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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
39/92

会合




広大な山々が連なる背景

深く生い茂った森を切り拓いた上に、ただ石をじゃらじゃらと並べただけの粗雑な道


そんな道の上を浮かぶようにして、1人の魔女のような格好をした女性が森を行く。

紫色の髪を腰まで伸ばし、魔女のようにゆったりとしたローブで身を包み、頭には大きな三角帽子を被っている。抜群のプロポーションの美女だ。


彼女は余裕のありそうな表情を浮かべているが、どこか警戒心に満ちている様子だ。




「・・・おかしいわ」



魔女のような女性は微かに呟く。

彼女は周囲の魔力を肌で感じとっていた。

その魔力が異様に落ち着いている。


魔物や獣、人や精霊

それらから放たれる魔力は異なる。

電波に周波数があるように、魔力にも波のようなものがある。


人には人の波があり、魔物には魔物の波がある。

そして、魔物は種類によって波長が異なり、その魔力の波長の差異によって、その種族が特定できる技術があるほどだ。

森のような魔物の巣窟と呼べる場所であれば、様々な魔力の波長が混ざり合い、複雑に絡み合っているはずなのだ。



「落ち着き過ぎている。清々しいほどだわ」



彼女は周囲を見渡す。

まるで心霊スポットにでもいるような心境で辺りを見渡していた。


デウス級の精霊が向かったとされる場所であり、彼女が感じている周辺の魔力の落ち着きぶりは、異変として報告しても頷いてもらえるだけの情報である。

これがデウス級の精霊による影響なのかどうかは定かではない。

しかし、恐怖を感じるには十分な要素であった。



「・・・っ!?」


そんな彼女の表情が歪む。

森を抜けた先、そこには真っ黒な焦げた大地が広がっていた。



「これは・・・」



即座に虚空から赤い宝玉が先端に付いている杖を取り出すと、クルクルと一回転させ、前方へと突き出す。

収納魔法による独自空間からアイテムを即座に取り出す。

並の使い手はそもそも収納魔法を使えない。

かなりの使い手であろうと、独自空間からアイテムを出し入れするのに数秒は要する。

一瞬で独自空間から杖を取り出す彼女の魔法技術の高さは一目で理解できるであろう。



その杖を地面へと突き刺す。

すると、杖の先から八方向に光の線が地面を走っていく。



「・・・プロミネンスの履歴」


女性は目を瞑りながら呟く。

地面に残された魔力の残滓を読み解き、この光景の要因を探っていた。



そして、目を見開いた彼女は周囲を再び見渡す。

地平線の彼方まで黒く焦げた大地が広がっており、森の続きは遥か遠くに見えるだけであった。



「誰かが戦っていた・・・」


黒く焦げた大地を眺めている女性

その表情に戦慄が走る。



「この魔力・・・やっぱりデウス・・・」




「むう、先客がおるようじゃな!」

「っ!?」



彼女の背後から、満足そうな笑みを含んだ声が響く。

魔女のような格好をした女性の背後には、真っ赤な髪を後ろで結っている着物姿の女性がいた。

黄色い瞳には好奇心が満ちており、笑みで開いた口からはギラギラとした白い歯が覗く、耳の代わりに前方へ向かって生えている角が特徴的だ。

そして、お尻からは先端が鋭利になっている尻尾が生えており、バタバタと地面を軽く叩いていた。



「・・・アナタは誰かしら?」

「ふむ・・・人間の常識に疎いわっちにもわかるぞ!人の家を訪ねてきたものから名乗るのが礼儀!」



不機嫌そうに頬を膨らませる赤い髪の女性

両腕を胸の前で組み、ぷんぷんと可愛らしく怒っているようだ。


しかし、その幼稚な態度とは裏腹に、木々が騒めき、空間が歪むのではないと思うほどの圧が放たれている。

尋常ならざるものであることは確かだと、魔女風の女性は固唾を飲む。



「・・・わっちは紅龍じゃ!グレンとでも呼ぶがいいぞ!」


周囲の圧がパッと晴れる。

名乗る順序を指摘してみたものの、やっぱり、そんなことはどうでも良いかと気分を一転

急にご機嫌な態度でパーっと笑いながら名乗る龍


よく言えば天真爛漫

悪く言えば傍若無人


相反する意味ではないが、彼女を四文字熟語で表すなら、どちらかに票が割れるであろう。



「私はガジェッタよ」

「うむ、時に、ガジェッタよ!何しにここへ足を踏み入れたのじゃ?」



グレンは首を傾げながら問いかける。

