表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
26/92

襲撃者



カイルはフラフラとしながら村の中を歩いている。

彼が怪我をしている様子もないが、その表情は思わしくない。

時折、首を左右に振りながら、涙目で歩いている。


彼が歩く長閑な村には、まるで木が人の姿を象ったようなものが落ちている。

元は人間であったと言われても納得できるような造形であり、どれもカイルの知っている村の人達に似ている。



「マルルちゃん・・・」


「ドシル・・・」



「キララちゃん・・・サララちゃん・・・」



「ボルル・・・みんな・・・」




もうカイルにとって馴染み深い人々のカタチをしている木

それがズラリと並んでいる光景は、カイルの脳裏に絶望を植え付けていた。




ーーカイル達の家が見えた時に、彼の顔は真っ青になる。

そして、思わず膝が震え、倒れそうになってしまうカイル

地面を思いっきり蹴るようにして、何とか踏みとどまると、そのまま家の前まで駆けていく。




「サラさん!!」


家の前には、綺麗な女性を象った木が落ちている。

その手には鍋があり、中身は地面に溢れている。

そこからは、まだ湯気が立ち昇っていた。



「サラさん!!大丈夫ですか!!サラさん!!」


カイルは涙目になりながら、倒れているサラへ呼びかける。

正確にはサラを象った木に話しかけていた。



「起きて!!起きてよ!!お母さん!!」


カイルは泣き叫ぶ。

しかし、目の前でサラのカタチをしている木は言葉を発することなどない。




「お爺さん!!!」


カイルは家の中に向かって叫ぶ。

しかし、返事はない。




「お爺さん!!助けて!!お母さんが!!!」



ーー返事はない。






「・・・誰か助けてください!!!」



カイルは空へ向かって叫ぶ。

村中に聞こえるぐらいの声で叫ぶ。

しかし、誰も駆けつけることはなかった。



「・・・誰か!!助けて!!!どうして来てくれないんだ!!!」



カイルは誰も助けに来ないことに困惑する。

この村の人達は、全員が一つの家族というぐらい仲が良い。

誰かが助けを求めていれば、村中が駆けつけるぐらいだ。



「そんな・・・はず・・・ない・・・あれは・・・嘘だっ!」



カイルは思い出す。

家に戻るまでに見た村の光景を



「あれは・・・違う・・・嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ・・・」



信じたくない。

事実だと認めたくない。

受け入れたくない。


込み上げてくる喪失感を受け止めきれず、カイルはただただ否定することしかできないでいた。


そんなカイルは、家の扉が開いたままになっていることに気付くと、玄関お爺さんが倒れている姿が目に入った。

それは、カイルの知るお爺さんではなく、すでに木のようになっている。




「違う・・・違うっ!嫌だ・・・嫌だ・・・嘘だ・・・違う!!違う!!これはサラさんじゃない!!みんな・・・違う・・・あれもお爺さんなんかじゃない!!」



カイルは顔を左右に振りながら小刻みに叫ぶ。

まるで目の前の現実を泣いて叫べば否定できるような気がしていた。


だからこそ、泣き喚くしか彼にできることはなかった。



ーーそんなカイルの首が、急に胴体と離れる。




ーーピローン♪



ーーー手札ーーー

『ウインド・カッター』

『黒狼爪』

『黒狼爪』

『迅速』

『迅速』


ーーーーーーーー





・・・攻撃された?




カイルはグルグルと回転する視界の中、周囲を見下ろす。

しかし、血を吹き出している首を失った自分の胴体とサラの他に、そこに気配はなかった。




・・・誰もいない?

遠距離攻撃か?




