ラドン
ーーーインフォメーションーーー
・スキル『不老不死』を発動しました。
・スキル『超再生』を発動しました。
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カイルが再生を終えて起き上がる。
しかし、そんなカイルの頭部を踏み抜くのはサドラルファだ。
「ぐ・・・」
頭を踏み抜かれて苦悶の声を出すカイル
そんな彼を見下ろすサドラルファ
「てめェが邪悪な光魔法を使えるとはァ・・・思っても見なかったぜェ!!」
「ぐ・・・!」
「だがなァ・・・木属性の俺様に、光ってのは効果がよえェ・・・」
そんな風に馬鹿にしたような笑みを浮かべているサドラルファ
しかし、そんな奴にラドンが叫ぶ。
「カイル様から・・・足を退けろっ!!」
続けて風切り音が聞こえると、カイルの頭部からサドラルファの足の感触がなくなる。
「くそ犬・・・」
カイルが起き上がると、そこにはボロボロのラドンの姿がある。
もはや生きているのが不思議なぐらいであった。
「カイル様・・・我らが矜持・・・御身の前に必ずやっ!!」
血だらけのラドンは、口から血を吐き出しながらカイルへ告げる。
そして、サドラルファサドラルファへと飛びかかっていく。
「ラドン!!ダメだっ!!」
「くそ犬がっ!!俺に・・・俺様にぃ!!近寄るんじゃねェ!!」
「がぁああああ!!!」
サドラルファへと爪と牙を剥き出しにしたラドンが飛びかかる。
すると、サドラルファが右手を振り上げて、そのラドンの顎を打ち上げる。
クルクルと宙を回転しながら、カイルの目の前にラドンがドサリと落ちる。
「・・・カイル・・・様・・・申し訳・・・ありま・・・」
「ど、どうして・・・どうして・・・逃げないんだ?」
「逃げるなど・・・そんなことは・・・できません」
そう語るラドン
カイルはラドンの瞳をジッと見つめた後で、周囲の倒れているフェンリル達も眺める。
カイルには理解できないでいた。
自分のことや村の人のことなんて無視して、彼らは逃げれば良い。
いかにフェンリルとはいえ、目の前の荒ぶるサドラルファにはまるで勝ち目がない。
彼我の戦力差は、カイルよりもラドン達の方がわかっているはずだ。
「どうして、僕達を助けるんだ?」
「カイル様・・・我らは・・・貴方に救われました・・・」
「救われた?・・・僕は君の仲間を殺したんだよ?」
「・・・そうです・・・ね」
「それなのに・・・どうして?」
「この1年・・・我らは・・・平穏でした・・・」
「平穏・・・?」
「はい、命を脅かされることなく・・・皆で落ち着いて暮らせました・・・それがどれだけ・・・」
「グダグダ・・・うるせェ!!白犬ッ!!」
「ラドン!!」
ラドンに向かって手を振り上げるサドラルファ
その腕に輪郭はなく、荒ぶる魔力だけがそこに存在していた。
カイルは咄嗟に飛び出すと、その腕にしがみつく。
肌を荒ぶる魔力が削り、血肉が飛び散る。
しかし、それでも、カイルはサドラルファの腕から離れようとはしない。
「てめェ・・・もういい加減ッ!!・・・もういい加減にしてくれ・・・うんざりだァ!!消えろォ!!」
荒ぶるサドラルファサドラルファの腕の魔力に肌を焼きながらしがみついているカイル
そんな彼へはうんざりした様子で叫ぶと、そのままサドラルファは腕の魔力を爆発的に高める。
同時に、ポンっと瑞々しいものが弾ける音が響いた。
ーーーインフォメーションーーー
・スキル『不老不死』を発動しました。
・スキル『超再生』を発動しました。
ーーーーーーーーーーーーーーー
カイルの視界に光が戻る。
そこには、真っ赤に染まった毛並みが見えた。
再生したカイルを守るように立っているのは、満身創痍のラドンだ。
「ラドン・・・もうやめて・・・」
「・・・」
カイルは逃げないラドンの姿に疑問を隠せない。
自分自身を守る理由なんてないはずだ。
「てめェ・・・なんでェだ・・・完全に滅したッ!!」
「ごふっ・・・貴様如き精霊が・・・カイル様を倒せるはず・・・なかろう」
