第12話 なんとか生きていました
どーすんのこれ? あ、そうだ。瞬間移動で上に……って、上に行けないだろう!! あ、落下してるんだから下に――。
「空間移動!」
これで落ちる距離を縮められるはず!
俺は、ブラックホールをくぐった。
「っぶ! いった~~!」
移動した先は、地面のすぐ目の前だった! 心構えも体勢も取れないまま激突!
……死んでない俺って凄い。でも痛くて動けない。
「あぁ……ヒールでもあればなぁ」
雨で体も冷えて行く。死ぬのかな俺。あ、でも、体がある限り大丈夫だって言っていたような……。でも気が遠くなってきた。
□
「ねえ、君。大丈夫?」
だれかに頬をつんつんされている? お嬢か?
「やめてよ……って!」
誰ですかこの人!
キツネ色のおかっぱ頭にケモミミ。キツネかな? いやキツネだろ? しっぽまである。
「しっぽ!!」
俺は、ガバッと上半身を起こした。
「凄いね。しっぽまである人いたんだ!」
「元気そうね」
「あ、え~と。俺、どうしたんだっけ?」
あれ、ここ、凄く暗い。
「あなたここに倒れていたのよ」
「あ、そうだ! 落ちたんだった!」
もしかして、もう夜?
「……落ちて無事なのも驚きだけど、覆魔の中で寝ていて平気な人間がいたとはね。見た所アイテム持っている様に見えないし」
「……ふ、覆魔~!!」
やばい! 体に悪いんだっけ? って、どこも痛くない。痛くて動けなかったはずなのに。
「自分を鑑定」
『名前:ミャル
種族:魔族
年齢:0歳
HP:10,000/10,000
MP22/20
魔力レベル3 next29
取得魔法:異空間/鑑定/空間移動/リジュネ
マーガラスの眷属 』
うん? なんだこれ。最大値を超えてMPがあるんだけど。しかもいつの間にか、魔力レベルが3に。リジュネしたからか?
「あなた、鑑定を出来るの?」
「あ、はい。えーと、俺はミャル。あなたは?」
「好きに呼ぶといいわ」
「好きにって言われてもなぁ。君ってトレジャーハンターなの? それともモンスターハンター?」
「そうね。そう言うのだったら覆魔獣ってところかしら?」
覆魔獣ってなんだ? 覆魔に生息するモンスターって事? 魔力を大量に摂取すると、モンスターって擬人化するのか? ……こんなにかわいく。
「あなた、覆魔獣と聞いて驚かないのね」
「……え? それがですね、覆魔獣を知らないもので……」
「頭を打って記憶を失った!?」
「あ、いえ。打つ前から記憶がないんです……」
「あら、迷子だったの?」
「迷子でもなかったけど、今は迷子かも……」
そうだ。ここどこだよ!! きっと皆探してるよな~。って、探してくれてるよね?
「あなた子供よね?」
「え?」
「まあいいわ。動けるならついていらっしゃい」
「あ、はい」
どこに連れて行かれるんだろう? って、この人真っ暗闇なのに、俺みたいに見える様だ。まさか……魔族!?