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デモニクスハンター(機械魔を狩る者達)~用途不明のスキル【マスター】は伊達じゃない?!~  作者: 華音 楓
第7章 富士の樹海ダンジョン

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第4節 第1話 初ダンジョン

「それじゃあ、探索に移ろう。ここから先はリヒテル、君が決めるんだ。俺はあくまでもパーティーメンバーとして行動する。まあ、フォローもするから安心してほしい。みんなもいいね?」


 気を引き締めたリヒテルたちは首肯で答えた。

 その眼を見たケントは、まだ不安はぬぐえないものの、一定の評価をしたのであった。


 それからリヒテルたちはダンジョン入り口の大門をくぐり、その先にあるエントランス中央に設置されたゲートコアへと足を運んだ。

 そこには黒い球体がふわふわと台座の上に浮いており、時折何かスパークのようなものを走らせていた。


「みんないいかい?じゃあ、行こう!!」


 全員がその球体に手を触れると、少しのまばゆい光がリヒテルたちを包み込んだ。

 そしてすぐのその光が収まると、そこにはリヒテルたちの姿はなかったのだった。


 

 


 リヒテルは閉じた瞳に白く映る光を感じていた。

 それが収まると、ようやくその眼を開くことが出来た。

 みんなも同じようで、光から解放されその瞳を開いていく。


「ここは……草原?」


 レイラがその場にしゃがみ込むと、地面に手をかざし短く生えた草を触っていた。

 特に何かあるわけでもなく、手触り的には雑草だと結論付けた。


 リヒテルはここがどこかはたいして気にしていなかった。

 〝世界最高峰のダンジョン〟

 それが【富士の樹海ダンジョン】の別名であった。

 しかし目の前に広がる風景が、本当に世界最高峰なのか疑問がわいてきた。

 こののどかな風景にどれほどの危険が待ち受けているのか想像できなかったからだ。

 それが逆にリヒテルとしては〝怖い〟と感じられたのだ。

 リヒテルの表情にそれが浮かんでいたようで、ケントはニコリと微笑む。


「リヒテルだけだな。ここが〝危険地帯〟だと認識しているのは。ここは世界最高峰のダンジョンだ。それなのに入った瞬間のどかな風景が広がる。そうするとみんなのように一瞬気を緩める。それがこのダンジョンの怖いところなんだ。」


 そういうとおもむろに足元に転がる石を拾い、少し離れた場所に投げる。

 するとどうだろうか……


 地面に石がぶつかるや否や、突然地面が陥没したのだ。

 しかもそこから何か根のような太さ20cmはあろうものが伸びてきた。


 それが〝敵〟だと最初に認識したのはレイモンドだった。

 レイモンドはとっさに投擲ナイフをその怪しい根に投げつける。

 そこそこ高い素材を使用したナイフだったためか、うまくその根に刺さりひるませることに成功した。

 このパーティーには盾役はおらず、あくまでも攻撃主体の編成であった。

 唯一ケントがそれをこなせるが専門家と比較すれば見劣りしてしまう。

 その為にいち早く〝敵〟を見つけ、先制攻撃を仕掛ける、もしくはターゲットを自分にいったん集め、攻撃をいなし続ける。

 それがレイモンドの役割であった。

 その役割をこなすために前線へと躍り出たレイモンド。

 その手には二振りの両刃の短剣が握りしめられていた。


「解放!!フレイムエッジ!!アイスエッジ!!」


 レイモンドがそういうと、短剣が光だし、次の瞬間には左の短剣からは炎が、右の短剣から冷気があふれ出ていた。

 レイモンドが装備している短剣は魔導具【炎王】【氷王】というものであった。

 二本の魔導具はそれぞれ刃渡り70cm弱で、長くも短くもなかった。

 柄の先端に付けられた魔石(マナコア)が動力となり、柄に組み込まれた魔導回路が魔素(マナ)を魔力に変換し、それを魔法へと作り変えていた。

 つまり本人の魔素(マナ)・魔力は一切使用していないのだ。

 その為すべての魔素(マナ)・魔力を技能(スキル)に回すことが出来る為、レイモンドは驚異的な身体能力で躱し続ける事が可能となっていた。


「しっかりするでござる!!」


 レイモンドが時間を稼いでいる間に、ギルバードも戦闘態勢に入っていた。

 ギルバードは穂先が三又に別れた和槍を手にしてその根に突撃していく。

 〝両鎌槍〟〝十字槍〟と呼ばれるもので、突く・切る・払う・薙ぐといった様々な攻撃方法を可能とした接近・近接距離戦闘用の武器であった。

 ギルバードが突進していることに気が付いたレイモンドがすぐにその場から一瞬にして距離を取った。


「塵となれ!!ぬおぉぉぉぉぉ~~~~~~!!」


 突進力と膂力をもって高速の突きを放つギルバード。

 その威力をもって根はどんどん切り刻まれていった。

 

