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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
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月夜の影



「おーい!待たせたな!」

「ただいまー」


カイルとドシルが小屋へと戻る。

ボルルは家の手伝いの時間になったため、帰宅している。


小屋に入ると、その入り口には寝息を立てながら丸まっているドラ吉がいた。


「・・・こいつ、餓死してるかもと思ったけど、元気そーじゃねーか」

「すぴー・・・すぴー・・・」


ドシルはそんなドラ吉を見下ろしていた。

カイルもため息を吐く。

2人とも、急がないとと思ってたが、まだまだ元気そうなドラ吉を見ると、安心を越えて呆れてすらいた。



そんな2人の声を聞いて駆けつけてくる女子4人


小屋にはキララとユグとマルルが裁縫をしており、そこに昼から加わったサララがいた。

女の子4人で楽しく遊んでいたようだ。



「あ!カイル兄ぃ!おかえり!」

「カイル君・・・おかえり」


「カイルとドシル!遅かったじゃない!?」

「そうよ!そうよ!」


「あーわりぃ、ちょっとな」

「ちょっと?」

「ハイネ君、いなかったの?」


「いや、ハイネのやついたんだけど、カイルが機嫌を損ねてな」

「知らないよ、もう」


ドシルがカイルを指で突く。

それを手で払うカイル


しかし、ユグとマルルは首を傾げているが、キララとサララは「あーそれはね」と得心がいったような表情をしていた。



「で、魔石はどうだった?」

「見つけられたの?」


「無理だったな」

「うん、魔法で探す方法も考えたけど、僕とドシルじゃダメだった」


「えー!カイル君でもダメなら・・・難しいわね」

「ねー!ドシルはともかく、カイル君でダメならねー」


「おい!何でだよ!」


カイルはキララとサララとマルルを見渡す。

女子3人は魔法が得意ではない。

使えなくはないが、探知魔法が使えるほどの魔力がまだないようだ。



「・・・魔石、どうするの?」


マルルがカイルへ尋ねる。

そして、ユグが悲しそうな顔でカイルへ言う。



「カイル兄ぃ、ドラ吉・・・死んじゃうの?」

「ユグちゃん」


カイルは膝を折り、ユグと目線を合わせる。


「ユグちゃんが助けるんだ」

「え、ユグが?」


カイルはコクリと頷く。



「そう。魔法で魔石を見つけるんだ。そのためには・・・ユグちゃんの力がいる」

「・・・頑張る!」


カイルの言葉に、メラメラとやる気を燃やすユグ


「ユグちゃんが?」

「魔法なんてまだ無理よ!」

「そうよ!そうよ!」


マルル達はそんなカイルへ怪訝な顔を向ける。


「おう!こいつが言うには、ユグが木属性魔法を使えるみたいなんだ」

「木属性魔法?」


「おう!ガジェッタが、それなら探知魔法も使えるって」


「ガジェッタさんに会ったの!?」

「えー!ずるい!!」


キララとサララはドシルへ叫ぶ。

いきなり詰められて狼狽えるドシル


そして、マルルはキッと燃える瞳をカイルへ向けていた。



「・・・マルルちゃん?」

「カイル君、すけべ」

「どーして!?」




ーーカイル達は小屋の外へと出る。

ドラ吉も起きたようであり、眠気を抱えたままカイルに抱かれていた。


マルルから貰ったネックレスは、一時的に、彼女へ預かってもらっていた。

ドラ吉に食べられてしまっては大変だ。



「・・・ユグちゃん、こう詠唱してみて」


カイルは意外と重たいドラ吉に驚きつつ、ユグへ言う。


「うん!」

「えっと・・・天よ!地よ!世界の記憶よ!」


「天よ!地よ!世界の記憶よ!」


「迷えし我が問いに答えよ!」

「迷えし我が問いに答えよ!」



「・・・何も起こらないね」

「うーん」



ユグの手の平の先からは何も発現しない。

その様子を見て、がっくりとするユグ



「やっぱり、ユグちゃんには無理じゃない?」

「そうよ!そうよ!」


「まだ、早いと、思う」

「おう!俺もそう思うぜ!」


「ドシルはユグちゃんに風で飛ばされたでしょ?」

「なっ!・・・ぐぐううう!!」


「ドシル、だっさ!」

「そうよ!そうよ!」


「うるせー!!」


ドシルはキララとサララへ怒鳴ると、2人は逃げていく。

そんな彼女達を追いかけて、ドシルも去って行った。



「・・・今日は遅いし、帰ろうか」

「うん」


カイルがユグに言うと、確かに空には夕日が浮かんでいた。



「僕とユグちゃんは、そろそろ帰るよ」

