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第68話 陽太陣営

夜。陽太と明日香の部屋。

この日もいつものように前野と竹丸も集まって楽しい会食をしていた。

互いに、バイトや学校の話をしていると明日香がおもむろに今日の出来事を話し始めた。


「そーいえば、陣内アラタくんがさぁ、私と付き合いたいって」

「はぁ?」


陽太が驚いて声を上げる。狼狽する姿が面白くて仕方がないといった顔をする明日香。

しかし、前野も竹丸も興味を持った様子。

陽太が聞き返す。


「あの時、呼ばれたのってそういうことだったの? そ、それで。どう答えたの?」

「ヒナタと比べられたから、ちょっとムカついて。じゃぁスポーツテストの100m走で勝ったほうと付き合うって言っちゃった。楽勝でしょ?」


と言ってニヤつきながら視線を送る。


「いや。まぁ。うん」


グラシャラボラスに作り直された体。

そして稽古をつけられ、さらに前野にも鍛えられた。

極めつけはアスタロト大公の心臓と肉体を分けられたことだ。

自分で感じる。600キロを1日で完走。通常の人間ではできっこないだろう。


もはや人類の枠を出てしまっている。

だが、それを見せないように生活をして行きたいのだ。

躊躇した回答はそのためだった。


「向こうは、勝ったつもりでいるから、見せつけてやりなよ。」


明日香はそう言うが、竹丸の表情も多少曇る。


「うーん。しかし……」

「なに? タケ」


「所詮向こうは人間でしょ? ヒナタさんは修行もつんで、アッちゃんさんの肉体を4分の1を持っている。ましてや心臓はアスタロトそのもの」

「いやぁ、そんなことないでしょ~。みんなもこのヒナタから魔力とか感じられる?」


明日香の質問に前野と竹丸が答える。


「感じられない。」

「まぁ、感じませんけどね。今は……」


「でしょー? だって人間だもんね」


明日香から見れば、陽太も陣内も結局まだまだ普通の人間なのであろう。

陽太の新しい力さえも、明日香からすれば無力なのかもしれない。

だが、この自分が仕向けた人の心の争いが楽しいようだった。


前野は自分には関係がない顔。

陽太と竹丸だけが困惑しているのだ。


竹丸も困った。陽太が本気を出せば人類の記録を軽く塗り替えてしまうだろう。本人には自覚はないかもしれないが。

それでオリンピックの強化選手などに選ばれてしまってはたまらない。自分のサポートできる範囲の外には行って欲しくないのだ。陽太は世界を救う。そのために先回りして大学に入り教員免許を取って彼のそばに行けるように、長年手順を追ってそばに来れた。また遠く離れられてしまっては大変なのだ。

明日香は元神と言っても、今は悪魔。人が困惑するのが好きなのだろう。竹丸の苦悩の種であった。


「ですが、まぁあまり本気を出さないで……。そうですね。10秒から11秒コンマ後半辺りを狙って頂いて」

「そんなぁ。タイムなんて感じられないよ」


「じゃぁ、相手よりも0.1秒くらい早い感じで。スポーツテストならワタクシがその場を監督しますから。うまく二人が並べるようにしますんで」

「ちょっとだけね。ちょっとだけ早ければいいのね。了解」


なんとか竹丸の監督の元、事が運ぶこととなり陽太は少し安心した。

しかし、思い出すのは陣内のサッカーでの活躍。

彼も通常の人の力ではないのかもしれないと少しだけ思った。

なにしろ、後にも目が付いているような動きだった。空中にも鮮やかに飛び上がる。陽太は前野に鍛錬を受けた身だ。あの程度なら自分はそれ以上に動くことは可能。

しかし、普通の人間があのような動きを出来るのだろうか?


多少腑に落ちない部分はあったが、あの程度なら大丈夫であろうと思っていると、明日香がイスにふんぞり返りながらいつものように命令をした。


「ヒナタぁ~。お腹すいた~。塩ラーメン食べたぁ~い。作ってぇ~」

「のん気だなぁ~。アスカは……。今食べたばかりだろ? それに塩ラーメンって……。最近弱点無くなってきちゃったんじゃねーの? はぁ……」


陽太は立ち上がってキッチンに向かい、買い置きの袋ラーメンの封を一つだけ切った。

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