ーーーインフォメーションーーー

・『不老不死』を発動しました。

・『超再生』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




再生したカイルはゆっくりと起き上がる。

そして、自分の手札を眺めながら、周囲を見渡す。


すると、地面に微かに足跡が残っていることに気付く。

肉球の跡があり、猫か犬がいたようだ。


しかし、カイルがここへ駆けつけた時に、そんなものはなかったはずだ。




ーーーインフォメーションーーー

・スキル『迅速』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




カイルは即座に手札からカードを発動させる。

そして、足跡が集中しているところにまで一気に加速して移動した。




ーーーインフォメーションーーー

・スキル『黒狼爪』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




カイルの手足がブラックウルフのような姿へ変貌する。

そして、虚空に向かってカイルは腕を振り下ろす。




「きゃいいいいん!!」



カイルの手には確かな肉の感触があった。

同時に、真っ赤な血が虚空から吹き出し、断末魔のような悲鳴が轟く。



血が吹き出している場所から段々と輪郭が浮かび上がってくる。

ステレス迷彩を解除するように、透明な膜が揺れる水面のように浮かび、やがて緑色の狼の姿が現れる。


毛並みはゴワゴワしている。

目はカメレオンのように丸い。

尻尾は細く鋭い。


シルエットは狼だ。

しかし、どこかカメレオンのようにも見える。




「・・・出てこい!!」



カイルはその死体の頭部を踏みつけながら叫ぶ。

周囲に飛び散る血が、潜む存在の輪郭を微かに映していた。


そして、、彼の周囲から声が響く。




「・・・イキテル」

「クビ キッタ ナオル オカシイ」



ーーーインフォメーションーーー

・スキル『ウインド・カッター』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー



カイルは声のした方向へと手を振るう。

すると、鋭くなった風の刃が舞う。




「ぎゅうっ!」



虚空から断末魔が響くと、再び血が吹き出し始めた。

やがて、先ほどと同じカメレオンのような狼の死体が浮かび上がってくる。




「テッタイ」

「モクテキ ハタシタ」

「ニゲロ ニゲロ」



そんな声が聞こえてくる。

すると、カイルは顔を真っ赤にさせて叫ぶ。



「逃すか!!絶対に殺してやる!!」



怒りに満ちた声だ。

村の人達に起きた異変、それはカメレオンのような狼が元凶だ。

そうカイルの中で決めつけていた。



「どこだ!!どこにいる!!僕はここだぞ!!」



カイルが周囲を見渡しながら叫ぶ。

しかし、どこからも返事はない。


虚空を殴る蹴るしてみるが、その手足に手応えはなかった。



「・・・くそ!!くそ!!」



カイルは暴れるのをやめる。

そして、糸が切れた人形のように、プツリと何かが切れる。

すると、膝が崩れ落ち、思わず跪くような格好となってしまう。



「どうしたら・・・どうすれば・・・」


カイルはそう呟きながら絶望を露わにしていた。

手札にあるカードのどれも「攻撃」や「補助」の魔法であり、「治療」できる魔法はなかった。


藁にも縋ることができない。

そんな状況である。



そんな泣き出しそうになる彼の前に、モヤモヤっと白い影が浮かび始める。

すると、カイルは面をあげて、そのモヤを見つめる。



「・・・ラドン?」


「カイル様、申し訳ございません。発見が遅れ、このような事態に・・・」



ラドンは恐縮した声で話し始める。

そんなラドンへカイルは優しく言う。



「ラドンのせいじゃない・・・」


カイルの言葉に、思わず震えるラドン

しかし、キッと表情と姿勢を正して、カイルへ告げる。



「カイル様、現状を報告いたします。すでに把握されていると思いますが、現在、この周囲は魔物の襲撃を受けております」

「被害状況は・・・?」


「この村の人間が中毒状態です。仲間が治療にあたっており、命に別状はありません。襲撃者も仲間が対応しております。殲滅も時間の問題です」



ラドンがそう告げると、カイルの前にいるサラが木のような状態ではなくなっていた。

その顔色も段々と良くなってきており、症状が良くなってきているのが手に取れる。

そして、気付けば、もう一頭のフェンリルがサラの傍にいるようだ。



気付いたカイルは思わず目に涙を浮かべてしまうほど表情を明るくさせていた。

もう終わりだと思っていた彼の絶望がパーっと晴れていく。



「ラドン!!ありがとう・・・本当に・・・ありがとう!!」

「いえっ!!襲撃に気づけなかったこと、切腹ものでございます・・・お礼など!!」


「切腹なんて必要ないよ!!やめて!!!ラドン達がいなければ、みんな殺されていたかもしれないんだ!!!」

「ほ、本来であれば、我らがいる以上、この村に危害が及ぶこと自体があり得ぬこと・・・」



ラドンには襲撃の気配に心当たりがあった。

数日前に、村の畑の様子がおかしいことを、人間に相談されていたことを覚えている。

しかし、自分達の耳や鼻で異変を察知していないため、人間の言葉を杞憂だと切り捨て、傲慢な態度を取ってしまった。


あの時、人間の言葉に耳を貸していれば、この事態は防げたかもしれない。




「カイル様が此奴らの気配に気付かなければ、我らなどは察することもできませんでした・・・」



ラドンは倒れているカメレオンのような狼の死体を見つめる。

どうやら、カイルと魔物の戦闘の気配を感じ、異変を察し、ここまで駆けつけてきてくれたようだ。



「・・・こうして、みんなが無事なら良いんだ。ありがとう・・・ラドン」


「それが・・・カイル様」



カイルの言葉に、震える声でラドンが続ける。



「ユグ殿が奴らに攫われました」

「攫われ・・・た?」



カイルは忘れようとしていた。

気付かないようにしていた。

強引に押し込めていた。

とある事実が、ラドンの言葉でカイルの脳裏に蘇ってくる。