 ギルバードは一度引くと、再度攻撃をしようと槍を構えた。


「危ない!!」


 レイラの声とともに、ギルバードの背後で爆発音が聞こえる。

 別の根が地面から姿を現し、背後からギルバードを攻撃しようとしていたのだ。

 レイモンドも気が付き対処しようとしたが、若干距離があり、間に合わなかった可能性があった。


 レイラは弓を構えると、すぐさま次の矢を放つ。

 数か所からドカンドカンと爆発音が聞こえてきた。

 その場所を見ると、うねうねと動く根が見つかる。


「よく見つけたねレイラ。」

「ケントさんは気が付いていたでしょ?」


 ケントは悪びれる様子もなく、肩を竦めて見せた。

 それを横目にレイラはさらに矢を放つ。

 ギルバードとレイモンドが対処しているほかの根を主に倒して回っていた。

 

「【レム】お願い、力を貸してちょうだい。」


 ジェシカが虚空に何かをお願いすると、光が集まり20cmくらいの光の球体が姿を現した。

 そしてその球体から何か光のようなものがギルバードとレイモンドに飛んでいき、ぴたりと張り付いた。

 その光が体を包み込むと、吸い込まれていった。


「助かる!!」

「かたじけない!!」


 先ほどまでよりも動きがよくなる二人。

 ジェシカが使用したのは技能(スキル)【精霊術・光】。

 光の精霊【レム】の力を借り受け、回復や補助を行うのだ。

 実力的には普通の回復魔法だったり、補助魔法のほうが効果が高く、【精霊術師】は器用貧乏と言われることあ多かった。

 しかし、【精霊術】には通常の魔法と比べてメリットがあった。

 それは消費魔素(マナ)が極端に少ないのだ。

 つまり、継戦能力が高いのだ。

 もともとザックの指揮かで小隊を組むことが多かった4人だけに、その連携力は高かった。

 実際ここまで対処してきたのはこの4人であった。

 ケントは手を出す気はないのか、静観するにとどめていた。

 ではリヒテルはというと……


「見つけた……」


 リヒテルは手にした魔銃【RF2021】を手にして周囲の気配を探っていた。

 ちなみに魔銃【RF2021】は、ライフル型魔導機械で、カートリッジ式魔石マナコアを装填することで、実弾を強化して射出することが出来る。

 根が現れてからリヒテルはすぐにその本体を探していた。

 巧妙に隠蔽されており、その姿を現すことはなかった。

 現に、斥候であるレイモンドも戦闘に気を取られてしまいそれを探すことが困難な状況となっていた。

 その為代わりにリヒテルが探索を代行していたのだ。


「【属性付与(エンチャント)爆発(エクスプロージョン)……」


 リヒテルが技能(スキル)を発動させる。

 魔銃に魔法陣が張り付き、吸収される。

 そしてリヒテルは狙いすますよに、自信をもって引き金を引いた。


 パスン!!という音と共に弾丸が射出された。

 魔石(マナコア)魔素(マナ)を使って射出したため、爆発音等はほとんど発生しない。


 射出された弾丸は地面に接触すると激しい爆発を起こす。

 そこは何もない場所であった。

 リヒテルたちからも500m以上は離れている場所だ。

 爆発が収まるとそこには球根の様なものが姿を現した。

 500m以上離れてもその大きさがわかるということは、それだけ本体が巨大であることを物語っていた。


「第2射」


 またもパスン!!と軽い音を立てて弾丸が射出された。

 立て続けに飛来する弾丸を危険と判断した球根は地面からさらに多くの根を張りだし、大きな壁としたのだった。

 その壁に接触すると同時に激しい爆発が起こり、継戦中だったメンバーにもその余波が到達する。


 そしてその一瞬であった。

 先ほどまで戦っていた根が突如として姿を消したのだ。

 どうやら先ほどの爆発を防ぐために、本体の近くへと呼び寄せられたようであった。

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