第81話 そして二人は結ばれt
気持ちよさそうに寝ている明日香を、竹丸は不思議そうな顔をして見ていた。
「ふむ」
「どうしたの?」
「ワタクシとタマモさんは親がいてそこから生まれた。言わば「有」から生まれた不老長生です」
「はぁ……」
「しかし、アッちゃんさんは人々の信仰から生まれたいわば、「無」から生まれた天地と齢を同じくするもの。それが睡眠をとるとは……」
「うん。最近からなんだよ。人間界の食事をとってるからかなぁ」
それを聞いて、前野は陽太の頭を叩いた。陽太は頭を抑えながら前野の方を向くと
「何言ってんの。アンタを死から救って、自分の生命をたくさんわけたからでしょ? 本来の魔力が戻るまでどれくらいかかるか。アンタのために寝るようになっちゃったんでしょうに」
「え? そ、そうなんですか? そういえばそこからだ……」
夜遊びにいかなくなってお小遣いあげなくてすむなぁと思ってたバカな自分に腹が立った。
それから陽太は、明日香が目を覚ますまでずっとその寝顔を見ていた。
最初は、明日香を迷惑だなぁと思っていた。
しかしその明日香に迷惑をかけた自分。
ただの興味本位で結婚しようと言われてしまった自分。
このイタズラ好きな悪魔に惚れてしまった自分。
側に座って彼女の顔を見つめ続けていると長いまつげがヒクっとゆれて、明日香は四時間の眠りから覚ました。
「……ん……ああ。眠ってしまったか。ん? タマちゃんたちは?」
「ああ、帰ったよ。竹丸さんに骨料理を作るって言って」
「ほほう。興味がある」
「だろうね」
珍しいものにはなんでも興味を持ってしまう明日香。
陽太は明日香が身を起こしたベッドに座り、さらに体を近づけた。
「まぁ骨料理にも興味はあるが、今日は疲れた。テレビでも見よう」
そう言ってリモコンを押そうとする手に陽太は自分の手を重ねて止めた。
「あの。アスカ?」
「なんだ」
「いつもありがとう」
「ふむ。感謝か。いいものだ」
「うん」
「はっはっはっは」
「なにか……なにか、オレにアスカの為に出来ること無い?」
「うん? 急に言われてもなぁ……」
「食べたいものは?」
「特には。骨料理か?」
「骨って……犬じゃないのに?」
「ああ、やっぱりそうか。タケ向きのやつか」
陽太は、明日香にさらに近づきその肩を抱き彼女の顔を見つめた。
「アスカ。好きだ」
「そうか。余も足下のことを憎からず思っておるぞ」
「大好きだ」
彼女の体を抱いて二人はベッドに倒れ込んだ。
「ほう。そうか。そういうことか。興味がある。してみせよ」
「あ、は、はい」
陽太は部屋の電気を消した。
初めてだったので無我夢中だった。
長い黒髪をなでて、耳や頬に口づけをし、お互いに指や腕を絡ませて。
そして、二人は初めて……
初めて……
初めて……ん??
「……あの~~~……」
「どうした。早くせよ」
「あの。な、ないんですが……」
「ない? ないとは?」
「アスカに女性特有の……」
「ああ。あるわけがなかろう」
「え?」
「女の姿をしておっても余は男女の性なきもの。死ぬ心配もなければ生む心配もない。だからない。当然のことだ」
「え? え? え?」
「どうした。そんなことはどうでもいいことだ。さっさと致せ」
「致せと申されましても……」
「ん? できんのか」
「できないよぅ! パートナーにもなくっちゃ……」
「ふむ。そうか。それは余の不勉強だな。仕方ない」
せつなげな声を上げる陽太に、明日香は抱きついてきた。
裸で胸を付け合って抱き合うのは、あの時復活の時のようで……。
「うん……。これでもいいや」
「さもありなん。余もこれがしたかったのだ」
不思議と深海の中に落ちていくと言うか、遠い宇宙の中をたった二人で飛んでいるような。
母の子宮の中で羊水に二人で浮かんでただよっているような。
そんな感じなのだ。
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