顛末
カイルはユグを抱きかかえていた。
彼の腕の中、スヤスヤと安心したように眠るユグ
魔力を使い切ったわけではなく、単純な体力の限界を迎えていたのだろう。
そんなユグへ微笑みながら、カイルは彼女をライラへと預ける。
大切そうにユグを預かったライラだが、顔面蒼白なカイルへ尋ねずにはいられなかった。
「・・・よろしいのですか?」
「・・・」
ライラは心配そうな表情でカイルを見つめる。
彼の顔色の悪さは肉体的なものではなく、これから行おうとしていることの精神的な負担から現れていた。
しかし、そんな彼女の肩をドールが叩く。
ドールはライラの視線を受けると、首を左右に振る。
ドールのジェスチャーから何を言わんとしているのか察したライラは俯いて黙り込んだ。
そんな彼らの耳に、震える声が聞こえる。
「・・・助けてください」
ブルブルと震え、両手を顔の前で組み、膝をつき、カイルへ祈るように涙を見せるサドラルファ
精霊の輪郭はクッキリとしており、幼い少年の姿を象っていた。
そんな様子のサドラルファを見つめるカイル
彼はギュッと下唇を噛み締めていた。
その悲痛そうなカイルの表情を見て、ライラへ止めるように促したはずのドールが言う。
「・・・カイル様、私達がやります」
ドールはそんな様子のカイルへ提案する。
しかし、カイルは顔を縦には振らなかった。
「こうして、支配下に置いてみて・・・こいつの異常さは分かります」
「・・・」
サドラルファはデウス級だ。
その戦闘力は脅威であり、無抵抗であろうとも、ドールやライラでは倒し切れないであろう。
もちろん、時間が無限にあれば、いかにデウス級とはいえ限界がある。
しかし、時間に限界はあった。
そして、サドラルファの脅威は、ユグの体の支配権を譲ってしまっていた2人の方が理解しているのかもしれない。
また、カイルの手持ちのカードでも、サドラルファを倒すことはできないだろう。
カイル達がサドラルファ相手に善戦できていたのは、奴がユグを支配するために魔力を割いていたことが大きな要因である。
「お願いします・・・お願いします・・・殺さないでくださいィ!」
「・・・カイル様、同情は危険です」
「はい、分かっています。僕の魔力が切れれば・・・間違いなくこいつは牙を剥きます」
カイルは手元の青く透明なパネルを覗く。
ーーー契約書ーーー
・
・
・
魔力:62,051
・
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魔力は文字ではなく数字で表示されている。
まだ膨大な数値ではあるが、1秒に10毎減っている。
おそらく、魔力が数字で表示し切れなくなり、元は文字で表示されてしまっていたようだ。
一定値減ったことで、こうして数字になっているようである。
・・・2時間弱で魔力が切れる。
こいつを飼い慣らしておくのは無理だ。
カイルは契約書に記載されている魔力が刻一刻と減っていくことで、サドラルファとの眷属契約に時間の限界があることを確認する。
「助けてください!!どうか・・・お願いしますッ!」
「・・・信じられない」
「ええ、カイル様のお言葉の通り、支配から抜ければ、間違いなく牙を剥きます」
「そんなことはしませんッ!!お願いしますッ!どうか・・・どうかァ!!」
そう叫ぶサドラルファ
顔を歪め、目からは大粒の涙がポロポロと溢れ出している。
恥も外聞もなく、命を長らえさせることだけを求める哀れな姿であった。
そんな精霊へ、カイルは尋ねる。
「サドラルファ、正直に告げよ」
「はっ!」
「・・・僕の魔力が切れた時、お前はどうするつもりだ?」
「てめェらをバラバラのグチャグチャにして殺してやりますッ!・・・というのは・・・う・・・本当ですッ!!」
サドラルファは血相を変えながら首を左右に振る。
心の内を明かすように命じられ、その殺意を吐露している。
カイルは、自分の問いに対するサドラルファの答えで覚悟が決まったようだ。
