表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
34/92

サドラルファ




灰色が覆う空に向かって炎の渦が伸びていく。

カイルは自らを燃やすようにして、サドラルファを炎の渦に巻き込んでいた。




「けけけけけ!!無駄だァ!!!そんな低級の魔法で・・・この俺様がどうにかなるとは思うんじゃねェよ!!」



空まで昇る炎の渦からサドラルファの声が響く。

そして、パッとかき消されるようにして、炎の渦が晴れていく。


そこに現れたのは、緑のボヤボヤとした光が少年の姿を描いているサドラルファ

緑に輝く発光体の腕には、真っ黒になったカイルの姿もある。



サドラルファはブクブクと表面が沸騰している腕を使ってカイルの首をギュッと掴んでいた。

そして、真っ黒になって凹凸のなくなったカイルの顔をギッと睨んでいる。



ーーーインフォメーションーーー

・『超再生』が発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー



「け!こんだけ真っ黒になっても治りやがるかァ!」

「ぐ・・・あ・・・」


サドラルファは自分が首を絞めているカイルの皮膚が一気に元通りになること悪態を放つ。

もう慣れてきた光景ではあるが、不可思議な現象であることは変わらない。

そして、彼の首を掴んだままを腕を振り上げて、カイルを放り上げる。



「俺様の降参だァ・・・お前は封印するのが1番だなァ・・・」



サドラルファは空に放り投げたカイルを見上げながら、どこかスッキリとした顔で呟く。

そして、そのまま両手を左右に大きく開く。

すると、彼を中心として、彼が立つ地面に魔法陣が浮かび上がってくる。



「っ!?お前・・・ユグちゃんを諦めてくれるのか!?」


カイルは空中で体勢を立て直すと、真下にいるサドラルファへ期待の籠った声色で叫ぶ。



「けけけけけ・・・諦めねェよ・・・俺が諦めたのは・・・てめェを殺すことだァ」

「なら、ユグちゃんのことも諦めろよ!」


「お前の再生力はァ尋常じゃねェ・・・認めてやる・・・俺様の負けだァ」

「・・・っ!?」



カイルは嫌な予感がした。

異常な再生力も、拘束されてしまえば発揮できても意味がない。

逆に言えば、拘束や封印されてしまうのがカイルの弱点とも呼べる。



・・・ヤバい!?

ツタどころじゃない気がする!?




