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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
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帝国の封鎖網




「おーい!!ドシル!!!ガルル!!ボルル!!!」


広場で遊んでいる3人の悪ガキ

そんな彼らを呼ぶのは、どこか慌てた様子のケビンだ。



「おっ!?師匠!!」

「師匠!!こんちはー!!」

「魔法教えてくださいっす!!」


3人はケビンを大歓迎しているのだが、ケビンの表情が険しいことに気付くと、怪訝な顔を示した。



「何かあったんですか!?」

「・・・カイルを見なかったか?」


ドシルの質問に、ケビンは質問で質問を返す。

とはいえ、質問に答えるカタチにもなっているので、誰も気にはしないであろう。



「そういやー・・・朝から見てねーな」

「おう、俺も見てねーぞ」

「どうせスケベだから、女と遊んでんじゃねーのか?」


3人ともカイルのことは見ていないようだ。

ケビンはグッと息を吐くと、広場から立ち去っていく。


そんないつもと様子の異なるケビンの背中を、3人の悪ガキはジッと見送っていた。



「・・・すげぇ慌ててどうしたんだ?」

「カイルがどっかに消えたんじゃねーのか」

「おい!まさか・・・あいつ1人で森へ遊びに行ったんじゃねーだろうな!?」


ボルルが言うと、ドシルとガルルはハッとする。

そして、ワナワナと怒りを露わにしていた。



「カイルめ!!ちょっと強えからってチョーシに乗りやがって!!」

「ちょっと魔法が使えるからって良い気になりやがって!」

「ちょっとモテるからって気を大きくしやがって!!」


3人は口々にカイルへの不満を露わにする。

どこかで、きっと、カイルはクシャミをしていることであろう。



「おい!!俺達もいくぞ!!冒険だ!!」

「「おおお!!」」


3人の悪ガキはそう叫ぶと、一斉に村の外へと向かって走り始めていた。

そんな彼らを物陰から覗いているのはドールだ。



「はぁ・・・やれやれ」


そう呟いたドールは、そっと3人の後を追う。

悪ガキの面倒も、村の平穏に含まれているため、ドールの仕事量は非常に多いのであった。




*******




「見えてきました!!」



先行するローザの声が森に響いていた。

彼女の声にハッとするカイル達、彼らの視線の先には、確かに煙が立ち込めており、人の気配を感じさせていた。


村が燃えているにしては、煙の勢いも数も少ない。

きっと、日常の営みから出る煙であろうと、カイルは安堵していた。



そのまま森を進むと、森の中で大きな塀に囲まれた村が見えてきた。


村というよりも街に近いのかもしれない。

村へと続く道は整備されており石畳が敷かれている。


街道と呼べる道の先は見えないが、人の通りもそれなりにある様子だ。

行商人や冒険者のような人々が、微かにではあるが道を通っている姿が見えた。

そして、塀の奥には、いくつか背の高い建物も見えていた。



カイル達が村へ近づいていくと、門のところにいる槍を持った兵士達が気付いたのか、大きな声で叫ぶ。



「おい!!何者だっ!?」

「・・・私はグランビニア王女・・・ローザだ!!!」


兵士の声に応えるのはローザだ。

自分の姿がハッキリと見えるように、堂々として手をあげていた。


そんな彼女に気付いたのか、兵士は大きく肩を震わせた。



「む・・・ローザ様!?」


気付いた兵士は、門の奥へと叫ぶ。

平手を口元へ当てながら誰かを呼ぼうとしているようだ。



「おい!人を呼んでくれ!!ローザ様だ!!ローザ様だぞ!!」




ーー村の宿を借りたカイル達一向

宿のロビーで暖かいスープを飲みながら、布団に包まっているのは農民の一家だ。


そして、宿の奥では、ローザが村長らしき髭の長い男性と何かを話している。



カイル達のいる木造りの宿は、歩く度に軋む音がするような、少し年季の入った建物であった。

ロビーにはソファーが並べられており、机も置かれていることから、ここで食事もできるようだ。


カイルはゴワゴワのソファーに腰掛けながら、パチパチと勢いよくなる暖炉の炎の揺めきを見て、ウトウトとしてしまいそうになる。


確かに、どこか落ち着いた心が休まる光景である。

そんな宿の景色以上に、カイルには心が休まる要素があった。

布の服をミネルバ・ランジェリーの上から来ており、傍目にはただの少年に見えるだろう。

やっと下着姿から解放されたのは、ここ最近で最も嬉しい出来事だったのかもしれない。




「・・・りゅ・・・カイル様」


ローザの声に、眠りに入りかけていたカイルはびくりと反応する。

ウトウトとしていた目を擦りながら、声のする方向を見上げる。

そこには、少し申し訳なさそうな表情を浮かべているローザの姿があった。



「お疲れのご様子ですね・・・」

「あ、いえ・・・すいません」


「こちらこそすいません!お休みの邪魔をするつもりはありませんでした・・・」


謝罪と謝罪の応酬では疲れてしまうと、カイルは本題を切り出す。



「それで、どうでしたか?」

「はい、あの家族は、この村で厄介になれるそうですよ。空いている畑があったので、むしろ、助かったそうです」

「良かった!」


カイルは嬉しそうに笑うと、ローザも応じて笑顔になる。

しかし、そんな彼女の笑顔はすぐに曇ることになった。



「・・・悪い話もあるんですね?」


察したカイルの問いに、ローザはコクリと頷く。



「はい、アクレピオスへ続く門の周辺に、帝国やボルボトスの兵士達が陣を敷いているそうです」

「・・・僕らを向かわせないため、そう考えたほうが良さそうですね」


「ええ・・・北帝国は教会と構えるつもりはないため、門自体が占拠されるようなことはありません。どうにか抜け道を探して門にさえ辿り着ければ、アクレピオスまでは無事にたどり着くことができるはずです」

