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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
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子供達の戦い




「マルル!!」


青い髪の女の子は、畑の中に隠れていた小石に躓いて転んでしまう。

そんな倒れた彼女の全身には、地面から伝わる振動を感じていた。



「ぐもおおおおお!!女子の幼児!!食い散らかす!!」


マルルは震え、倒れながら背後へ顔を向ける。

そこには鼻息を荒くした豚顔の魔物がいる。

丸々とした肉体をブルブルと揺らしながら迫っていた。



「ぐもおおお!!・・・いで!」


そんなキングオークの頭部に石ころが飛ぶ。

キングオークがギロリとその方向を見ると、キララとサララが土や石など、地面にあるものを投げて交戦していた。



「離れなさい!」

「そうよ!そうよ!」


「いでぇ!!!!!!!」



物凄い声量で叫ぶキングオーク

大気が震え、キララとサララが尻餅をつくぐらいの風圧があった。


そして、すぐ近くにいたマルルは、風に押されるようにしてゴロゴロと転がり、作物の中から出てくると、キララ達の前で止まる。

耳からは血が垂れており、目は虚ろである。



「マルル!」

「大丈夫!?」


「う・・・うぅう」


キララが慌てて泥だらけのマルルへと近寄る。

先ほどのキングオークの咆哮で鼓膜が破れてしまっているようだ。

脳へのダメージもあるのか、意識が朦朧としている様子である。



「ぐへへへええええ!!どう料理しよーーかなぁ!!」


そんな彼女達に影が差す。

それはキングオークが太陽の光を遮ってできたものであり、寸前まで魔物が迫っている証拠であった。


太い腕を突き出して、金髪の少女を掴もうとする魔物

その腕を小さな龍が噛み付いた。



「キュルルル!!」

「ぐもっ!!?!いでぇ!!この蜥蜴!!」


腕をブンブンと振り回すキングオーク

その勢いで、ドラ吉はピューっと遠くへと飛ばされる。



「ドラ吉!!」


そんな横合いからユグが叫ぶ。

そして、両手をキングオークへと突き出す。



「いなくなれ!!」


ユグが叫ぶと、畑の作物は大きく揺れる。

そして、グングンと伸びていくと、キングオークに絡みつき始める。



「ぐもおおおお!!!」


ドンドンと育った作物によって空へ持ち上げられるキングオーク

そんな様子をキララとサララは見上げていた。



「・・・ユグちゃん?」

「これ、ユグちゃんがやったの!?」


キララとサララが顔を明るくさせてユグを見る。

しかし、ユグは顔を真っ青にし、額からダラダラと汗を流していた。


「・・・う・・・うう・・・に、げて!!」


ユグがそう叫ぶと、バタリと気を失って倒れてしまう。

途端に、キングオークを持ち上げていた作物は元の姿に戻ると、空から巨体が落ちてきて、地面を鳴らす。



「ぐも!!いでええええええ!!ケツ!!ケツ打った!!!」


尻を押さえてバタバタと暴れるキングオーク

そんな魔物を前に、倒れているマルルとユグを交互に見るキララとサララ



「・・・キララ!行って!」


サララが叫ぶ。



「え?」

「お母さん!助けるんでしょ!ここは・・・私が・・・」


サララはそう言うと、両手に土を持ち、目の前で尻を押さえて暴れているキングオークへと投げつける。



「サララ!?」

「良いから!行って!!」


「・・・でも!でも!」

「でもじゃない!!友達でしょ!!なら・・・行って!!」


サララは泣き叫ぶようにキララへ言う。


「う・・・ううう・・・」

「良いから!行って!キララ!!!」


「でも!」

「キララのママ!私も大好き!!ずっと優しくしてくれた!!」


「・・・っ!?」

「だから助けて!!お願い!!キララ!」


「ぐ・・・うん!!」


サララの言葉に、キララは背後を振り返らず、畑の奥へと駆けていく。

そして、サララはそんなキララへ目線を送ることなく、次々と地面から土を拾い上げると、目の前のキングオークへと投げていく。




「ぐもおおおお!!健気だもおおおお!!」



全身を泥まみれにされながらも、キングオークはサララの見せた友情に嬉々とした声をあげる。



「だったら!あっち!行ってよ!来ないで!!」

「ぐもおおおお!!お前をぐちゃぐちゃにして!さっきの女子、見せた!!きっと、すげえええ!!悲しむぞおお!!」


「性格悪っ!!死んで!死んで!!」


サララは土をどんどんと投げる。

しかし、動じることなく迫るキングオーク



「う・・・うえ・・・うえええええ!!死にたくないよ!!」


土を投げるのをやめて、サララは膝を折り、泣き出してしまう。

しかし、その姿は逆効果だ。

情けなんて言葉はキングオークにはない。


嗜虐心で顔を歪め、空腹で腹を鳴らす。



「ぐへええええ!!その鳴き声!!さいこぉおおおお!!」


そう言って腕を突き出すキングオーク