そこに疑うような意図はなく、土足で踏み入った彼女を責める意思もない。

好奇心が100%である様子だ。


ガジェッタはそんなグレンの態度に警戒を強める。

彼女にとって、古龍と呼ばれる悠久の時を生きている紅龍との会合、それは窮地であり好機でもある。


自分が知りたい情報を持っているかもしれない相手だからだ。

しかし、その会話の切り口には頭を悩ませる。

一手、一言一句を間違えれば、自分の命は消えてなくなる可能性がある。



「・・・私のような矮小な存在、その意図を確かめるためにわざわざ来たのかしら?」


「おん?たまたま通りかかったのじゃ!そしたら、面白そうな魔力を持っている奴がおってのう!こりゃ、面白いっ!って声をかけただけじゃよ」



ケラケラと笑うグレン

そもそも、ガジェッタが彼女の領地へ足を踏み入れたこと自体どうでも良いと思っている様子だ。


その様子に安心感を抱きながら、引き続き切り口を考える。



「あれこれ考えているようじゃが、わっちは世事に興味はないからのう」

「・・・世事に興味がない。それなら私がどうして来たのかもどうでもいいのではないかしら?」


「おん!お主のようなものが、ここに何の用事があるのかのうと思ってな、単純な好奇心じゃよ!何かある!そう思ったのじゃ!」

「何か?」


「うむ!お主がここに来たのは、わっちに用事があったわけでもなさそうじゃしな。こんな辺鄙なところ、他に目的なんぞなかろう」



紅龍の言葉に、ガジェッタは思わず頷きそうになる。

アルガス山脈のリグルカンツ側には何の価値もない。

訪れるべき理由のない無価値な大地だ。


盗賊や追われる身の犯罪者が身を寄せることはある。

しかし、ガジェッタがそういう類でないことは、紅龍の目からも明らかである。


ガジェッタのようなものが、この土地へ足を踏み入れるのであれば、それは目の前にいる紅龍に用事があるということだろう。


つまり、ここで彼女が紅龍の言葉に頷いてしまえば、他に目的がありますと伝えているようなものである。

それは迂闊に知られては得ではないとガジェッタは瞬時に判断し、言葉にする。



「・・・あら、どうして、アナタに用事がないと思ったのかしら?」


「ん?わっちからどうして来たのかと尋ねられれば、お主がそう悩んだりせんじゃろ?わっちに取り入ろうか、はたまたこの首をどう斬り飛ばそうか、ま、その目的に合わせて色々と考えてから来るじゃろうからな」

「・・・」


「しかしのう・・・お主のそれは、わっちに会いに来たとして、あまりに準備不足・・・つまりじゃ、わっち以外に目的があるものの態度じゃ」



初動をミスった。

そう感じたガジェッタ

幼稚な態度は見せていても、相手は龍だ。

聡明でないと思い込んでいた時点で、ガジェッタは失敗していた。



「お主の目は、わっちではなく、別の何かを見ておる。それが面白いのじゃ!!」


ガジェッタの態度は紅龍など眼中にないと言わんとしていた。

しかし、それを無礼と切り捨てることはせず、純粋なる好奇心で迎え入れる。

まるで、自分の縄張りに新しいおもちゃがあるのではないかという好奇心だ。

それは寛大と言うにはあまりに無邪気である。



「・・・デウス級の精霊が来ていたわね?」


ガジェッタが選んだ選択肢は"正直"に話すことだ。



「なるほどのう!お主も気付きおったか!」


「ここに、まだデウス級の精霊がいるか、私は確認しにきたの」

「ほほう・・・確認とな・・・それだけじゃなさそうじゃがな」



紅龍は口角を歪める。

ガジェッタから溢れんばかりの殺意を感じ取り、憎悪のようなものをデウス級の精霊に抱いていることを察するグレン



「・・・アナタも、それを確認するため、ここへ来たのではないのかしら?」


「半分当たりじゃのう!確認を含めて契約を果たしに来たのじゃ!」


「契約?」


「内容は秘密じゃ!・・・が、まぁ、お主の言う通りじゃ、確かにデルガビッズとサドラルファが来ておったようじゃな!」

「っ!?」



予想外に、いきなり答えが聞けたガジェッタは目を見開く。

彼女が正直に話すことを選んだのは間違いでなかったようだ。


紅龍はデウス級が来ていたことを確信している様子だ。

そればかりか、デウス級の精霊を名指ししており、その特定にまで成功しているようだ。

そして、出てきた名前の一つ、サドラルファにはガジェッタも心当たりがあった。




「しかしのう・・・デルガビッズは跡形もなく消え去っていてのう・・・サドラルファは自害しておる。くぅー!久しぶりに思い切り戦えると思って来ておれば!!悔しいのう!!」



