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セバスチャンと私  作者: 海老茶
91/98

第91話

※R15です。過激なシーンがあります。

ストックデイル領は隣国・ドゥムノニアの急襲を受け、大混乱の最中にあった。


領主自ら陸軍を率いて兵士を鼓舞し、民を安寧させ、敵を蹴散らす。

だが、海から軍艦が押し寄せ、大砲を打つ。こちらの海軍も威嚇用に出してはいるが、出来れば息子に指揮させたい。


とジリジリしている深夜、ついにノーマンが到着する。


「ユーインは?」

「時間差で到着します。僕がまず先行しました」

「よし、ノーマン、海軍を頼んだ。一艦残らず撃沈しろ!」

「了解!」


深夜にもかかわらず、ノーマンは元気に飛び出した。その頼もしい姿を見送って、アーロンは反転した。


「よし、てめえら!奇襲をかけるぞ!目にものを見せてやる!」


おおー!と意気揚々にアーロンは再出陣した。




ノーマンは艦隊戦が得意である。政治や陸上の戦術はユーインに及ばないが、艦隊戦ならユーインにも、父親にさえも負けない。


ーーこうなると、僕が先に戻って正解だったね


割と慎重なところがあるユーインは、恐らく到着が早朝になるだろう。

それまでにこの夜襲を成功させ、敵艦隊を帰国させたい。


真夜中の航海は御法度。死亡率が上がるだけだ。だが、ノーマンは夜襲を得意としている。彼は、死亡率を上げるのではなく、勝率を上げる夜の攻め方を考案した。


ーー光魔法と水魔法を駆使する、彼ならではの方法だった。



敵艦隊は、三時方向50海里の場所で停滞している。真っ暗闇の中、静かにストックデイル艦隊は進む。この海は、ノーマンの遊び場。目を瞑っても動ける自信がある。


ノーマンは水魔法で故意に波を立て推進力を上げ、ノットを速める。あっという間に敵艦隊を包囲し、光魔法で固定した。


ーーいやー便利!光魔法最高っ!


