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デモニクスハンター(機械魔を狩る者達)~用途不明のスキル【マスター】は伊達じゃない?!~  作者: 華音 楓
第7章 富士の樹海ダンジョン

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第2節 第1話 新パーティーと契約書

「それじゃあリヒテル、俺が選出したメンバーを紹介する。」


 辰之進との会談の3日後、リヒテルはザックに呼び出され防衛隊第1大隊大隊長執務室へと出頭していた。

 朝になって突如使いの者が現れ、そのまま引きずられるようにしてこの場所へ連れてこられた。

 その張本人はレイラ・川西であった。


 大隊長室に入るとそこにはすでにケントをはじめとした5名の男女がソファーに腰かけていた。

 

「兄さん……じゃなかった川西大隊長、リヒテル・蒔苗特務兵を連れてまいりました。」

「ご苦労様。レイラも座ってくれ。リヒテル、事前に連絡していたはずだが……ってどうした?」


 リヒテルは寝ぼけ眼で何が何だか分からず、混乱の極みであった。

 それもそのはず、本来であればリヒテルに伝わっていたはずの招集命令が何かの手違いで明日と伝わっていたのだ。

 その為か、リヒテルは普通に眠っていたのだ。


「それはすまなかった……後で確認して注意しておく。それにしても今はすでに10時過ぎだぞ?寝すぎにもほどがあるだろう?」


 早い時間というわけではないのに、いまだ寝ていたリヒテルにザックは若干の呆れ気味であった。

 リヒテルは軽い説明をした為かようやく頭が動き始め、状況を理解するに至っていた。


「すみません。久々に魔砲を使わない武術鍛錬をしていたのでつい興に乗ってしまいまして……気が付いたら夜中になってました。」

「そうか、確かに今後は必要になる鍛錬だが……、さすがにやり過ぎというものだろ?」


 あきれた様子のザックは軽くため息を吐くと、自分の机から立ち上がり皆が座るソファーに移動をした。

 それに伴ってリヒテルとレイラも同じように空いている場所に座ったのだった。


「それじゃあ改めて紹介しよう。左から、レイモンド・佐久間。ジェシカ・マーガレット・スコフィールド。ギルバート・イアン・シンクレア。あとはケントとレイラが戦闘部隊だ。後方部隊に(リュウ) 志明(シメイ)が付く。」


 レイモンド・佐久間。

 前リヒテル小隊の盾役、リチャード・佐久間の実弟である。

 職種は斥候を担当しており、兄のリチャードに比べてもかなりのやせ形であった。

 斥候であるために敢えて元の金髪から黒に色を変え、装備品も全て黒とくらい赤に統一している徹底ぶりである。

 兄リチャードは彼の目標であり、超えるべき壁と豪語する。

 しかし、その性格からか落ち着きは無く、斥候としての腕前が良くとも上層部との折り合いが悪く認めてもらえないという悪循環に至っていた。


「よろしくリヒテル君。まあ、僕がいれば大抵のことは何とかなるから安心して頼ってくれたまえよ?」


 そういうと前に垂れる少しウェイブがかった黒い長髪をパサリと後ろ手に流したレイモンド。

 最後に決めポーズとばかりに左手は腰に、左手は額に敬礼のポーズで挨拶を行った。

 

「ほんんんんっとうにきざったらしいわね。毎度毎度……。まあいいわ。ジェシカ・マーガレット・スコフィールドよ。ジェシカって読んでちょうだい。レイラが参加するんだったら私には依存はないわ。」


 レイモンドをとても嫌そうに睨みつけたジェシカ。


 若干色黒で本人も気にはしているものの、それを上回るほどの美女であった。

 メリハリのある体形に、整った顔立ち。

 ことさら目を引くのはその髪と目の色であった。

 精霊族ダークエルフ種に属するジェシカは純粋にダークエルフというわけではなく、先祖のどこかで混血となってしまったらしい。

 その為か本来であれば黒肌黒目黒髪で生まれるダークエルフとしては異端ともいえる、黒肌赤目白髪という見姿であったのだ。

 そのせいもあり、〝悪魔の子〟として両親から幼いころに捨てられ、【エウロピニア帝国】の孤児院にて幼少期を過ごしていた。

 そのせいかダークエルフはこうであろうという思い込みを極端に嫌い、真っ白な修道服を常に着込んでいた。

 本人曰く、夏用冬用とあるようで、気温の変化によって着分けているようだった。

 

