07話 売り捌く貧乳
刃先を向け、問いを続ける俺。
いつでもこの男の首を切る事が出来る。
俺はそうやってきた。
そうやって戦ってきたのだ。
そこに特別な感情は無い。
「その力とは何だ?」
「サイレン様は、音を消す事が出来る力の持ち主なのさ!」
ー音を消す力?
「そうだ!音を消すんだよ!その力で俺たちは金品を盗んでは売る生活をしている!まぁ、信じてもらえねーと思うがな!」
ぺらぺらと喋る男。
「信じるよ」
ツヨシの力を見ている俺。
イセカイから来たと言うマタタキ。
既に2人と会っている。
「なっ!」
盗賊は意外な返答に驚いている。
「その、サイレンという奴の元に案内しろ。俺の探している〝仲間〟がそこにいるかもしれないんだ」
「・・・っ!俺はサイレン様に救われたんだ!お前なんかに教えるわけ無いだろ!」
「俺は仲間を見つけたいのと、剣を返して欲しい事、そしてそのサイレンって奴に会いたいだけだ。別に戦う気なんてない」
「けっ!信じられるかよ!早く斬れよ!俺の首を!アンタ手練れだな。傭兵か?慣れっ子なんだろ?殺人は!」
興奮する盗賊の男を落ち着かせるために
俺は剣を向けるのをやめた。
この獣道を進めば目的に辿り着くのかもしれない。
目の前の男を斬り捨ててしまっても構わない。
しかし、よく考えてみれば・・・
奴らは寝ている俺たちをひと刺ししてモノを奪って逃げる事も出来はずだ。
もちろん強盗は許されることではない。
ただ殺意はなかったのだ。
そこだけは、唯一情けをかけても構わない理由だ。
「よく考えてみたら、お前を斬る理由が無い」
「情けは辞めろ!軍神様に顔向けできない!」
「お前らにも軍神を称える気持ちがあるのか?」
「ああ・・・俺だって傭兵だったからな」
敵に悲しき過去あり・・・
ー回想ーーーー
いや、待て、モブキャラの回想に
使う時間や文字数は無い!
ー回想おわりー
「これが俺の人生だ!さぁ!早く!俺は決闘に負けたんだ!殺してくれ!」
「・・・とにかく、俺はもう戦う気は無い。ので、頼む、そのサイレン様とやらに合わせてくれないか?」
「・・・しょうがないにゃあ」
男は改心したようだ。
自分の話を聞いて欲しかっただけかもしれない。
俺は男の言葉を信じた。
こいつは逃げるようなことはしない。
軍神様を思う気持ちがあるからだ。
鎖を外す。
男と2人で獣道を歩いていく。
不思議なものだ。
先程まで戦っていた2人が
一緒の方向を目指して歩く。
ーーーーー
そこからしばらく歩き
小高い山を登ると古びた協会が
ぽつりと建っていた。
「ここだ」
指を指す男。
「教会に住んでいるのか」
「ここしかない、と言った方が良い。盗みを働いて暮らしているからな」
「そうか」
その大きな扉は
こちらが開けようとする前に開いた。
「フッさん!」
マタタキが現れる。
「探したぞ」
元気そうな様子だ。
争う気などは無さそうだ。
《ムジーク王国ー南西部ー旧教会》
教会内部に案内される。
教壇に女が立っている。
俺が戦った男の顔を見るや否や
女は驚いている。
俺が殴ったそのモブ盗賊の顔は
腫れ上がっていた。
「その顔は!?」
男が経緯を説明をする。
俺を足止めする為に戦った結果
こうなったということを。
「すまん。襲われたから。戦うしかなかった」
俺は弁明する。
「サイレン様、コイツは悪い奴じゃあありません」
男がそう語り、
目の前にいる女がサイレン様である事がわかった。
「そこの少年から話は聞いています」
女はマタタキを指差した。
「私はフレデリック・ショパニだ」
私はその名前を出してみた。
皆、驚くだろうか・・・
何故なら私はあのソーレント戦役で・・・
し〜ん。
「私の名前は西蓮静香です」
シズカはマタタキよりも少し背の高いくらいの女で
髪は肩までかかっており、貧乳だった。
「お前も、イセカイから来たのか?」
「はい」
やはりか。
「フッさん。この人は俺のいた世界にいた人だよ。やっと同じ世界の人に会えた」
マタタキ少年が笑顔で語る。
「それは良かった・・・しかし・・・シズカ。盗みは良くない。俺の剣を返してくれないか?」
あの剣は俺の戦いを称して王様が特注で作った剣なのだ。
宝石が施され、耐久性に優れるレアメタルで作成されている最強の剣。
「ええっ?」
気まずそうな顔をするシズカ。
「当たり前だろう。盗んだものは返してもらう」
「うーん・・・」
「えっ?」
「あっ・・・」
その時、教会の扉が開く。
「サイレン様!作業が終わりましたので報告します!宝石は取り出して宝石商へ売却!刃に使われていたレアメタルは金属商へ引き渡しました!すぐに溶解に取り掛かるそうです!!!」
えっ?
「あっ」
まさか、この貧乳オンナ・・・
俺の剣を!!!