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第2節 第2話 古代遺跡群【ボクスビルド】奪還戦

 移民団を乗せた船は【ブルーフォレスト】を出ると、一路北をめざず。

 その先に見えるの島が、目的地である【ノースウェイランド】であった。

 島からはあまりいい気持のしないオーラのようなものが感じられた。

 そのためか乗員の一部が体調を崩していく。

 そのほとんどが体の弱い子供や老人だった。

 おそらく魔素(マナ)が濃いためだと景虎は考えていた。


「ねぇ、たっちゃん。正直な話、戦闘可能な人員のみ連れてきた方がよかったんじゃない?子供たちにはかなりきつい状況よ……」

「分かっている……。だがこれ以上【ジャポニシア】に借りを作るわけにはいかないからな。それにこの船団を動かす魔石(マナコア)にも限りがある、そう何度も往復できるほど余力はない。だからこそ陛下は決断されたのだ。」


 わかっているけどと言いつつも、どこか納得のいっていない景虎。

 そんな二人の会話を知ってか知らずか、移民団を乗せた船は【ノースウェイランド】最南端の古代遺跡群【ボクスビルド】へと到着したのだった。


「よし、第1大隊は小型船に乗り換えて上陸。狩猟者(ハンター)諸君はその援護を。第2大隊は第1大隊の上陸を待ってから突撃とする。以上!!」


 辰之進の号令とともに防衛隊は一つの生き物のように動き始めた。

 それを援護するように狩猟者(ハンター)たちが魔銃を手に射撃を開始する。

 向かう先の古代遺跡群【ボクスビルド】は機械魔(デモニクス)の住みかとなっていた。

 目視で確認できるだけでも100は超えている。

 黒フードの集団の影響も受けており、事前に【ジャポニシア】から受けていた情報通りの状況だった。


「第1大隊ザック中隊は南側上陸拠点の奪取を目指すぞ!!」


 ザックの指揮のもと第1中隊と第2中隊は南側の港を目指す。

 第3第4中隊はそのまま北へ進み、二点同時制圧を行う予定となっていた。

 海上からは狩猟者(ハンター)からの狙撃が開始され、【ワルキューレ】及び戦闘艦艇から攻撃が開始された。

 遺跡群に価値はあれども、すでに機械魔(デモニクス)の侵略を受けている以上無傷での奪還は【ジャポニシア】としても諦めていた。

 むしろ、奪取できるのならば更地でも構わないとまで秋斗は言い放っていた。

 第1大隊は無事に上陸を行い、橋頭保を確保する。

 それを見た第2大隊は即座に行動を開始する。

 旗艦【ワルキューレ】は接岸準備を開始し、それに合わせて他の船も接岸準備を行う。

 乗り合わせた狩猟者(ハンター)たちは周辺警戒を密にし、海からの攻撃をことごとく防いでいく。


「【ワルキューレ】接弦完了!!」

「第2大隊出撃開始!!」


 船長から齎された言葉に辰之進が反応した。

 辰之進の号令を合図に次々と第2大隊が船か陸へと飛び移る。

 橋頭保を築いた第1大隊と変わるように前線へと躍り出る。

 第1大隊は物資補給のため一度後退を開始する。

 その隙間を埋めるように狩猟者(ハンター)たちが雄たけびを上げて突入していく。

 全員一丸となって突き進み、徐々にその前線を遺跡群から外へと押し広げていく。


「さて、次は私たちの出番ね。科学班は対機械魔防壁アンチデモニクスウォールの設置を急ぐわよ!!」


 輸送艦から姿を現したリズ達後方支援部隊。

 その中でも科学班はADW等の研究開発などを手掛けていた。

 そして今回の作戦のカギを握っているのも彼女たちだった。

 作戦はいたってシンプル。

 押し上げた前線の後ろにADWを設置し、拠点を構築するというものだった。

 その作戦の期待に応えるために科学班にも気合が入る。


「そんなに張り切らなくてもいいですよ。俺たちが必ず守りますから。」


 浮足立つリズを見たひとりの狩猟者(ハンター)がそれを諫めるように声をかける。

 リズは自分が少し浮ついていたことに気が付き、カイトに頭を下げていた。


「へぇ~、ああいう人が好みなんだ……。知らなかったぁ~。」


 少し満足げな表情を浮かべた男性狩猟者(ハンター)に、後ろにいた女性狩猟者(ハンター)がわざとらしく声をかけた。