「では次は拙者の番かな。ギルバート・イアン・シンクレアと申す。よろしく頼む。」


 一人だけ異様な空気を身にまとっている人物がいた。

 獣人族オオカミ種のギルバートである。

 ほとんどの獣人族は人間族と大差ない見た目をしているが、ギルバードはそうではなかった。

 一言でいうと二足歩行のオオカミである。

 本人はその姿を気にっており、常につやつやに梳かしている毛並みを周囲に自慢するほどであった。

 そしてその異様さをさらに強めているのがその服装であった。

 純和装。

 本人曰く、過去の映像資料にあった〝日本〟という国の〝侍〟にあこがれを抱き、常に羽織袴で過ごしていた。

 その姿に似つかわしくなく筋肉質の肉体はその装束からはち切れんばかりに盛り上がりを見せている。

 最後に必ず聞かれれるであろう物が一つ。

 左目の眼帯である。

 特段ケガをしているわけでもなく、修行のためというわけでもない。

 むしろ、眼帯からはきちんと外が見える仕様になっていた。

 つまりただのファッションであった。


「私は別にいらないわよね?」


 レイラはそういうと、にこりとはにかんで見せた。

 一人いまだ隊服を着ていたレイラは、赤毛のショートヘアにかわいらしいカチューシャで前髪を抑えていた。

 リヒテルも見知っており、その挨拶で問題はなかった。


「お久しぶりです。店長。」

「劉さん!!」


 最後に簡単なあいさつで済ませたのが、劉であった。

 (リュウ) 志明(シメイ)

 本来は(リュウ) 志明(ツィーミン)という名だったが、【大東亜連合共和国】から【エウロピニア帝国】に移り住む際に(リュウ) 志明(シメイ)と名乗りを変えた。

 精霊族エルフ種は細身の体格の者が多く、弓矢や魔法の扱いにも長けていた。

 しかし劉はそれとは正反対の道を歩んでいた。

 筋骨隆々とまではいかないが、かなりの筋肉質でギルバートとも気が合ういい仲間になりそうな雰囲気を醸し出していた。

 しかし劉はもともと戦闘は得意ではなく、身に着けた筋肉はあくまでも趣味であり、自衛と健康のためと割り切っていた。

 そして【エウロピニア帝国】に流れ着いた流派その得た技能(スキル)をどう生かそうか迷っていた。

 そんな時リヒテルが声をかけ、【Survive】の会計係をお願いしたのだった。

 彼の得た技能(スキル)は【算術】と【話術】。

 その技能(スキル)はあまりにも有能であり、売り上げが前年比の3割ましになったのにはリヒテルも驚きを隠せなかった。

 本人はこれくらい当たり前だというものの、リヒテルは劉に頭が上がらなくなっていったのだった。

 そんな劉も【エウロピニア帝国】崩壊のあおりを受け避難を余儀なくされた。

 そしてたまたま避難先が【ジャポニシア】だったため、ザックは劉をスカウトしたのだった。

 気の知っているメンバーがいればそれだけで心が軽くなるとのザックの判断からだ。


「では、皆さん。これにサインを。」


 一通り挨拶し終えると、ケントはカバンから数枚の紙束を取り出した。

 そこには契約書と書かれ細かい説明と最後に名前の記載欄が存在する。

 それを全員に配り終えると、ケントは説明を始めたのだった。


「お配りしたのは魔導具の契約書です。最後まで読んで納得した方はこのペンでサインをお願いします。」


 ケントから渡された紙はあからさまに怪しさを醸し出していた。

 今ではあまり見かけない羊皮紙に書かれた文面は要約すると、他言無用という内容であった。

 細かな取り決め等も記載されていたが、皆迷うことなくペンで名前を記載する。

 ケントとリヒテルはその潔さに一瞬驚くも、ザックに視線を送るとただ首をすくめるだけであった。

 リヒテルは慌てて自分用の契約書に目を通し、問題ないと考えて自分の名前をすらすらと書き記したのだった。

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