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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
27/92

憑依眷属




白い狼がまるで雪崩のように森を駆け抜ける。

先頭を走る白い狼は群れの中でも一際白く輝いている毛並みを持っていた。

その背には黒い髪の少年が乗っている。


少年は虚空を指でタップしていた。

時には目を細め、時にはハッとして素早く手を動かす。


まるで何かを考えながらスマホを操作しているような、そんなジェスチャーをしている。

周囲から見れば、虚空を指で叩く少年に見えるだろう。

しかし、そんなカイルの目の前には、青く透明なパネルが映っていた。




ーーー契約書ーーー

・ステータス

名前:カイル

性別:男

年齢:16

レベル:21

力:44(+1)

魔力:おG

体力:ー

敏捷:31(+1)


装備:1枚

デッキ:40枚

ドロー速度:30秒

ドロー枚数:1枚



・デッキ 40/40

『黒狼牙』×3

『黒狼爪』×4

『迅速』×3


『迅速』

『黒狼心』

『ウィンド・カッター』×2

『森の黒き狼』

『ファイア・ボール』×3

『プロミネンス』

『カウンター・ファイア』


『イージス・ファイア』

『パリィ』×2

『ミサイル・パリィ』×3

『コンバット・トリック』

『サイクロン』

『高速移動』

『ファイア・ウォール』


『跳躍』

『ライトニング・アロー』

『ファイア・ボール・マシンガン』

『グリード』

『ダブル・フレイム』

『アース・スライサー』

『スピリット・バイブレーション』

『チェンジ・オブ・ハート』

『ドミネーション』

『フレア・ストーム』




・装備 1/1

『紅の証人』




・常時発動

『夜目』

『力+1』

『敏捷+1』

『眷属契約』




・????

