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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
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戸惑い




「・・・タイランちゃんがやられた!?」


ツインテールの茶髪美女が口に両手をあてながら遠くの森を見つめている。

次第に目が潤い始めると、ぺたりと地面に座り込み泣き始めてしまう。


そんな彼女を無視して、ゴードンは空を見上げていた。

空中に現れた幾重のも魔法陣、そして放たれた閃光


見たことのない魔法であったが、聞いたことはある魔法だ。



「お、イ・・・ウェット」


ゴードンは両腕を胸の前で組みながら空を見上げつつ、背後にいる男性を呼ぶ。

丸坊主の精悍な顔立ちの男性はスッとゴードンの斜め前へ移動する。


「はい、ゴードンさん」

「さっきの魔法・・・お前の見解を知りた、イ」


ウェットと呼ばれた男性はゴードンの声に応えるように、彼と同じ方向、その空を見上げる。

そして怪訝な顔を示し、何か物申し難い表情を浮かべる。


「・・・お前も同じ考えだ、ナ」

「と、というと?」


「あれは・・・聖遺物の魔法、ダ」

「っ!?」


ゴードンがそう告げると、ウェットだけでなく、鎧を纏った女性も驚いた表情を見せていた。

そして地面にペタリと座って泣いていた女性もピタリと涙を止める。



「・・・聖遺物!?」

「あ、ア・・・聞いたことがあ、ル」


ゴードンの言葉にウェットも頷いて応える。

すると、2人の女性はゴードン達へと寄ってきた。



「まさか、デウスの目的は聖遺物なのですか?」

「えー!すっごい!お宝じゃん!!」


「・・・あの魔法は、おそらくですが、エクスカリバーから放たれたものだと思います」


ウェットは言葉にしつつも疑い深い眼差しで応える。

それは自信があるのかないのか分からない表情だ。


「エクスカリバー・・・本当に?」

「エクスカリバーは聖遺物の中でも特殊よ、かのジークが使っていたものであり、勇者を見定めるための剣とされているわ」



2人の女性は怪訝な表情でウェットを見る。

2人の言葉通り、信じられないという表情の通り、さきの魔法が『エクスカリバー』によるものであれば、村に"勇者"がいることとなる。

俄には信じ難いことであった。



「あの魔法・・・伝承通りです」



空に幾重にも魔法陣が張り巡らされ、その間を光が通り抜ける。

勇者の伝記に良く出てくる魔法であり、いわばジークの必殺技の一つであった。



「真似ることぐらいはできるでしょ?」

「そーだよ!決めつけるの反対!」


「お、イ」

「っ!?」


2人の女性はゴードンが口を開くとビクリと肩を震わせる。

そして、そんな彼女をギロリと睨むゴードン

次第に睨まれた女性陣は冷や汗をかき始める。



「・・・レイン」

「は、はひぃ!!」


ツインテールの少女はゴードンに名前を呼ばれるとビシッと姿勢を正して応える。



「お前のタイラントスライムが一撃で倒され、タ」

「うっ!」



ゴードンの言葉はすべてを物語っていた。

あの魔法は勇者の技を真似たものではなく、確かな威力が込められており、聖遺物であると見立てるのには十分な要素である。



「・・・くはははは・・・くははははは、ハ!」


ゴードンは笑い始める。

その姿に怯えた表情を見せるのは、女性陣だけでなく、ウェットも同じだ。



「聖遺物まであるとは、ナ・・・」



そう呟くゴードンの前に別の女性が姿を見せる。

忍者のような格好をした女性であり、スッと膝をついてから言う。



「お、ウ・・・シェリルどうだ?」

「タイラスの気配が急に消えました」

「・・・そう、カ」


「タイラスの動き、村の戦力、未知の要素は多いです。しかし・・・」

「その分、リータン、すっごいよね!」

「ええ・・・どうでしょうか?今がチャンスだと捉えます」


「う、ム」


女性達の言葉にゴードンは腹を括る。

恐怖を欲が上回った瞬間であった。



「お、イ・・・奪い尽くす、ゾ」

「は、はい!!」



ニヤリと口元を歪めたゴードンは、スッと前へと進み始める。

彼が進む先には、農村がある。

カイルの第二の故郷とも呼べる村だ。


そんなゴードンの後を、1人の男性、3人の女性が続く。



「お金もっちになれるー!」

「ええ、おいしいもの、いっぱい食べましょう」

「ノルンのおいしものは男でしょ!?」


「ふふ」




**********




猛吹雪の雪原にポツリと雪が盛り上がっている場所がある。

まるでカマクラのような丸みのあるものから、微かに灯りが溢れていた。


中にはカイル達いた。

その入り口にはカイルがおり、吹雪く雪原をジッと見つめている。



「・・・カイルくん」


カイルは背後から自分を呼ぶライクの声に気付くと、背後を振り返る。

そこには湯気の立つコップを持っているライクの笑顔があった。



「ありがとうございます」


