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第91話 ルール

その後、松丸のお堂に戻り、みんなで食事。

鯉が煮られたものや、鶴の肉など食べたことが無いものばかり。


「本来は魚鳥は食せないのですが、本日は力が出るように特別でございます。ささ、お客人、遠慮なさいませぬよう」


と松丸。明日香は全てに興味しんしんだった。


「へー! ヒナタの部屋じゃでないものばっかり! おいしー!」


と無邪気にはしゃぐ明日香を横目に、陽太はオマエ、ホントに味わかんのかよと思っていた。

前野は何も話さずもくもくと食べている。

本当に様子が変だ。いつもであれば明日香と一緒にはしゃいでいるのに。


食事が終わりしばらく休むと時間がやって来た。

郷の人達とみんなで山頂まで階段を上り続ける。


今から格闘。

陽太は緊張を覚えた。

冷や汗と盛り上がる高揚感。


考えてみれば正式なのは初めてだ。

そして相手は人間じゃない。

竹丸も楽勝って言っていた、思いっきりやってみようと強く拳を握った。


「ねぇ。竹丸さん?」

「どうしました? ヒナタさん」


「相手ってどんな人? あ、天狗か」

「ハイ。我ら三峰の天狗は、天から落ちたる犬から生じた天狗の一族。それにくらべて九郎の天狗は九郎の山に住まい、長年蓬莱山の霊力を浴びて天狗に生じたカラスによる一族です」


「ああ。カラス天狗」

「向こうも優れた術者も多いですし、思想も同じです。尊敬出来る方も大勢おります。しかし、どうも三峰と対抗意識がありまして、このようなトラブルがあったりするのです。しかも、今回は大天狗という最高の地位を得るわけですから、おそらく悪い術を使って我々の邪魔をしているんでしょう」


「そうなんだ……。で、相手チームってどんな人達?」

「はい。まず、ワタクシの相手、鷲丸わしまる。これはスピードとパワーを持つなかなかの強者です。しかし今まで10度手合わせしましたが、10度勝っておりますので心配はありません」


やはり竹丸は凄かった。おそらく何百年も続く武術大会で10度勝っているのだから心配ないだろうと陽太は胸を撫で下ろした。


「続きまして、次鋒のタマモさんの相手は鶴丸つるまる。こちらは相手のメンバーで最弱。空中からの戦闘が得意で油断はならない相手ではありますがタマモさんなら心配ないでしょう」


最弱……。

それを自分に当てて欲しかったと苦笑い。


「中堅は凰丸おうまる。巨人です」

「ネフィリムみたいな?」


そこに入って来たのは明日香。

ネフィリムとは、堕天使と人間の混血児で雲を突き抜けるほどの巨人となったと伝えられるものである。


「それほどは大きくありません。あれは山のように大きいのでしょう? 凰丸は7mはありましょうか? 力はものすごいです。まぁ、アッちゃんさんなら心配ありませんが」


「ふふん。手加減してやるか。はっはっは」


ものすごく偉そう。

だが、明日香の能力は桁違いだ。ホントに手加減しないと相手死んでしまうかもしれない。


「寅丸の相手、副将は鷹丸たかまる。九郎の武術の大師範。ワタクシと戦って五分と五分。寅丸にもいくらか勝算はあるとは思いますが、九郎では一、二位を争う実力者です」


一、二位を争う実力者。と言うとその片方が自分の相手。

陽太に一気に重圧が押し寄せる。


「大将の鳳丸ほうまる凰丸おうまるの兄で巨人でもあり、スピードもあり、力も技も最大級です。まぁ、ヒナタさん、勝ち味がないようでしたら、すぐに場外に落ちて頂いて結構です」


場外。いまいちルールの分かっていない陽太にはピンと来ない。


「場外って?」

「ああそうですよね。戦う場所は天狗の石の大畳という場所です。だいたい十五メートル四方の平らな岩の上で戦うんです」


そんなところに巨人も乗るのだ。拳一振りでどこかに当たって負けてしまうであろうという想像。

場外も何もあったものではない。竹丸はルールを続ける。


「参ったと言うか、場外に落ちたら負けです。相手を殺しても負け」


殺す……。それ以外はどんなことをしても相手に敗北を認めさせればいいだけ。

正式試合と言ってもやはり妖怪の武術大会だ。

陽太は恐ろしくなって体を大きく震わせた。

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