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ラスの点呼を取らなければならないのだ。だからこうしていなかった亜紀穂を捜しに来てくれたのではないか。こんな森に引き返して。そう思うと今更ながら申し訳なくなった。
「池田」
「ん?」
「助けてくれて、本当ありがとう」
「何?大丈夫だよ。溺れたことならいわないし」
夏目が先頭になって歩き出すと、服の張り付きで、意外と線が細いことが分かった。
亜紀穂より少しだけ筋肉質なだけだ。当たり前か、まだ高校生だもんな。
「そうじゃなくて、今度お礼するよ。何か困ったこととかして欲しいことあったら言って。出来る範囲なら協力するし」
「・・・それなら今すぐ四次元ポケットのどこでもドアでホテルに帰り・・」
「人間に出来る限界を知ってください」
夏目が前からチラリと亜紀穂を覗く。それに気づいた亜紀穂は冷えた視線で肩を竦めた。黒い半そでを着た白い肩が、洗練された優雅さで上がる。
「なんでもいいよ。今思いつかないなら、後でだっていいしね」
「じゃ、考えとくよ。パシリとかかもしんないけど」
「そんなんでいいの?安いなー」
「櫻井って意外にも毒舌だったんだな」
からかうように言うと、夏目は目を見開き驚いた口調でいう。
「そうかな?あんまり言われないけど・・・」
「すごいな。・・・もしかして俺にだけか?」
「なんか言った?」
「いや、新しい発見したなと思って」
「そう。池田、帰りホテルに戻るにはどっちから行けば近いかな?」
そこには大きく三つの道が分かれている。一つはこれからハイキン