カイルはコップを受け取ると、中身はただのお湯であった。

スッと口をつけると、中身がお湯なのにおいしいと感じていた。



「カイル君・・・一つ聞いてもいいかい?」

「はい、何でしょうか?」


「・・・ローザ姫を教会に送り届けたら、それからどうするんだい?」


ライクはカイルの隣にスッと座る。



「・・・グランビニアを救うために、レックスさんに会います」

「猊下か」


ライクは一瞬だけ険しい顔を見せる。

その反応にカイルは違和感を覚えていた。



「レックス猊下ならグランビニアを救うことに力を貸してくださるだろう」


しかし、ライクから続く言葉は、カイルの期待に応えるものであった。

だから、カイルは違和感をスッと忘れてしまう。



「そうですか・・・」

「カイル君、グランビニアを救うのは大変だよ」

「え?・・・あ、そうですね」


突然のライクの言葉に、カイルは頷きつつも、怪訝な顔を示す。



「君はグランビニアの産まれではないのだろ?」

「はい、そうですね」


「では、なぜ・・・君がそこまでグランビニアに、引いてはローザ姫に協力するんだい?」

「・・・故郷に、戻るためです」


カイルは顔を俯かせて応える。

どこか寂しさを漂わせており、一言で表すとホームシックになっている印象だ。

ライクは、そんなカイルの反応から、故郷に戻りたいという言葉に嘘はないと感じていた。



「確か・・・リグルカンツだったね」

「ええ、そうです・・・本当に・・・ど田舎なんですけど」


そう言ってカイルは笑うと、釣られてライクも笑う。



「しかし・・・不躾かもしれないが、リグルカンツは開かれた国だ。行こうと思えば、戻ろうと思えば戻れる。君がリグルカンツへ戻るためにローザ姫に協力する理由というのが想像できない」

「あ・・・えっと」


カイルは返答に迷う。

自分が『ミネルバ・ランジェリー』を装着しており、ローザと一定の距離を離れると、また戻ってしまうためだと口にすることはできない。



「困らせてしまったかな」

「あ、いえ・・・大丈夫です・・・」


「カイル君、君の力になりたい。そう思ったんだ」

「え?」


「この旅で、何度も君に助けられた。あの白い蛇はランクAの魔物だ。私達だけでは全滅していただろう」


ライクはそう言って背後でシュルシュルと寝ている巫女のような女性を見つめる。

カイルが白夢と書いてハクムと名付けた新たな眷属であった。

人の姿をしているが、紅龍の次に戦闘力を持つ眷属であり、フェンリルの長であるラドンと同等の戦闘力を持っていた。


ライクの言葉は事実であり、ハクム相手にカイルがいなければ、全滅は必至であっただろう。



「恩返ししたい。私達もカイル君が故郷に戻れるように、力になりたいんだ」

「・・・ありがとうございます」


「アクレピオスの船乗りにも知り合いがいてね、頼めばカイル君をリグルカンツへ運んでくれる。どうだろう?」

「えっ!?あ・・・えっと・・・」



・・・参ったな。

ライクさん、すごいいい人だけど、これは逆に困ったな。

うーん、素直に話すか?

過去の世界だし派手に動いても、平穏な生活に影響なんて出ないよな?


あれ、待てよ。

過去を変えると、戻った時に世界が変わっている可能性もあるよな。

え、あれ、国を救うって歴史を大きく変えることにならないかな?



「・・・カイル君?」

「・・・あっ!すいません!」


「何か事情があるのかな?」

「あ・・・えっと・・・そうです・・・すいません。理由は聞かないでもらえるとありがたいです」

「・・・そうか」


ライクは微笑みながら頷く。

カイルへそれ以上は聞かないと言った雰囲気が漂っており、カイルはホッと胸を撫で下ろす。


しかし、これは選手交代の合図であった。



「おい!カイル!水くせーぞ!!」

「えっ!?」


カイルの背中から声をかけてきたのはケビンだ。

ニカッと笑いながら、カイルの肩を何度も叩く。



「お前は俺達の命の恩人だ!お前が故郷に戻るのに障害があるなら、俺達が排除するのを手伝うぜ!」

「・・・ケビンさん」


ライクが踏み込むのは違和感しかない。

しかし、ケビンならば無遠慮に人の心の敷地を跨ぐことに不思議はない。

だからこその選手交代と役割分担だ。



「カイル君、ケビンの言う通りだ。私達は力になりたい」

「あ・・・えっと・・・あー」



・・・困ったぞ。

どうしようか、強引に申し出を断って関係を悪くするのは良くないしな。

うーん、まずい。




「お前・・・本当はリグルカンツが故郷じゃないんだろ?」

「え?」


ケビンの急な問いかけに対してカイルはハッとする。



「その黒髪・・・リグルカンツじゃ産まれないはずだ」

「あー・・・えっと・・・」


「お前が故郷に戻れないのも、奴隷国だからじゃないのか?」

「・・・ケビン、不躾だぞ」


ケビンの言葉にライクが口を挟む。

しかし、当のカイルは首を傾げていた。



「奴隷国?」

「ああ・・・お前は奴隷だから国に帰れないんじゃないのか?」





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