異世界は不公平だ
はじめまして。
よろしくお願いします。
俺はどこにでもいる普通の高校3年生、田中大輔。
どこにでもあるよな地域で生まれ、
どこにでもあるような家庭で育ち、
誰もが感じるような悩みを持ち、
誰もが体験するようなクラスまるごと異世界転移を体験してる真っ只中である。
「おい、何だよこれ。」
「ちょっと、どういうこと!!」
「キター、これ、キター。」
「まさか異世界転生。」
ざわざわとクラスメートが騒ぎ立てる。
総勢36名の生徒と1名の教師、数えた訳ではないが教室にいた全員が飛ばされていたら計37名がここにはいるはずだ。
「大輔、これって、ひょっとして・・・。」
隣のクラスメートが話しかけて来る。何を隠そう、普通の人生を歩んで来た俺の唯一普通では有り得ない存在、可愛い幼馴染、坂本麗奈だ。中学2年の時から毎朝俺を起こしてくれる実質未来の嫁だ。まぁ、俺の母親が他界したという裏事情もあるが・・・。ちなみに、まだ気持ちを確認したことはない。
「ああ、多分、間違いないだろう。」
綺麗なお城の一角、床には魔方陣、目の前には王女っぽい魔術師、偉そうな王様とお付きのもの達。そう、これは間違いない。
「異世・・・」
「夢ね。」
「そうそう、夢。じゃあ、もう一眠りって、あほー。」
つい、コテコテに突っ込んでしまった。
「あほか!!こんなにリアルな夢があるか。異世界転移、異世界転移だよ。」
「大輔こそあほなの?異世界転移なんて厨二病患者の頭の中でしか発生しない現象だよ。」
辛辣な言葉をかけて来る麗奈にぐうの音も出ない。麗奈の中で俺の厨二病が確定した様だ。
「静粛に!!」
部屋に響き渡る声。
「混乱するのも無理もありません。ですがどうか冷静に私たちの話を聞いてください。」
多分、大臣と思われる人物が話しはじめる。
「ここはアスランと言う国で、多分あなたたちを違う次元から召喚させて頂きました。多分というのは、確証がないだけのことで、あなたたちの様子を見ると間違いないと思われます。目的は魔族によるこの国への侵略を防ぎ魔王を討伐すること。伝承に拠れば魔王討伐により次元の門をが再び開き元の世界に旅立つことが可能になるとのことです。」
つまり強制イベントってことだ。みんな黙ってはいるが不安と失望を感じているようだ。
「もちろん、無理にとは言えませんが、あなたたちは召喚されたことによって、神の祝福を受け取っているはずです。まずはステータスオープンと唱えてください。」
無理にとは言いませんが、帰りたいなら強制ですって言う、上から目線の言葉だ。しかし、それより今は、
「ステータスオープン!!」
魔王なんかとは関わりたくないが、人生で一度は言ってみたかった台詞を恥ずかしげもなく口から発する。はい、何を隠そう俺は厨二病です。
名前:田中 大輔
職業:通訳
レベル: 1
力: 26
体力:29
魔力:15
器用さ:39
素早さ:35
スキル:翻訳 翻訳
おお、これが俺のステータス。ちょっと感動する。が、これがどれくらいの数値なのかわからない。職業が、通訳って? しかも翻訳が2つもついてるし。
「あなたたちには職業の他に各種ステータス、これはそこに並んでいる我らが騎士団で平均30と言ったところですが、多分あなたたちも神の祝福により同程度のものを持っているでしょう、そしてスキルも翻訳と言った召喚によって必ず手に入るスキルの他に最低もう1つは手にしているはずです。」
ステータスを見るに身体能力は何と騎士団レベル。これは嬉しい。が、それより問題は、翻訳である。必須で1つ・・・じゃあもう一つは・・・。 うん、まさかのダブり!! 翻訳が2つ続いてほんや○こんにゃくみたいにな発音になってるけど、まさかの無価値とは。
「おい、俺4個スキルある。」
「え、火の魔法が使えるの?」
