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【不死の力で世界最強】永遠の魔法  作者: ららららら
第1章 カイル
18/92

平穏?



ーー季節は巡る。

カイルが村に来てから、この世界に来てから1年の月日が経過していた。




村の広場には子供達の姿があり、そこから離れたところにはカイルとドシルの姿がある。

2人は他の子供達よりもはるかに戦闘能力が高く、こうして隔てて授業を受けていた。


2人は間隔を空けて並んでおり、掌を突き出して立っていた。

彼らの手のひらの先には、的となるカカシが置かれている。



「・・・うぐぐぐぐぐぐ!!てぇい!!とう!やぁ!!」


ドシルは様々な掛け声を唸り声と共に響かせる。

しかし、彼の掌の先からは炎や風、水や氷、雷や土が現れることはなかった。



「ドシルは完全に剣士タイプだなー」


ドシルの背後で両腕を前で組みながら何やら監督的な雰囲気でケビンが言い放つ。

そんな彼へ向けて、ドシルは勢いよく背後を振り返る。



「俺!魔法が使えないんですか!?」

「それは大丈夫だぜ!ちゃんと使えてるからな!」


「師匠!!俺、でも・・・」


ドシルはケビンの言葉を信じられない様子だ。

目を伏せながら、何も生み出すことのできない手のひらの先を見つめる。



「えっとだな・・・ドシルは肉体強化に長けているんだよ・・・うーん・・・こう・・・魔力を外に出すことが苦手なタイプだ」


ケビンは掌を上に向けると、そこから炎がボッと燃え上がる。

魔法と言葉を聞けば、一般的にイメージするのはケビンのような動作であろう。

それは異世界で住う少年ドシルも同じ見識のようだ。


しかし、自分の手のひらの先から魔法が放たれることはない。

6属性はすべてダメであった。

ケビンが簡単に魔法を放つ姿を見て、ドシルはガックリとしていた。




「ドシル、お前の属性は雷だな。そりゃ、間違いない」

「雷?」


「ああ、結構、レアでつえーやつだぜ」

「本当ですか!?」


「ああ、だけどな。雷をこう・・・バリバリって出して攻撃するのは諦めろ、向いてねぇ」


ハッキリと告げるケビン

その言葉には確かな重みがあり、ドシルの先を考えての物言いであることは幼いドシルにも伝わっていた。

しかし、それが返って、ドシルに絶望を与えていた。



「う・・・うぅ・・・」


「お、おい!泣くなって・・・お前はその分、すげー近接戦闘向きなんだよ!」


目の前で泣きそうになるドシル

慌てたケビンは叫ぶように告げる。



「へ?」

「えっとだな、魔法の適正ってのは偏りなんだよ。こう・・・そうだな・・・遠く離れて攻撃できる奴と、ドシルみたいに内に秘めて使う奴と、両方できる奴がいるんだ」


ケビンは頭を掻きながら説明を始める。

ドシルは泣くのをやめて、彼の言葉に耳を澄ませていた。



「両方できるやつは、まぁ、器用だ。それに、このタイプが1番多い。だけどな、遠く離れて攻撃できる奴よりも、こう・・・ドンってやる時の、バーってこう、向かっていく魔法の威力は低い。あと、内に秘めて使う奴とボコボコに殴り合うと負ける。偏っている奴の方が、アレだ。強いタイミングがはっきりとしている分、逆に色々と良かったりする」