「・・・違うのです・・・カイル様・・・これは・・・これはァ!」
「ドールさん、ライラさん、奥で僕の仲間が待っています。そこで少し待っていてください」
カイルが背後にいる2人に言うと、ドールとライラは顔を見合わせて、そのまま無言で去っていく。
2人は、カイルに確かな覚悟を感じ取っていた。
だからこそ、ここは彼に任せようと、その場を去ることに決める。
2人がカイルへサドラルファの後始末を任せたのは、カイル自身がユグの近くで他者の命を奪うことをしたくないと察していた。
その想いを汲んでのことでもある。
「お願いしますッ!!ああ・・・嫌だァ!!嫌だァ!」
「僕は・・・サドラルファ・・・お前に命じる」
「や、やめてくださいッ!!いやだァ!!」
「・・・自害しろ」
*****************
「・・・カイル様」
カイルはハッと顔をあげる。
そこには、ドールとライラ
ライラの腕の中でスヤスヤと眠るユグ
そして、ラドン達の姿があった。
呆然と歩いていると、気付けば自分を待つ人達のところまでたどり着いていたようだ。
「ラドン・・・無事だったんだね!!」
カイルはラドン達を見渡す。
全員が無事な様子であり、傷跡は残っているが、大きな怪我は治っているようだ。
皆が無事な様子に、カイルは思わず目から涙を流す。
そして、ドサっとその場に座り込む。
ドッと疲れを感じているようだ。
そんなカイルの目の前にラドンが進むと、彼の前で平伏する。
「はっ!・・・この者たちから治療を受けました」
そして、ラドンは視線をドールとライラへ向ける。
「ありがとうございます・・・ドールさん、ライラさん」
カイルはパッと立ち上がる。
そして、大きく頭を下げる。
その様子に、ドールとライラは少し慌てた様子で言う。
「カイル様、このぐらいで貴方への恩を返せたとは考えておりません」
「はい、貴方がいなければ、我が主は永遠に闇の中に囚われていたかもしれません」
「そんなこと・・・」
「貴方の存在が、ユグ様に光をもたらしました」
「僕が?」
「はい、貴方の優しさが、ユグ様を闇から引き上げたのです」
「・・・優しさ?」
「はい、カイル様、貴方はとても優しい心をお持ちです」
そう言ってライラは、一面に広がるフェンリルの群を見渡す。
誰もが、カイルへ尊敬の念を抱いて視線を向けていた。
「僕が?優しい?」
カイルは首を横に振る。
そして、ライラへ言う。
「・・・僕は優しくないことを・・・さっきしてきたばかりだよ?」
「カイル様・・・」
カイルはどこか悲しそうな顔で、真っ黒に染まった大地を見ている。
自分が魔法で焼いた森の一部であり、サドラルファと激戦を繰り広げていた場所であった。
「僕は優しくなんてないよ・・・」
「・・・」
カイルの言葉に、ドールとライラは何も言うことができなかった。
言葉にしようと思えばできた。
しかし、それは差し出がましいことであると、2人は考えていたのだ。
「・・・さて、帰りましょう」
カイルは2人を困らせてしまったのではないかと思い、会話を切り上げることにした。
そして、カイルの言葉に、ドールもライラも同意を示した。
「我らは・・・ユグ様の中へと戻ります」
そう言ってライラはユグをソッとカイルへと預ける。
「はい・・・えっと、おやすみなさい?」
「ええ、おやすみなさいませ」
ユグを預かったカイル
彼の前でドールとライラが会釈をすると、パッと光の粒子になって消えていく。
一瞬だけ、カイルの腕の中で眠るユグの体が緑に光っていた。
「・・・ラドン、みんな、今日はありがとう」
「カイル様・・・」
「みんなのおかげで、こうしてユグちゃんを取り戻すことができたよ」
カイルがフェンリル達を見渡して告げる。
しかし、全員が、どこか申し訳なさそうな顔をしていた。
サドラルファ相手にほとんど何もできなかった。
相手がデウス級の精霊とはいえ、あまりに無様な姿を恩人であるカイルに晒してしまっていた。
それを誰しもが情けなく、申し訳ない気持ちであった。
そして、群れを代表してラドンが告げる。
