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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第一章 解雇された英雄
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01話 解雇された英雄



《ムジーク王国ー王都ピアノーフレデリック・ショパニ邸宅》



「おはよう!フレデリック!」

「おはようございます!フレデリック様!」

「おやおや、お目覚めですか、フレデリック様」


妹系のマーヤ。

純情系のソニア。

おっとり系のミランダ。


俺が目覚めると共に発情した様な顔で身体をクネクネさせながら近寄ってくる3人の女達。


これが夢にまで見たハーレムというやつだ。


女3人が乗っかってきてもまだ余裕のある大きなベッドが俺の寝る場所だ。


「紅茶が出来ております」

「朝食のご用意が」

「それよりも・・・」


ごほん、と俺は分かりやすく咳をする。


今から王に会わなくちゃならない。

3代目ムジーク王から話があると言われたのだ。

スケベな事をしている暇はない。


俺は起きて、バッ!っと直立のまま両手を広げた。

女達がやらしい手つきで服を脱がせ、俺を着替えさせた。

なんたる愉悦・・・服すらも女に着替えさせる快楽。


今日は鎧は装着しないが、もしもの時に備えて剣だけは腰に添えていた。



ー〝フレデリック・ショパニ〟ー



これが俺の名前である。

職業・・・

まぁ、騎士であり・・・

なんつーか・・・


「気を付けてね!英雄フレデリック様!」

「フレデリック様!行ってらっしゃい!」

「今日も英雄にお似合いな姿ですよ」


そう!

俺は英雄!


女達の見送りを背に家を出て馬に乗る。

そして国王のいる城へ向かう。


俺の故郷は遠い隣の国だ。

雇われの傭兵としてこの国に仕えるようになり、そこで数える事7年。


幾多の死線を潜り抜け、王に評価され

いつの間にか英雄と呼ばれる様になった。


そうして国を守る騎士となったのだ。


特にあの〝ソーレント戦役〟での俺の活躍と言えば英雄譚として近々書物が刊行されるレベルである。


ふふふ、ははは・・・

笑みが止まらない。


馬に揺られながら、考える。

ムジーク王から話があるというのは、何の事なのだろうか?

平和が訪れたというのに、まさかまた戦争でもするつもりか・・・?


うーん・・・


それにしても・・・この不安感はなんだろう。




なにより、この第1話のサブタイトル・・・





ー〝解雇された英雄〟ー





なぁ、これって、

俺の事じゃないのか?

英雄は察しが良いんだ。

俺、もしかして解雇されるの?






≪ムジーク王国ー王都ピアノー国王の城≫





「彼が最強王サイキョウオウ強史ツヨシくんだ」


さて、場面は転換した。

ここは王室。玉座。

俺が来るや否や、王様が横に立つ男を紹介し始めた。


「・・・っつーか、なんスかこれ?」


目の前の男・・・

ツヨシは自分の頭の後部をポリポリ掻きながら気だるそうな顔をしている。

シラミでも付いているのか?


「君の紹介をしているのだよ」と王。

「・・・えっ、自己紹介する意味ある?つーか、オッさん誰だよ」


コイツ、今!

今!英雄である俺をオッサンって言ったぞ!


「私は騎士のフレデリック・ショパニだ」

俺は無礼なこの男に一発その名前を喰らわせた。

かのソーレント戦役で活躍した英雄!

フレデリック・ショパニ!!!



「・・・っふーーーん」


「ふーーーん!?!?」

俺の事を知らないのか?


「・・・で?って感じなんだよね」

ツヨシは相変わらず気だるそうな態度を取る。

こやる気のなさそうな態度がかっこいいと思っているのか!?この男は!



すると、気まずそうに王様が口を開く。



「あぁー、あのさぁ〜、フレデリックくん・・・あの、そのね、アレなんだよ・・・君、解雇するから」




解雇!?



「カカカカカカッ!?カイコですか!?!?」



「うん、解雇」



「ちょっと待ってくださいよ!俺はあの〝ソーレント戦役〟で・・・」



「それは、懐古。3年前の話でしょ?」



「ちょ!国王!いくらなんでもそりゃないでしょ」



「うーん、理由は2つある」

王様が2本の指を立てた。


「ひとつは君を雇う金が尽きそうって事。ほら、西部山脈から流れる川の水が最近枯渇してるでしょ?その影響で隣国から水を買っているわけ。バカ高いのよ。あと私の投資が失敗してヤバいのね。そういう訳で君を雇う金がない。君、分かる?馬車を用意したり、住む場所からメイド3人、あれも人件費とかかかるわけだよね。次にもう一つの理由。このツヨシくん、めちゃくちゃ強いのよ。それでいて、彼、無料で国を守ってくれるらしいのね。そうなったから、ガチで要らなくなったのよ、君」

ベラベラと解雇の理由を語る王様。


えっ、これって流行りの〝追放モノ!?〟なの?


目の前のこの気だるそうな男が強い?


「この男が?強い?」改めて聞く俺。

「うん」とあっさり答える王。


「・・・俺様は強いっていうか・・・最強ってカンジかなぁ・・・」

気だるそうな男だ。


最強、だと?


英雄と呼ばれる私でも謙遜して

そんな事は言わないと言うのに。


「王様!あまりにも酷いだろ!大体、この男、何者なんだ!本当に強いのか?武器も持っていないようだが・・・」


ツヨシの出立ちは全身黒の衣装で武器も持っていなかった。


「・・・心外だなぁ、騎士さん」

ツヨシが唇を尖らせている。


「よし、ツヨシくん。フレデリックくんに力を見せてみたまえ、その〝チート〟とかいう力で」


チート!?何それ?


「・・・マジでイイの?」

こてん、と可愛く首を倒すツヨシ。


「力を見せる?・・・上等だ!決闘してやるぜ生意気坊主!俺が勝ったら・・・!王様!俺を継続雇用してくれ!」

俺は王に訴えかけ、俺はピカピカの剣を腰に添えた鞘から抜き、両手で持ち、構えた。

まさか国王に呼ばれて決闘になるとは思っていなかったが・・・

剣を持ってきて良かった。


鈍く光る剣・・・

これは国王から授けられた英雄の証。


構えたまま俺はその時を待つ。


俺の間合いに入った瞬間・・・

それがこの男、ツヨシの最期になるだろう・・・


「・・・それじゃ、お構いなく・・・」





ーーーーー





目が覚める。

俺は知らない場所にいた。








「おい!生きてるぞ!」

誰かが誰かを呼んでいる。




どこだ・・・ここは?





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