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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
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魔法少女ユグ



「おい!どーした!?」



村の広場が騒ついている事に気付くと、ケビンが人集りの中へと突っ込んでいく。

そこにはドシルとボルルとガルルの3人が気を失ったように倒れていた。



「・・・眠っているだけだ」


ケビンの心配そうな視線に対して、ライスはボソリと告げる。



「何があった?」

「・・・気付いたらここで寝てやがった」

「気付いたら?」

「ああ、朝になって、こいつらの姿が見えねーって探し回ってたら、ここで寝てたそうだ」



ライス自身も良くわかっていないようであり怪訝な顔を示していた。

そんな人集りの中には、彼らの両親の姿もある。

心配そうに我が子を抱きかかえると、それぞれが家へと戻っていく。


そんな姿を見送るケビン

彼の背後からは丸みのある男性が姿を見せた。



「・・・夜のうちに家を抜け出していたらしい」

「なるほど、悪さしてたってわけか」

「んだ・・・だけど、広場で寝てる。理由がわからん」


「睡魔に負けたってことは・・・なさそうだな」

「んだ・・・オデが村を見回りしてきたが、異常なし」

「・・・そうか」



綺麗に川の字で寝かされていたドシル達

まるで誰かに置いていかれたような印象の方が強い。


考えても何も分からないと、再び周囲に異変がないか探すケビンとマイク

そんな2人の元に、1人の男性が慌てた様子で駆け寄ってくる。



「おい!大変だぞ!!!」

「グース!?どうした?お前がそんなに慌てて?」


走ってきたのは癖っ毛の男性だ。

どこかのんびりしているような容姿をしているのだが、そんな彼が慌てている。

これは一大事だと、ケビンとマイクは険しい顔を見せていた。



「す・・・」


「す?」


「す・・・す・・・す」

「す・・・?す?・・・す?」


「すっごい!美人が!!下着姿で走ってるぞ!!!」



グースと呼ばれた男性は鼻血をダラダラと流しながら、真剣な表情をしているケビンとマイクへと叫ぶ。

2人の時間は微かにだが停止する。



「だから!すっげぇ美人が白いフリフリの下着姿で走り回っているんだ!!ボインボインだぞ!!」


「はい?」





ーー家々を壊して空き地にしている場所

サドラルファの再襲撃で壊された家を片付けて更地にしていた。


第二の広場となりつつある場所の中央には、ハイネはダラダラと鼻血を垂らして仰向けに倒れている。

目がクルクルとしており、その顔は真っ赤であった。

とても幸せそうに気絶しているハイネの周囲をグルグルと回るようにして慌ただしく子供達が走り回っていた。



「ユグちゃん!!待ちなさい!!」

「ユグちゃん、待つ!」

「そうよ!そうよ!!」


何かを追いかけるように走るのはキララとマルルとサララだ。

そんな彼女達の前には、緑の髪を揺らして走る大人の女性がいた。



「ユグ!カイル兄ぃ!探しに行くっ!!」



大人の女性は背後のキララ達へ振り返ると、まるでユグのような口調で叫ぶ。



「カイル君ならきっと大丈夫だから!ね!」

「そうよ!そうよ!」

「それよりもー!!何で急に大人になったの!?」


「ユグ!成長した!!」

「そんな急に成長しないわよ!!」


「これでカイル兄ぃ助けに行けるっ!!」


「危ないわ!!カイル君、ユグちゃんがそんなことすれば心配するわよ!!」


「・・・ユグ!成長した!!」

「そ、それでもユグちゃんでしょ!?待ちなさーい!!」



キララは下着姿の女性の説得を試みる。

大人の女性を少女が諭すという奇妙な光景だ。



「いやっ!」



キララとマルルとサララに追いかけれているのは、白いフリフリのランジェリーを着ている女性だ。

緑の癖のある髪を足元まで伸ばしている。

スラリとした細身なのだが、彼女が走るたびに、その胸は暴力的に縦揺れしていた。

出るところは出ているナイスバディな美女である。


そして、その女性の顔はユグに似ており、ユグが成長すれば、こんな感じの美女になるであろうと思えるぐらいだ。

そして、彼女の背中には金色に輝く剣があった。


下着姿で黄金の剣を背負う美女

眼福なのだから良しとしよう。



「はぁ・・・はぁ・・・もう限界っ!」


サララは呼吸を荒げたままドサリと座り込む。

すると、連鎖的にマルル、キララと次々にドサドサと座り込んでいく。



「・・・どうして、急に大人になっちゃたんだろ?」

「うーん・・・魔法?」

「成長する魔法、聞いたこと、ない」


マルルが知らないのであれば、考えても分からないとキララとサララは唸り声を響かせる。

そして、キララは延々と走り回っているユグを見つめると、ムッとした顔を見せた。


「むぅ!ズルい!!」

「ずるい?」


「すっごい美人!」

「私も大人になりたいなぁ」

「ねー!」


「・・・大人の魅力」


マルルはどこか羨ましそうに走り回るユグを見つめている。

そんなマルルを見て、ニヤリとするのはキララとサララだ。


「ははーん」

「ボイーンってなれればカイル君がふりむいてくれるかもー!そんなこと考えてるんでしょ!?」