「う・・・う・・・あ・・・ぐァ・・・」
「・・・どうした、精霊、ビビっておるようだな」
「ふざけろ!!俺はデウス級の精霊!!サドラルファだァ!!それが・・・なんだァ!?何なんだァ!?俺はサドラルファだぞォ!」
サドラルファは頭を抱えながらも暴れ狂う。
自信を一気に喪失しており、一種の狂乱状態のようだ。
それを好機と見たカイルはラドンへ言う。
「ラドンだけでも逃げてくれ」
「それは・・・できません」
「群れのみんなを残しておけないのはわかるけど」
「違います・・・カイル様を残して・・・私だけ逃げることはできません」
「どうして・・・どうして?そこまで?」
「子供が産まれたのです」
「子供?」
「はい、孕んでいたメスがみな、無事に我が子を出産できました」
「・・・」
「これも・・・カイル様からいただいた平穏のおかげです」
「ラドン・・・でも・・・もう・・・やめてくれ・・・」
カイルはラドンへ頭を下げる。
逃げてくれと、そう頭を下げて伝えようとしていた。
そんなカイルへ潤った瞳を見せるラドン
「我ら魔物にまで・・・温情を・・・我らはカイル様に仕えることができて幸運ですな」
「ラド・・・」
カイルは顔を見上げる。
そこにはラドンではなく、サドラルファの姿があった。
「ああ・・・うぜェ・・・」
「っ!?」
腹を入り口、背を出口にして、緑の発光体がラドンの腹部を貫いていた。
そして、見上げるカイルを前に、ラドンは口から血を流しながら言う。
「カイル様・・・力及ばず・・・申し訳ございません」
ラドンは別れの挨拶のように告げると、最後の力を振り絞って、鋭い牙を煌めかせた。
「ラドン!!ダメだっ!!」
「ガオオオオオオン!!!」
勢いよく頭部をサドラルファへ向けて振るうラドン
しかし・・・
「退いてろッ!!クソ犬ッ!!」
サドラルファはラドンを貫いている腕を振るう。
勢いでスッポリと抜けたラドンは、そのまま大きく吹き飛ばされ、地面に線を描き、ピタリと止まる。
「・・・んだァ、まだ生きてんなァ」
地に伏せる虫の息のラドン
そんな彼へサドラルファが近づいていく。
「や、めて・・・」
そのままサドラルファはラドンを踏みつけた。
「やめてくれ!!」
カイルはサドラルファへ縋るように叫ぶ。
サドラルファはグリグリとねじ込むようにしてラドンを踏みつけながら、カイルの潤った瞳を睨む。
「・・・やめねェよ」
「やめてくれ!!!やるなら僕をやれ!!ムカついてんのは僕だろ!?」
「てめェにやってやりたいがァ・・・再生すんだろうがァ!?ああん!?」
「頼む・・・もう・・・やめて・・・」
「てめェには、こうした方がァ・・・よっぽど・・・苦しめられんだろォ!?」
サドラルファが踏みつけているラドン
もうピクリとも動かなくなり、まるで死んでしまったような様子であった。
「・・・けッ、しらけてんなァ」
サドラルファはそう言って、横たわるラドンへ唾を吐くような仕草を見せた。
「ラドン・・・ラドン!!!」
「けけけけけけ!!おらァ!?犬っころ、助けたいならよォ・・・俺様に泣いて媚びろォ!?」
サドラルファはカイルへそう告げると同時に、横たわっているラドンの首を絞めるように握ると、そのまま巨体をスッと持ち上げた。
まるでカイルへ見せびらかすように、虫の息のラドンを持ち上げている。
「まだ・・・生きているようだぜェ?」
「やめろ!」
「やめろ?」
「やめて・・・」
「やめて?」
「やめて・・・ください」
「けけけけけけけけけけ!!!!」
そんなサドラルファにカイルは命乞いをする。
弱々しく縋るような声に、サドラルファはピクリと反応すると、カイルの方を見る。
「けけけけけけけけ!!降参かッ!!降参かよッ!!俺様にここまでしておいてェ!!許すわけ・・・ねェだろッ!!」
サドラルファはカイルの観念したような態度に嗜虐心を満たしていく。
手に掴んだラドンを放り投げると、そのまま両手を広げ、盛大に声を上げ、森に響くように嗤う。