まるで戦闘民族のような言葉を口にして地団駄を踏む紅龍

しかし、そんな彼女へ不躾に質問を飛ばすのはガジェッタだ。



「自害!?」

「おう!そうじゃ、サドラルファは自らの意思で命を絶っておるぞ!」


「どうして!?何があったの!?」

「おん?わっちが知りたいぐらいじゃよ!こうして調べておるのじゃが・・・痕跡が残っておらんのじゃ!!」



ガジェッタは震えていた。

バーバットを殺したのはデウスだと特定しているからだ。

彼女は自身とゴードンの目的を果たすために、そのデウスの特定のため、こうして辺境へと足を踏み入れていた。


そして、その殺害犯であるデウスの特定に成功していた。

あくまで紅龍の言葉を鵜呑みにするのであればだが、そんなことに頭が回らないほど、ガジェッタの思考は混乱していた。


デウス級の精霊であるサドラルファが"自害"している。

それは、この世界に暮らす人間からすればあまりに奇妙なことであった。



「あ、あり得ないわ」

「そう言われてものう、事実だしのう」


まるで、都合が悪くなったからサドラルファを処分した。

自害という言葉には、そんな印象をガジェッタへ与えていた。


それか、バーバットをサドラルファが殺したように。

都合の悪い誰かがサドラルファを処分した。


いずれにせよ、強大な何かが潜んでいる。

サドラルファをぞんざいに扱える何かが。

そんな気配をガジェッタは感じていた。



「デウス級の精霊よ・・・そんな利用するだけ利用して・・・捨てるような真似・・・誰が?」

「おん!?何をブツブツ言っておるのじゃ?」


紅龍は眉を顰めてガジェッタの顔を覗き込む。

そんな彼女の両肩をギュッと掴んで、ガジェッタは叫ぶ。



「ねぇ!教えて!!ここに何があるの!?」

「おん!?いきなりどうしたのじゃ!?」


「デウス級の精霊が自害だなんておかしいわ!」

「むむう・・・それは同意じゃ!しかしのう・・・調べようにも、さっきも言ったが痕跡が何も残っておらんのじゃ」


「痕跡が・・・残っていない?」

「そうじゃ!跡形もなく消えておる!誰が何をして1柱は消え去り、1柱は自害したのか・・・気になるのう!くぅー!しばらく退屈はせんのう!!」

「待って!!痕跡が残っていないってどういうこと!?」

「世界認識からも抹消されておるのじゃよ!こりゃ、ヤバい奴がおるのかもな!!」


紅龍は不穏な言葉を楽しそうな笑顔で告げる。

その気楽すぎる態度は、逆にガジェッタを冷静にさせた。


紅龍の喜怒哀楽が激しいと感じているガジェッタだが、それが怒りに染まらないようにだけ配慮しなくてはならないと自戒すると、スッとグレンの肩から手を離す。



「・・・そう、私の目的は遂げられそうにないわね」

「復讐か?」

「ええ、そうね」


「そうか、それがデルガビッズかサドラルファだったのかのう?」

「それは分からないけれど、どっちが仇でも、もう関係ないわね」


「そうか」


「もう用事は済んだわ・・・行っても?」

「おん?好きにせい」


「そう」



ガジェッタはそう言うと、いつまでも手に杖を持ってはいられないと虚空へ格納する。

そして、ペコリと紅龍へ会釈すると、そのまま来た道を戻ろうとする。


ここに居ても仕方がないどころか、紅龍の機嫌を損ねれば一瞬で命など蒸発する。

この場を一刻も離れることが先決だとガジェッタは考えていた。



ーーしかし



反転した彼女の目の前に、いつの間にか紅龍が移動していた。

驚くガジェッタを見る紅龍の瞳は、好奇心に再び彩られている。



「のう!そういえばじゃ!どうして、ここにデルガビッズとサドラルファがおると・・・そう思ったのじゃ?」






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