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第96話 寅丸の戦い

そこで副将の寅丸が立ち上がった。


「ヒナタさんはまだ使命が有る身。ここはワタクシがなんとかします!」


寅丸の気遣いはありがたかったが、陽太にも少し冷めた現実が見えていた。

それは寅丸では無理だろうと言うこと。

彼だって三峰の郷の勇士であろう、戦士であろう。

しかし、どうしても漏れてしまう能力の気というものがある。

それを陽太は感じたのだ。


ドンと太鼓の音。

つまり試合開始だ。


しかし陽太は、現実離れした寅丸の試合を見ていた。

期待以上の動きである。

だが対す九郎側の鷹丸は、適当にあしらっている感じだった。


「よいぞ。よいぞ! 寅丸」

「余裕は自分の敵ですぞ。そこです!」


寅丸が鷹丸に見えない波動を飛ばす。

前野と同じ遠当というやつだ。


「へー。あんなことも出来るんだぁ」


明日香はのんきに観戦していた。


寅丸の放った波動は鷹丸の黒い羽を三本ほど飛ばしただけだった。

攻撃をすればスキができる。それを鷹丸は見逃すはずがない。


寅丸が第二波を飛ばす。だが鷹丸は余裕に避け遊ぶように寅丸の懐に入った。


「うわ!」

「情けない声を出すでない。少し稽古を付けてやろう寅丸」


寅丸はその鷹丸の肩を押す。

鷹丸は大きくのけぞったがその顔は笑っている。

遊んでいるのが分かった。


「しからば」


寅丸は両手を合わせて印を結ぶ。

竹丸同様、雷鳴の術を使うのだ。


烏天狗は空を飛ぶ能力を生まれついて持っている。

そして三峰の雷獣天狗は生まれついて雷鳴を呼ぶ能力を持っている。

だが、印を結び決められた短い経文の言葉を唱えなくてはならない。


竹丸は明日香によってその印と経文をショートカットできるようにされている。

寅丸にはそれがない。

だがあと僅かで鷹丸へ雷鳴を落とせるところまで来ていた。



「バカめ。寅丸」


鷹丸の一声。そして空中を錐揉んで寅丸の元へ飛び込む。


鈍い音。鷹丸の右腕が寅丸の中心を捉えていた。

みぞおちへの重い一発。


寅丸は完全な白目になり印を結んでいた手をだらりと下へと下げる。

鷹丸は右腕を突き刺したまま、手を高く上げ、場外へ放り投げると「ズドン」と音を立てて寅丸の体は無惨に場外に落ちてしまった。


「ああ。惜しかったなぁ……」


陽太の切なる声。

それを背中に受けながら鷹丸が退出して行く。そして寅丸が三峰の郷のものに肩を担がれて運ばれて行くのを陽太は見ていた。

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