけ出して差し出すたびに、俺は全力でそれを断った。

 それを甘受して幸せになる知り合いは前世にいたけど、俺はそういうのは趣味じゃない。赤ちゃんに扱われるだけでさえいっぱいいっぱいだ。俺には男のプライドというものがあるからな。


 無論、だからといって急に母乳が不要になったわけではない。

 俺くらいの赤ちゃんは、母親が自然に持っていて、赤ちゃんがまだ持っていない免疫を発達させるために、根本的に母乳が必要なのだ。

 母乳を飲まない赤ちゃんは、栄養や免疫力が十分に得られないので、病気になりやすい弱い体になっている。


 ましてや、まだ固形物が食べられない年齢だし。


 この件に関しては、アリシア母さんも心配している。

 自分の子が母乳を拒んで非常に困っている姿を見て、俺は本当に申し訳ないと思っているが、恥ずかしくて仕方がない。


 その時、家が雇ったメイドの一人がアリシア母さんに「乳母を雇うならどうですか」と進めた。確かに、歳が遠い離れた乳母なら俺大丈夫かもしれないし、俺はそれが名案だと思う。


 ところが、一緒に住んでいるエレノアお祖母ちゃんが「ショックでお前の乳見てトラウマになったんじゃない」と言って、母乳を布に染み込ませてアリシア母さんが銃乳し続けるんだと言い張った。それがほかでもない母親の義務だと。


 結局のところ、アリシア母さんは両方をすることにした。

 エレノアお祖母ちゃんの助言に従いつつも、俺がまだ母乳を拒否する場合に備えて、メイド何人も派遣して下町に乳母を探させたのだ。


 さて、授乳時間と昼寝の時間以外は、普段は特にやることがない。

 家庭にやけにメイドさんが多いので、自分はどこぞの貴族の息子じゃないかと察した。

 父は忙しい人らしいので顔は見たことがないが、綺麗なお母さんを見て、俺は成長したらハンサムな男性なりそうな予感がする。


 女神様のおかげ、勝ち組人生。


 翌日。

 来てくれた乳母は30歳近い女性のマーガレットさん。

 マーガレットさんは3児の母で、俺より1ヶ月早く生まれたばかりのお子さんがいるなので、まだ母乳がたっぷり出ているだそうでだ。

 マーガレットさん、夫のジェームズさん、そしてその子供たちはみんな、俺たちへヴェンズゲート家が住む城に引っ越してきた。

 マーガレットさんは俺の乳母に、ジェームズさんは警備員に、長男ジェームソン(7歳)は俺の従者になるための教育をうけ、長女サラ(5歳)も俺のメイドになるための教育を、そして末っ子レイチェルはまだ赤ん坊、この子も俺のメイドになる予定だ。


 俺なんかの気まぐれ一つで、家族全員の生活や将来が変わってしまうとは………夢にも思えなかった。

 お金の力は恐ろしい。

 俺自身はというと、こんなことになったのは全部自分のくだらないプライドのセイだと悟り、ぐっと耐えて母乳をを飲み込む。


 人様に迷惑かけて、何がプライドだ。


 そして、そのまま平穏に月日が過ぎていく。

 俺は母乳を飲んで、寝て、ウンチをして、ちゃんと赤ちゃんらしくしている。

 固形物を食べられるようになったのは、それから間もなくのことだが、その頃、マーガレットさんはすでに前の仕事を失っていたため、家族とともに城に残り続けるしかなかい。


 そして、それを快く思っていない人が一人いた。


 ガタガタと風がうるさい、嵐の夜。

 マーガレットさんやメイドたちが嵐の準備に忙しく、俺の部屋に誰もいないとき、若い女の子が枕を抱えながら入ってきた。マーガレットさんの娘、サラだった。


 サラはめったに俺の部屋に来ないので、何をしに来たんだろう。

 そう疑問に思う俺に、サラは枕を頭の上にあげてから、それを振り下ろし――赤ん坊の俺を叩いた。


 バーン!


 いっってええぇえ!!!!


 体中に痛みが走り、息が止まるのを感じた。


「サラは、お前が嫌い!!」


 そして、サラは俺の痛みなど気にせず、もう一度俺を叩いた。


 バーーン!!


 いいっっっってえええええええぇぇぇぇぇ!!!!!!


 そして三回目に俺を叩くためにもう一度枕をあげたサラの姿は――「サラっ!!!」運良くも俺が心配して戻ってきたマーガレットさんに見られ、抑えてきた。


 そして俺は、鳴き声さえ出てこない程痛くて、息も絶え絶えでした。自分がまだ生きてることに感動し、念のためステイタスウィンドーを確認した。



【ステイタス】


 名前:リュウマ・へヴェンズゲート

 種族:竜の実・ヒューマン

 性別:男

 年齢:0歳


 HP:1/6

 MP:4/4(5x10^9)


 筋力1 体力2 技量1 速さ1 魔力1(5x10^6) 魔質10^Eカンスト




 俺のHP、1しか残ってない………

 女神様………俺、転生したばかりなのに、そろそろ女神様のところに戻るかも………


この小説を書くことは自分に対する挑戦であり、成長の証でもあります。ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございます!


今後ともよろしくお願いいたします!

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