カイルはすぐに手を突き出す。

効果があるかどうかなんてことは二の次だ。

とにかく、サドラルファの邪魔をする。



「けけけけ・・・無駄だァ」



カイルは『ファイア・ボール』を連射する。

最下級の火魔法ではあるが、カイルの膨大な魔力と、数による暴力

それは普通の魔物などが相手であれば、跡形も残らないほどの攻撃である。


しかし、デウス級の精霊であるサドラルファからすれば手を振り払うだけで防げる攻撃だ。

精霊は再び右腕を沸騰させる。

そして、バッと薙ぎ払うように振る。


凄まじい突風が吹き荒れると共に、サドラルファが描いた魔法陣から無数の腕が伸びていく。

ドロドロとした紫色のモヤモヤが影が腕のカタチを成しているようなデザインだ。



空を覆うように降り注ぐカイルの『ファイア・ボール』が無数の腕に飲まれていく。



「・・・くっ!?」


そして、空中で身動きのできないカイル

彼の腕や足、頭や腰、あらゆる箇所に、地面から伸びた影の腕が掴んでいく。



「ぐ・・・あァ!!!」



カイルは一気に地上にまで引っ張られる。

そして、魔法陣の上に叩きつけられるように着地した。


そのままズブズブと地面にのめり込んでいく。

まるで底なし沼に飲み込まれるように、カイルはサドラルファが描いた魔法陣に飲まれていく。



「やられ・・・て・・・たまるかっ!」


カイルは腕を魔法陣の外に置き、そのまま地面を指で掴む。

ガリガリと地面を掻くようにして、カイルは魔法陣に飲み込まれないように抗う。



「ユグちゃん・・・は・・・助ける」



カイルは右手だけでなく、左手も魔法陣の中から抜き出す。

そのまま両手で地面を掻くようにして、魔法陣から抜け出そうと踠いている。



「おらァ!!アルムスター!!たまには気張れェ!!」

「・・・」


サドラルファは魔法陣に向かって叫ぶ。

同時に、地面を掴んで離そうとしないカイルの右手を足で踏みつける。


魔力体に踏まれたカイルの手は蒸気を立ち昇らせて溶けていく。



「けけけけけけ!!良い加減、諦めろや!!てめェは人間ながらによくやったぜェ!!」

「・・・ぐ・・・くそ・・・」


カイルの手をグリグリと踏みつけるサドラルファ

やがて、カイルの右手はドロドロに溶けて無くなり、カイルは地面に飲まれていった。



「・・・けけけけ、ここまですりャ、流石によォ」


カイルの姿が見えなくなった魔法陣を見つめるサドラルファ

表情はのっぺらぼうのため分からないが、その声色には不安が満ちていた。



しばらくすると、魔法陣からノロノロとした声が響く。



「オデ・・・コイツ・・・ダメ」

「ああんっ!?」


声が聞こえると同時に、魔法陣が口のようになって開く。

そして、ペッと吐き出されるようにして、カイルが中から放たれると、そのままクルクルと宙を舞って地面にボトリと落ちた。



「あんのヤロォ・・・!!」


サドラルファは魔法陣のあった場所を蹴り上げる。

しかし、すでに魔法陣は姿を消しており、ただの焦げた地面だけが広がっていた。


サドラルファは悪態を早々に切り上げて、彼方で落下したカイルをギッと睨む。

ドロドロと溶けており、原型は留めていない。

しかし、それでも、すぐに再生するであろうことは経験済みだ。




ーーーインフォメーションーーー

・『超再生』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」



カイルは再生するとすぐに起き上がる。

そして、黒く焦げた大地を見渡す。




ーーーインフォメーションーーー

・スキル『ドミネーション』の効果処理中です。



ーーーーーーーーーーーーーーー





「どこだ?」



カイルは再生を終えると同時に、サドラルファの姿を探す。

しかし、どこにも敵の姿は見えなかった。



「どこに消えた!?」


「はぁ・・・はぁ・・・」



カイルはどこかからサドラルファの切らした息が聞こえる。

しかし、肝心の精霊の姿が見えないでいた。



「あー・・・うざってェ・・・」


「っ!?」


サドラルファの声がすると、その方向へカイルは視線を向ける。



「お前・・・」


サドラルファの輪郭がボンヤリと薄くなっていた。

明らかに魔力を消耗している。

薄くなっているため、カイルはサドラルファの姿を補足できなかったようだ。




ーーーインフォメーションーーー

・スキル『ドミネーション』の効果処理中です。



ーーーーーーーーーーーーーーー





「ははははは・・・勝負を・・・焦ったんだな」

「・・・けけけけけ、何を言ってんだァ?」




・・・さっきの魔法陣

多分、あれで魔力をかなり使ったんだな。





ーーーインフォメーションーーー

・スキル『ドミネーション』の効果処理中です。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「けけけけけけけ!!けけ・・・けけけ!!・・・はぁ・・・くそ・・・何だァ・・・力が抜けてく・・・」



