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第93話 竹丸の戦い

そして合図の太鼓の音。

それに陽太は大きく身を震わせる。極度の緊張。

その太鼓の音を聞くと竹丸と、相手方の選手、鷲丸が立ち上がった。

中央に寄る二人。

鷲丸は鼻を鳴らして竹丸を嘲笑した。


「何やら、本命選手が気の毒なお病気になられたとか。そして、女子おなごを入れての勝負ですか。はは。しかし勝負は勝負です。竹丸どのももう数十年郷にお帰りになられていない。私もさらに修行を積み強くなりました。本日は今までの鷲丸ではありませんよ? 今までの雪辱を果たします」


笑う鷲丸。しかし竹丸はそれに笑い返す。


「ふふ。鷲丸には気付かんか? あのお二方のお力が」

「え?」


「三峰の本命選手よりも力があるのだぞ? それが分からぬとは数十年の修行の開きなど大したことあるまい」

「まさか。そのような口三味線くちじゃみせんはこの鷲丸には効きませんよ?」


竹丸はまたも静かに笑って構えた。


開始の合図である太鼓の音がドンと響く。

途端に二人の姿が消えた。


陽太の目には追えない。明日香を見ると空を見ていた。

慌てて空を見上げてみると、二つの黒い影がぶつかり合っている。


やはり相手はカラスである。空中戦がお手の物だ。

鷲丸の拳撃が竹丸にヒットしている姿が見え、陽太は目を覆った。


「竹丸さ……」

「バカ。よく見なよ」


明日香に言われて目を開けると、竹丸は鷲丸のその腕を掴んで空中で振り回していた。

そして、場外に投げ飛ばす。


「やった!」


陽太が立ち上がるものの、鷲丸は宙返りをして翼をはためかさせて戻って来てしまった。


「なんだよ。あっちのほうが断然有利じゃんか」


陽太の恨み言。しかし、竹丸はものともしない。

すぐさま攻撃に転じる。

鷲丸に竹丸の拳が見事にヒットした。


だが今度は鷲丸が竹丸の腕を小脇に抱えている。

竹丸は冷静にもう一度拳を振るうとそれも鷲丸の身に当たったが、またも小脇に抱えられてしまった。


「ほう。腕を上げたな」

「肉を斬らせて骨を立つです。竹丸どのがこのような攻勢にでるのは知っておりました。腕を抱えられては雷鳴の術も使えますまい。このまま竹丸どのを抱えて場外に落ちます。もちろん竹丸どのを先にして」


そう言って竹丸の背後に回った。

そのまま場外に向かって墜落して行く。


「なるほど考えたな。たしかに窮地から逃れる雷鳴の術はつかえん」

「ふっふっふ。これで鷲丸の勝ちにございます」


「そうだな。前のままならな」

「……え?」


その時、轟く雷鳴。それが鷲丸の身に落ちる。

瞬間、鷲丸の手が緩んだのを竹丸は見逃さなかった。

腕から飛び抜け、数度宙返りをして大畳の上に着地。

鷲丸は気絶したまま場外に落ちた。


ドンと太鼓の音。試合終了の音。

竹丸の勝ちを知らせる音であった。


三峰一門の声援を受けながら竹丸が石畳から降りて来た。


「やりましたね!」と陽太。

「ありがとうございます。このまま順調に行きたいですね!」と竹丸はにこやかに微笑んだ。

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