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第97話 陽太の戦い

その時ドンという太鼓の音。

選手出場の音。


陽太の出番の音だ。


九郎の選手の中から山のような男が立ち上がり陽太の顔を睨みつけていた。


「さ。ヒナタさん。負けて元々。ドーンと行きましょう!」


そう。陽太の番。

竹丸の言葉を背中に受けて陽太は石畳の上に登った。


ものすごい景色。

歓声が小さく聞こえる。

陽太の相手は山のような鳳丸ほうまる

九郎で一番の武術の実力者。


見上げても大きすぎて胸板で顔が見えない。


ドンと、今日で一番大きい太鼓の音。

試合開始の音だ。


今までの九郎の選手は相手を軽んじた。

だが鳳丸は、試合開始とともに大きな羽を広げて飛び上がる。


獅子兎を捕らうるも全力を尽くすの例えであろう。

大きく滑空し、陽太を踏みつぶすように猛スピードで迫って足を繰り出す。


「オイオイ。殺すつもりかよ!」


陽太も、飛び上がってそれを避け、空中で鳳丸と対峙した。


「おう。飛べるのか。貴様ら変なやつらだな。か弱く見えて遠当とおあてを使ったり、さっきのやつはデカくなったり。貴様は大将だけあってやはり強いのか?」


聞かれても一番弱いっスとは答えられない。

だが鳳丸は油断せずに攻撃を仕掛けて来た。


「これならどうだ!」


鳳丸の拳撃。空気が押し迫ってくるような感覚!

事実、避けても回りに突風が吹き荒れる。

これは前野の放つ遠当の強力版であろう。


陽太は15メートル程さらに高く飛び上がった。


「ふふ。逃げてばかりでどうするつもりだ!」


またも、拳撃を放って遠当を乱射して来る。

それに当たったらイチコロ。


陽太は、空気がつぶれる感覚を感じて、上手く避ける。


はずだった。


鳳丸の下に回って逃げた時、背中に重いものを感じた。

焦る陽太。だが身を逃がしようがない。

拳撃の風圧に巻き込まれて陽太の体が墜落して行く。


タン!


と音を立てて、陽太の体は石畳の上でバウンドした。


三峰の一門から「あー~……」という声が漏れる。


陽太の体に激痛が響く。全身を強く打って死亡と言うニュースはこんな感じなのかもしれない。

立てない。立てるわけがなかった。


陽太は負けを悟ったが声を出して「参った」とは言っていなかった。言えなかったのだ。


陽太はうつ伏せになっていたから見えなかったが、鳳丸は親指を立て、それでその背中を潰そうと急降下してきていた。

だが陽太はそれに気付かず完全に意識を失っていた。


「ピチ」と虫を潰したような音が陽太の体から聞こえた。


「あぁーっ! ヒナタさん!!」


という竹丸の悲痛な叫び声。陽太にはその声が聞こえるはずはなかった。

鳳丸は、陽太の体をつまんで、自分の耳元に当て心臓の音を確認する。


「……ふむ。まだ死んではおらん。危うし。反則負けになるところであったわ。このまま場外に落としてやろう」


鳳丸は石畳の端に行き手を放した。

陽太のボロボロの体が落ちて行く。

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