魔物は泣き叫ぶサララを掴んで何かをしようとしていた。



ーーしかし



「うもーーーー!!!」



そんなサララとキングオークの間に、全身が黒光する筋肉で覆われたマッスル少年ハイネが姿を見せる。

黒パンツ一丁であり、背中には真っ赤なマントを羽織っている。


キングオークの太い腕を両手で掴むと、背負い投げの要領で、その巨体を地面へと叩きつけるハイネ



「サララ女史!小生が来たから!!大丈夫ですな!!!」



「ハイネ・・・君?」


サララはニカッと笑うハイネを前に、目を潤わせる。

確実に変態なハイネなのだが、吊り橋効果か、何の因果か、このような状況下だから、サララにはどんな英雄よりも輝いて見えた。



「うもーーー!!力勝負ですな!!」

「ぐもぉおおおお!!男!!気持ち悪いぃいいい!!殺すっ!!!」




**********




ドシルは嬉々とした表情でデスキッドと打ち合う。

全身に稲妻を纏い、紫のオーラを纏う刀で素早く鋭く切り込むドシルの剣


ここまでクリティカルヒットはないが、デスキッドの肌には切り傷が増えていた。



「ギギギギ・・・」


このままでは負ける。

そう予見したデスキッドだが、退くわけにはいかないと覚悟を決めた表情を見せる。

後ろへ飛び退くと、ドシルから距離を取る。


互いの間合いは近距離だ。

離れていては攻撃できないだろうとドシルは目を細めてデスキッドを睨む。



「・・・ビビったわけじゃねーな?」


ドシルは刀を下段で構える。

そんな少年へデスキッドは短刀へ魔力を込めて掲げる。



「ゴブリン流の降参か?」


ドシルは鼻で笑うように言う。

しかし、デスキッドが降参したわけではないことは、彼自身が十分に察している。

ピリピリとデスキッドから放たれる殺気は、それだけで肌に痛みを感じるほどである。

その殺気が収まるどころか強まっているのだから、降参などではないことは分かる。



本来であれば、こうして渡り合うことすら許されない相手であるデスキッド

実力以上の力をドシルへもたらしているのは、自分が手に握るうるさい妖刀だ。



「・・・うるせーやつだけど、ま、お礼は言うぜ」


ドシルはそう呟くと、次のデスキッドの動作に集中する。

黒いゴブリンはニヤリと口を笑みで歪めると、魔力の込められた短刀を振り下ろす。

明らかに間合いの外にも関わらず、攻撃のような動作をするデスキッドへドシルは直感した。



「・・・っ!うおりゃああああ!!」


ドシルは全身に稲妻を走らせると、勢いよく刀を下から上へと振り上げる。

彼も彼で、虚空を勢いよく切り裂く勢いだ。



ーーデスキッドの放った剣筋を追うようにして、剣閃が走る。

地面を切り裂き、ドシルへと迫る。


しかし、その目に見えない刃を、ドシルは下から振り上げた妖刀を用いて、その刃を構成する魔力ごと切り裂いた。


ガラスが割れるような音が響くと、デスキッドから続いていた切り裂かれた地面の痕は、ドシルの目の前でピタリと止まっていた。




「バカ ナ ワガ オウギ」


デスキッドは目の前のドシルへ狼狽える。

自身が本能で足を一歩、後ろへ下げていることには気付いていないだろう。



「へへへへ!すげぇ!技だな!!・・・こうか!?」


ドシルはデスキッドを真似て、剣に稲妻を迸らせる。

そして、バチバチと雷鳴が轟く妖刀を振り下ろす。


デスキッドは、間違いなくドシルが自身の奥義を真似てくることを直感していた。

ドシルの正面、その直線から横に逸れるために、地面を勢いよく蹴り上げる。


だが、ドシルが振り下ろした刃から放たれた剣閃は、正面から放たれることはなかった。



「・・・あれ?」


剣先から何も生まれないことに驚いた顔をするドシル

本来、自分の剣筋から刃が飛ぶなんてことは起こらないのだから、彼の疑問は普通ではないのだろう。



「ギギギギ・・・ギ・・・」


しかし、ドシルが奇妙な声をあげるデスキッドへ目を向ける。

そこには、さらに真っ黒になっているゴブリンの姿があった。



「お・・・おろ?」



ドシルがデスキッドの技を真似て放った技

それは正面からではなく、上空から雷を降り注がせるものであった。


ドシルに宿る剣属性の精霊の権能は、彼の体内だけでなく、その周囲の空間すらも体内顕現の場としてしまう。

だからこそ可能になった技であり、デスキッドとは発現方法が異なっているようだ。

妖刀により、精霊の儀を終えていないドシルにも、体内に眠る精霊の力が徐々に現れつつあった。



「ギ・・・ギぃ・・・サドラ・・・ルファ・・・サマ」


そう言い残して、バタリとデスキッドは倒れる。

主君の身を案じて逝く魔物を、どこか物足りない様子で見つめるのはドシルだ。



「何だか、よくわかんねーうちに倒しちまったな」


まだまだ戦い足りない。

そんな様子で呟くドシル


デスキッドとの戦いで、彼の潜在能力はさらに引き出されていた。

目に見えて強くなる自分に酔いしれ、戦いを求めるドシル




ーー彼のそんな心の影に、ひっそりと妖刀の剣先が怪しく煌めいていた。





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