しかし、ラドンの言葉と、カイルが体験したこと。

そこには相違がある。



「不甲斐なく申し訳ありません!!」


ラドンはユグが攫われてしまったことを謝罪する。

しかし、カイルの関心はそこになさそうである。



「・・・相手はどんな感じなの?」

「相手ですか?」

「そう、あのカメレオンみたいな狼が敵なんだろ?」


「カメレオン・・・?あ、は、はい!左様でございます!!」

「あの狼は何なの?」

「あれはラドバルギル・・・我らと同じ狼種の魔物です。気配を消すことに長けた者であり・・・」



ラドンは言い訳をしそうになっていることに気付くと言葉を途中で止める。

ラドバルギルは下級の魔物だ。

フェンリルが不覚を取ること自体があり得ない相手であり、いかなる言い訳も通らないだろう。



「カイル様・・・恩寵を賜った身でありながら・・・我らは何と情けない・・・申し訳ありません!!」

「ラドン、責めるつもりはないよ。僕なんて・・・まったく気付けなかった・・・家族なのに・・・まったく・・・」

「カイル様・・・」



「・・・具体的に村の警護まで約束してはないから、ラドン達は悪くないよ・・・それよりも、相手の目的は・・・?どうして村を襲ったの?」


「はっ!ユグ殿を狙ったものと思われます」

「・・・ユグちゃんを?」


「はっ!奴らは、デルガビッズと同じ目的の上位精霊に唆されていると思われます」

「上位精霊?」


「はっ!ラドバルギルは・・・おそらく、精霊の庇護下に入ったと思われます。我らがいるのにも関わらず、こんな舐めた真似・・・精霊がいるから気が強くなったのでしょう」



「攫われているユグちゃんの意識は・・・?」

「もう精霊に乗っ取られていると思われます。攫われたと表現しましたが、自らの手足で移動しているようです」


「・・・精霊か、そいつがユグをアニマにしようとしている。そういうことで間違いない?」

「はっ!その通りです!」


「・・・ということは、操られてはいるけれど、ユグちゃんが殺されるようなことはないのか」


「いえ、カイル様・・・悠長にはできません。精霊はユグと契約ではなく隷属・・・もしくは完全支配を交わすつもりだと思われます。時間をかけてゆっくりと蝕んでいたのも、そのためでしょう」





・・・完全支配?

そうか、それで…あんなことを…

ユグちゃん…

僕は…ごめんね。

必ず助け出すよ。



「・・・ユグちゃんがユグちゃんじゃなくなる。そういうこと?」

「はっ!その通りです!」


「状況は分かった。報告ありがとう・・・ユグちゃんを連れ戻す・・・協力してほしい」

「協力などと・・・我らにはお命じください!!」



ラドンが声高らかに吠える。

すると、彼の背後にスーッと白い影が並び始める。

一瞬で、カイルの前にはフェンリルの軍団ができあがっていた。


カイルはフェンリルの群れを見渡す。



「みんな・・・助けてほしい」



カイルは信じられいない様子でフェンリル達へと問いかける。

すると、彼らは一斉に吠え始める。


「当然ですぞ!!」

「我らはカイル様の忠実なる下僕!!お命じください!!」

「舐められたままで終われるか!!」


「カイル様のおかげで我らは命を繋ぐことができております!!」

「そうだ!!カイル様のおかげで、俺たちはこうして静かに暮らせているんだ!!」


その光景を前に呆然としてしまうカイル

そんな彼へラドンは再び告げる。



「カイル様、どうか、号令を・・・我らへお命じください」


ラドンの言葉にカイルはコクリと頷く。

そして、潤いのある瞳を大きく見開いて、堂々と胸を張り、声高らかに叫ぶ。


「・・・お願いだ!!!みんな!!・・・僕の妹を助けて欲しい!!!」



「「ウォオオオオオオオン!!!」」


カイルの言葉に呼応するように、村にはフェンリルの咆哮が轟いていた。






ーーーリザルトーーー

・ラドバルギルを討伐しました。

・ブースターパック『森の碧影』を2パック入手しました。



・パック開放結果

NEW!『翠の隠密』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆

タイプ:装備

属性:土

発動条件:なし

効果:気配を消す。



NEW!『アース・スライサー』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆

タイプ:攻撃

属性:土

発動条件:なし

効果:土の刃で敵を切り裂く。



NEW!『パリィ』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆☆

タイプ:防御

属性:風

発動条件:なし

効果:近接攻撃を風の刃で防ぐ。



NEW!『ミサイル・パリィ』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆☆

タイプ:防御

属性:風

発動条件:なし

効果:遠距離攻撃を風の刃で防ぐ。



NEW!『回避迷彩』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆☆

タイプ:特殊装備

属性:土

発動条件:『翠の隠密』を装備している。

効果:回避率が上昇する。



NEW!『奇襲迷彩』

レアリティ:レア

レベル:☆☆☆

タイプ:特殊装備

属性:土

発動条件:『翠の隠密』を装備している。

効果:地中に潜ることができる。



NEW!『治療迷彩』

レアリティ:レア

レベル:☆☆☆

タイプ:特殊装備

属性:土

発動条件:『奇襲迷彩』を特殊装備している。

効果:地中に潜っている際に、体力が回復していく。



NEW!『迷彩式色』

レアリティ:レア

レベル:☆☆☆☆

タイプ:防御

属性:土

発動条件:『翠の隠密』を装備している。

効果:敵から攻撃を受けた際に、デッキから『迷彩』と名の付くカードをランダムに1枚手札へ加える。



『パリィ』×1

『アース・スライサー』×1



・入手経験値

50


・入手ゴールド

50



ーーーーーーーーーーーーーー



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