「俺は内に秘めるタイプなんですか!?」

「ああ、間違いねぇぞ!ドシル、お前は剣を振るために産まれて来たような奴だ!がっかりすることじゃねぇ!胸を張れ!」


「はい!!」


ドシルは目を輝かせながら頷く。

そして、スッと隣でカカシへ向かって魔法を打ち続けているカイルを見る。



「・・・あいつは?どんなタイプなんですか?」


ドシルは目を細めながらケビンへ問いかける。

そこには呆然とカカシを見つめているカイルの姿があった。



「うーん・・・さっきからあの調子だからな」


ケビンは呆然と虚空を見つめているカイルの様子に頭を掻く。

他人から見れば何もない空間をただ見つめているだけに見えるだろう。



しかし、カイルの目の前には、青く透明なパネルが浮かんでいる。

これは彼にしか見えないものだ。



ーーー契約書ーーー



・カードショップ




ーーーーーーーーー



・・・やっぱり、何か増えている…



カイルが見つめる先、そこには「契約書」が表示されている。

今まで、所持カードや力などの数値だけが表示されていただけだったが、1番下には「カードショップ」の文字が追記されていた。



カイルは「契約書」に表示されている「カードショップ」の箇所をタッチする。

スマホを操作するような手つきで画面をタップすると、「契約書」の画面が切り替わる。




ーーーカードショップーーー

・ブースターパック

⭐︎『森の黒き狼』・・・50G

 『ゴブリン・ゴブ・ゴブリン』・・・50G

 『フレイム・エンペラー』・・・150G

 『氷塊の地平線』・・・150G

 『鼓動する大地』・・・150G

 『オルタナティブ・ウィンド』・・・150G

 『ハンマーヘッド・ライトニング』・・・150G


・契約書カスタム

 『装備フォルダ+1』・・・500G

 『ドロー速度減少』・・・1,000G

 『デッキ所持数+1』・・・500G

 『カード売却』・・・2,500G

 『カード合成』・・・2,000G


・エディションシリーズ

⭐︎『地獄の炎風主』・・・6,500G

⭐︎『黒龍のアギト』・・・15,000G



・所持ゴールド:1,543G



ーーーーーーーーーーーーーーーー





・・・なるほど、この世界の通貨はゼニーだから、ゴールドなんて何に使うのかって思っていたけど…

カードを買うのに使えるなんて、まるでゲームみたいだ。




カイルが「カードショップ」に並んでいるパック一覧を眺める。


どれを買えば良いのか分からず、彼の手は止まってしまう。

ゴールドは約1,500Gしかないため、手当たり次第に購入することはできない。




・・・とりあえず、炎の奴でも買っておくか。


カイルは1パックだけ買ってみることにした。

炎を選んだのは、デルガビッズを倒した時に手に入れたカード群が炎とシナジーのあるものだからだ。

風でも良かったが、何となくで炎の方を選ぶ。



そして、1パックだけにした理由は、有事に備えてだ。

持ち金すべてを使い果たしてしまうと必要な時に困るかもしれない。

逆に、何も買わずにいては、いざという時にカードショップの使い方が分からずに困るかもしれない。

その二つの考えの折衷案が1パックだけ買ってみることである。




ーーーインフォメーションーーー

・ブースターパック『フレイム・エンペラー』を購入しました。



・パック開放結果

NEW!『ファイア・ボール』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆

タイプ:攻撃

属性:火

威力:10

発動条件:なし

効果:炎の玉を放つ。




NEW!『プロミネンス』

レアリティ:スーパーレア

レベル:☆☆☆☆☆

タイプ:攻撃

属性:火

威力:55

発動条件:⭐︎3以上となるように火属性魔法をリリースする。

効果:業火の弾を放つ。




NEW!『カウンター・ファイア』

レアリティ:レア

レベル:☆☆☆

タイプ:防御

属性:火

発動条件:なし

効果:攻撃を受けた際に、対象者へ『フレイム・ニードル』を放つ。




NEW!『フレア・ストーム』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆☆☆

タイプ:攻撃

属性:火 風

威力:30

発動条件:なし

効果:炎の渦を放つ。




NEW!『ファイア・ウォール』

レアリティ:ノーマル

レベル:☆☆☆☆☆

タイプ:攻撃

属性:火

威力:15x

発動条件:☆3以上の火属性魔法をリリースする。

効果:持続する炎の壁を生み出す。




ーーーーーーーーーーーーーーーー





・・・なるほど、確かに魔法が増えてる。


カイルは「デッキ」を見つめる。

所持カードの合計が40枚に満たないため、入手したカードが自動的に組み込まれていた。



カイルは「契約書」に記載されている「デッキ」や「装備フォルダ」などを見つめる。

そして、装備フォルダに手を付けようとしたところで、肩を誰かに叩かれる。



「おーい!カイル・・・大丈夫か?」


ビクリと肩を震わせたカイル

あまりに集中してしまったため、周囲の声が聞こえておらず、呆然としているように見えたのだろう。



「あ!大丈夫です!すいません!!」

「・・・そうか」


頷きながらも不安そうなケビン

どこか体調が良くないのではないかと考えていた。


ケビンやサラはこっそりと心配している。

カイルがボーッとしていることが多く、何かの病気ではないかと思っていた。



「カイル、行けそうか?」

「え、あ・・・はい!!」



カイルはケビンの声に反応して、キッとカカシを睨む。

魔法の練習をしようとしていたことまでは覚えていた。


そのことを思い出しながらカカシを見つめると、カイルの脳裏にメロディが響く。



ーーピローン♪



ーーー手札ーーー

『迅速』

『ファイア・ボール』

『プロミネンス』

『ウインド・カッター』

『黒狼牙』


ーーーーーーーーー




「まずは・・・そうだな・・・風を試してみようか」

「風?」


「おう、そうだな・・・ビュンって風で吹き飛ばすような、そんなイメージで魔力を練ってみろ」

「・・・はい」


ケビンの言葉を理解しきれないカイル

とりあえず、言われた通りにやってみようと思う。



「・・・」



カイルの手のひらの先から何かが生まれることはなかった。



「・・・あれ?」

「風はダメそうかな」


「けけけけけけ!!カイル・・・へっぽこだな!」

「お前が言うな!」


「俺はキンテツだから良いんだよ!」

「・・・近接じゃなくてか?」

「そ、それだ!!それ!!」


「・・・」

「おい!何だ?馬鹿にしてんのか?」



・・・風か。

魔法なんて言われても、いまいち感覚が分からないな。

こう、吹き飛ばすことをイメージすれば良いのかな?




