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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
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ドシルの実力



「・・・がっ!」


ドールは吹き飛ばされると、背中を地面へとつける。

立ち上がろとする彼の前には、パッと現れた黒いバンダナを被ったゴブリンがいる。



ギロリと鋭い瞳でドールを見下ろす。

その瞳には、彼の命を奪うことに何の躊躇いもない。

ゴブリンは獲物を弄ぶ習性があるのだが、目の前のゴブリンは他と違う。

そんな印象を受けるに足るほどの深淵なる瞳であった。



そのゴブリンは目にも止まらぬ速さで短刀を逆手に持ち帰ると、そのまま倒れているドールの首筋を切り裂こうと腕を振るう。



「ギッ!?」


しかし、そのゴブリンの刃はドールの前に張られた緑のベールによって防がれていた。

甲高い音を響かせると、すぐにガラスのように割れるベール


黒いゴブリンは警戒して、後ろへピョンと飛び退いた。


すると、ドールの前で割れたベールの破片は、スッと鋭い刃へと変貌して、空へと向かって虚空を貫いていく。

あのまま黒いゴブリンがドールの前にいれば、ダメージを受けていたであろう光景だ。



「・・・ライラ、すまない!」

「ドール!今は集中して!」



ドールの前には1体のゴブリンがいる。

ドールとライラが感じていた強い気配は、間違いなく目の前のゴブリンであろう。


そして、そんなドールの背後には、子供達を庇うようにして立つライラがいた。

彼女の視線はドールと対峙する黒いゴブリンだけではなく、畑の方向にもキョロキョロと向けられていた。



「・・・あれ!オーガだよ!」

「あっちはキングオーク!」



キララとマルルは震える声で言う。

2人の言葉通り、畑の中には両腕を前で組みながら事態を静観している鬼が2体いた。



「あんなのを従えているなんて・・・あいつ、ゴブリンなんでしょ!?」


サララは上位の魔物である2体が目の前の黒いゴブリンに平伏していた姿を思い出す。

まるで自分の獲物だから手を出すなという仕草をしていた黒いゴブリンの姿も思い出していた。



「キュルルルルル!!」

「・・・ドラ吉」


ユグの腕の中で唸り声を轟かせるドラ吉

その目の中に炎が浮かんでいそうな表情は、かの龍も黒いゴブリンを警戒しているようだ。




ーードールはスッと立ち上がる。

そして、両手を左右に開くと、自分の周りに矢をズラリと浮かべる。



「ギ・・・」


その様子を楽しそうに見つめる黒いゴブリン

しかし、すぐに表情を無表情へと戻す。



ドールはそんな黒いゴブリンへ右手を払うと、右側に浮かんでいた魔法の矢が一斉に放たれる。

それを短刀で素早く叩き落とす黒いゴブリン



「馬鹿なっ!」

「コノ テイド」


「っ!?」


黒いゴブリンは無数の矢を弾くことすらせず、クネクネと畝った動きで矢を避けながら、ドールの壁のように放たれているはずの無数の矢の中を進んでいく。



「ぐ・・・」



続けて左手を振り払う。

倍の量の無数の矢が放たれるが、それでも、黒いゴブリンの動きは止まらない。

あっという間に、ドールの前へと立つと、短刀をスッと突き出した。


ドールは腰からナイフを取り出すと、下から上に振り上げ、突き出された黒いゴブリンの短刀を上へ弾く。

しかし、その影から、スッと黒いゴブリンの蹴りがドールの腹部を貫く。


「ギ!」


その蹴りは緑の膜に防がれる。

ライラが放った防御魔法だ。



「ギギギ!」


だが、黒いゴブリンはライラの援護が飛ぶであろうことは理解していた。

ニヤリと笑顔を見せる。



「っ!?」



緑の膜が破裂する。

しかし、その破片は黒いゴブリンではなく、ドールへと向かう。

気付けば、黒いゴブリンの放った蹴りには何かの魔力が宿っていたようだ。




「ぐ・・・がぇぁ!」


ドールは5mぐらい吹っ飛ばされると、そのまま畑の作物の中へと放り投げられたように突っ込む。

