表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
41/92

魔法戦



「・・・ぐっ!・・・うあああああ!!」


カイルはグッと歯と歯を噛み締めると、そのまま強引に肩を木の幹から引っ張り上げる。

肉の繊維がぶちぶちと千切れていくのを感じる。



「やめなさい!戻せなくなるわ!!」


その様子を見て、ガジェッタが叫ぶ。

しかし、カイルは止まらない。



「ぐ・・・うううう!!おおおお!!!」


気合の入った声と共に、自身の両肩を貫いて、木の幹に縫い付けている氷の槍

そこから強引に抜け出そうとする。

彼の両肩の筋肉は千切れ、裂けた血管から血が吹き出し、折れた骨が露わになり始める。



流石にヤバいと察したガジェッタ

ドシルを置いて、カイルの元へと駆け寄ってくる。



「やめなさい!!本当に治らなくなるわよ!!」


そう叫ぶガジェッタ

そんな彼女の背中の先へ向かってカイルが叫ぶ。


その視線の先にはドシルの姿があった。



ーーーインフォメーションーーー

・スキル『犠牲治癒』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー



カイルの姿がパッと凍りつくように動かなくなる。

肩から噴き出していた血もピタリと止まり、彼自身の表情もピタリと動きを止めた。



「っ!?」


目の前のカイルが、まるでドシルへかけた魔法を受けたようになっている。

急な姿の変化にガジェッタは目を見開く。


そして、彼女の背後から微かに声が聞こえた。



「動・・・ける!?」



ドシルの声に、怪訝な顔を浮かべるガジェッタ

彼女がハッとした時には、その背後からドシルが木剣を振り上げて襲いかかっていた。


振り返り様に杖を振り払い、突風を起こして、ドシルを吹き飛ばす。



「ぐあああ!!」


風に飲まれて、森の奥へと飛ばされるドシル

そんな彼が地面に落下する前に、ふわりと風が吹き上げ、彼の体はピタリと止まると、そのまま勢いを殺した状態で地面へ着地する。


そのまま地面に激突すればドシルが大怪我をしてしまう落下速度であった。

そうならないように、ガジェッタは風の魔法で衝撃を殺していたようだ。



その光景を見届けたガジェッタが前を向くと、そこには真っ赤に染まった木の幹があった。

カイルの血の痕を残しているが、肝心の少年の姿が見えない。



「あの坊や!?」


再生を終えたカイルはスッと姿を消していた。

前後左右を見渡してもカイルの姿を捕捉できないガジェッタ

そして、パッと空を見上げる。



「くらえ!!」


カイルは白く輝く拳をガジェッタへと突き出す。

顔を逸らして避けようとする彼女の頬をカイルの拳が通り過ぎる。

その際に、微かにガジェッタの頬に切り傷が生まれる。



「・・・っ!?」


カイルはそのままガジェッタの背後を転がり、すぐに大勢を立て直す。

再び、地面を蹴り上げて、次の攻撃へと移る。



「・・・アイス・フィールド!!」


ガジェッタが微かに呟く。

カイルは全身に悪寒を感じると、拳を引いて、足を地面に突き刺してブレーキをかける。



「がっ!?」


カイルの突き出していた右手がピクリと動かなくなる。

ドシルへかけられていた魔法と同じだ。

目に見えない範囲の物体を凍てつかせる魔法のようだ。


幸い、動かせないのは右腕だけである。

カイルは突き刺した足を引っ張り上げると、そのまま地面を蹴り、背後へと跳ぶ。


そして、動かせる左手を突き出した。



ーーーインフォメーションーーー

・スキル『フレア・ストーム』を発動しました。


ーーーーーーーーーーーーーーー




「っ!?火の魔法まで!?」


ガジェッタはカイルから魔力の波を感じる。

それは、先ほど使っていた風の魔法や獣魔法とは異なる波動

火の魔法の波動であった。




ーーーインフォメーションーーー

・スキル『フレア・ストーム』の発動に失敗しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー



・・・カードが使えない!?