「・・・カイル様、我らはもっと精進します」
「え?」
「カイル様にお仕えするにはまだまだだと悟りました」
「僕も・・・頑張るよ」
「カイル様?」
「僕も・・・頑張る。静かに暮らすには、ぼーっとしてちゃダメだよね」
ーーーリザルトーーー
・サドラルファを討伐しました。
・ゴッドエディション『奈落誘樹』を入手しました。
・パック開放結果
NEW!『奈落の誘い手』
レアリティ:ユニーク
レベル:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
タイプ:装備
属性:木
発動条件:なし
効果:『奈落樹』を召喚できる。このカードが「装備」フォルダに存在していなくても、召喚した『奈落樹』は顕現し続けるが、一定の魔力を消費し続ける。
NEW!『装備チェンジ』×2
レアリティ:レジェンド
レベル:☆
タイプ:補助
属性:なし
発動条件:なし
効果:「装備」フォルダにセットされているカードを、サブデッキ内のカードと入れ替えることができる。
NEW!『装備チェンジ』 ユニークレア加工
レアリティ:ユニーク
レベル:☆
タイプ:補助
属性:なし
発動条件:なし
効果:「装備」フォルダにセットされているカードを、サブデッキ内のカードと入れ替えることができる。効果処理後、デッキから『装備チェンジ』と同名のカードを手札に加える。
NEW!『奈落の誘惑』
レアリティ:ユニーク
レベル:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
タイプ:装備
属性:虫
発動条件:なし
効果:『蠱毒王虫』を召喚できる。このカードが「装備」フォルダに存在していなくても、召喚した『蠱毒王虫』は顕現し続けるが、一定の魔力を消費し続ける。
NEW!『犠牲治癒』
レアリティ:ユニーク
レベル:☆☆☆☆☆
タイプ:補助
属性:木
発動条件:なし
効果:対象の怪我と病気を全て癒す。効果処理後、このカードの発動者は相手が負っていたダメージと状態異常をすべて引き継ぐ。また、このカードの発動を『眷属』に強制することができる。
NEW!『断罪執行者』
レアリティ:ユニーク
レベル:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
タイプ:装備
属性:闇
発動条件:なし
効果:『断罪剣』を召喚できる。このカードが「装備」フォルダに存在していなくても、召喚した『断罪剣』は顕現し続けるが、一定の魔力を消費し続ける。
NEW!『魂喰らい』
レアリティ:ユニーク
レベル:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
タイプ:攻撃
属性:闇 木
威力:なし
発動条件:『奈落樹』+『蠱毒王虫』+『断罪剣』が召喚されている。
効果:対象の魂を消滅させる。
NEW!『憑依』 「奈落誘樹」限定加工
レアリティ:ユニーク
レベル:☆☆☆☆☆☆☆
タイプ:攻撃
属性:闇
威力:なし
発動条件:『奈落樹』、『蠱毒王虫』、『断罪剣』のいずれかが召喚されており、『魔力体』を装備している。
効果:対象の肉体と精神を支配する。成功確率は自身の魔力と相手の魔力を参照する。
『魔力体』×1
・入手経験値
87,000
☆☆☆レベルアップ☆☆☆
レベル21→レベル25
・入手ゴールド
800
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ーーー契約書ーーー
・ステータス
名前:カイル
性別:男
年齢:16
レベル:25
力:47(+1)
魔力:おG
体力:ー
敏捷:34(+1)
初動手札:5枚
装備:1枚
デッキ:40枚
ドロー速度:30秒
ドロー枚数:1枚
・所持ゴールド
893G
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