『????』

『???』






ーーーーーーーーーーー






「カイル様・・・敵の気配です」


ラドンが告げる。

すると、その背に乗るカイルはコクリと頷く。

準備万端と言った様子だ。




「よし・・・行こう!」


カイルが言うと、ラドンは声高らかに吠える。



「蹂躙しろッ!!」


「「ウォオオオオオオオン!!!」」



ラドンの号令に呼応してフェンリル達は遠吠えを轟かせる。

彼らの視線の先には、ウネウネと蠢き始めた木々がある。


ユグに取り憑いている精霊の眷属が、村の周囲を覆う森の木々に憑依していた。

木がまるで意思を持ったように、森の土から次々と抜け出していく。


枝が集まり腕のようになる。

根が集まり足のようになる。

まるで、大きな木が人のような姿になって、カイルやラドン達の前に集まり始めていた。



「囲まれる!?」

「・・・ご安心を、あの程度、囲まれようとも突破は容易!」



現れた木々は、カイルとフェンリル達を包囲するように集まり始めていた。

しかし、そんな魔物の様子を鼻で笑うラドン

そして、彼は再び吠える。



「カイル様の覇道を阻む愚かさは万死に値する!!命で償わせろッ!!」

「「ウォオオオオオオオン!!!」


「殺せっ!とにかく殺せっ!!心臓の鼓動を止めろっ!!息の根を止めろッ!!ゴミムシに存在を許すなッ!!」


「「ウォオオオオオオオン!!」


「我らの平穏を脅かし!!顔に泥を塗り!!誇りを踏み躙った奴らだ!!地獄を見せてやれぇ!!」


「「ウォオオオオオオオン!!!」



「我らの奪われた誇りを取り戻し!!カイル様の御前に再び捧げるのだ!!」


「「ウォオオオオオオオン!!!」」




フェンリル達は次々と周囲のトレント達へ襲いかかる。

白い閃光が縦横無尽に蠢く森を縫うようにして舞っていく。


その白い閃光が走るたびに、トレントは木っ端微塵に弾け飛んでいく。

そんな枝や葉が舞い散る中を、速度を緩めることなくカイルとラドンは進んでいく。



「・・・凄まじいね」

「お褒めに預かり光栄にございます」

「はははは・・・ところで、あれは?」

「おそらく、ユグ殿に取り憑いている精霊の眷属でしょう」



カイルは背後を見る。

神狼であるフェンリルに次々と討ち滅ぼされていく巨大な木のモンスターはトレントの一種だ。


フェンリルは普通の狼よりも大きく、車ぐらいの大きさはある。

それでも、トレントの方が遥かに大きい。

そんな体格さを覆し、まるで無双ゲームでもするかのうように、トレント達を次々と打ち倒していた。



その光景に不安を感じる要素はカケラもない。

カイルは安心した様子で前方へ顔を戻す。



「・・・っ!?」


カイルはハッとする。

視界の一部の空間がウネウネと歪みを見せていた。

そして、その歪みから煌めく鋭い牙が見えた。




「グルルルル!!ガオンッ!!」



カイルとラドンの横合いからラドバルギルが姿をパッと現す。

右から現れると、少し遅れて左からも現れる。



「グルルル!!ガウガウ!!!きゃいいんっ!!」


しかし、カイルとラドンは見向きもしない。

何故なら、2体のラドバルギルは、カイルとラドンに噛み付く前に、自分自身がフェンリルに噛み砕かれていたからだ。



「ガウガウッ!!・・・きゃいん!!」


「カイル様へ牙を向けるなどッ!!本来であれば徹底的に責苦を味合わせて殺すべきですが・・・緊急事態ゆえ、申し訳ありません!!」



次々とラドバルギル達がカイルとラドンへ奇襲攻撃を行う。

その様をメラメラと燃える瞳で眺めながらラドンはカイルへ言う。




「構わない・・・責任者に全てを負わせれば良い」

「はっ!!」



ラドバルギルの波状攻撃を前にしてもなお、カイルとラドンは速度を緩めることなく進む。

地中から現れるものは地面ごと砕かれる。

木々の隙間から飛び出したものは、その頭部を爪で切り裂かれる。

上空から現れるものは、地面に到着する頃には血肉の雨へと変わっている。


そんな風に、ラドバルギルはカイル達を護衛するフェンリル達によって迎撃されていた。




・・・何か、臭いな。



カイルが鼻を鳴らす。

同時に、ラドンが口を開いた。



「・・・毒が濃くなってきました」



ラドンがカイルへ告げる。

その言葉に、カイルは自然と頷く。

カイル自身も空気が変わったことを感じていた。


そして、その変化は実感へと変わる。

彼らの走る周囲の木々が急に真っ黒に染まっていく。



「これほどとは・・・相手は上位精霊だ!!」


ラドンは群れへ叫ぶ。


「「ウォオオオオオオオン!!」」

「しかし、臆するなッ!!同胞達よッ!!」


「「ウォオオオオオオオン!!」」


「カイル様の眷属たる我らの敵ではないぞ!!」


「「ウォオオオオオオオン!!」」


ラドンの号令に、カイル達に続くフェンリル達は次々と唸り声を響かせる。



そんな中、不快感を露わにしつつ鼻を摘んでいるカイル

彼を背にしたラドンは言う。




「・・・翠毒が濃くなってきております」

「あの黒いのも毒の影響?」


「はっ!その通りです」

「・・・もはや翠じゃないけどね」

「ええ、濃すぎて・・・こう黒くなるようですな」


