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異世界転移先で王様と勇者が殺されたんだけど、何か質問ある?  作者: 楓紅葉
異世界で殺人現場に居合わせたんだけど質問ある?
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馬と鳥

「大輔、動物の言葉がわかるなら、それを使って目撃者ならぬ目撃動物を探して先生の犯人を探し出せないかって顔だな。」


医者が部屋を出ていったすぐ後に晴彦が俺の心を見透かしたように言ってくる。


「正解だよ、晴彦。」

「大輔、晴彦、ちょっと待ってくれ。二人とも簡単にものを考えすぎだよ。僕も先生殺しの犯人は見つけたい。けれど、それは、これ以上自分たちの身を危険にさらしてまでする必要があるのかな?」

「あるだろ。先生は俺たちの恩師だろ!!」


晴彦がヒートアップする。


「晴彦、ここにいるみんなを見ろ。ここにいるみんなを失う結果になっても先生の敵を討ちたいか?」

「そう言うことじゃないだろう!! お前だって言ってたろう『先生の犯人を探すのは僕たちの身を守ることにもなる』って。」

「言ったよ。今でもその考えは間違ってないとも思う。でも、僕は今回の結果でわかったんだ。それじゃ足りない。魔族、王族、大臣、騎士団、それ以外の誰が犯人だとしても、僕たちは今あげた全ての人たちを警戒して自分たちの身を守らないといけない。僕らの敵は、僕ら以外の全員だ。僕はこれ以上誰も失いたくない。」

「真二・・・。」


晴彦も言葉を失う。先生が死んで、僕らは悲しかった。でも、異世界召喚され、スキルを手に入れ、事件が起きて、どこかでゲーム感覚になっていた部分もあった気がする。真二は先生が死んだあと無責任な俺たちとは違い、リーダーとしてみんなをまとめて責任感を持ち俺たちを引っ張って来てくれた。そしてその結果、大勢の仲間を失った・・・。もちろん彼の責任ではない。むしろ俺たちが生き残れたのは彼の交渉術やリーダーシップのおかげだと俺は思っている。でも彼はクラスメートが死んだのを自分の責任ととらえているのだろう。だからこそ、自分たち以外を敵と言い切ったんだと思う。


「まぁまぁ、私はどっちも間違ってないと思うから、ケンカしないの。真二も危険じゃないなら犯人探しに反対じゃないんでしょう?」

「危険じゃないなら、それはもちろん。」

「じゃあ、みんなで危険じゃない方法を考えようよ。」


流石麗奈。緊迫した空気が和らぐ。


「まずは大輔のスキルだけど、真二はどう思う?」

「まぁ、完全に手がなかった状態にこのカードは渡りに舟ってところだけど、渡った岸に何もなかったら結論は変わらない・・・と、思う。」

「真二、難しい言い回しだと、晴彦と大輔に伝わらないわよ。」


おい、真由子、その言い方は酷いんじゃない? 確かに意味は分かってないけどね!!


「確かに大輔のスキルは起死回生を起こせる力はあるけど、僕たちはお城に入れないし、入れたとしてもそこに事件を目撃した動物がいないと力を発揮できない。」

「逆にいえばそれをクリアしたら犯人が見つけられるってことだろ。上出来じゃないか。」

「でも、確かに城に動物はあんまりいなかったね。街中なら猫とか犬とかいたけど・・・。」

「いや、馬はいたぞ、騎士団の厩舎で飼ってた。」

「馬か。いいぞ。馬なら騎士団が町の見回りとか演習とかに出る時にチャンスがありそうだ。」

「あと、鳥は? 鳥はお城の中にでもいっぱい飛んでたよ!!」

「城の外で調査が出来るならリスクは低い・・・か。その作戦が上手く行くなら僕が反対する理由はないよ。晴彦、さっきは悪かったな。」

「いや、こっちこそ。真二がいつも俺たちのことを考えてくれてるのはよくわかってる。」

「じゃあ、仲直りをしたところで、作戦を詰めて行きましょう。」


希望の光が見えてきた。鳥なら城壁の高さに関わらず自由に出入りしているから俺たちでも接触出来る可能性が高い。みんなの表情も心なしか元気を取り戻しているように見える。


それから一週間。真二たちは情報収集に奔走し、俺たちは傷の治療とスキルの把握に全力を尽くした。詩織の体が良くなるまで残り3週間。それが俺たちの国外退去までの時間。つまり犯人を見つけだすまでのタイムリミットだ。


真二たちの情報収集のおかげで、騎士団の見回りルートを割り出すことが出来た。あとはいつ決行するかだ。馬に質問する内容は事前に決めてある。しかし問題が2つある。一つは、騎士団がいまだに召喚賛成派と反対派に割れていることと。上手く賛成派に当たれば秘密裏に協力してくれるが、反対派に当たると城に俺たちが怪しい動きをしてると筒抜けになり、身の危険を招く。もう一つは、翻訳スキルレベル2を、どうやって隠すかだ。話し合いの結果、手のうちは仲間以外には秘密にするという掟の様なものが俺たちには出来た。身を守るためのものだ。しかし俺が馬に話しかけている間、馬上にいる騎士団員はその姿を見ているだろう。『変な奴』で、すめばいいが、都合のいい予測はあとで自分の首を絞める。


え? 鳥の方をメインの作戦にすればいいじゃないかって? その通りだ。ただし、俺のスキルが鳥には適用されないというのが判明して、鳥作戦は中止になった。なので今は、馬作戦の問題点をどうクリアするかが最大のテーマになっている。


「みんな、反応が3つ、全て大きいから、警戒して。」


真由子センサーは俺たちの会議の必須アイテムになっている。今回は強い反応、つまり鍛えられている奴らが近づいてきてるってことだ。


「やあ、久しぶり。すまない、お見舞いに来れなくて、城の方でも色々あってね。いや、言い訳だな。命の恩人に会いにくるのが遅くなってすまなかった。」


ラースさんだ。


「命を救われたのは俺ですよラースさん。あなたが飛び込んで来てくれなかったら俺は、いや、俺たちは確実にここにいません。本当にありがとうございました。」


騎士団が敵であろうが味方であろうが、俺は本当にこの人に感謝している。こんぼうが振り下ろされるあの瞬間に彼が来なかったら俺は100%死んでいた。多分、晴彦も、詩織もあの場の3人も。ガッチリと握手を交わす。戦友。その言葉を使う日が来るとは思わなかったが、彼との関係を表す言葉でこれ以上適切な言葉はないだろう。


「皆さんにもお会い出来て嬉しいです。今日はお礼と謝罪とお願いに来ました。」

「それこから先は俺に話させてくれないか?」


ガッチリとした男性がラースの後から現れる。


「こちらの方は?」


真二が少し警戒しながら聞く。


「前騎士団団長のサルジオーネです。」


再び緊迫した空気が辺りを包み込む。

名前:山形 詩織

職業:カッター

レベル: 2

力: 20

体力:39

魔力: 48

器用さ:24

素早さ:46

スキル:翻訳 風魔法Lv2

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