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新たな世界  作者: 美真陽
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嵐の夜

夏休みは今までと同じはずなのにやけに長く感じた。さくらはイライラして始終ラインを送ってきた。丈はさくらとだけ連絡を取っている。ボストンで家族とヨットで楽しんだり、時にセントラルパークやブロードウェイに小旅行した時のフォトを送って来るらしい。それが週に1,2回なのが、さくらには不満ようだ。美由紀からは誰にも連絡はない。僕から美由紀に連絡するほどの勇気はなかった。

夏が終わって、待ちに待った新学期が始まった。2学期は長いからいつもは憂鬱なはずなのに新学期が始まるのが今年は待ち遠しかった。


夏休みの間に僕には気になることがあった。今思うと夢だったような、いや夢と思いたい。

嵐の夜の事だ。突然、犬の鳴き声がして庭が騒がしくなった。6歳の誕生日から飼い始めたゴールデンレトリバーのベルはベランダの犬小屋を移動させて玄関にいれたはずだ。僕は外の様子を見ようとカーテンを開けた。その時稲光がして一瞬庭が明るくなった。僕は少年と黒い服を着た男達を見た。2匹のドーベルマンが少年を威嚇するように唸り声をあげている。こちらを見上げた少年と僕は目があった。あっという間の出来事だった。苦悩の表情を浮かべた少年は僕によく似ていた。

僕は中肉中背でややなで肩、面長な顔でこれといった特徴はない。ただ、少し目や口のパーツが大きめだった。少年もこれと言って特徴はなかった。一瞬明るくなった光で見えた顔は見えた顔は面長で、やはり僕と同じように目や口のパーツが大きかった。

唖然としていると激しくドアをノックする音がした。停電になったので心配して母がやってきたのだ。

「大丈夫、すぐ自家発電に切り替わるわ。」

部屋はすぐに明るくなった。

「ママ、庭に何かいなかった?」

「こんな嵐の夜にいるわけないでしょ。稲光が怖かったの。大丈夫、何もいないから。気のせいよ。」

うまく言えないが、その口調はそれ以上口にすることは許さないという母の強い意志が感じられるものだった。母は早く休みたいだけなのだろうか。その時の母は確かに幼い頃から辛抱強く僕の相手をしてくれた母と別人のような気がした。

「確かに、人がいたんだ。」僕は心の中で叫んだ。だが、それを口にすることはできなかった。

「心配ないから、早くおやすみなさい。」

そう言い終わるとカーテンをしめて足早に部屋を出ていった。ただ、少年の風貌とおびえた顔を忘れることはできなかった。

「少年とあの男達や犬は一体何なんだ。」

その夜の事が暗くそして重く心の中に残った。

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