サドラルファは強がりで笑っていた。

しかし、途中で息を切らしたのように、両膝へ手を当てる。


力が尽きかけているのは確かなようだ。

カイルはソッと手を突き出す。

そして、『ファイア・ボール』を放った。



「ぐ・・・!」


サドラルファは手を振るって炎の玉を弾く。

しかし、炎の玉をかき消すと同時、自身の腕もパンっと爆ぜてしまう。



「が・・・ァ!!」



サドラルファの弱った姿を確信したカイル

そのまま炎の玉を連射する。



「くそ・・・がァァアッ!!」


サドラルファは腕を振り回す。

その動きに呼応して、地中からツタが伸びていく。

太く鋭いツタではなく、か細く弱々しい様子だ。



先程まではカイルの放った炎の玉を打ち払うのは容易い様子であった。

しかし、今は、軌道を逸らすので精一杯のようだ。



「がァッ!!」



打ち払い切れなかった炎の玉がサドラルファの左肩へ命中する。

両腕を吹き飛ばせれた精霊は、口の辺りがブクブクと沸騰を始めていた。



「がァァァアッ!!くそがァ!!クソッ!!クソッ!!!クソがァ!!!」



そんなサドラルファの右足へ炎の玉が命中する。

続けて、左足にも命中する。


ドサリと残った胴体と頭部だけが地面に横たわっていた。

そんなサドラルファを見下ろしながら、右手を突き出しているのはカイルだ。



「クソぁ!!!」

「・・・終わりだ」



カイルはトドメを放とうとする。

手札から『ファイア・ボール』を放とうとする。



しかし、体に力が入らず、突き出した手の先から炎の玉が生まれてこない。





「・・・っ!?」



カイルの体を無数の矢が貫いていた。

矢は背中から刺さっており、背後に弓を放ったものがいるのだろう。



「がっ・・・ゲホッ!!」


カイルはボヤけ始めた視界で背後を振り返る。

そこには、緑色の髪の少女がいるのに気付く。



「ユグ・・・ちゃん?」



カイルは血を吐き出しながら、ゆっくりと振り返り、そのままユグに向かって歩いていく。

全身から血を噴き出しつつも、優しく微笑みながら、ゆっくりと、ゆっくりと、ユグへ近づいて行く。




「帰ろう・・・ユグちゃん」


カイルはそう言って微笑む。

キズだらけの姿ではあるが、両手を開いて、ユグを受け入れようとしていた。

しかし、そんなカイルに対して、ユグは首を左右に振るう。



「・・・来ないで」



そして、ユグは手のひらを突き出す。

彼女の周囲に緑の矢がスッと浮かび始めると、凄まじい勢いでカイルへ向けて矢が放たれる。


風切り音が鳴り響く前に、頭部を木っ端微塵に粉砕されるカイル

音速を超えた速さの矢が貫いていたようだ。



頭部を失って血を噴き出しながら倒れるカイルの胴体

それが背後にバタリと倒れると、ユグは目から大粒の涙を零していた。



「もう痛いのやだ・・・怖いのやだ・・・」


そう言って泣き叫びそうな声で顔を左右に振るうユグ

そのまま頭を抱え、膝を抱え、泣き出してしまう。




ーーーインフォメーションーーー

・『不老不死』を発動しました。

・『超再生』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「ユグちゃん・・・帰ろうよ・・・ね?」


カイルは再生を終えると、ゆっくりと起き上がり、歩み寄りながらユグへ語りかける。

しかし、ユグはゆっくりと立ち上がると、カイルの言葉に顔を左右に振り払う。



「近付くな!!ユグを虐める!!嫌い!!嫌い!!」


何度も顔を左右に振り、カイルの接近を拒むユグ



「ユグちゃん・・・虐めないよ・・・また一緒に遊ぼうよ、ね?」


カイルはそう告げる。

しかし、彼の言葉はユグに届いていないようだ。



「来ないで!!!」



殺気の込められたユグの瞳がカイルを貫く。



「・・・ユグちゃん。どうして?」

「来ないで!!嫌い!!!」

「っ!?」

「嫌い!嫌い!嫌い!!死んで!!!」



ユグの拒絶に目を潤わせるカイル

耳に響き続ける言葉は、かわいい妹の口から出ていい言葉ではない。


そうさせることが許せない。

激情にかられたカイルは険しい顔をして、その目線をサドラルファへと向ける。



「ユグちゃん・・・を・・・解放しろっ!」


「けけけけけけけ!!!そりゃ、そいつの意思だぜ?」


「ユグちゃんが・・・そんなこと・・・」



「けけけけけけ!!お前らが嫌いなんだとよ!」



サドラルファはカイルとユグの光景を愉しそうに見つめている。

加入せずに、今は魔力を回復させている様子だ。

本来は、先にサドラルファを倒すべきなのだろう。

仕留めるのであれば絶好のチャンスだ。

むしろ、魔力を回復させてはいけない。


そんなことはカイルにも理解できていた。

カイルは地に伏せたままの邪悪な精霊へ向けて手のひらを突き出す。

ユグへの対応の前に、サドラルファを消滅させるべきだと考えていた。

精霊を仕留めれば、ユグが元通りになるかもしれないという期待もある。



しかし、彼が手から魔法を放つ前に、耳をつんざくような悲鳴に肩を震わせる。




「きゃあああああああ!!!!」



ユグが頭を抱えながら蹲る。

苦痛に喘ぐ声だ。



「ユグちゃん!!大丈夫!!」


そのまま地面へと転がり、胸を押さえ、腹を摩りながら転がり回っている。

まるで見えない誰かから拷問を受けているような、そんな様子である。



「ユグちゃん!!」


カイルがユグの傍まで進むと、ユグの狂乱がピタリと止まる。

そして、虚な瞳でカイルを見つめると、ポツリと呟く。



「死ね・・・」


「っ!?」




カイルの頭部は再び木っ端微塵となっていた。

そのまま頭を失った先から血を噴き出しながら、周囲を鮮血に染め上げる胴体はバタリと倒れる。


ユグはゆっくりと立ち上がりながら、その死体を見つめる。




「敵だ・・・ユグを虐める・・・敵だ・・・」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