雨の日の楽しみ
香田さんと大橋くんは“ニキビ同盟”としての親交を深めて行きます。
最近の私は雨を心待ちにしている。
今朝も天気予報で『午後から雨になります』と報じられて
父さんや翼はガッカリしたが、私は自然と顔がほころんだ。
雨なら…
そう、雨なら大橋くんはレーシングシューズを履く代わりに図書室へ来てくれる。
そこでカレは本を読んだり、宿題をしたりしながら、いつも負け続きの勝負を挑んで来る。
私を見つめながら…
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「ねえ、大橋くん」
図書委員の私は声をひそめ気味だ。
「ん? トイレ?」
「バカっ! そうじゃなくって、ちょっとガン見しすぎ!他のクラスの子をそんなに見てたら噂になる」
「…ゴメン 噂になったら香田さん、マズいよね」
「キミもでしょ? で、どうなの? 意中の人は?」
「う~ん オレの気持ち、気付かれていないと思う」
「それって!!…私との勝負より、ソノ子の事、見つめたほうがいいよ。どうせ大橋くんは負けるんだから」
「確かにオレ、今は負け込んでいるけど…」
と、大橋くんのスマホのアラームが鳴って、カレ、慌ててそれを止めた。
「ご飯、炊けたかな、先に調理室行ってるね」
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『ニキビを触ったら負け』ゲームで負け越した大橋くんが用意してくれたもの
それは調理室での
二人だけの手巻き寿司パーティー
具材はニキビ対策になる食べ物
“ニキビ同盟”のグループLI●Eに、大橋くんは色々と情報を上げていて…今日のメニューもその一環だ。
玄米ご飯にうなぎ、“しゃぶしゃぶ”した豚肉、たらこ、納豆、サーモン、解凍した冷食のブロッコリーにカボチャなどなど。
余り大っぴらに暖房は付けられないので、こじんまりと寄り添って野菜ジュースで乾杯する。
こんなご時世だし、ウチの高校、男子生徒には調理実習もないから…家族以外の人…しかもオトコの子と差し向かいで、いわゆる“同じ釜の飯”をすることは、なかなか無い。
そう、“ニキビ同盟”の大橋くんだから…少しは恥ずかしいけど、マスクも外した。
「あ!」
「ん?」
「香田さん、マヨ付いた 口角のあたり」
指をやってみたが
違っていたようだ。
大橋くんはテーブルの上のウェットティッシュを1枚抜いた。
「いい? ニキビには触らないようにするから」
大橋くんが前かがみに近づいて来たので…
私はなんだか思わず目を閉じた。
息遣いすら聞こえず、僅かに衣擦れの音だけ
不織布の先が、本当に触れるか触れないかくらいで
スイっ!と去っていった。
「取れたよ」
…
…
胸の鼓動が少し虚しかった。
イラストです。
紬さんのラフ案2
このふたり、付き合っちゃえばいいのに!としろかえでは思うのですが、黒楓はどうも…
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