まるで舞台を上を悠々と歩くように、両手を広げて笑い声を轟かせつつ、カイルへと歩み寄っていく。
「おーい・・・なァ・・・おい・・・てめェ・・・」
「・・・」
サドラルファは項垂れているカイルの前で止まると、その頭部を掴み上げる。
そして、掴んだ頭を勢いよく地面へと叩きつける。
「おいおい・・・俺様にお願い事があるならよォ・・・相応しい態度ってもんがァあるよなァ?」
強引に土下座のような姿勢を取らされたカイル
そんな彼へサドラルファは愉しそうに告げていた。
「・・・お願いします」
カイルは額を地面につけ、ラドン達の命乞いを始めた。
「お願いします・・・どうか・・・みんなを・・・殺さないでください」
「け・・・けけけけ・・・けけけけけけけけけ!!!!あ・・・・あァ・・・アァァアアアア!!!」
サドラルファは自分を抱きかかえながらウネウネとし始める。
その気持ち悪い仕草のまま、地に額をつけているカイルの頭部を足蹴にする。
「あ、ああ、あああああっ!!!!」
「ぐぅ!」
カイルは自分を踏みつけるサドラルファを見上げる。
歪んだ笑みを見せるサドラルファの足の向こうには、倒れたまま動かないユグの姿があった。
そして、森の奥に連れ去ろうとしていたフェンリルは、ユグを庇うように倒れていた。
身を挺してまで、カイルの指示に従い、ユグに怪我一つ負わせないようにしていたフェンリル
そんな2人の姿を見て、カイルは目に涙を浮かべる。
・・・僕は何をやっているんだ。
諦めてどうする。
こんな奴が、僕らを見逃すはず…ないだろう!!
「・・・がぁッ!!サドラルファ!」
「あん?」
ーーーインフォメーションーーー
・スキル『ドミネーション』の効果処理中です。
・スキル『黒狼牙』を発動しました。
・スキル『眷属契約』とリンク発動しました。
・スキル『黒狼牙』はスキル『神狼牙』へ変化しました。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・けけけけけ!!ぐっ!?ああァん!?」
カイルの頭に足を乗せていたサドラルファ
しかし、途端に体勢を崩して、バタンと尻餅をついて倒れている。
そんなサドラルファの目の前には、バタリと倒れているままの黒い髪の毛の少年がいた。
「ッ!?」
サドラルファは驚愕の表情をする。
カイルの口にはモヤモヤとしたものが足の姿を描いていた。
「あれ?それ、俺様の足?」
サドラルファは目を見開いて再確認する。
倒れているカイルの口が白く光を放っている。
彼の口には、荒ぶるような緑色の魔力が足のカタチを描いているものが咥えられていた。
「俺様の足だよなァ・・・それ?」
繰り返し問いかけるサドラルファ
しかし、カイルは口に咥えたサドラルファの足を唾と共に吐き出した。
「・・・ぺっ!」
ーーーインフォメーションーーー
・スキル『黒狼爪』を発動しました。
・スキル『眷属契約』とリンク発動します。
・スキル『黒狼爪』はスキル『神狼爪』へ変化しました。
ーーーーーーーーーーーーーーー
カイルは勢いよく起き上がると、そのまま尻餅をついているサドラルファの頭部を狙って白く輝く腕を突き出す。
サドラルファ自身、心理的な変化の弱いことをカイルは察していた。
こうして精神を揺さぶることで、大きく隙を見せることは、これで2度目どころではない。
絶対的な優位にいると勘違いしていたサドラルファだが、まさかの反撃を受け、動揺しているようだ。
冷静に考えれば、人質としていたはずのラドンを放り投げているのだから、サドラルファに盾はなかった。
今が好機と、徹底的に攻めに回ることにした。
「・・・て、てめェ」
サドラルファは驚いた様子で腕をジタバタと暴れさせる。
そして、体を逸らして、カイルの白く輝く拳を避ける。
そんなサドラルファの頬をカイルの拳が掠めていく。
しかし、カイルの白く輝く体は腕だけではない。
寸前で避けたサドラルファ
どれだけ戦力差があろうとも、体勢を崩してしまえば関係はそこまでない。
モタついているサドラルファの顔面に、カイルは突き出した右腕を引きながら、右膝を突き出した。
