表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デモニクスハンター(機械魔を狩る者達)~用途不明のスキル【マスター】は伊達じゃない?!~  作者: 華音 楓
第1章 始まりの物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/114

第4節 第4話 魔砲

「遅いですよ、リンリッドさん。」

「悪いねぇ~。狩猟者連合協同組合ハンターギルドが人使いが荒いからなぁ~。」


 木々の陰から姿を現したのは、齢50を過ぎた男性だった。

 背丈はさほど高くはなく、がっちりとした体格と言う訳でもない。

 いたって普通。

 きちっと整えられたオールバックの黒髪で、着こんでいるのもスーツと明らかに場違いだった。

 しかしその手には煌びやかな銃が握られており、先ほどの銃撃を行ったのがこの男性だという事を物語っていた。

 

「ガルラよ。こ奴が例の魔砲使い(ガンナー)候補かい?」

「はい。そしてロイドさんの息子です。」


 リンリッドと呼ばれた男性は一言「ほう」と唸ってから、リヒテルをまじまじと見つめていた。

 それは品定めをする鑑定人の様な眼差しであった。


「それにしても思い切ったことをしたもんだねぇ~。その命落としてもおかしくないクラスの魔石マナコアを埋め込むとはねぇ~。」


 その言葉にリヒテルはドキリとしていた。

 確かに技能習得スキルエンゲージを受けた。

 しかしそれが何の魔石マナコアなのかは職員とリヒテルの数人の仲間以外知り得ない情報だったからだ。


「ん?それにしてもおかしいねぇ~。これを誰も気が付かなかったのかい?」


 リンリッドはリヒテルの胸元をじっと見つめていた。

 リヒテルの心臓が徐々に早くなっていく。


「リヒテルとやら……。お前さんの右胸の魔石マナコアは、合成だね?出なければこれほどの魔石マナコアなんて手に入るはずがないからねぇ~。よくもまあ魔素汚染マナコンタミネーションを起こさなかったものだよ。」


 リンリッドの言葉に、リヒテルは驚きを隠せないでいた。

 まさにその通りだからである。

 コーネリアスに見せた魔石マナコアはランク4。

 しかもそれは【イレギュラー】の魔石マナコアだった。

 しかし、技能習得スキルエンゲージの際に元からリヒテルに備わっていた魔石マナコアと融合しランク5相当に成長してしまっていたのだ。

 もしこれが最初からランク5相当の魔石マナコアだった場合、コーネリアスは止めていただろう。

 それだけ危険な行為だったのだから。


「で、今はまだ試していないんだよねぇ~?」


 リヒテルはあまりの動揺に無言で首肯するしかなかった。


 リンリッドは先程倒した機械魔デモニクスに近寄ると、おもむろに手持ちのナイフで解体を始めた。

 リンリッドが手にしているナイフは機械魔デモニクス解体用に作れらたナイフだった。

 中にはカートリッジ式の魔石マナコアが組み込まれており、魔素マナをエネルギーとして、常に高振動を起こしているのだ。

 関節などの弱い部分であれば間違いなく解体していける代物だった。

 解体する事しばし、リンリッドは機械魔デモニクスから赤黒い小さな石を取り出した。

 すると躊躇うことなくリヒテルに投げ渡したのである。

 慌てたリヒテルはそれを落とさないようにと何とかキャッチして見せた。

その慌てようを見ていたリンリッドは、けらけらと笑っていた。


「じゃあ、リヒテル。その魔石マナコアを手に持って自分の中の魔石マナコアと同調してみなぁ~ね。」

「同調?」


 リヒテルはリンリッドが言っている話が全く分からなかった。

 リンリッドとしてもその辺は知っているものだと思っていたので、話がかみ合わない事に驚きを覚えるとともに、傍にいたガルラに避難がましい視線を向けていた。

 ガルラもその辺の話は良く分かっていなかった為、伝えていなかっただけだったのだが、なんとなく自分が悪いような雰囲気に居た堪れなくなっていしまっていた。


「しかたないねぇ~。まずは手の魔石マナコアに自分の魔力を流してみなぁ~ね。」


 リヒテルは言われた通りに、魔石マナコアに自分が認識出来ている魔力を流し込むイメージを頭に思い描いた。

 すると、体の中から何かが移動しているのが分かった。

 ゆっくりとだが、徐々に手にした魔石マナコアに向かって魔力が流れていく。

 しばらくすると、その魔力が魔石マナコアに届いたのか手にした魔石マナコアが一層光を強くしていた。


魔石マナコアに魔力が集まったようだねぇ~。次に自分の中の魔石マナコアにその魔力を移動させようかねぇ~。」


 今度もまた、リヒテルは言われた通りにやってみた。

 魔石マナコアから移動した魔力が、徐々に自分の右胸に近づいてくる。

 すると、体から変化が起こり始めていた。


 自分の心臓とは別に、体内にある魔石マナコアがドクリドクリと脈付き始めたのだ。

 その脈動は収まることを知らず、さらに加速していく。

 すると今度は今移動させていた魔力に変化をもたらした。

 先程までゆっくりと移動していた魔力が、徐々にその速度を上げ行ったのだ。

 手にある魔石マナコアから体内の魔石マナコアへ。

 体内の魔石マナコアから手にある魔石マナコアへ。

 その移動速度は加速し続けて、止める事が出来なくなってきた。


 すると次の瞬間。


パリ~~ン!!


