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第8話 停まった

そんな陽太と明日香の様子とは別に、教室は沸き上がった。

みんなの視線は明日香に向いて、男子の一人は指を口に当て口笛をピィと高くならした。


しかし、先生はそれを手で制しながら


「静かに。え~と。何アスカさんだっけ? 苗字は」

「苗字」


明日香の困惑した顔に、先生もすまないと言った顔をした。


「あ、ごめんね? 突然の転校だったから資料が手元になくて。えっと? 何アスカさん?」

「えーと。えーと」


「えーとってことはないでしょう? ご自分の苗字は」


明日香は腕を高らかに上げた。



パチーン。



その指の音が鳴ると途端に、全ての音が止まった。


「あれ?」

「これこれ、ヒナタ」


「え? なに? また魔法?」

「うむ。時間を止めた。今は余と足下しか動いておらん」


時を止める魔法だった。

完全に音もなくなった。やはり明日香は半端ないと思った。


陽太はこの初めての体験を驚いて教室を見回した。


普段カワイイ金井と言う女子があくびしてるところで止まってる。勉強ばっかりの陣内と言う男子が教壇の方を凝視してると言うことは、明日香に釘付けと言うことだ。

陽太は教室の生徒達のそれぞれの様子を楽しみながらひとしきり観察した。


「どーして転校生?」

「うむ。人獣の話しを聞いて居ったら、だいたい話し方が分かって来た。だから思い切って転校生に挑戦してみたのだ」


「だから、そんな話し方。でも挑戦って。いろいろ手続きがあるでしょう?」

「うむ。その辺はチョイチョイだ」


と指をクルクルと回して魔法を使うような手ぶりをした。


「もう。まぁ、最後はちゃんと魔法でつじつまの合うようにしてくれれば別にいいのかなぁ」

「で、あろう。ところで苗字とはなんだ」


「ああ、日本人……だけに限らず、名前の他に一族の系列を示す苗字ってのがあるんだよ。俺だったら浅川。遼太郎だったら芝田。結だったら岡村」


「なんだ、そんなものがあるのか。難しいな。足下が考えよ」


陽太はしばらく首をひねった。


「じゃぁ、そーだなぁ。どうってのは?」

「路道。それでいいか。どういう意味だ」


「いや、名前がアスカで苗字がロドウ。アスカロドウ。アスタロト。みたいな感じ?」

「は! 面白い。それでよい。それでよい」


明日香は声を上げて一つ笑った後で動きを止めた。

何かを探っているように目を閉じて、開けた時にクッと目を斜め上に向けた。


「ん?」

「どうかしたの?」


「これは珍妙な」

「なにが?」


「学校の中に、余と足下以外に、この止まった時間の中で動けるものがおる」

「ええ?? なにそれ」


「ふむぅ。どうやら2体らしい。余の止めた時間に入れるものといったら並み大抵な魔術師ではできん。特別な力を与えられた魔術師。または同クラスの悪魔か、それ以上」

「ええ!!?」


「じゃなきゃ天使。それも、神に近いクラスの」

「ああ、どうか天使であってくれ~」


「うむ。しかし、ぜんぜんこちらに興味がないようだ。かなりどんくさいか、この程度など興味がないのであろう。天使の興味のなさといったらそれこそ半端ではないからそれかもしれん」

「どうでもいいから、早く時間を動かしてよ。そんな奴らと顔を合わせたくないよ」


「そうだな」


明日香は教壇のところまで戻ってこちらを向いて指を鳴らすと、またざわざわと音が戻って来た。

時間を動かしたらしい。


「えっと。どこまで話したかな?そうそう。彼女の名前は」


といって、黒板に大きく「路道明日香」


「ロドーアスカさんです。みんな、仲良くしてあげてください」

「よろしくお願いしまーす」


「じゃぁ、誰の隣がいいかな?」


と先生が教室を見渡す。

一緒になって明日香も見渡し、陽太の隣の女子を見てニコリとほほ笑んだ。


陽太の隣の子は


「あ、あたし、目がいいので一番後ろに移ります」


といって、机をもって一番後ろに移動した。

明日香は陽太の隣まで来ると、空間にドッカリと座る形になる。


すると、自然に湧き出るように学校用の机とイスがすでにそこにあった。

クラス中が「???」と言った顔をしたが


「先生。ホームルームは?」


と明日香が言うと、みんな何でもない顔をし出し先生も出席を取り出した。


「ああ、そうだね。では、出席。浅川。石田。宇佐美。江本……」


そうして、何事もなくホームルームは終わった。

休み時間になると、明日香の周りには人だかり。


隣のクラスはおろか、上級生まで。


「へー。浅川の親戚なんだ」

「そう。両親が海外いっちゃって、頼れるのヒナタ君しかいなくて」


「え~。かわいそう。オイ。浅川。彼女に手をだすなよ? こんなに可愛いからって」


ギャラリーの言葉に陽太は心の中で反抗した。手などだせるものか。キスしようとして死ぬ思いをした。気にするならそんな思いをして見ろと。そう思った矢先。


「もう、されちゃったもんね~。ね、ヒナタ。教えてあげたら?あの言葉でメロメロにするやつ!」


「ええ~!!」


昨日の呪文の仕返しだ。間違ったことは言っていない。確かに言葉でメロメロになっていた。陽太を見るみんなの目が引いてる。


「いやいや、してない。してません!」


「引く。マジ引く」

「おいおい。こんなカワイイ子を!」


「おい! アスカ! ウソつくなよ!」


明日香は陽太の狼狽する様子が楽しくてしょうがないらしく、いたずらっぽく微笑みながら


「じゃ、あれ教えてあげて! 指でナニするやつ!」


「はぁー!!?」


明日香の言葉に踊らされたクラス中の厳しい視線。


それはマジでしていないが、すでに大衆の目は陽太をそう言う目で見ていた。

陽太は思った。この悪魔め! と。

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