その茂みがゆらゆらと揺れると、中からドールの呻き声が響いていた。



「・・・トドメ」


黒いゴブリンがそう呟くと短刀を上に掲げて、ドールが倒れている畑へ向かって振り下ろす。



「ぐあぁ・・・」


畑からドールが飛び出してくる。

その刹那の差で、黒いゴブリンが振り下ろした短刀からは剣閃が放たれた。

刃の先、100mはあろう距離が切り裂かれる。


ライラが咄嗟に放った緑の膜など存在の意味をなさず、地面が裂かれ、作物が舞い、ドールの背中から光の粒子まで舞う。

ギリギリで避けるのが間に合わず、黒いゴブリンの刃に背中を切り裂かれているようだ。



ドールはそのまま前のめりになって倒れる。

そして、手を地面につけながら、顔を横へ背けると、歩み寄ってくる黒いゴブリンをギロリと睨む。



「・・・ギ」


しかし、黒いゴブリンはドールからライラ達へ視線を移す。

トドメは後で良いと考えており、その通り、ドールには立ち上がる力すら残っていなかった。



「待て!私はまだ戦えるぞ!!」


ドールは震える膝に力を入れ、ガッと立ち上がろうとする。

しかし、体重を足で支えるほどの体力がなく、そのまま前ののめりに倒れ込む。



「ギギギ・・・」


倒れながら手を突き出し、怒りの表情を露わにするドール

そんな彼の表情を、黒いゴブリンは一瞥すると、愉しそうに笑う。



「・・・ギギギ!オマエラ ユルス」


黒いゴブリンがそう告げると、静観していた2体の魔物が雄叫びをあげる。



「うおおおおおおお!!!デスキッド様!待ちましたぞ!!」と真っ赤な肌をした鬼のような魔物であるオーガーが両手を振り上げて叫ぶ。


「ぐへへへへへ!!人間のメス、子供、うまい!!」と青い肌の丸みのある豚の顔をした人形の魔物が涎をぶち撒ける。



「半分は俺だぞ!!豚!!」

「がぁああ!!てめぇは殺したら満足だろ!俺は食わせろ!!」


敵を見失い、互いに喧嘩を始めそうになるオーガーとキングオーク

そんな2体へデスキッドは言う。



「オイ ケンカ ヤメロ」


「へい!」

「ショーチ!」



オーガとキングオークが迫る。

ライラはギュッと下唇を噛む。



「・・・皆様、どうか、お逃げください」


ライラはそう呟いた。

このまま子供達を庇い続けても、自分では守りきれないことを察している。

その後の安否は分からずとも、どこかへ走り去ってもらった方が、子供達の生存率は高いだろうと考えていた。



「ライラさん!」

「ど、どうしよう!」

「逃げる、どこ?」


しかし、戸惑う子供達へ、どこかへ逃げろというのは無理な依頼だ。



「お願いです!・・・あそこの・・・家が並ぶ場所へ逃げてください!」



ライラは再び叫ぶ。

オーガとキングオークが向かってくる2方向

黒いゴブリンのいる方向の計3方向以外を指し示す。



「で、でも・・・」


キララは母のいる方向を見て迷う

ライラが指し示す方向は、キララの母がいる場所とは別の方向だ。



「う、うううう!!」


サララは黒いゴブリン達へ闘志を見せていた。



「・・・ママ!パパ!!!!」


マルルは泣きそうな顔を見せ恐怖で怯えている。




ーーそんな混乱を始めたキララ達へユグが言う。



「・・・逃げよう!」


ユグは強い意志のこもった瞳で告げる。

ライラの意思を彼女は理解していた。


そして、ユグは3人を守ることが自分の使命だと考えていた。



「ユグちゃん・・・」

「ドールさんとライラさんを置いて逃げるの!?」


サララはユグへ怒鳴る。

しかし、そんな彼女へキララとマルルは言う。


「・・・サララちゃん、逃げよう」

「何!?マルル!?」


「逃げましょう」

「キララまで!お母さんがいるんでしょ!?」



「逃げよう・・・あっち、走ろう」

「見捨てて逃げるの!?」


マルルはサララを見つめると、少し間を空けてから言う。



「私達、何もできない、邪魔」

「ぐ・・・」



マルルの単刀直入な言葉にサララは黙り込む。

そして、キララはパッと走り出すと、その後をマルル、サララが続く。



「・・・ライラ、ごめんね」

「ユグ様!どうかお逃げください!!」


