子供達の戦いの終わり
「うもーーー!!」
「ハイネ君!逃げて!!」
サララの前に立ちはだかるハイネ
そんな彼を掴んでは投げ飛ばすキングオーク
すでにボロボロになっており、片方の目は潰れ、右腕は折れ、全身は傷だらけの泥だらけである。
「ぐもぉおおおお!!退いてろ!!」
キングオークは倒れているハイネの背中へ叫ぶ。
そして、豚のような顔を笑みで歪ませると、太い腕をサララへと突き出す。
「うもーーー!!やりせんですな!!」
しかし、そんなキングオークの腕へ飛びつくのはハイネだ。
「ぐもおお!!しつこいぞ!!」
腕をブンブンと振るい、その勢いでハイネはサララの前に叩きつけられる。
地面に背中を強く打ち、ゴロゴロと痛みで転がり回るハイネだが、すぐにパッと立ち上がる。
「小生!!倒されるわけにはいかないですな!」
「良い加減、死んでろ!!」
キングオークは太い腕でハイネを上から叩きつける。
鈍い音が響き、血が撒き散る。
「ハイネ君・・・」
「うもーーーー!サララ女史、ユグ女史・・・そして、マルル女史は小生が守るですな!!」
ハイネはそう叫びながら、背後にいるサララへニカッと笑顔を向ける。
もはや鼻は折れ、目は潰れ、口から覗く歯はほとんど折れている。
原型を止めていない痛々しいハイネの笑顔を前に、サララは泣き叫ぶ。
「もうやめて!逃げて!ハイネ君!」
「うもーーー!!小生、情けない!レディにそんなことを言われるとですな!」
そう言うハイネへ2発目の拳が振り下ろされる。
凄まじい轟音と共に、鈍い音がハイネから聞こえる。
「・・・うも・・・うも・・・うもーー!」
ハイネは膝を折るが、決して地には付けない。
ブルブルと足と腰を震わせながら、辛うじて立っていた。
「ハイネ君!!」
「こ、こいつ・・・気持ち悪いぃガキだ!!」
「気持ち悪い!結構ですな!小生、それでも・・・騎士志望!!気持ち悪さで女性を守れるなら本望ですな!!」
震えながらも笑顔で告げるハイネ
彼は女性を背に、圧倒的強者へ一歩も退く姿勢は見せていなかった。
「いい加減!うっとおおしいいいいんんだもおおおおお!!」
キングオークは全身から魔力を放つ。
圧倒的な暴風が周囲を覆い、ハイネとサララは吹き飛ばされる。
ゴロゴロと転がるハイネ
彼が見上げた空にはキングオークの姿があった。
「ぐもぉおおおお!!」
勢いよくハイネを巨体で踏み潰すキングオーク
彼が太い足を乗せている地面からはドロドロと真っ赤な液体が溢れ始めていた。
「は・・・ハイネ・・・君・・・」
そんな様子を虚な瞳で見つめているサララ
手をハイネがいる方向へ突き出すが、そのままパタリと力尽きて気を失ってしまう。
「ぐもぉ・・・寝ちまった・・・これじゃつまらんです」
キングオークは女子が泣き叫ぶ光景が楽しめないと肩を落としながら、サララの元へと向かう。
しかし、そんな魔物の足をギュッと何かが掴む。
「うも・・・行かせない・・・ですな」
「・・・」
キングオークは額に青筋をピキピキと一斉に浮かべる。
そして、ギロリと足元を睨みつけると、そのままハイネの背中へ拳を叩きつけようとする。
「ぐもぉ!?」
そんなキングオークの拳がパキッと氷に包まれる。
「ハイネ君、離れて!」
マルルが息を荒くしながら立ち上がっており、両手の手のひらを突き出しながらキングオークへと向けていた。
彼女は真剣な眼差しでキングオークの足を掴んでいるハイネを見つめており、その視線を熱烈なものだと勘違いしたハイネは、ポッと頬を染める。
「マルル女史・・・小生のこと・・・」
「それ、ない!」
「うもー・・・」
「・・・キレた。完全にキレた。俺、もういいや」
キングオークはピタリと落ち着いた口調で言う。
先程までの変質者然とした口調ではなく、ごくごく一般的な人間の口調であった。
まず、キングオークは足元で纏わりつくハイネをギロリと睨む。
そのまま足を大きく振り上げる。
しかし、そんなキングオークの足も、マルルが放った氷の魔法によって氷漬けとなる。
だが、そんなことは関係ないと、キングオークは足を振り上げると、空中にハイネが舞う。
「う、うもーー!」
