声
「なんじゃ、こりゃ。」
自分でも素っ頓狂と思えるほど変な声が出た。
「どうした大輔?」
「いや、レベルアップしてる。」
「「「「「ステータスオープン!!」」」」」
我先にみんな一斉にステータスを開ける。
「おお、本当だ。レベルが2になってる。」
「各ステータスも上がってるわね。」
「僕は上がってないや。」
「残念だけど、私も変わってないわ。」
「数値も前と一緒。」
上がっていたのは晴彦と詩織と俺だけだった。
「あの時あの場所にいたのが理由だと俺の直感が言っている。」
「相変わらずの直感馬鹿ね。直感もレベル2になったらもうちょっと勘が冴えるんじゃないの、普通は?」
「いや、俺の直感は外れたことないだろ?」
「そりゃわかりきったことだけ言ってれば外れないよね。」
「確かに晴彦は当たり前のことを言うときほど『俺の直感が~』って言うけど、そんなにズバッていうと可愛そうだぞ。」
「おいお前ら、それひどくね? じゃあ、わかりきってないことを言い当ててやるよ。そうだな・・・『魔王を倒すのはこの中の誰かだ』俺の直感がそう言ってる。とかは、どうだ。」
「いや、そのジョーク、全然面白くないんだけど。」
「うん、もう、戦いとか嫌だし。」
「そうだね。この国から出たら田舎でのんびり暮らすんだ。」
「おい、大輔!! それフラグ立つんじゃね?」
「ストップストップ。話が逸れてきたよ。まずはレベルアップの件を話そうよ。」
真由子が本題に戻す。ただしふざけていたのはレベルアップ組3人だけだが。
「そうだね。じゃあ、3人に質問だけどレベルアップして、肉体的にとか何か変化を自覚してる?」
真二は大真面目に聞いてるつもりだが、こちらと結構な怪我人だ。
「いや、真二。体を動かすのもやっとな俺たちにそれ聞いてもなぁ。」
「うん、無駄。」
「たまに真二、失敗するよな。」
「・・・。じゃあ、ステータス画面で変わったのって、レベルと各種ステータスだけ?」
「俺は職業が占い師からフォーチュンテラーになってるな。」
「私は職業がカッターになってる。もう走れないからかなぁ。」
ボソッと詩織は言ったが、俺の背筋が凍りつく。もう走れない・・・あの時の光景が思い出される。そして大男に潰された詩織の右足を。みんなはすでにわかっていたのだろう、俺の様に動揺はしていなさそうだ。
「あ、あと、風魔法がレベル2になってる。カッターって切り裂くものって感じかな? かっこよくない?」
無理に笑う詩織が痛々しい。
「え、俺の直感・・・レベルとかないんだけど。」
「大丈夫、晴彦の直感は初めからカンストだから。」
「ああ、なるほどって、そんなこと俺のステータスに書いてないんだけど。まぁいいか。じゃあ、大輔のあれは?」
「おい、晴彦。あれとか俺のスキルを馬鹿にすんな。俺の翻訳はレベル2だ!!」
「ええっ、まさか2つとも?」
「いや、片方だけだけど、それで職業も変わってる。リスナーに。」
「リスナー? 通訳がリスナーってレベルダウンじゃね。 仕事首になって家でラジオ聞いてます。みたいな。」
「でも、なんかこの職業欄、役に立たないから別に良くね? 通訳の時も通訳の仕事してなかったし。」
「言われてみれば・・・。」
「まぁ、職業欄はおいておいて各ステータス上昇と所持スキルのレベルアップがあるってことか。」
「実際、どれくらい強さが変わるかは体が治ってから試すしかないね。流石に風魔法をここで試すわけにはいかないし・・・。」
確かにあの大男を倒した時の突風もすごい勢いに思えた。この小さな部屋で使うと大惨事だろう。
「そういえば、あの時の最後、詩織の風の力で加速したあと大輔がもう一段加速した様に見えたって言ってたけど、あれってレベルアップの力だったのかなぁ。」
「うーん、情報が少ないから確定するのは難しいよね。」
「真二、違うぞあれは」
「「愛の力」」
こいつらこのネタ一生からかうつもりだろうか?
「で、俺の体はどれくらいで治るんだ?」
「医者の見立てだとあと1週間位かな。で、晴彦が2週間、詩織が1ヶ月で動けるようになるらしい。」
全治と言う言葉を避けたのは多分詩織の足が治ることがないからだ。
「じゃあ、一ヶ月の間に今後のことを決めなくちゃな。」
「そうだね。僕と真由子と麗奈で、隣接する国の情報も集められるだけ集めておくよ。あと、大臣じゃなかった・・・元大臣が僕たちをできる限りサポートするって言ってくれてるから、甘えられる部分は甘えさせて貰おうと思っているよ。」
「真二が彼を信頼に足る人だと思うなら全て任せるよ。」
「みんな反応2。入口方向。」
反応2? 何それ、暗号? そうか、生命反応か。 みんなの顔に緊張が走る。真由子は常に周りを警戒してくれていたらしい。
「おお、目を覚ましたか。よかったよかった。」
医者と看護師と犬が入ってくる。みんなの緊張が解ける。どうやら犬は生命反応に入れてもらえないらしい。
「ありがとうございます。皆さんのおかげです。」
「そんなに畏まらなくてもいい。わしはここの医者をやっているマルコ、こっちが娘のセイラ、で、これがブルックスだ。」
「田中大輔です。よろしくお願いします。ブルックもよろしくな。」
「ブルックスだ。間違えるなよ。」
「ああ、ごめんごめん。ブルックス。よろしくな。」
「まぁ、人間にしては俺に挨拶もきちんとしていいやつだから仲良くしてやるよ。」
「ああ、ありがとう。」
こいつも犬の癖になかなか愛嬌が・・・あれ? 翻訳って人以外にも効くの?
「ほほー、ブルックスがこんなに嬉しそうに吠えるのは久しぶりです。」
「そ、そうですか。ブルックス。みんなとも仲良くしてくれよな。」
「こいつらお前と違って俺の言葉がわからないから無理じゃない?」
そーっと、みんなの様子を伺う。特に変わった様子はない。
「晴彦、ブルックスに挨拶してくれ。」
「え? ああ、ブルックス、よろしくな。」
「何言ってるかわからないって言ってるだろ!!」
「おお、ビビった。急に強く吠えるから噛まれるかと思ったわ。」
どうやら本当に俺以外ブルックスの言葉を理解出来る人はいないらしい。俺の中で全てが繋がった。
スキル、翻訳Lv2
職業、リスナー
声を『聴く者』
名前:神尾 晴彦
職業:フォーチュンテラー
レベル: 2
力: 28
体力:30
魔力:45
器用さ:43
素早さ:38
スキル:翻訳 直感