 男性狩猟者(ハンター)は少し複雑そうな表情を浮かべ、女性狩猟者(ハンター)に向き直る。


「エルダさんや。今冗談を言ってる場合じゃないでしょう?」

「カイトが鼻の下を伸ばしてるのが悪いんです!!」


 いかにも不機嫌ですアピールをするエルダにカイトは若干慌ててフォローを開始した。


「また始まったねポール。」

「デイジー、あの二人はいつものことだ。諦めよう。」


 小柄な女性が二人の行動にため息を漏らすと、一人静かな男性が女性の方に手を当ててあきらめの表情を浮かべていた。


「ポール様。この場合はどうしたらいいんでしょうか……」

「ほおっておくほかあるまい。」


 ポールと呼ばれた物静かな男性にデイジーと呼ばれた女性よりもさらに小柄な少女が話しかけた。

 一人その輪から一歩下がった男性が、何か愉快なものでも見たかのように優しい笑みを浮かべていた。


『ところでカイト様。この後の行動はいかがなさいますか?』


 カイトと呼ばれた青年は左の腰に差した剣から聞こえた声に一瞬反応を見せた。

 カイトはそれが当たり前であるかのように会話を続けている。


「ん?レティシアどうしたのさ。どうもこうも、流れに乗って防衛に参加ってしか選択しないよ?」

『御屋形様。すでにほかの者たちも上陸を開始した模様です。急ぎましょう。』


 すると先ほどまでとは反対の右の腰に下げた剣から声が聞こえる。

 この世界ではいまだ実現していない思考する武器のような立ち振る舞いであった。


「ワカタケ、そういうのはもっと早くいってほしかったよ。みんなも行こうか。」


 カイトの声にこたえるようにリズ達科学班の後を追うように下船するのだった。

 6人が降りる際に、それぞれの携帯する武器より声が聞こえる。

 年老いた男性の声や老婆の声。

 若い女性の声にどこか偉そうにしつつも空回りしている声。

 元気いっぱいに返事をする男の子の声も聞こえる。

 どうやらカイトの集団は賑やかな一行であることがうかがい知れた。



 

「どうやら作戦はうまくいきそうだな……」


 旗艦【ワルキューレ】の甲板から様子をうかがっていた辰之進は、作戦が順調に推移していることに安堵した。

 正直な話、分の悪い賭けをせざるを得なかったことを辰之進は悔いていた。

 綿密に情報収集をして絶対に落とせるという段階までもっていきたかったものの、資源不足を鑑みて決行せざるを得なかったのだ。

 ただ、それについては皇帝シュトリーゲの考えも入っており、致し方ないと自分に言い聞かせていた。

 そして、作戦が上手くいったことでどうにか体裁を保てたという状況であった。

 

「そのようだな。難儀をかけるな佐々木総隊長。」


 辰之進のいる甲板へ上がってきたシュトリーゲ。

 それに気が付いた辰之進はすぐさま膝を付こうとするも、それはシュトリーゲによって止められた。

 今現在まだ作戦行動中ということで、簡略化された形である。

 

「ロレンツィオ、状況報告を。」 

「はっ。科学班も順調にADWの設置を進めております。ADWの設置により手の空いた者はいまだ制圧できていない区域へ再編成し、随時ADWの設置を進めております。このまま推移すればあと3時間ほどで古代遺跡群を包囲できるものと思われます。」


 状況報告をまとめていたロレンツィオが資料片手にシュトリーゲに報告を行っていた。

 ロレンツィオの報告を聞きつつ、シュトリーゲも自前で情報収集を行っており、順調に作戦行動が進んでいることにわずかばかり笑みを漏らす。


「佐々木隊長、さらに難儀をかけると思うが情報があってるか分からぬが、古代遺跡群の地下施設の発掘も併せて進めてほしい。早いこと元始天王(ダンジョンコア)を設置してより安全な状況にしたいのでな。」

「は、心得ております。ADW設置後は隊を分けて探索に当たる予定です。」


 辰之進の言葉に尊大にうなづくと、シュトリーゲはまた虚空を見つめ何かを操作し始める。

 辰之進も慣れたもので、特に気にすることなく部隊の指揮を再開するのだった。


 そして3時間後、予定通り遺跡群の制圧を完成させたのだった。

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