カイルは睨んだ先から炎の渦が生まれようとしているところまでは確認していた。

しかし、まるで、目に見えない力にかき消されるようにして、炎の渦は生まれる前に消されていた。




「・・・複数の属性が使えるようね」


ガジェッタはカイルの拳で切れた頬へ手を当てながら呟く。

そして、自身の血が微かについた掌を見ると、ギュッとその手で拳を作る。



「相手は子供よ・・・落ち着きなさい・・・私・・・」


顔に傷を付けられたことで激昂しているようだ。

ガジェッタは笑顔のままだが、その目は笑っていない。



カイルはそんな怒気に当てられながら、自身の手札を覗く。



ーーー手札ーーー

『黒狼牙』

『パリィ』


ーーーーーーーー




・・・2枚だけ

『パリィ』はともかく、『黒狼牙』は使いたくないな



顔がフェンリルのようになる『黒狼牙』の使用は控えたいカイル

フェンリルとその関連性を見られなければ、まだ何となると思っていた。



そんなカイルの意思を察したラドン達は、血を吐く思いで場の成り行きを見守っているのだから。

ここは我慢している彼らの思いを汲んで、何とか、このままガジェッタを退散させたいとカイルは考えていた。




「・・・貴方といい、そっちの子といい、天才ばかりがいるのね」

「天才?」


「ええ、あっちの子は剣の才が間違いなくあるわ。そして、貴方は魔法の才」

「どうして僕に魔法の才が?」


ドシルは理解できる。

しかし、カイルはカードがなければ魔法が使えない。

才能があるとは思えない。



「・・・複数の属性が使える時点で魔法の才あるわ」

「普通は、1人、1属性なんですね」


「ええ・・・そうよ」

「貴方も・・・天才というわけですね」


ガジェッタは風と氷の魔法を使っている。

さらに、カイルの魔法を無効にする魔法もだ。

間違いなく複数の属性の魔法を使えるのだろう。



「ふふ、ありがとう・・・さて、私が貴方の質問に答えたのだから、貴方も答えてほしいのだけれど」

「それは卑怯ですよ」


「ふふ・・・そうかしら?」



ーーピローン♪


ーーーインフォメーションーーー

・通常ドロー

スキル『ファイア・ウォール』を手札に加えました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




・・・炎の魔法

これじゃ、ダメだ。

また無効化される。





「・・・私、親を殺されたのよ」


急に身の上話をするガジェッタ

そんな彼女に対しても、悲痛な表情を浮かべるカイル



「ふふ、同情してくれるの?」

「・・・親を無くすのは、辛いですから」

「あら、優しいのね」


「・・・それが質問したい理由ですか?」

「ええ、そうよ。復讐の手掛かりが得られるかもしれないの」


「親を殺した人の手掛かりですか?」

「ふふ、その通りよ。私の気持ちが分かるなら、教えてくれると嬉しいわ」


「・・・」


カイルは少し迷う素振りを見せる。

目の前のガジェッタが同情を引くために、嘘を言っている可能性だってある。

もし、本当だとしても、それでフェンリル達のことを教えて良いことにはならない。



・・・デウス級の精霊のことを話すのは危険だ。

だけど、フェンリルのこと、どう説明する?

話すにしても、絶対に詰められる。


きっと、フェンリルのことだけに話は止まらない。



「・・・」

「あら、その表情・・・やっぱり、色々と知っているようね」


「知りません」

「ふふ、そんな嘘、通るわけないわよ」




ーーピローン♪


ーーーインフォメーションーーー

・通常ドロー

スキル『ライトニング・アロー』を手札に加えました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




カイルは手札に加えられた『ライトニング・アロー』を見て閃く。

雷属性の魔法、それにピンっと来ていた。



・・・そういえば、『神狼爪』は無効化されていなかったな。

『迅速』は風、『フレア・ストーム』は火

『神狼爪』は何か分からないけれど、全部の属性を無効化できるわけじゃないかもしれない。




カイルはドシルの位置を確認する。

地面に倒れたまま動かないが、落ちる瞬間、ガジェッタがその落下の衝撃を殺していた。

おそらく無事であろうとカイルは予測していた。


そして、ガジェッタは本当の悪人ではないとカイルは睨んでいる。

情報を得ようとする手段は強引だし、カイルの肩も治す予定とはいえ怪我をさせたのは事実だ。

だが、命を奪ったり、大怪我をさせたり、後遺症を残したりという意思はないように思う。




・・・そもそも、人なんて、殺せるかな?