空へ巻き上げられたハイネ
彼が降下してくるのに合わせて、キングオークは太い腕をフルスイングする。
ーー畑の奥へと飛ばされたハイネ
そんな彼の安否を気にしながら、マルルは気を失っているサララの前へと立つ。
自分を守るために逃げないでいてくれた友人を見捨てて逃げるわけには行かない。
そうマルルは覚悟を決めてキット目の前のキングオークを睨む。
「こりゃ、別嬪に育つな・・・残念だ」
キングオークはそんなマルルを見下ろすと、軽く腕を振り上げて、その頬を叩く。
パチンっといい音が響くと、マルルは横に倒れる。
鼻から血を溢れさせながら、頬を手で押さえ、マルルはキングオークの顔を見上げる。
「う・・・うぇ・・・」
戦意が失せ、恐怖で涙を見せるマルル
しかし、鼻をスンっと思い切り啜ると、鼻血と涙を強引に止める健気さを見せる。
「ダメだ・・・怒りで楽しめねぇ・・・」
本来は嗜虐心で心が満たされる状況なのだ。
しかし、余りの怒りで楽しめない様子のキングオーク
どんなご馳走を前にしても、激しい感情が宿っていれば、味がしないのと同じであろう。
マルルの首に腕を伸ばしてグイッと持ち上げる。
その手がマルルの魔法で凍りつくが、キングオークは構わない様子で腕を酷使する。
「ぐ・・・ううううう!!」
ギュッとマルルを握る腕に力を込める。
すると、まるで泣き叫ぶ楽器のように、マルルの悲鳴の音色が変わる。
「う・・・・ぐ・・・げぼお・・・ぐ・・・ううう!!がぁあ・・・・」
力を入れたり抜いたり、強めたり弱めたりと愉しもうとするキングオーク
しかし、その顔には不満が満ちたままであった。
「うーん・・・イライラが収まんねー!あー!くそ!あのオスガキ!!」
ハイネさえいなければ、最高の気分であっただろうマルルの姿
惜しい気持ちを抱えながら、キングオークはマルルの顔を見る。
「ん?何を呟いてんだ?」
「か、いる・・・くん・・・・」
「カイル?あっ!?男か?」
「た・・・すけ・・・に来て・・・くれた」
「うも・・・良いところを掻っ攫うですな・・・」
キングオークは怪訝な顔を強める。
目の前のマルルの顔に希望が浮かんでいるからだ。
「ぐもっ!?」
風の刃が舞うと、キングオークの腕の肉の半分まで切り裂く。
筋肉が上手く力を伝えられなくなると、その手からマルルが放たれる。
「きゃ・・・げほっ!げほげほ!!」
咳き込みながら畑の奥を見つめるマルル
そこには怒りで顔を真っ赤にしているカイルの姿があった。
「マルルちゃん!!」
「か、いる・・・君」
マルルはホッと安心したように笑うと、そのままバタリと気を失って倒れてしまう。
「ぐもぉ!!このガキ!!」
キングオークは腕を緑の光で覆うと、カイルの『ウインド・カッター』で与えられたダメージを治療する。
そして、ギロリとカイルを睨むと、そのままピョンと地面を蹴り上げて、空を舞い、着地点にいるカイルを体重と落下速度で押し潰そうとしていた。
そんなキングオークへ向けてカイルは手の平を突き出すと、無数の火の玉を放つ。
「ぶもおおお!!!」
地面から迫る無数の炎の玉に全身を焼かれながら、爆ぜる炎で肉片が撒き散っていく。
どんどんと削られるように小さくなっていくキングオーク
地面へ降下する前に、空中で四散していた。
ーーーリザルトーーー
・キングオークを討伐しました。
・ブースターパック『人類進化論』を1パック入手しました。
・パック開放結果
NEW!『サバイバル』
レアリティ:ノーマル
レベル:☆
タイプ:常時
効果:野生の力が身につく。
NEW!『ゴブリンパンチ』
レアリティ:ノーマル
レベル:☆
タイプ:攻撃
属性:無
威力:5
発動条件:なし
効果:勢いよくパンチを放つ。
NEW!『狙い撃つ』
レアリティ:ノーマル
レベル:☆
タイプ:補助
属性:なし
効果時間:なし
効果:射撃、投擲などの遠距離攻撃の命中率が向上する。
『跳躍』×1
『敏捷+1』×1
・入手経験値
30
・入手ゴールド
20
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