「うん、カイル君、ユグちゃん、またね」


マルルは少し照れながら手を小さく振る。

それに応えるようにして、ユグは笑顔で手を振った。



「マルルちゃん、またね!」

「うん、またね!」





***************




月明かりが世界を包み込む。

空には二つの月が仲良く寄り添い、その奥には、天井に生えるようにして街並みが薄っすらと映っていた。


そんな夜空を、どこか恨めし気に見つめるガジェッタ

カイルお気に入りの切り株に座りながら、剣呑な雰囲気を醸し出す彼女へ、ソッと姿を見せるのはお爺さんだ。



「・・・そんな険しい顔をされていては、村の者が怯えてしまいますぞ、ガジェッタ殿」


お爺さんは腰の低い態度でガジェッタへ告げる。

そんなお爺さんへ視線を送り、ため息を吐くのはガジェッタだ。



「その口調、やめていただけますか?」


丁寧な言葉遣いで返すガジェッタ

彼女の微かに露出している肌には鳥肌のようなものが立っており、本当に嫌悪感を抱いているようだ。



「その口調ですかな?」

「はい、気持ち悪いです。と・て・も」


「・・・ひどいのう」


メソメソし出すお爺さん

そんな彼へガジェッタは言う。



「先生、お久しぶりですね。まさか、こんな辺境に身を寄せているとは思いませんでした」

「うむ、そうじゃな」


お爺さんはニコリと笑うと、そのままガジェッタの傍へと立つ。

2人で夜空を眺めながら、言葉を交わし始めた。



「サラとも久しぶりに会えました」

「・・・あまり、あの子をいじめんでほしい」

「あら、世界の平和のためならば手段を選ぶな。先生のお言葉ですよ?」




お爺さんはサラの様子がおかしい原因がガジェッタにあることは察していた。

サラは気丈に振る舞っているが、どこか悩んでいた。

その理由がガジェッタの言葉から理解する。



「・・・カイルを連れて行くつもりか?」

「あの子の意思次第ですね。ふふ、私はあの子から物凄く嫌われていますから、どうかは分かりません」


「お主の強引なところ、相変わらずじゃな」

「人なんて、そう簡単に変わりませんよ」


「ワシにできること、あるかのう?」


「意外ですね。協力してくれるとは思いませんでした」

「ワシはすまないと思っておる」


「・・・あら、意外ですね。傲慢の代名詞である先生から謝罪が聞けるなんて」

「茶化すでないぞ・・・恨んで・・・おるのじゃろ?」

「・・・」


ガジェッタは笑みを崩さずにお爺さんの顔を見つめる。

すると、パッとガジェッタの顔が真剣に染まる。



「力を貸してください」

「・・・ワシに、もう力は残っておらんぞ」


「私は・・・デウス級の精霊を追ってきました」

「そうか」


「森に焼けた大地があります。そこで何があったのか、私はそれが知りたい」


ガジェッタの言葉に頷くお爺さん

そして、少し苛立った口調でガジェッタへ言う。



「知りたい。それだけのために、カイルやドシルへあんなことをしたのか?」

「ええ、フェンリル、2人はそう口にしました。近くに・・・いるんですよね?」


「・・・うむ」


「フェンリルと話すことはできますか?」

「フェンリルなら何か知っておると?」

「可能性はあります」


「・・・機会を設けられるかどうか、それはフェンリル達の意思次第じゃな」



「フェンリルとの窓口、話す機会を得るのを手伝ってください」

「・・・分かった。話をしてみよう」


お爺さんが頷くと、ガジェッタは満足そうに笑う。



「・・・代わりに一つ情報があります」

「む?」


「この地域に四宝があるかもしれないと睨んでいるものがいます」

「四宝じゃと?こりゃまた突拍子もないのう・・・」


お爺さんは呆れたように笑う。

しかし、そんな彼へガジェッタは続ける。



「・・・ゴードンが動いています。背後にはレックスがいるはずです」

「・・・っ!」


ガジェッタの言葉に、思わず悲痛な面持ちをするお爺さん

さらに、ガジェッタは無遠慮に続ける。



「レックス・・・奴は・・・」

「まだ、先生を恨んでいます。ふふ、それでも、それでも先生のことを話す時だけ、レックスは昔に戻りますよ」


「・・・そうか」


お爺さんは夜空から地面へ視線を下ろす。

顔を俯かせており、その表情には後悔の念が浮かんでいた。



「過去からは逃げられない。先生のお言葉ですよ」

「・・・そうじゃな」


「忘れることはできても、逃げることはできない」

「・・・」


「立ち向かわなければならない時が来ます」

「・・・それをカイルへ押し付ける気はないぞ」

「否応もなく巻き込まれますよ」


「・・・」

「・・・きっと、あの子も先生を恨むでしょう」



