第13話 化かされた?
スタスタと歩くキツネのお姉さん。絶対見えてるよね。
「あなた、目が見えるの?」
「え?」
「暗くても周りが見えているのって聞いているのよ」
「お、お姉さんについていっているだけです」
「そう」
見えるって言ってなんでってなっても説明できないから、誤魔化したけど誤魔化せたのかな?
そう言えば、ここはモンスター出ないのかな? 森では出会ったのに。
静かだ。鳥の鳴き声とかまったくない。
「あの~~。ここって動物もモンスターもいないんですか?」
「いるじゃない、目の前に」
そう言ってキツネのお姉さんが振り返った。
うん。怖くない。この世界の普通の人間に見えるんだけど?
「記憶がないんだったわね。だったら教えてあげる。覆魔は人間だけではなくて、動物やモンスターにも毒なのよ。勿論、覆魔に耐えられるモンスターもいるわ。私のようにね。そういうモンスターを覆魔獣と呼ぶそうよ」
「え? じゃお姉さんは一人ぼっち?」
「え……」
クスリとキツネのお姉さんは笑った。
「そうね。久しぶりに人に会ったわ」
「そうなんだ」
「おしゃべりは終わり。ここを真っ直ぐに行けば外に出られるわ」
キツネのお姉さんが指差す方向を見ると、微かに明かりが見える。
「ありがとうお姉さん。あのさ、遊びに来ていい?」
「え……」
またクスリと笑った。
「生きていたら遊びにおいで」
「うん。また来るよ! 今度は昼間に。起きているよね?」
「えぇ。遊びに来たら呼んで」
「え? お姉さんって声をかけれって事?」
「名を呼べと言ったのよ」
「名をって……いない!?」
ま、まさか……化かされた!!
いやここ、異世界! はぁ……戻るかな。
それにしても静かだな。一人でここにいて寂しくないのかな?
名前なんて言うんだろう? これって逆に来るなって事なのかな?
――魔力レベルが上がりました。
え? なんで? 歩くだけであがった?
「自分を鑑定!」
『名前:ミャル
種族:魔族
年齢:0歳
HP:10,000/10,000
MP25/25
魔力レベル4 next39
取得魔法:異空間/鑑定/空間移動/リジュネ
マーガラスの眷属 』
いやこれってきっと、次の最大MPまでMPが増えたからレベルアップしたんだ! と言う事は、使わなくてもここで魔力レベルを上げられるって事だよね!?
それにここに覆魔が充満しているなら『魔月の花』もあるかも!
俺はルンルンで真っ直ぐ進み出口まできたが、通行止めの様で柵がある。
「げ! どうすんのこれ?」
柵を揺さぶってみたけど、頑丈だ。出入り口付近は、トンネルの様になっていて、柵はその穴を塞いでしまっている。
で、出れない……。あ、そうだ!
「空間移動!」
ブラックホールに飛び込むと柵の向こう側……よりもっと街寄りにワープした。
うん? 何か移動距離が増えてないか? 魔力レベルが関係あるのかもしれない。
「いた! ミャル!!」
うん? あ、ラーグさんだ! 探していてくれたんだ。
「どこほっつき歩いてる~!」
やば……怒ってる。そりゃそうか。街から出て夜中っぽいもんね――。