ーーーインフォメーションーーー

・スキル『ウインド・カッター』を発動しました。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「おわっ!!!」

「っ!?」


「あ・・・あれ?」



彼の目の前で、カカシは風の刃にザクザクと切り裂かれていた。

その風の刃はカイルの手から放たれたものである。




「お、おおおお!!!」


ケビンは何度もカイルの肩を叩く。

すごく嬉しそうな表情をしており、悪気はカケラもない様子だ。



「すごい!すごいぞ!!カイル!!いきなり・・・こんな攻撃力はすごいぞ!!」

「カイル兄ぃ!すごいすごい!!」



「ぐぐぐぐぐぐ!!」


嬉しそうに何度もカイルを褒めるケビン

ユグも嬉しそうに何度も飛び跳ねていた。


そんな2人を見て、カイルへ嫉妬の炎をメラメラと燃やすドシル




「流石は俺の子供だ!天才だ!」

「うん!カイル兄ぃ!天才!!」

「あ、あははははは・・・」


カイルは物凄く居心地が悪い。

努力で得られた成果ではなく、与えられた力による成果だ。

それを褒められれば、居心地が悪いのは当然であろう。



「そ、そんなにすごいですかね?」

「おう!いきなりあれだけの威力、そうそう無理だぜ!」



ケビンは再びカイルの背中を何度も叩きながら喜びを表現していた。

しかし、隣にいるユグは表情を暗くさせていた。



「どうしたの?」

「・・・うん」


「ユグちゃん?」


カイルはユグの表情の変化に気付くと、気になって尋ねてみる。

彼女は急に表情を暗くさせたり、何かに怯えることがあった。

きっと、昔のことを思い出しているのだとカイルは考えていた。



カイルは尋ねるのをやめて、優しくユグの頭を撫でる。



「ユグちゃん!訓練が終わったら、一緒に遊ぼうね!」


カイルがそう言うが、ユグはうかない表情のままであった。



「・・・ユグ、魔法、使えない」


「魔法が使えない?」

「うん、だから・・・ダメ、カイル兄ぃ、ユグと一緒にいたら、ダメ」


「え?どうして・・?」

「・・・カイル」


カイルへそっと言うケビン

まるで、それ以上はやめておけというと目で訴えかけていた。



それを察したカイルは黙り込んでしまう。

すると、その場には重たい空気が流れ始めている。




・・・魔法が使えない。

この世界だと、何か不味いのかな?





ーーそんな重たい空気をいつも吹き飛ばすのはドシルだ。




「おい!カイル!!決闘だ!!」

「へ?」


急に背後から叫ばれたカイルはビクリと肩を震わせる。

その声の方向を見ると、憤慨しているドシルの姿がある。




・・・急にキレるんだよな、ドシル




カイルはため息を吐くと、ドシルへ言う。



「後でな」

「今だ!俺と勝負しろ!!」

「・・・何で?」


「剣だ!!」

「・・・お前の得意分野じゃん」



カイル対ドシルで勝負する時

魔法の撃ち合いなら圧倒的にカイル

魚獲りや芋虫掘りもカイル


唯一、剣だけが、ドシルがカイルに勝てるポイントであった。




「何だ!負けるのが怖いのか?」

「卑怯なんだよ!自分の得意分野じゃなくて、他のことで勝負を持ちかけてこい」

「おい!それなら、どんな勝負方法が良いんだ!?」


「そもそも・・・勝負するなんて言っていないぞ?」

「逃げんのか!?」



カイルはやれやれと言った仕草をとる。

そして、奥にいるケビンを見た。


そこには楽しそうに眺めているケビンの姿がある。

子供の喧嘩に口を出す気はないが、楽しく観戦するつもりはあるようだ。


次に、カイルはユグを見る。

ドシルのことを眉を細めて睨んでおり、急にカイルへ喧嘩を売っているため凝視しているようだ。



「・・・」

「おい!カイル!聞いてんのか!?」


「・・・あー、勝負ね」

「そうだ!」


カイルはケビンをジッと見つめると、その視線に気づいたケビンが怪訝な顔をする。



「む?」

「お父さん!」


カイルから急に呼ばれて怪訝な顔をするケビン



「ど、どうした?」

「勝負の方法、何か良いものありますか?」



・・・巻き込んでやる。

あわよくば、ドシルの対応を任せてしまおう。



そんな思惑のカイル

しかし、これが裏目に出る。



「うーん・・・そうだな・・・男ならナンパ対決なんてどうだ!?」



「は?」






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