「もう・・・」






ーーそんな2人を小屋の外から覗くのはカイルとユグだ。



「・・・何の話、してるのかな?」

「さぁ?」


カイルとユグからは2人は遠く、声は少しも聞こえてこない。

逆に足音も響かないだろうと、2人は小屋の影に隠れながら、村の広場へと向かう。




「・・・ドール、ライラ」


ユグが小声で呟くと、パッと二つの光の玉が出てくる。

周囲を照らさないように力を抑えており、暗闇の中にあって目立つことはなさそうだ。



「はっ!」

「ユグ様、お呼びで?」


「うん!ねね!魔石、見つけられる?」


ユグが二つの光の玉に言う。


「お安い御用です」

「はい・・・例えば、小さいものでよろしければ・・・すぐここにも」


ライラが言うと、ユグとカイルの足元が微かに光る。



「・・・これが魔石?」

「はい、小さきものであれば、こうしてすぐに見つかります」

「あの龍の子、その餌にするには十分かと」



・・・思ったよりも話は簡単だった。



そう考えたカイルは夜空をスッと見上げていた。



「カイル兄ぃ!いっぱいあるね!」

「うん、そ、そうだね。ユグちゃん、すごいね!」


カイルはソッとユグの頭を撫でる。

すると、目を細めて、嬉しそうに目を細めるユグ



「お二人も、ありがとうございました」

「これしき、何のこともございません」

「はい!また魔石がご入用であれば、お気軽にお呼びください!」






********




翌日、今日は畑を手伝う日であり、朝から昼過ぎまでカイルは農作業に勤めていた。


この世界の奴隷の労働環境は劣悪であり、週に3日は仕事をしなければならない。

また、6時間も勤務時間があるのが当たり前だ。

その6時間の内、2時間しか休憩時間がなかった。


そんなことを話す村長の言葉に、カイルは奴隷の定義に頭を抱えていた。




「おーい!今日はこの辺で終了じゃぞ!!」


お爺さんの声が響くと、カイル達は畑仕事の片付けを始める。

カイルは畑中のザルを集めて重ねると、倉庫へしまうために村の奥へと歩いていく。




「・・・カイル様」

「ドールさん?」


倉庫の暗がりの中、カイルの耳元へ緑の光の玉が姿を現す。

光からは男性の声が響いていた。



「ラドン殿より伝言がございます」

「また何かあったんですか?」


「はい、どうやら、サドラルファの残党がいる様子」

「え!?」


「周辺の魔物と同盟を結び、近く、この森への襲撃を企てているようです」


「・・・また荒れますね」

「はい、しかし、相手は下級の群れ、水面下で処理はできましょう」


ドールは気にするほどのことでもないと言いたげな声色だ。



「とはいえ、数が数、村に我とサシル殿を置き、フェンリルは群れで迎撃へ向かいたいとのこと」

「・・・分かりました。任せると伝えてください」


「はっ!では・・・」



ドールはスッと姿を消すと、倉庫は再び真っ暗になる。

カイルは『夜目』があるため、暗闇の倉庫の中でも物が見える。



「・・・よしっと!」


そのまま所定の場所へカイルはザルを置く。

そして、倉庫を後にするため、その扉を開ける。



「っ!?」

「あら、こんにちは、カイル君」



カイルが倉庫に出ると、すぐそこにはガジェッタがいた。

いきなりであったため、驚きで尻餅をつきそうになるカイル



「あら、ふふ、驚かせてしまったわね」


カイルを微笑みながら見下ろすガジェッタ

その笑顔に苛立ちを感じるカイルだ。



「・・・何か用事ですか?」

「ふふ、たまたま通りかかっただけよ」


「たまたま・・・ですか?」

「あら、疑い深いのね」


「・・・」

「ふふ、確かに、貴方には関心があるの、確かだものね」


そう言ってウインクするガジェッタ


「関心・・・」

「ええ、色々と、聞きたいこと、あるもの・・・」


含みのある笑顔を見せるガジェッタ

そんな彼女へカイルは言う。



「僕は何も知りませんよ。でも、知っていることがあれば話します」

「ふふ、じっくりと話したいのだけれど、予定があるの」

「予定?」


「ええ、待ち合わせよ」

「誰と会うんですか?」


「ふふ、気になるのかしら?」

「・・・別に」


「それじゃ、またね。カイル君」


ガジェッタはそう言うと、そのまま村の奥へと歩いて行く。

そんな彼女へ怪訝な視線を向けるカイル



彼は嫌な予感が脳裏に過っていた。

まるで聞き耳を立てていたようなタイミングで姿を見せたのだ。

彼の中でガジェッタへの懐疑心は強まっていく。




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