「俺は身体強化か。」
自分にも特殊な能力が開化すると思ってた時期も私にもありました。遠い目をする俺。
「大輔は、どんな感じだったの。」
麗奈が現実に引き戻す。
「能力は騎士団と同じくらいかな。でも、スキルが翻訳しかない。」
「えっ。あの人の話では翻訳以外にも必ず1つは手に入ってる言ってなかった?」
「うん、入ってる・・・翻訳が合わせて2つ。」
同情の視線が痛い。
「じゃあ、職業は?」
「うん、通訳。」
肩に手を置いて頷くのやめてもらっていいですか。麗奈は話題を逸らすかのように反対のクラスメート達にステータスを聞き始める。
「あなたたちにはこれから一人一人ステータスの報告をしてもらいます。その後は各自部屋でお休みになって頂いて、明日からこの世界の常識の勉強と戦闘訓練を受けて頂きます。ただし、強制ではありません。その場合は生活の保障を致しますが、こちらの監視下に入って貰います。もちろん魔王討伐までの間です。」
いやいや、魔王を討伐って、簡単に出来ることなの? 下手したら一生軟禁生活ってこと?
「すみません、質問なのですが。」
ここでうちらの頼れる担任、石井先生が初めて相手の言葉を遮る。石井先生は30歳になったばっかりのサッカー部顧問(男)だ。熱血漢でみんなからの信頼もあり頼れる兄貴的な存在だ。
「なんでしょう。」
「まず確認なのですが、監視かと言うのはどのくらいのものでしょう。自由に生活は出来るのでしょうか。」
「そうですね。こちらで用意する家に住んで頂く以外は国外への移動の禁止位のものです。と、言ってもこの都市から出るのは魔物がいるので少々危険を伴うと思われますが。」
「それは脅しですか?」
「いえいえ、気を悪くさせたら申し訳ない。ただの事実です。生活に必要な衣服食べ物は用意します。それ以外の贅沢品が欲しい場合は仕事について頂くという形を取ります。こちらとしても翻訳という能力は外交に適しているので外交の仕事を手伝って頂けるだけでも助かるので。」
とりあえず翻訳しかスキルがない俺でも衣食住は確保できるようだ。
「つまり、危害を加えられる心配はないととらえていいですね。」
「もちろん、王国に損失を出すような行動をとらなければ、安全を保障しましょう。」
「損失とは・・・。」
「まぁまぁ、そんなにピリピリせずに落ち着いてください。そこも含めて明日からきちんとレクチャーさせて頂きます。」
「わかりました。ではもう一つだけ。魔王討伐、私たちに出来ると思いますか。」
「・・・伝承に拠ればですが、400年前に魔王が現れた時は召喚されたものの中からは犠牲者は一人も出ずに討伐出来たとのことです。もちろん私たちも同様の結果になるように全力でサポートするつもりです。」
「わかりました。ただ、一つだけお伝えしておきます。私は教師ですので、生徒たちに危害を加えるようならこちらも相応の行動をとらせて頂きます。」
やだ、石井先生、男前。俺が女子ならファンクラブを作っているだろう。案の定女子からの黄色い声援が飛ぶ。
「わかりました、肝に銘じておきます。では、とりあえず今日はステータスを開示していただいて、休んでいただくという形で願い致します。」
不満はあるが、ここで騒ぐのはあまり賢い判断ではないとみんなが感じているのだろう、特に混乱はなく、案内された宝玉の様なものの前に一列に並ばされる。その時、ワッと歓声があがる。原因はステータスを初めに申告した、我らが石井先生だ。
名前:石井 達哉
職業:勇者
レベル: 1
力: 121
体力:98
魔力:110
器用さ:88
素早さ:103
スキル:翻訳 聖魔法 火炎魔法 土魔法 剣技 ブレイブ 毒無効 探索 気配遮断 透明化 魔力探知 身体強化
この日、俺は異世界は不公平であるということを知った。