「一旦、それまでが勝負ですね」


ローザはカイルの座っている反対側にソファーへと腰掛ける。

そして、間にある机に地図を広げた。


そこにチョークのようなもので線を描き始める。



「・・・ここが、この村です」




ーーーーーーーー



村 ========= 門

       ○

       ↑

       陣



ーーーーーーーー




「街道を真っ直ぐに進めば門があるんですね」

「はい・・・しかし、おそらく、この辺りで陣を敷いているはずです」


「街道を封鎖しないのは何か理由が?」


街道の傍に陣を設置せず。

通れないように封鎖する方が話は早いだろうとカイルは疑問に感じる。



「ええ、この辺りは教会の管轄でもありますから、迂闊に街道を封鎖してしまうと政治的なトラブルになるのでしょう」


「トラブル?」

「はい、教会は国家間の争いに不干渉という立場ではありますが、教会の権威を汚す行為には熾烈な対応を行います。街道を封鎖してしまえば、教会も黙っているはずはありませんからね」


「つまり・・・旅人に扮してしまえば、街道を使うこともできるかもしれませんね」

「・・・私の魔力係数は知られてしまっております。それは無理でしょう」



ローザは顔を俯かせてしまう。

カイル1人だけなら、彼が言葉にした作戦も実行できる。

しかし、いつかはローザのところに転移してしまうため、まったく意味のないことになる。



「・・・グルリと迂回するしかないですね」

「そこが難しいところなのですが、この村と門を繋ぐ街道は教会の管轄なのですが、それ以外はグランビニアの土地です。つまり、帝国は遠慮なく陣を敷いたり、色々と備えることができる場所なのです」

「なるほど・・・どこにどう潜んでいるか分からないわけですね」


「はい・・・旅人の情報から、街道沿いに陣が敷かれているのは間違いないようですが、それ以外の情報はまったくありません」

「・・・戦闘になるかもしれないということですね」



カイルは宿の天井を見上げる。

いっそ、空でも飛べれば簡単だと考えていた。

グレンが居てくれればと、少し恋しい気持ちになる。

帝国の兵士を倒すこと自体は、カイルには容易いことである。

殺すつもりならば、ガルウェインですら敵ではない。


しかし、カイルは元男子高校生だ。

恵まれない環境に身を置いているとはいえ、人を殺せる覚悟は必要ない世界で暮らしていた。

帝国やボルボトスの兵士との戦闘は避けたいと考えている。



神妙な顔で黙り込むカイルとローザ

彼らは宿の奥から聞こえる階段を降りる足音に気付かないでいた。



「お・・・マイク!!おい!ライル!!!来い!!すごい美女がいるぞ!?」

「おで・・・興味ない」

「どうでも良い」


男性の声に応じるのは無関心そうな声だ。



「けっ!そんなんだから、お前らはいまだにど・・・あ!いてぇ!!」


階段の上から風が舞うと、押されるようにして少年は階段から転げ落ちていく。

頭を押さえながら立ち上がる男性は、カイルとローザをジッと見つめると、ニヤリと笑う。



そんな、どこかで聞いた男性の声に、ハッとカイルは顔をあげる。

そこには、どこかカイルの大切な人の1人である男性の面影がある青い髪の少年がいた。



「えっ!?・・・いや・・・違うよね」

「どうしました?」


カイルは宿の奥を見つめており、その表情は驚きを露わにしている。

彼の視線と表情が気になったローザは、カイルの視線を追う。


そこには、1人の冒険者がいた。

彼はローザと視線が合うと、キザったらしい笑みを浮かべて寄ってくる。



「かかかかかかか!!おい!そこの別嬪さん!!暗い顔してたらビューティフォーが台無しだぜっ!?」

「・・・向こうへ行っていろ」


ローザは軽薄そうな男性に対して、虫を払うような手つきで追い払おうとする。

しかし、その男性は怯む様子もなく、指をパチンと鳴らし、花のカタチをした炎を生み出すと、それをローザの顔の前へと差し出す。



「へい・・・お嬢さん!俺はケビン・・・貴方のお名前を聞かせてください」



青い髪の少年

彼は自分をケビンと名乗った。


確かに精悍な顔立ちや、筋骨隆々とした体格は瓜二つだ。

しかし、顔が幼な過ぎていた。

カイルの中のケビンとは一致しないのだが、共通点が多いのも確かである。




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