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第80話 予約決定

前野は陽太のスマホを取って目の前に押し付けた。


「ホラ。母さんに電話しろよ」

「え? う、うん。二泊?」


「そうそう」


陽太は三人に見守られながら母親に電話をした。

元気でやっているだろうかなどと思いながら。

数コール呼び出し音が鳴ったがすぐに母の声が聞こえてきた。


「もしもし? ヒナタ?」

「あ、母さん。ゴメン。仕事大丈夫?」


「あ、うん。今丁度休憩だった。なに? どうしたの?」

「あのさ。来週の土、日、月って四人での宿泊できるかな?」


「ああ。大丈夫だと思うよ? え? 泊まりにくるの?」

「うん。バイト代も貯まってきたし。母さんにも会いたいし」


「そーか。うん。分かった。来なよ。待ってる。四人ってお友達?」


そう聞かれて答えを準備していなかった。

陽太は三人の顔をグルリと見渡す。とりあえずはっきりしているのは一人。


「えと、先生とぉ……」

「え? 先生?」


「その恋人と……」


その内訳に大きくうなずく前野。

しかし、陽太はあと一人の説明に困った。

だが出てきた答えはこれだった。


「あと……か、か、か、彼女」

「え? プ。アンタ、彼女いるの?」


「う、うん」


そこに竹丸が手を出す。電話を変わるということらしい。

陽太は母親に電話を替わる旨を伝え、竹丸にスマホを手渡した。


「お母さん。初めまして今日は。教諭の三峰と申します」

「ああ、先生ですか。いつも陽太がお世話になっております」


「浅川くんは家庭の事情もございましょうが一人暮らしだったので近所に住んでます、ワタクシなにかと彼と生活を一緒にする時間が多くありまして」


「ああ、そうだったんですか! すいません。親の目が届かないので先生のお気持ち本当に助かります」

「ええ。それで懇意になりまして、共に休日旅行に行こうということになりまして」


「ええ。ありがとうございます」

「今、浅川くんが言いました彼女というのは、父母とも外国に行ってしまい、こちらもワタクシと婚約者で生活を見ていたのですが、実は温泉をまだ見たことがないということで、それならば一緒に行かないか? と話しが盛り上がり、それならば浅川くんのお母様が働いているところが一番よかろうと話がまとまり、この電話となった次第です」


「婚約者だなんて!」


竹丸の言った言葉に嬉しそうに顔を抑える前野。

数千年生きている大妖怪がまるで恋する乙女。

照れる年齢でもなかろうに。


「ですので、ワタクシも監督責任がありますので、四人相部屋でお願いいたします」

「あ、はい。かしこまりました」


「では、週末よろしくお願い致します。ああ、15時から入れるのですね。はい。よろしくお願いします」


そう言って電話を切った。

それに先ほどまで照れていた前野は柳眉を上げて竹丸に詰め寄った。


「ちょっと!」

「はい?」


「相部屋なんて! ウチたち、こ、こ、こ、コン約者なんでしょ?」


照れている。なぜその一言がどもるのか?


「そうです。ですが青少年を二人きりにするわけには行きません」

「だって、二人は一緒に暮らしてるじゃない!」


「そうです。それは我々も。いいじゃありませんか。タマモさん。たまには四人で夜を過ごすのも楽しいと思いますよ?」


明日香もその言葉に楽しそうにうなずいたが、前野一人はめちゃくちゃ不満そうに膨れていた。



「それから、お二人最近学校でよからぬウワサがたっております」


竹丸は会話を変えたが、その言葉に陽太は驚いた。


「ど、どういうことですか? オレとアスカの?」

「ええ。上へは上がらないようにはしておりますが、ヒナタさんがアッちゃんさんを力づくで暴行しているとか、そういう類いのものです。火の無いところに煙はたたず。瓜田かでんくつ入れず、李下りかに冠を正さずです。どうか身を慎んで……」


「え? 怖い! 誰なんだろ? そーゆーウワサ立ててんの」

「アッちゃんさんは人類の中では特に美人な容姿です。それをねたみやっかむものがいるのでしょう」


「マジかよぉ。いい迷惑だよ。何もしてないのに」


三人の困惑した表情に明日香は一人笑い出した。


「あっはっはっは。犯人は私」

「え?」


「そうすると、私に惚れてるヤツが、なんで平凡なヒナタにってモヤモヤするでしょ?」


平凡。たしかに平凡かも知れないがそうストレートに言われると陽太もムッとした。


「それに、ヒナタも困るでしょ。私は楽しい。一石三鳥」


悪魔だった。人の困るところを見て楽しむ。やはり悪魔。


「え? それで?」

「うん。それで。自分から言った。面白かった」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい」

「なに?」


「そんな、自分の身を貶めるようなことはしてはいけません」

「そう? じゃぁ、みんなの頭からその記憶だけ消しちゃうか」


竹丸に諭されて気が変わったのか、明日香が指をクルクルまわすとあ~ら不思議。

明日香が陽太と深い仲に落ちていると勘違いしている者たちの記憶がきれいさっぱり消えてしまった。


「はぁ~。終了。どっと疲れた。もうダメ。少し寝る」


魔法を使い終えた明日香はだらりと腕を垂らして、三人にはばからず、ベッドに横になるとすぐに寝息を立て始めた。

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