「違っ!」



「おい!何があった!?」


そんな女子3人の前に、騒ぎを聞きつけてやってきたのはケビンとマイクだ。

早速、ケビンはグルグルと走り回っている下着姿の女性へ視線を向ける。



「・・・あれは、まさか!?」

「ユグちゃんか!?」


「ユグちゃんと遊んでたら・・・急にパッと光って・・・大人になっちゃった!!」

「光った・・・聖遺物か!」

「んだ!間違いないど!!」



ケビンとマイクには、ユグの異変に心当たりがあるようだ。

どちらの聖遺物の効果は分からないが、『ミネルバ・ランジェリー』と『エクスカリバー』を装備したことで、ユグは大人の姿に急成長していた。


また、ハイネが倒れている理由も、そんなユグの格好を見て悩殺されてしまったからだ。

そして、ユグが女の子に追いかけれれているのも、ユグが恥じらいもなくそんな格好をしているからである。




ユグはケビン達の姿に気付くと、ハッととした顔を見せる。

そして、ぴょんぴょんと軽やかな動きで空き地を離れ、家々の屋根を飛び回ると、そのまま村の奥へと向かっていく。


そんなユグの背後を追いかけていくのは、女の子達ではなく、ケビンであった。




「おい!待て!!ユグ!!」

「カイル兄ぃ!!いないのいやっ!」



ケビンに呼び止められると、ユグは家の屋根で立ち止まる。

そして、クルリと背後を見ると、ケビンをキッと睨んで言った。

その目は潤いを見せており、今にも再び泣き喚きそうだ。



「気持ちは分かるが・・・」


ケビンも今すぐ探しに飛び出したい気持ちである。

しかし、今のユグをそのまま村の外へ出すわけにはいかない。



「とにかく、一旦、家に帰るぞ!!」


ケビンの呼びかけに対して、ユグはそっぽを向く。



「おい!聞いて・・・どうした?」


ケビンはユグが話を聞こうとしないのではなく、何か異変を察しているのだと感じていた。

その証拠に、ユグは森を見つめており、目を細め、まるで何かを観察するように瞳が動いていた。




「・・・何かいるっ!?」


村の外の森を見つめているユグ

その表情はだんだんと険しくなっていく。



「何か?」



ケビンはそんなユグの視線を追う。

屋根から覗ける森に異変はなさそうだ。


そうケビンが感じたその瞬間、森の中から光が放たれる。



「っ!?」



ケビンの目の前をレーザーのような光が通り抜ける。

その光はユグを狙った攻撃のようだ。



「ユグッ!?」

「大丈夫っ!」



ケビンは空からユグの声が響くことに気付くと、彼女は空へと飛び上がっていた。

どうやら、無事、光を避けることに成功していたようだ。


ケビンがホッとする魔もなく、森から続けてレーザーが放たれる。



「えいっ!やぁ!!とうっ!!」


ユグは『エクスカリバー』を抜刀すると、剣を次々と振り払い、レーザーによる攻撃を弾いていた。

剣術とは無縁の動きで剣を振っているのだが、『ミネルバ・ランジェリー』によって向上している敏捷によって、目にも止まらぬ動きに見えていた。



ユグが空から地上に着地したタイミングで、攻撃の主はそのままでは埒があかないと思ったのか、森の中から姿を表す。



「・・・タイラントスライム!?」


ケビンはその正体に心当たりがあった。

森の中から姿を現したのは、王冠を被った紫色のスライムである。

森を覆い尽くすぐらいに巨大なスライムであった。



スライムの表面から無数の触手のようなものが伸びていく。

そのどれもがユグへ狙いを定めていた。



「・・・えい!」


しかし、ユグは『エクスカリバー』を空へと掲げる。

向かってくる触手に対して無防備な姿なのだが、その黄金の剣が煌めき始めると、すかさずユグは剣を振り下ろす。


すると、スライムの頭上、その空から魔法陣が幾重にも張られていき、その間を閃光が走り抜ける。

そして、閃光が地面へ到達すると、白い光が周囲を覆う。



「っ!?」




ーー閃光が晴れると、ケビンの目の前からタイラントスライムは姿を消していた。



「一体・・・何が・・・」



あまりの出来事に、脳の処理が追い付かずに呆然とするケビン

そんな圧倒的な光景を前に、ケビンを現実へ呼び戻すのはカランカランと地面を鳴らす剣の音だ。



「っ!?」



ケビンがハッとしてユグの方を見ると、そこには元の姿に戻っている彼女の姿があった。

地面に伏せて寝ており、ピクリとも動かない。


彼女の傍で音をたて終わらせた『エクスカリバー』はパッと金色の宝玉へと姿を戻す。

すると、ユグの姿はいつもの布の服に戻っていた。



「・・・」


宝玉はコロコロとケビンの足元まで転がっていく、それを無心で拾い上げたケビン



「・・・合体してる」



彼の手にある宝玉

その色合いは白と金色へ交互に変えていた。

金宝玉と白宝玉が一つに合体したと判断できるだろう。


そんな宝玉を見つめるケビン

ふいに彼はハッとすると、血相を大きく変える。



「お、おい!ユグ!!」


ケビンが慌ててユグへと駆け寄る。

倒れているユグを揺さぶり始めるが、すぐにケビンはホッとした表情を見せた。



「はぁ・・・心配させやがって」

「・・・すー」


寝息を立てているユグを笑顔で見つめるケビンであった。



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