足止め程度の固定魔法だが、奇襲には十分だ。


「全艦一斉砲撃!撃てっ(ファイアー)!」


ノーマンの合図で敵艦隊への砲撃が開始される。ーーそれは、一方的な虐殺だった…。



++++++++++



バシャッと顔にバケツ一杯の水を浴び、アンジェリカは目を覚ました。

少しだけ漏れ出た光から、アンジェリカは目の前に立つ女の顔を判別する。


「ようやくお目覚め…?」

「…マスグレイヴ様…」


パアン!と高い音を立てて、アンジェリカは頬を叩かれた。口の中に鉄の味を覚える。少し切ったようだ。


「いいザマね、アンジェリカ。貴女をけがしたら、エルドレッド様はどう思うかしら?」

「さあ」


パアン!と今度は右頬を叩かれた。それでも、アンジェリカはアデラインを睨む。


「おいおい、それくらいにしとけ。価値が下がるだろ?」


若い男がゆっくり近づく。


「久しぶりだな、ソーンヒル。俺を覚えているか?」

「…痩せましたわね、ヤードリー様」

「…ふん。没落したからな。貴様のおかげで」


別に私のせいではない。貴方達が金を返さないのが悪いのだ、とアンジェリカは思う。ーー賢明にも口をつぐんだが。


「ふうん。スタイルいいな、アンタ」

「…どうも」


アンジェリカのふてぶてしい態度に腹を立てたのか、ヤードリーは制服を引き裂く。

すると、豊かなアンジェリカの白い胸がまろび出た。


「綺麗なおっぱいだな…。乳首もまだ桃色だ」


ヤードリーはおもむろに両手でアンジェリカの胸を揉みしだく。ペロペロと乳首を舐められ、アンジェリカに鳥肌が立った。


「……っ!」

「どれ?下もまだ触れられたことのない花園か?」


片手で胸を弄りながら、ヤードリーはアンジェリカの下半身に触れる。ビクリとアンジェリカの身体が跳ねた。


「ーーチッ!ちっとも濡れてねぇな」

「若様!俺たちにもおこぼれくださいよ~!」


しょうがねぇな、とヤードリーはアンジェリカから手を離し、横にズレる。するとすぐにチンピラと覚しき数十人の男どもが群がった。


「うへぇ…。こんなキレイな身体、初めて見た…」

「見ろよ!乳首が桃色だっ!美味そう~」

「堪んねぇな…」


男どもに揉みくちゃに触れられる。恐怖と嫌悪から、アンジェリカから大粒の涙が零れて叫んだ。


「いやあぁああああーっ!」


その刹那、アンジェリカから大量の光が放たれて、群がった男どもが全員吹っ飛んで気絶した。


「こ、これは…!」


アデラインが声を震わせて野蛮な男どもを眺める。ーーまさか、アンジェリカがやったのか?ここには魔法の発動を打ち消す呪術をかけたハズなのに…!


アンジェリカもしばし呆然とした。引き裂かれた制服を見つめ、アンジェリカはハッと気付く。


ーーリリアン嬢…!


これは、リリアンのブローチから放たれた聖魔法だ。彼女の献身的な愛が、いまアンジェリカを救ってくれた。


ーーああ…!


アンジェリカから温かい涙が流れる。ーー今度は、嬉し涙だった。


「こ…こうなったら…!」


アデラインはナイフを取り出し、両手で柄を握りしめる。


「貴女がいる限り、エルドレッド様は私を愛してはくれないの。……だから、死んで?」


狂気じみた瞳でアンジェリカを見つめ、アデラインが力を込めるその瞬間、入口から大きな声が上がった。


「アンジェリカ!」


地下室に乗り込んだ男が、咄嗟にアデラインを蹴り上げる。ぎゃっ!と叫んでアデラインは倒れた。


「アンジェリカ、無事か?!」


震える手で、男は優しく触れる。すると、安堵からアンジェリカはまた涙をこぼした。


「……エルドレッド、さま…」

「ああ、アンジェリカ…!こんなに乱暴されて…!」


太い鎖で吊されていたアンジェリカだったが、エルドレッドはいとも簡単にその鎖を切断した。安堵から意識を失ったアンジェリカを優しく抱きしめる。


「間一髪、だったな。だが…本当に無事で良かった…。執事君、アンジェリカを頼む」


「はい」と返事をして、セバスチャンはアンジェリカを抱きとめた。セバスチャンの手が震える。制服が引き裂かれた姿をあわれんで、セバスチャンは上着を脱いでアンジェリカに掛けた。


ユラリとエルドレッドは動いた。アデラインの前に立ち、その顔を蹴り上げる。


「がはっ!」

「…貴様如きがアンジェリカに傷を付けやがって…!」

「あ…愛されたかったのです!貴方に、どうしても…!」

「僕は言ったはずだ。『邪魔をしたら、容赦しない』と。ーーさようなら、マスグレイヴ嬢」


何の躊躇いもなく、エルドレッドはアデラインの首を刎ねた。ーー断末魔すら響かなかった。


「そこに転がっているヤードリー以外の男は、全て殺せ。ヤードリーは公爵家で尋問する。ーー行け!」

「はっ!」


エルドレッドは配下にそう命じて、一行は地下室を出る。ーー朝日が眩しい。


エルドレッドは腹の虫が治まらない。助け出した時、アンジェリカは頬を腫らし、服は裂け、豊かな胸は唾液で光っていた。純潔は散らしていないが、あの白く美しい胸が男どもに穢された。


ーーヤードリーとマスグレイヴ如きが…!


余程怖かったのだろう。エルドレッドを見た瞬間に、ホッとしてアンジェリカは崩れ落ちた。しかも、初めて名を呼んでくれた…。


彼女への愛は少しも変わらない。だが、自分の腑甲斐なさを、エルドレッドは痛感した。


「……執事君、アンジェリカちゃんを頼む」

「ソーンリー様はどちらに?」

「ヤードリーを尋問する。背後関係を知りたい」

「…畏まりました。この度は主人を救ってくださり、誠にありがとうございました」


丁寧に、だがしっかり頭を下げて、セバスチャンは心からの礼を言った。

エルドレッドは頷いて、セバスチャンの腕の中のアンジェリカを見つめる。


「…愛してるよ、アンジェリカ…」


そう呟いてアンジェリカの頭をそっと撫で、エルドレッドは踵を返した。



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