いや、絶対に無理だ。

やっぱり、逃げよう。




カイルはドシルを連れて村へ逃げることにした。

ガジェッタが村まで来たところで、自分達の対応を考えると、村のみんなを殺そうとはしないと思った。

だから、ケビンやお爺さんが対応してくれるだろうと、対応の責任を押し付けることにする。




ーーーインフォメーションーーー

・『ライトニング・アロー』を発動しました。

・『ファイア・ウォール』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー



カイルは右手に雷、左手に炎の魔法を宿せる。

その光景に、ガジェッタは驚愕の表情を浮かべていた。



「ダブル!?」


カイルの姿を見てそう叫ぶガジェッタが印象的だったが、カイルはそのまま二つの魔法を放つ。



雷の矢は虚空でバチバチと姿を消す。

炎の壁は地面に線を引くぐらいしか現れない。


どちらもガジェッタの力で無効化されていた。

しかし、同時に、複数の属性を無効化するのは至難の技であったようだ。


カイルとガジェッタの間

空中と地面

『ライトニング・アロー』と『ファイア・ウォール』がかき消された場所


そこから赤と黄色の閃光が放たれる。

完全に無力化できなかった魔力が、器となる術式を失い、光となって溢れ出るようだ。




「っ!?」


あまりの眩しさで目を閉じるカイルとガジェッタ




ーー閃光が晴れると、ガジェッタは素早く周囲を見渡す。

前後左右、上下にカイルの姿は見えない。


ガジェッタは間髪入れず、杖をクルクルと手で回転させながら、呪文を呟く。



「・・・サーチ・ファイア!」


ガジェッタが魔法を放つと、杖の先から炎の小さな玉が浮かぶ。

その玉は、ドシルが落下した場所へ向かって進み始める。



「っ!?」


炎の先には、ドシルを抱えて逃げようとしているカイルの姿があった。



「・・・友達、想いなのね」


ガジェッタは気を失ったドシルを担いでいるカイルへ皮肉混じりに告げる。



「こいつは友達なんかじゃありませんよ」

「ふふふ、貴方だけなら逃げられたのではなくて?」


「・・・」


カイルはゆっくりと後退り、その動きに合わせてガジェッタが動く。

そろりそろりと2人は距離を保ちながら、互いを見つめ合いながら、森の中をゆっくりと動く。

そして、丁度、そんな2人の間に、大きな木が挟まる。

互いに互いの姿が見えなくなると、カイルは勢いよく森を駆け始める。




「・・・っ!?」


風がパーっと舞うと、カイルの目の前にガジェッタがスッと降りてくる。

逃げられないと悟れるその様子はカイルから逃げる選択肢を奪おうとしていた。



「ねぇ、素直にお話しない?」

「しません」


「あら、それは残念・・・村の誰かに聞こうかしら?」


ガジェッタは嗜虐心を浮かべた笑顔を見せる。

その表情にカイルは下唇を噛む。



ーーそんな時だ。

どこからともなくケビンの声が響く。



「おうおう!良い度胸してんじゃねーか!姉ちゃんよ!!」

「あら?」


ケビンの声と共に、木々の奥が何かに照らされて真っ赤に色を変える。

すると、炎の槍が勢いよくガジェッタへと向かってくる。


それを余裕のある動作で杖を振るい、叩き落とすガジェッタ



「ふふふ・・・サラマンダーの炎ね」


ガジェッタは森の奥へ視線を向ける。

そこには青筋を立てているケビンの姿があった。


手には炎の槍を持ち、ピクピクと口元が怒りで引き攣っている。



「おうおう!ねーちゃんよ!!俺の息子に何か用事か!ああん!?」


まるでチンピラのような口調でガジェッタへ迫るケビン

怒り心頭の様子だ。


そして、ケビンの背後にスッと白い影が見えた。

フェンリルの誰かが呼んできてくれたようだ。




「ふふ、久しぶりね・・・ケビン」


互いに互いの姿を視界に捉えるケビンとガジェッタ

すると、顔見知りのような発言をしたのはガジェッタの方だ。


そして、対するケビンの方も、その表情を段々と変えていく。

怒りに染まっていた表情がだんだんと怪訝なものへと変わり、やがて、唇が震え、カタカタと歯が鳴り出す。



「あん!?・・・あ・・・あ・・・」

「ふふ、相変わらずのようね」


「し、師匠!!」


ケビンはハッとした様子で叫ぶ。

その表情は青褪めており、2人が旧知の中だとすれば、その力関係が一瞬でわかる光景だ。



「へ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