第90話 武術伝授
鶴が飛び交う、見たこともない大きな煌びやかな鳥も。
この隠された空間に陽太は心を奪われた。
「のう。ヒナタ」
「ん?」
「武術とはどうすればよいのだ?」
陽太はそのまま墜落しそうになった。
なんにでも興味を持つ明日香だが、武術のことは知らない。
今から武術大会で戦うと言うのに。
「えー。だってグラシャラボラス先生とかのを見たこと無いの?」
「見たことはあるが、興味を持って見たことも無いし、自分でやったことも無い」
二人は空中で立った形になった。
陽太が武術のさわりを伝授するのだ。
「前野さんとかグラシャラボラス先生に教えてもらった限りしか知らないけど」
そう言って、一通りの形を見せた。
「ほうほう。すばらしい。面白い。愉快痛快である」
「いや、なにも面白いことねーよ?」
「こうか?」
明日香はそう言って、拳を震わせる。
しかし、先ほど見た通りだ。陽太の顔に失笑が浮かぶ。
「なんだそりゃ。タコみてー」
「こうか?」
「プッ」
「ふふ。笑うでない。こうかの?」
一生懸命、陽太の真似をしてるつもりなんだろうが、子供がやっているようで滑稽だった。
なんでもできると思った明日香の意外な一面。
陽太は明日香の体に触れて構えの形をとらせた。
「拳の握り方がなっちゃいないよ。親指を手の中にいれないの。撃つときは拳のこの部分を当てる感じで。そして、脇腹から肩に平行になるように打ちだすんだ」
「ほうほう。こうか?」
明日香は陽太に教えられたように、そのまま拳を打ち出す。
すると「ビムン!」と音を立てて、アスカの拳からものすごいパワーの塊が空中を飛んで行った。
それが通過した場所は雲がトンネルのような形になり、鶴の羽がヒラヒラと宙を舞っていた。
「ほほう。なかなか教え方が上手である。これでよいのか?」
「マジ?」
「違うのか?」
「いや、すごい!驚いた」
「そうか」
武術については陽太の方が一日の長がある。しかし、陽太にはあんなパワーはない。
さすが地獄の大公爵である。なんでも出来てしまうんだなぁと感心した。
「まぁ、アスカなら武術を憶えなくても勝てると思うよ?」
「さようか。まぁ、武術大会なら武術でやりたいがのう」
そう言いながら二人は地上に降りた。
「まぁ、先に戦う、竹丸さんとか、前野さんの動きを見るといいよ」
「そうじゃの」
武術大会。自分が大将で戦わなくてはならないのは不安だが前野も竹丸の実力も知っている。
そしてこの武術を知らなくても少しの手ほどきでなんなくマスターしてしまう明日香に安心した陽太であった。




