7
くらいの次の瞬間にクッと笑った。さっきまでの悪がき面じゃなく、面白いものでも見たような堪えきれない笑いだった。
「はは、くっ、おもしれー。櫻井もっと落ち着いたインテリかと思ってた」
「・・・何それ」
そうか、今まで自分はこの男にがり勉の根暗と思われていたのか。少なからずショックを受ける。亜紀穂自身あまり積極的な性格ではないが、いざという時は何かしら行動を起こす。そうやって上手くやってきたつもりだ。
「いや、櫻井って、こういうことする奴と思ってなかったし、潜るにしても服脱ぐとかさ、なんかあんだろ?しかも溺れるとかありえないし、ははは」
「改めて御礼を言うよ。溺れ苦しんでるところ、助けてくれてありがとう」
「ああ」
一応命の恩人にお礼を口にすると、暖かな笑顔の変わって夏目は穏やかにそう返した。何か疑問はないのか?高一の男子が宿泊学習の森のハイキングで湖の中を泳いでたんだぞ?普通おかしいだろ。亜紀穂は疑わしく夏目の顔を伺った。どう思ってる、本当のところは。友人さえ一人も居ない亜紀穂は孤独から堪えきれず学校行事のハイキング中に、湖の中で自殺を図り溺死。今時珍しくもない話だ。けれども彼は尋ねない。亜紀穂も語らない。それでいいか、もう。
雨が少し弱くなり、小雨になった。濡れた服が今更だが体に張り付いて気持ち悪い。けれど夏らしく気温は高く、寒くはない。体は完全に疲労から回復された。ゆっくりと起き上がる。荷物を探し、肩に掛けた。少し重く感じるのは酸素不足のためか。
「先にホテル戻ろうぜ。今皆登山してる頃だし」
本来ここはまだ山の序の口の入り口で、ここから上に登って行くとさらに地面は急斜面になっていく。一年はそこを全部乗り越えなければならない。たしか夏目は宿泊学習実行委員か何かで、各休憩所でク