「ぶっ!!」
サドラルファの顔面に『神狼爪』がクリティカルヒットする。
奴の顔面からパンっと大きく爆ぜるような音が響いた。
それでも、カイルは攻撃の手を緩めない。
手足から白い輝きが消えていくことに気付くと、再び手札からカードを放つ。
ーーーインフォメーションーーー
・スキル『黒狼爪』を発動しました。
・スキル『眷属契約』とリンク発動します。
・スキル『黒狼爪』はスキル『神狼爪』へ変化しました。
・通常ドロー
スキル『跳躍』を手札に加えました。
ーーーーーーーーーーーーーーー
顔面を仰け反らせているサドラルファ
その腹部へカイルは白く輝く手を手刀のようにして突き刺そうとする。
「調子に乗るんじァねェ!!」
「・・・っ!?」
サドラルファの怒号が轟くと、カイルは手札を切る。
ーーー『跳躍』ーーー
レアリティ:ノーマル
レベル:☆
タイプ:補助
属性:風
威力:10
発動条件:なし
効果:風を纏い高く飛び上がる。
ーーーーーーーーーー
カイルの体は高く舞い上がる。
すると、彼が居た場所の地面から無数のツタが生えてきていた。
あのまま地面にいれば、カイルの体はツタに絡めとられていただろう。
サドラルファの迎撃手段はパターン化されていた。
そんなに実戦経験がないのか、一方的に相手を下した戦いをしていたからなのかは分からない。
しかし、奴の攻撃が単調なものであることは、カイルも承知済みであった。
「なっ!?」
サドラルファは避けられると思っていなかったようだ。
驚きの表情をしており、1手も2手も遅れる結果を招いていた。
実践においては死を招くほどの時間である。
デウス級の精霊という立場になければ、とっくに死んでいたのではないかと思えるほどだ。
「・・・」
ーーーインフォメーションーーー
・スキル『アース・スライサー』を発動しました。
ーーーーーーーーーーーーーーー
サドラルファが米粒ぐらいの大きさに見える高さまで舞い上がるカイル
そんなサドラルファへ手のひらを向ける。
「っ!・・・緩いんだァよ!!」
突然、周辺の地面が鋭い刃となってサドラルファへ襲いかかる。
しかし、バタバタと慌てながらも、片手を振り払って土の刃を弾く。
『アース・スライサー』への対応を終え、再び空を見上げるサドラルファ
カイルの姿を補足しようと見上げた空からは、サドラルファへ向けて無数の火の玉が降り注いでいた。
カイルは『アース・スライサー』を囮として、『ファイア・ボール』を『紅の証人』で連射していた。
「こんな・・・低級魔法ごときで・・・俺様を倒せると思ってんのかァ!?」
サドラルファは無数に迫る炎の球が浮かぶ空へ右手を突き出す。
すると、凄まじい突風と共に、地面から巨大な木が生えていく。
木は一定の高さまで伸びると、そのまま鞭のようにしなり始める。
そして、バッサバッサの音を響かせながら、現れた大樹は周囲の火の玉を払い除けていく。
その光景が数秒間だけ続くと、サドラルファは周囲に気配を感じてハッとする。
「っ!?」
サドラルファが周囲を見渡す。
すると、周辺に倒れているフェンリル達の姿が無くなっていることに気付く。
そして、視線を森の奥へ向けると、まだ健在なフェンリルが1頭おり、それがユグを口で咥えながら、風の魔法を巧みに操り、多くの仲間を運んでいる姿が映っていた。
「死に損ないがァ・・・あぐッ!!」
サドラルファは逃げようとするフェンリルの背中へ、空へと掲げていない方の腕を突き出す。
しかし、そんな精霊の腕はパッと斬り飛ばされていた。
「てめェ!?いつの間にィ!?」
白く輝く手刀を構えたカイル
どうやら、サドラルファの腕は、カイルの『神狼爪』によって斬り飛ばされていたようだ。
そして、カイルはギロリとサドラルファを睨むと、微かに笑う。
「・・・悪いけど、一緒に死んでもらうよ」
「ああんッ!?」
ーーーインフォメーションーーー
・スキル『フレア・ストーム』を発動しました。
ーーーーーーーーーーーーーーー