ユグは目から涙をポロポロと流すと、そのままライラから逃げる3人の女子を見て、そのまま走り去っていく。




「・・・さぁ!私が相手です!」

「ぐへへへへへ!俺はあっちのガキだぁ!」


キングオークはピュンっと跳ぶ。

その丸々しい容姿とは裏腹に、機敏な動きに、ライラが目を見開いて驚く。



「おらぁ!どこ見てんだ!」

「きゃっ!」


そんなライラの前に鬼が迫る。

オーガは太い腕を振り下ろし、緑のバリアで自身を覆うライラへと叩きつける。



「おらぁ!!」



2発目のパンチによって、ライラを覆うバリアにヒビが入る。

続けて3発目のパンチを放とうとするオーガ


しかし、ライラはオーガではなく、子供達を追おうとするキングオークへ掌を突き出す。



「・・・ぐもおおおおお!!」


キングオーガの体を地面から伸びたツタが纏う。

手足を振り回し、ブチブチと自分を縛り付けるツタを引き千切るが、まだ抜け出すことはできないようであり、足止めには成功していた。



「てめぇ!余裕だな!!」


4発目のオーガのパンチによって、ライラのバリアは砕かれる。

そして、衝撃によって吹き飛ばされたライラ


尻餅をついているライラへ、オーガは5発目のパンチを放とうとしていた。

しかし、その腕がパッと斬り飛ばされ、空へとクルクル舞っていく。



「よっしゃー!間に合ったぜ!!」


オーガの前には刀を構えているドシルがいた。

背後を振り返ると、驚いて目を見開いているライラへ言う。



「へい!キューティー姉ちゃん!俺が助けに来たぜ!!」


そう肩で刀を担ぎながらドシルはケビンから教わった決め台詞を放つ。



「・・・貴方は」

「俺はドシルだ!!勇者ドシル!助けに来たぜ!!」


刀を中段で構えると、ノリノリの様子で叫ぶドシル

そんな彼の剣先の向こうには、荒ぶるオーガがいる。




「俺の腕ええええええ!!!このガキぃ!!」


オーガは血の吹き出す右腕を見ると、それを切り裂いたドシルをギロリと睨む。

そして、残った太い左腕を上から下へと振り下ろし、ドシルを叩き潰すようにして拳を振るう。


そんなドシルの体をバチバチと稲妻が走ると、パッとオーガの前からドシルが消える。




「が?」


次の瞬間、オーガの首が胴体からパッと離れる。



「があああ?」


ゴロゴロと転がるオーガの頭部

その瞳がギョロリと上を向くと、そこには満足そうな笑顔を見せるドシルがいた。



「おう!やっぱり、何かこの刀を手にしてから、ちょーし!めっちゃ良いんだよなぁ!」


ドシルがそう語る刀

紫色のドンヨリとしたオーラに刀身は包まれており、その刀身の刃文、波の白い部分は苦悶の表情を浮かべている人の顔の集合体が微かに浮かび上がっていた。



「そ、その刀・・・ムラマサ!?」


ライラは驚愕の表情を浮かべていた。

刀を見つめた後で、その持ち主であるドシルを見つめる。

怪訝そうに目を細めるライラの先には、怨念とは無縁そうな笑顔の少年がいた。




「ムラマサ?」

「ええ、それは悪名高い妖刀よ」


「お?これ、そんなカッケー名前なのか!?」

「・・・何ともないの?」


ライラは少し警戒した様子でドシルへと問う。

しかし、肝心の当人は首を傾げていた。



「あ?いや、別に?カイルにも心配されたけど、何かあんのか?この刀?」

「妖刀が・・・認めた?いえ、抑え込まれているの?」



ぶつぶつと言い始めるライラを前に、ドシルは首を鳴らす。

そして、目の前を向いて、再び刀を構える。

彼の前には、黒いバンダナを巻いたゴブリンがいる。




「よし!後はゴブリンだけだな!よっしゃ!」


ドシルはそう言うと、彼の体を再び稲妻が纏う。

すると、パッとその場から姿を消し、デスキッドの背後へ回り込む。


カイルの放つ『迅速』を参考にした技であり、ドシルの雷魔法で応用した技である。

妖刀ムラマサの力によって、ドシルの潜在能力、その一部が引き出されていた。



「ギ!」


ドシルの動きに反応して短刀で刀を防ぐデスキッド

鍔迫り合いになるデスキッドとドシル



2人の壮絶な剣劇が始める。





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