「「グルルルル!!!ウォオオオオオオオン!!」



周囲から黒く染まったトレント達が地面から抜け出してくる。

包囲される前に、フェンリル達がトレント達を倒しに向かう。


先ほどのトレントとは違い、一方的にフェンリルにやられている様子はなく、それなりに戦いになっているようだ。




「・・・」

「カイル様、露払いは同胞にお任せください」

「すまない」



カイルはラドンの背に乗りながら、背後の木々の奥を眺めていた。

次々と黒いトレント達がフェンリルの群れへと押し寄せている。

フェンリル達が倒す数よりも、押し寄せる数の方が多いように見えた。



「カイル様、ご安心を、あの程度の敵相手に遅れなどあり得ません」

「ああ、信頼しているよ、ラドン」

「ウォオオオオオオオン!!」



カイルの言葉に、思わずラドンは吠える。

感動に震え、その目には確かに潤いがあった。




ーーしかし、そんなラドンは余韻に浸る暇すらない。



「グルルルルル!!!」


森の奥から唸り声が響く。

今まで、何が現れても動じることなどなかったラドン

しかし、その唸り声を前に、ピタリと足を止めた。



「オルトロス・・・まさか、こんなものまで従えているとはな」


ラドンの前には、首が二つある黒い大きな犬がいる。

ラドンよりも二回りぐらい大きく、大型トラックぐらいはあろう体格だ。

その尻尾も2本あり、尻尾の先は蛇のような模様があった。



「フェンリル、フェンリル、臭いと思ったら、フェンリル」

「・・・白犬が人間に尻尾を振るか」



2つの頭がラドンを見下ろしながら次々と口を開く。



「ふん、貴様は低級な精霊に仕えておるようだがな」


そんなオルトロスに冷めたような視線を送りながら、嘲笑うように言い放つラドン

すると、オルトロスの目が真っ赤に燃え上がり、その四肢の筋肉が隆起を始める。


「主を愚弄するか白犬っ!」

「地獄の業火で焼き尽くしてやろうぞ!!」



・・・煽り耐性ゼロだな。




オルトロスの様子を見て、カイルはそんな感想を抱いていた。




「カイル様・・・先へお進みください」


ラドンはそっと背からカイルを降ろす。



「ラドン・・・大丈夫か?」

「ええ、ご安心を・・・この程度は敵の勘定にも入りません」



・・・オルトロス

フェンリルと並んで有名なモンスターだ。

フェンリルの方が上位種としてゲームに出てくることは多いけど、油断できる相手では当然ない。




「カイル様、恥の上塗りはしませぬ」

「・・・分かった」


カイルはラドンへ任せることにした。

その真っ直ぐに自分を見つめる黄色い瞳には、確信めいたものをカイルは感じ取っていた。


そのまま、彼はオルトロスの横を通り過ぎて行く。

まるで人間など虫と同じと言った様子でオルトロスはカイルへ関心を向けない。

特に攻撃を受けることなく、カイルは先へ進むことができていた。



「おい、白犬・・・これで負けた言い訳、できなくなったなぁ」


「ふん!・・・地獄の番兵の力、口だけでなければ愉しみようもあろうな」


「その余裕そうな面、すぐに泣きっ面に変えてやるぞ」

「白犬、泣いて喚いて、恥を晒せ!!」





*******



カイルは暗い森の中を進んでいく。

彼に、周囲の木々は襲いかかる様子を見せない。

まるで敵にすらならないといった対応であった。




・・・舐められてる。

だけど、好都合だ。



カイルは警戒を緩めずに、そのまま森を進む。

すると、目の前に緑色の髪をした少女を見つける。

ゆっくりと歩くその後ろ姿は、まさしくカイルの妹であった。



「ユグちゃん!!」



カイルが呼びかけると、その少女はピタリと足を止めた。



「ユグちゃん!助けに来たよっ!!」


「・・・助けに?」

「そうだ!!帰ろう!!みんな無事だよ!」


「助けに・・・誰を・・・誰が?」

「ユグちゃん?」



ユグは振り返る。

目は虚であり、表情は無機質だ。


そのユグの様子を見て、カイルは表情を険しくさせる。



「・・・ユグちゃんの中にいる精霊、聞こえるか!?」


「ねぇ・・・答えて・・・誰が・・・誰を・・・助けるの?」

「ユグちゃん・・・待ってて・・・僕が必ず助ける!」



カイルの言葉を受けてユグはガクガクと体を震わせる。

そして、無機質な表情を一転させ、歪んだ笑みを見せ始めた。



「ふふふ・・・できるかなァ?」


「ユグちゃんから離れろ!!」



「・・・けけけけけ!!俺っちにゴミムシ如きがっ!!指図するってか?」



ユグから光が放たれると、そのままふわりと宙を浮き始めた。

そして、見下すような眼差しで、眼下のカイルを見る。

ニッタリと口角を歪め、その可愛らしい口から可愛い声が響く。



「降りてこい!ユグちゃんから出ていけ!!」

「俺様に指図すんじゃねェ!!!」



聞こえてくるのはユグの容姿に似合わない声だ。

明らかに、喋っているのはユグではないとカイルは感じていた。



「さっさと出てこい!じゃないと・・・ぶっ飛ばしてやる!」


「おもしれェ態度だァ・・・人間ッ!!!」





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