 手にしていた魔石が突如砕け散ったのだ。


 その光景を見たリヒテルは驚きを隠せなかった。

 普通魔石マナコアは特殊な方法を用いない限り割れる事が無いというのが通説だからだ。

 なのに今目の前で起きたのは魔石マナコアの崩壊。

 リヒテルの脳裏に一瞬魔石崩壊マナブレイクがよぎった。

 しかしリンリッドは逆に関心をしていた。

 それは魔石マナコアを割った事ではない。

 未だに魔力が高速でリヒテルの中を駆け巡っている事についてた。


「本人は気が付いていないようだねぇ~。」


 リヒテルはリンリッドのその言葉で初めて異常に気が付いた。

 自分の体内を魔力が高速循環したまま止まることが無かったからだ。


「ドドドドどうしよう!?」


 意味の分からない状況にリヒテルは混乱していた。

 止めようとしても止める事が出来ないのだ。

 それはブレーキが壊れたマシーンのように体中を駆け巡る。

 次第にリヒテルには高揚感とも万能感とも言えない感覚があふれてきた。

 周囲を見回すと……


 ガルラの動きがスローモーションに見えたのだ。

 周囲の木々の騒めきも、小鳥の囀りさえも緩やかに流れていく。


「よく来たね。魔砲使い(ガンナー)の世界に。」

「リンリッドさん?!」


 周囲がスローモーションで動いている中で、リンリッドだけは普通に動いていたのだ。

 リヒテルはそれこそ意味が分からなった。

 魔砲使い(ガンナー)の世界っていったい何なんだと問いただしたくなっていた。


「ここは魔砲使い(ガンナー)特有の精神世界とでもいえばいいのかねぇ~。そんな世界さ。そしてこの中で魔砲使い(ガンナー)は魔砲を作り上げるんだよぉ~。」


 そう言うとリンリッドは新たな魔石マナコアをリヒテルに手渡す。

 先程までと同じくらいのサイズでおそらくランク1の魔石マナコアであろう。


「そいつを握りしめて……そうだねぇ~、拳銃を思い描いてみようかねぇ~。」


 拳銃……それは今はあまり見かけなくなった銃火器の名前。

 生物相手には使えなくはないが、機械魔デモニクス相手では火力不足が否めなかったのだ。

 なので今は町中の警備隊がサブウェポンとして所持するのが関の山の武器に成り下がっていたのだ。


 次第に形が出来上がっていく。


 無骨な形の拳銃はリヒテルの手にしっかりと馴染み、今までずっと使っていたかのような出来だった。


「うんうん、出来たようだねぇ~。」

「じゃあ、あの木を撃ってみようかねぇ~。」


 リヒテルは言われるがまま出来上がった魔砲を、指定された木に向けて構えた。

 すると今度はリヒテルの作った魔砲の魔石マナコアとリヒテルの体内の魔石マナコアがリンクを開始し始めたのだ。


「それじゃあ、使い方の説明と行こうかねぇ~。」


 緊張感のないリンリッドの掛け声とともに実地訓練が始まったのだった。


「今回は属性に〝水〟を、特性に〝貫通〟を選んでみようかねぇ~。魔砲に魔力をどんどん送り込んでみなぁ~ね。」


 リヒテルは意味が分からなかったが、言われた通りに魔力を注ぎ込む。


「属性〝水〟……特性〝貫通〟……」


 リヒテルがそう声に出すと、魔砲が突如光始める。

 そして徐々にその光が落ち着くと同時に、わずかな脱力感が襲ってきた。

 リヒテルが不思議がっていると、リンリッドがその答えを示してくれた。


「今ので弾丸の装填がおこなわれたんだよぉ~。狙いそのまま引き金をひいてみなぁ~ね。」


 半信半疑のリヒテルは、言われた通りに引き金を引く。

 するとパシュンという音と共に何かが砲身から飛び出していったのが分かった。

 それから1拍も置かぬうちに、狙っていた木に3cmほどの穴が開いていたのだ。

 それも向こう側が見えるくらいに。

 つまり貫通をしていたのだ。

 魔砲を打ち終わると世界は元に戻っていた。


「うんうん。ちゃんと撃てたようだねぇ~。補助装置無しでこれだったら問題なかろうねぇ~。ガルラ、いい素材をありがとうねぇ~。」

「だから言ったろ、ロイドさんの息子だって。」


 リヒテルはいまだ手に残る感触に震えていた。

 自分が撃った魔砲。

 ついに……

 ついに……

 願いが叶った瞬間だった。

第1章の完結となります。

第2章は12月27日月曜日から再開予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