第99話 閉会
大天狗は、にこやかに櫓をおりて陽太のそばへとやってきた。
「小さき客人に今一度盛大な拍手を!」
というと、観衆からまたも大きな拍手がおこった。
大天狗は陽太に笑顔を向ける。陽太も嬉しい思いだ。大天狗に微笑んだ。
「さてヒナタどの。今の試合で見せられた貴殿のお力、あれはあなたの元の力ではありますまい。体の中に悪神の力が宿っておるのですな」
悪神と言われて驚いた。
明日香の力はそういうものではない。と言いたかったがやはり元神で現悪魔。
他から見れば悪神なのかもしれない。
「ふむ。将来世界を救うと言えども悪の力を借りてはなりませぬ。力は残し悪の力は封じ込めなされ」
「え? でもどうやって?」
大天狗は陽太の頭にその大きな手を乗せた。
そして、なにやら祈りだす。
「あれ?」
「どうじゃ?」
「わ! なんか、ものすごく熱いというか、力が湧いてくるというか!」
「そうじゃろう。眠っている力を引き出した。そして悪神の力を封じ込めた」
「すごい!」
大天狗の神通力であろう。陽太の隠された力は引き出された。
それに気付いたのか明日香と竹丸も壇上に登った。
「へぇ。すごいじゃん。よかったね。ヒナタ」
「うん。なんか、ものすごい力を感じる!」
「すごい。ワタクシを越えてしまった感じです」
「そ、そうなんですかねぇ?」
大天狗はポンと手を叩き、松丸と大丸を呼び寄せた。
そして大丸は松丸の背中を大天狗の方へ押す。
大天狗はその松丸の肩に手を添えた。
「これにて、儂の跡目は三峰松丸大僧正にきまった。就任の上には蓬莱山空松大天狗を名乗るがよい」
大天狗の大声。三峰一門は涙を流して頭を垂らす。
「ははぁ!」
「蓬莱山空松! おお! 兄上!」
「うむ!」
兄弟は人目を憚らずガッチリと手を握り合って喜び合った。
「ふふ。あと数日もすれば天が開き、儂は迎えられる! 神仙になるのだ!」
大天狗の言葉に観衆から大歓声が上がる。
「思えば二千年は長かった。あの時も神仙になる条件が整っておったのじゃが、女に邪魔をされて、修行の山を追放されてしまったのじゃが」
突然語られる大天狗の事情。
一同はそんな大天狗を気の毒がった。
「しかし修行の甲斐があり、とうとう儂も神仙! ありがたいことじゃ!」
さすがに、二千年の待ちぼうけは苦行だったろうと三峰、九郎の誰しもが思った。
普段冷静な竹丸もその事情を尋ねた。
「そうなんですか。それは苦労なされたでしょう。それでその女とはどうなったのです」
「うむ。姉弟子の女狐じゃ。儂に惚れておってのぉ。関係を迫って来たのじゃ」
「え? それって……」
神仙の修行で女狐と言えば陽太と竹丸にもピンと来た。
二人して三峰の一族の中にまぎれる前野に顔を向ける。




