第14話 ジャンプした事になってます
「もうあなたは! どれだけ皆が心配したと思っているのよ!」
お嬢の罵声が飛ぶ。
「だって……魔月の花を採取したくて」
「はぁ……お嬢、逆効果じゃないか」
僕が言うと、アベラさんが言った。
「で、どこにいたんだ?」
「実は、お友達の為に採取しにいって、落っこちて気を失っていたみたい」
「何!?」
ラーグさんの質問に答えると三人に驚かれた。
「もうお友達作ったのか? そうか。で、何を頼まれた? どこの誰だ」
突っ込んで聞かれてしまった。怪しんでいるみたいだ。
「嘘じゃないって。アルケミターの見習いだって。学校で使う材料が欲しいっていうから、ほら道具借りて取って来た。タルルネ草」
ラーグさんに手渡す。
「何! 結局立入禁止区域に入ったのか!」
アベラさんが、怒って言った。
「いや待て、これ本当にタルルネ草の雨水みたいだ」
「凄い。見ただけでわかるんだ?」
「ラーグは、鑑定持ちだ」
「え! そうだったんだ」
「許可していいんじゃないか? でないと、魔月の花の所までいくかもしれない」
そういつつ、ラーグさんは返してくれた。
「そうねぇ。しかしよく登ったわね」
空間移動したからほとんど登ってないけどね。
「で、何の魔法が使えるんだ?」
と、突然アベラさんが聞いて来た。まさかの質問だ。
「何も持たないやつが行けるとは思えない。名前がわからないならどうやって行ったか教えろ。魔力もあるんだし、持っていてもおかしくない」
何を教えたらいいんだ? って、俺が使っている魔法ってこの世界にある魔法なの? とりあえず……。
「ジャンプしたら遠くに行けた!」
ちょっと子供ぽく言ってみる。
「脚力アップか何かか? そういえば、走るの早かったな」
「俺もそれは思った」
ラーグさんが言うとアベラさんも頷いて言った。やっぱり凄く速いと思われていたんだ。
「じゃ、アイテムトレジャーハンターのステータスの石を作るわね」
「やったぁ!!」
「ちゃんとしたハンターになったんだから宿泊料は頂くわよ! 頑張って働いてね」
お嬢は、お子様でも容赦ないな。
「さあ、今日はもう寝なさい。作っておいてあげるから」
「はい! ありがとう。えっと……これから宜しくお願いします」
「よくできました」
って、お嬢は俺の頭をがしがしと撫でた。
ぐ~~。
あ、そういえば何も食べてない。
三人が大爆笑した。
「そうだな。寝る前に何か食べるか」
「明日からお金取るからね~」
「まさかこんなチビがアイテムトレジャーハンターに、なっちまうとはな。でもまだ近場だけにしておけよ」
「はい!」
アベラさんの言葉に、素直に返事を返して置く。でも明日もこっそりあの谷間に行くつもりだ。
さて、キツネお姉さんの名前ってなんて言うのかな?